地代トラブルfor land

様々な状況下で起こる地主との契約内容の変化。これでは困る、を解決します。

地代をめぐる問題

地代・賃料が不相当となったときは、地主あるいは借地人は増減額の請求ができます。 話し合いがつかない場合には、調停の申立をすることができます。 地代・賃料の増減額請求は、次のような流れで行われます。

■事情の変更

契約で地代・賃料を定めた以上、本来なら、その額を守らなければなりません。 しかし、借地契約には、法律関係が長期的、継続的であるという特色があります。 時間の経過とともに、当然に物価や税金など社会経済事情は変動するので、一度約定された地代等も、経済事情の変動等により不相当となることが想定されます。 そこで、公平の観点から、当事者がその変化に応じて地代等の増減を請求できるとされています(借地借家法11条)。 なお、地代等の増減の効果は、将来に向かって生じるので、過去に遡って増減を請求することはできません。

■要件

地代等の増減額請求を行うためには、地代等が不相当になっていることが必要です。 不相当といえるかどうかは、次の事情を総合的に考慮し判断されます。

  1. ①土地に対する租税その他の公課の増減
  2. ②地価の上昇・低下その他の経済事情の変動
  3. ③近傍類地の地代と比較して著しく相違することとなった場合

なお、借地契約の中に、将来事情に変更があっても一定期間減額しないという条項があっても、地代を減額することは借地人の利益となるので、借地人側から減額の請求をすることは許されます。 一方、一定期間増額しないという条項がある場合には、事情の変更によって地代が不相当となっても、地主側から増額の請求をすることは許されません。

■権利行使の手続き

地代等増減額請求権が行使され、その後相手方との協議がまとまらない場合、訴えを提起することになります。 しかし、地代等は長期にわたって継続的な関係の中で取り扱われるべき事項であり、係争が生じた場合でも、できるだけ円満に話し合いによって解決する必要があります。 また、係争対象の経済的利益が比較的少額であることが多く、そのような係争を訴訟に持ち込むことは、経済合理性の観点からも適切ではありません。 そのため、地代等増減額請求について訴えを提起しようとする者は、まず訴え提起に先立って、調停の申立をしなければならないとされています。

調停を申し立てて結論が出るまでの間は、借地人からの減額請求では、額が決定するまでの間は、地主は相当とする額の地代を請求できます。 地主からの増額請求では、額が決定するまでの間は、借地人は相当とする額の地代を支払えば問題ありません。 調停によって地代等の額が決定した場合、借地人が相当として支払っていた額が決定額と比べて多すぎた場合には、地主は超過額に年1割の利息を付けて返還しなければなりません。 借地人が相当として支払っていた額に不足があれば、借地人は不足額に年1割の利息を付けて支払わなければなりません。 なお、借地人が相当とする地代を支払おうとしても地主が受け取らない場合には、借地人は、相当とする地代を供託所に供託することで、債務不履行責任を免れることができます。

調停が成立しない場合には訴訟となり、増額または減額が正当であったのか、相当な地代等がいくらなのかを裁判所が判断することになります。

(1)地代の支払いが滞っている場合

地代の支払いが滞っている場合、それを理由に地主は契約解除できるかが問題となります。

故意・過失によって債務者が契約上の義務を履行しない場合には、債権者は契約解除・損害の賠償請求をすることができ、これを債務不履行といいます。 借地人の地代・賃料の不払があることは、借地契約を解除する理由となります。 しかし、僅かな滞納があった場合でも、地代・賃料の滞納があったからといって、借地契約の解除を認めると、借地人にとっては非常に酷な結果となってしまいます。

売買契約などの一過性の契約と異なり、建物所有目的の借地契約は契約が締結された後、数十年というかなり長期にわたって継続することになります。 このような継続的な契約の場合には、地主と借地人の信頼関係が重要となります。 そこで、地主の期待を裏切って、契約の存続を維持できないような事情がある場合に限り解除を認めることとし、地代や賃料の滞納が信頼関係を破綻させる程度でなければ、たとえ滞納があっても解除は認められないとされています。

したがって、借地人に支払う意思がないことが明白で、滞納が信頼関係を破壊するといえる程度に至っている場合は別として、その場ですぐに契約を解除することは認められません。 原則として、地主は相当の期間を定めて、その期間内に支払うことを催告し、期間内に支払がない場合に初めて解除が可能となります。 ここでいう相当の期間とは、借地人が滞納している地代・賃料を調達してくることができる程度の期間をいい、通常は1週間程度と考えられています。 地代・賃料の不払を理由とする契約解除の流れは次のとおりです。 なお、1回でも地代の滞納があれば契約解除ができるという特約がある場合でも、即座に契約を解除することはできません。 なぜなら、このような特約は、通常、必要となる催告を要せず解除の通知をすることができることを定めたものと考えられているからです。 通知には何ら効力はないので、借地人が明渡しを拒否すれば、契約違反で争わなければならないということになります。

(2)新地主が値上げを要求してきた場合

地主がかわり、新しい地主が地代の値上げを要求してきた場合、借地人はこれに応じなければならないのかが問題となります。

借地権自体に登記がなくても、借地上の建物を登記してあれば、第三者に対抗することができます(借地借家法10条1項)。 そのため、借地人は旧地主のときと同じ権利を主張することができ、新地主の値上げ請求にも応じる必要はありません。 なお、事情の変更があった場合には地代の値上げも認められますが、地主が変更になったことは、この事情の変更には当たらないので、新地主が一時金を要求してくることがあっても、これに応じる必要はありません。

地代の増減変更に際して、その金額が当事者の話し合いでまとまらない場合、まず、調停の申立をすることになっています。 そして調停がまとまらない場合に初めて、裁判になります。 新しい地代が決まるまでの間、借地人は相当とされる地代を支払えばよいことになっています。

(3)急に地代を2倍にすると言われた場合

地主が急に地代の値上げを要求してきた場合、借地人はこれに応じなければならないのかが問題となります。

地代の額は社会的に妥当なものでなければなりません。 地主が地代の値上げをいくら要求しようと自由ですが、借地人がこれに応じなければ相当な範囲内でしか効力はありません。 地代が妥当であるかどうかについてはまず調停で話し合いをし、調停でも合意を得られない場合には、裁判で決定することになります。 なお、妥当な地代は、近隣の地代などを参考にして決定されますが、判例などによると、更地価格の1.5%ぐらいで算出し、それに必要経費を加えた額と考えられています。

(4)借地人の無断増築を理由とする値上げの場合

借地人が無断で車庫を増築した場合、地主は契約違反を理由に明渡しを求めることができるかどうかが問題となります。

借地人が地主に無断で増築をした場合には、地主はそのことが契約違反に当たるとして、明渡しを請求することも考えられます。 ただし、明渡しを請求するためには、借地人による当該土地の使用継続に対する異議に正当事由がなければなりません。 この正当事由の判断については、次のような借地人と地主の個別の事情を総合的に比較、考慮して、借地契約を終了させるべきか否かを判断します。

  1. ①地主と借地人それぞれの土地使用の必要性
  2. ②借地に関する従前の経過
  3. ③土地の利用状況
  4. ④立退料の申出の有無

なお、この正当事由を具備するか否かの判断基準となる時点は、借地人の更新要求・土地使用継続に対して、地主が異議を申し出た時です。

借地人が無断で車庫を作った程度では正当事由があるとはいえないので、明渡しを請求することはできないと考えられます。 そこで、地主としては、土地を明渡してもらえない代わりに、一時金を取るか、地代を増額することが考えられます。 一時金は、拒否されてしまえばそれまでですが、地代増額は、増築によって借地の利用効率が増大するので、そのことを理由に認められる可能性が高いといえます。 したがって、借地人が無断増築をした場合、地代の増額を求めるべきです。

戦前からの借地での債務不履行

戦前、父の代から160万㎡の土地を店舗兼住居所有を目的に貸しています。ある時、公租公課の値上がりによって、賃料を月額12万円に増額請求したところ、借主は、公租公課の額を下回る月額6万円の額が相当賃料額だとして供託してきました。月額6万円の賃料は、昭和55年8月に増額されて以来据え置かれたものです。賃料不払いを理由に賃貸借契約を解除することはできるのでしょうか。

戦前からの借地なので、借地法の問題となります。借地法では、貸主から地代増額請求があれば、請求時に当然に適正額に増額されることを前提にして、借地権者は、増額を正当とする判決の確定まで、支払額が結果的に適正額に不足していても「相当ト認ムル」賃料を払えば債務不履行にはならないと規定されています。ただし判決が確定したときは、不足額および年1割の利息を支払わなければなりません。「相当ト認ムル」額は、借主が主観的に相当と認める額でよいとされています。ただし、借主が公租公課の額を下回ることを借主が知っていた場合は、債務不履行になるという判決も出ています。よって、今回の場合も契約解除の可能性があると言えます。

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