賃料増額請求で気を付けるべきこと

不動産オーナーや貸主の方は、一度、契約を締結した賃料は上げられないと思っている方が多いと思います。 建物賃貸借は継続的な関係ですので、頻繁な増減があることは想定されていません。それでも昨今の地価上昇で、固定資産税が増税されたり、新規契約での賃料との差額が大きくなると、不動産オーナーとしては現状を既存テナントの賃料にも反映したいと思うはずです。     賃料を増額したい場合、まずは当事者間で話し合いをしますが大抵は解決できません。 そうすると次は、調停を申し立て、それでも解決しない場合に訴訟をすることになります。 その際に現行の賃料が不当に安いことを客観的に証明する必要があります。 よくあるのが懇意にしている不動産業者にお願いして査定書を出すパターン。しかし、不動産業者が作成する査定書は客観的な正当性を認められていません。当事者の息がかかった不動産業者が作成する査定書は、裁判手続きでは意味をなさず、逆に相手の反撃を食らいます。相手も懇意にしている不動産業者に頼み自分に有利な査定書を提出するのが通例です。 そして両者ともに自分の思いを反映した査定書を出し合って、期日が空転します。 賃料の妥当性について立証責任を負うのはオーナーのほうなので、このような状況に陥ると望む結果を出せません。 賃料の相当性については、最初から不動産鑑定士に依頼するのが最適です。     不動産鑑定士は依頼者におもねらずに客観的な評価を出すことを誓約しますし、そもそも不動産鑑定士の署名が入った鑑定書自体、客観性が担保されているものです。 最初から不動産鑑定士による鑑定書を出すと、反撃を食らわずにそのままの評価が通ることも珍しくありません。 鑑定費用はかかるものの、早期に適正賃料を手にしたいのであれば、必要コストであると考えるべきです。 早期に適正賃料を勝ち取ることで、年単位で考えるとオーナーにとって利益となるのです。 賃料増額の裁判においては、遅延損害金も請求できます。 解決までにかなりの時間を要することもあり、早期に裁判手続きに踏み切ることで、損失を早期に回復しましょう。 忘れてはいけないのが消費税。居住用とは違い事務所用の賃貸契約において、賃料だけではなく、管理費・共益費にも消費税はかかります。オーナーチェンジで物件を購入した場合、消費税の改正の時期をまたいでいるにもかかわらず、増税後の消費税が徴収できていないこともよくあります。     厄介なことに、賃料には管理費が含まれる形で記載されていることもあり、もともとの契約書が税込表記の場合、税抜の賃料本体の価額を推測しなければならないこともあります。 消費税についても、不足分については遅延損害金を請求できます。 毎月の履行期からそれぞれ遅延損害金が発生しますので、細かく計算して請求することになります。 気を付けなければならないのが、心の中では追い出したいと思っていても、賃料増額の裁判において本音は隠しておくべきです。追い出し目的であることが看破されると、正当な主張であっても通りにくくなってしまいます。賃料増額の裁判をやって、裁判沙汰になった結果、結果的に出て行ってもらえればよいのかもしれませんが、あくまでも問題になっているのは賃料の額自体です。追い出すためには別の理由が必要になってきます。  
2021-10-07 10:28 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所