明渡しは鍵まで返却しないといけない
建物賃貸借において明渡しが完了しているかどうかは重要な問題になります。
なぜかというと、明渡しが完了するまでは賃料が発生し続けるからです。
不動産を明渡すことの意味ですが、単に引っ越しが完了をするという意味ではありません。
賃貸借契約における明渡しとは、建物賃借人が賃貸借契約上の義務として、建物を原状に復し、かつ、現に建物を占有していないというだけでなく、賃貸人から預かった鍵等を返還するなどの返還義務を履行する必要があります(東京地方裁判所平成18年3月23日判決)。
通常は解約予告をすると、特定の日に退去明渡しの日を確認して、それまでに借主は引っ越しを済ませます。
引っ越し日に明渡しの退去確認をすることができれば一番良いのですが、敷金精算のための貸主が立ち会って現状確認を行うのが通常ですので、退去明渡しの立ち合いについては貸主と借主とでスケジュールを調整する必要があります。
通常は明渡しの前日までに引っ越しを完了させ、引っ越しの翌日以降に立ち合いによる現状確認を行います。
しかし引っ越しが終わっているだけでは、明渡し完了とはなりません。
鍵の返還などが終わって、初めて明渡しが完了することになり、それまでは賃料が発生し続けるのです。
また、原状回復工事を明渡しの前にしなければならない契約は、明渡し日に引っ越しが完了していても、原状回復が行われていない場合、追加で賃料が発生します。
明渡しと原状回復義務の履行時期については、一般的に事務所用の賃貸借契約においては、原状回復を明渡しまでに行うことになっています。
このように原状回復をしてから明渡しをする契約では、原状回復を貸主であるオーナーが代わりに行ってもよいのですが、貸主が原状回復工事を行ったとしても工事が終わるまでは明渡しが完了しないことになります。明渡しが完了するまで、つまり原状回復工事が完了するまでは、賃料が発生し続けるのです。原状回復工事は場合によってかなり時間がかかってしまい、追加で発生する賃料が高額になる可能性があります。
また、万が一明渡しが遅れた結果、明渡しが更新時期をまたいでしまう場合があります。その場合、引っ越しをしていたとしても更新料が発生してしまうので注意してください。
更新料は契約ごとに定められていますが、1月分程度の賃料がさらにかかってしまうので、更新時期はしっかりとチェックしておくことが重要です。
特に事務所を借りる場合、居住用の契約に比べて借主が気を付けないといけないところが多くあります。法人間の契約ということもあり、少しくらい遅れても融通が利くということもそこまで期待できません。
会社を設立してから引っ越しを繰り返している方もそこまで多くはないと思われますので、事務所を借りて引っ越しをするときには注意が必要です。