「家じまい」の進め方

若い頃、「終の棲家」として購入した憧れのマイホームが一変して「一戸建て地獄」に陥ってしまう。そんなことが、現実に次々と起こっている。
超高齢化社会になったというのに、いまだに日本では、「老後」(セカンドライフ)をどのように幸せに過ごすかというモデルが確立されていない。そのため、悩んでいる方は非常に多いと思う。
本サイトでは、そんな方々とご家族、とくに一戸建て住宅にお住いの方々のために、幸せになれる一つのプロセスを提示してみたい。それは、家の問題を中心として、どうすれば、快適な老後を過ごせるか、そして最終的な居所を見つけられるか、さらに、心残りなく人生を閉じられるかということである。
この問題について皆様と一緒に考え、解説していきたい。

すでに『磯野家の相続』(すばる舎、2010)など一連の著作で、この問題に取り込んできている。誰もが知っているように磯野家は旧時代の家族モデルである。現在の日本では磯野家のような大家族はほとんど存在しないし、また、あのような家族愛に満ちたほのぼのとした日常生活は永遠には続かない。にもかかわらず、人間誰しも、家族の中で幸せに人生の後半を過ごしたいと思っている。
ところが、現在の日本の社会システム、住宅事情はそれを許さない。セカンドライフを迎えた途端に、一戸建てが不幸の温床になってしまうのだ。

相続財産の中で、一番厄介なものは不動産である。特に、一戸建てにまつわるトラブルが後を絶たない。マンションではなく、一戸建てで問題が起きる。
子どもが独立し、自身たちもリタイアした後において夫婦二人で一戸建て住宅に暮らしているケースが多く見られるが、そのほとんどが近い将来トラブルに見舞われることになる。まず介護の問題(老々介護)。続いて、相続の問題。そして、売却の問題。この三つの問題が次々に襲ってくる。

相続トラブルは年々増えている。相続トラブルというと、資産家の話と思われがちであるが、実はそれほど遺産がない、いわゆる一般の家庭のケースが一番多い。特に、遺産が一戸建て住宅だけというケースでは、親子で、また子ども間で遺産分割をめぐっての争いがほぼ確実に起きる。
また、一戸建ては規格品であるマンションと異なり、設計段階で多大な労力を割くことになり、リフォームにしてもフルオーダーになる。そのため、愛着がわくのか、手放したがらない方が多い。
しかし、いくら愛着があったとしても、築年数を重ねれば家屋の価値はゼロに等しくなり、維持管理の負担だけがかかることになる。

本サイトでは、一戸建てのトラブルの実例を紹介しながら、思い切って売却することを勧めている。これは、人口減で住宅余りが進む現実を見れば、極めて合理的なことであり、実際、すでに多くの方が実践している。2020年の東京オリンピック開催後においては、日本の景気も低迷し、地価も大幅に下落することが予想されることから、マイホームを手放すのなら早いうちに動くべきだろう。マイホームを売れるうちに売り、それによって得たお金で充実したセカンドライフを手に入れることは可能だ。
もし、何も手を打たないで伴侶に先立たれたりした場合、遺産相続で確実にもめる。一戸建てにいつまでも住み続けるのはメリットよりデメリットの方が大きい。

一戸建ての売却によって「幸せなセカンドライフ」を手に入れることをここでは、「家じまい」と呼んでいる。「家じまい」は、家をしまうことだけに留まらない。いずれ人生もしまわなければならない「身じまい」も含めて、「家じまい」と呼ぶことにする。

賢い「家じまい」ができれば、幸せな「身じまい」もできる。「家じまい」が早くできれば、介護の問題や相続の問題は回避され、安心・安全かつ幸せな老後を手に入れることが可能だ。
本サイトを参考にして、ご家族で話し合っていただければ、幸いである。

2017年10月 弁護士・税理士 長谷川裕雅

2020-02-16 22:15 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所