不足賃料の請求も、現状家賃の適正確認も、まずは簡易裁判所から
前回の記事「あの大手企業“レオパレス21”からの一方的な賃料減額」
一刻の猶予も許さない不動産オーナー
レオパレスからの一方的な家賃減額の通告を受けた不動産オーナーのAさん。
結局、それ以降はレオパレスが主張する家賃しか振り込まれなくなりました。
突然、毎月の家賃収入は10万円も減額となりました。一方でアパートを建てるために借りたローン支払いは、今後も発生し続けます。支払いはローンだけではありません。毎年の固定資産税なども、家賃収入の減額にも拘らず支払い続けなければならないのです。
年金生活者のAさんにゆとりはありません。
一刻も早く、レオパレスに本来の家賃を支払わせる必要があります。
不足分の家賃は簡易裁判所経由で地方裁判所へ移送
一方的に減額された賃料にですが、差額分を請求したいところです。
こうしている間にも不払い賃料は増えていきますので、少しでも早く訴訟提起をしなければなりません。
今回のケースでは、1カ月につき10万円の損害が発生しますが、家賃の請求については140万円以下の金額の裁判は地方裁判所ではなく、簡易裁判所に提起することになります。
しかし簡易裁判所での裁判には問題があるのです。簡易裁判所の民事訴訟には、一般市民の中から選ばれた司法委員が加わり、和解を積極的に勧めてきます。理屈もなにもない解決で妥協を求められることもあります。
他方で主張が対立し争いが顕在化した場合は、争点の内容にかかわらず、裁判官が地方裁判所への移送を勧めます。
今回の場合は、減額した賃料を一方的に振り込むレオパレスの行為が、債務不履行にあたるかどうか、すなわち、賃料の妥当性の問題と関連します。結局は賃料の鑑定が必要になるでしょう。争点がシンプルではなく複雑な案件であるため、簡易裁判所が扱う案件としてはふさわしくないかもしれません。
結局移送となると、時間だけを空費して、地方裁判所で1から再スタートを切ることになります。
簡易裁判所に訴訟提起してから再スタートを切るまでに数カ月はかかってしまうでしょう。
現状家賃の適正確認も簡易裁判所経由で地方裁判所に訴訟提起
今回のケースでは、差額分を請求するとともに、現行賃料が妥当であることの確認を求めることが重要となります。
家賃の増額や減額を裁判で求める際には、調停を必ず起こさなければなりません。
民事調停なので、これもまずは簡易裁判所に提起することになります。調停で不成立にならないと、地方裁判所に裁判を提起できないのです。
家賃の現状維持の確認を求める裁判も同じように調停から始まります。
増額を求めない場合でも、家賃の適正額を求める訴訟は、調停を先に経なければならないのです。
簡易裁判所に調停を起こして数カ月余分な時間をかけることはかなり抵抗がありますが、やむを得ないことでしょう。
時間的費用的コストはオーナー負担
家賃の減収分についてお金を払うことを要求する裁判も、現状家賃が適正である確認も、いずれも簡易裁判所に訴訟や調停を起こしてからでないと、地方裁判所にはたどり着けません。
そしていずれの場合も、家賃の適正額が問題になりますから、不動産鑑定士による鑑定書は重要な証拠になります。
不動産鑑定費用や弁護士費用はオーナーが負担することになります。
それでもAさんにとって、適正賃料を徴収するために、時間的費用的コストを負担することは、長い目で見ると必要なことといえるでしょう。
不払いをしたうえで「不満なら裁判を起こせ」がレオパレスの対応
レオパレスの家賃減額の通告と家賃の一部不払いは、いずれも一方的で身勝手なものですが、オーナーは手間暇をかけて、簡易裁判所から法的手続きを踏むことになります。
レオパレスの不合理な行動について、オーナーの負担において何から何まで解決しなければなりません。
レオパレスの担当者に電話で確認したところ「レオパレスの方から、賃料減額調停を起こつもりはまったくない」という回答でした。
減額の主張をする以上は、せめて自ら賃料減額調停を起こす負担くらいは、負ってほしいものです。