更新間際で借主と賃料などについてもめている場合は要注意

更新料は契約期間を定めて賃貸する場合に、契約期間が満了し更新契約を締結する際に借主から貸主がもらうことができるものであり、貸主にとっては非常に重要なものです。

賃料額の相当性をめぐって貸主を借主がもめた際に、交渉が長引いて更新期間をまたぐことがあります。
通常であれば、更新期間をまたいでしまう前に更新契約を締結するところですが、もめている状態です。
そんな時に更新契約をしてよいのでしょうか。
更新契約をすることは、契約している賃料が相当であることを認めたことになり、貸主にとっては賃料増額請求において不利になる可能性があります。
現状賃料をそのまま受け入れたと借主に主張されることもあり得ますし、裁判では現状賃料の更新料を受領したことが、貸主に不利な事実認定として作用したこともあるのです。

 

更新の種類は3つ

賃貸借契約の更新方法には3種類の方法があります。
合意更新と自動更新、法定更新です。
では、更新契約を締結するのは抵抗があるとして、そのまま更新契約を放置しておくとどのような結果になるのか。
3つの更新方法と、更新契約を放置した場合の落とし穴について、解説していきます。

 

 

合意更新

合意更新は文字通り、合意して契約を更新することで、同一条件で契約書を再度作成することがほとんどです。
契約書を再作成する際に、家賃などの条件の変更をすることも可能です。
保証人との保証契約も都度作成することになります。
保証人との人間関係が薄くなり保証をする意思もなくなった保証人が、ずっと保証人として残り続けて、いざ保証債務の履行を求める段階で、保証人の資力が無くなるということもありません。
反面で、合意更新は更新毎に手続きを行う手間が掛かります。管理会社に任せていれば、不動産所有者には負担がありませんが、その代わり管理会社にその都度、手数料を支払うことになります。更新料を借主から徴収してもその更新料がそのまま、管理会社に横に流れることになるのが通常です。

 

 

自動更新

次に自動更新ですが、賃貸借契約の期間が終了した際に、終了した契約と同一条件、同一期間の賃貸借契約を更新する旨を予め契約書に定めておく更新方法です。
更新時の手間が掛かりませんが、そのままの規定では更新料を徴収できないので、借主に有利な更新方法です。しかし、自動更新でも更新料を徴収する旨、契約書で規定めることもでき、この場合は、手間がかからない上に更新料を徴収できるので、管理会社を通さない不動産オーナーには都合の良い方法です。反面で、契約条件の見直しができないので、保証人が亡くなっていたり無資力となっているリスクはあります。

 

もめている場合は法定更新になり更新料が二度と取れなくなることも

賃料などをめぐってもめている賃貸人と賃借人の間で合意更新もできず、もともと契約書に自動更新条項も設けていなかった場合になされるのが法定更新です。
契約書に自動更新の条項を入れず、また借主と合意更新ができなかった場合は、法定更新となります。
法定更新とは、期間の定めのある賃貸借契約を締結していた場合に、契約期間満了の1年から6ヶ月前までに通知をしなければ、満了日以降は期間の定めのない契約となることが、法律により強制される更新です。
問題は法定更新後の賃貸借契約が期間の定めのない契約となることです。契約の更新が無い以上、更新料は発生しません。契約書の巻き直しもできないため、保証人の意思確認も条件の変更もできません(家賃増額請求は可)。
更新料が二度と取れなくなってしまうのです。

 

 

借主が放置するだけで法定更新に

法定更新は以下のどちらかを満たせば成立します。
●期間満了前の6ヶ月~1年以内

の間に通知をしなかった

●契約期間満了までに合意更新が成立しなかった
合意更新の更新書類を借主に送付したものの、借主が返却をしなかった場合でも法定更新は成立します。管理会社が契約満了の2ヶ月程前に更新書類を送ったきりで、そのまま法定更新になってしまうこともあります。
法定更新に関する借地借家法の規定は強行規定であり、特約で排除することができません。

 

賃貸借契約で法定更新後の期間を定める

貸主にとって法定更新は、避けなければならない更新方法です。
法廷更新になってしまった場合に備えて賃貸借契約書には
法定更新の場合も更新料がかかること
法定更新の場合も契約期間について定めがあること
を明記しておくことが大切です。

例えば、
「法定更新された場合でも、2年ごとに家賃1カ月分の更新料を支払うものとする」
「法定更新された場合の契約期間は2年とする」
と契約書に定めておくと安心です。

 

 

「契約更新については」などと、更新の種類について不明確なままにしておかないことを注意してください。
多くの賃貸借契約書をみていると、賃貸借契約の更新条項はかなり大雑把に定められています。
「協議の上、更新することができる」とだけ定め、更新料だけが定められているものも多くみられます。合意更新のみを想定しているので、自動更新はできません。合意更新がもめていてスムーズにできない、賃借人が合意更新の書面作成に協力しないなどの問題が起きた場合、法定更新にならざるを得ません。
万が一、法定更新になった場合でも、有期契約にして更新料をとれるように、最初の賃貸借契約の作成をしっかりとすることが重要です。

 

  利点 欠点
合意更新

条件変更可能

保証人の資力確認可能

更新料取れる

手続必要
自動更新

手続不要

条項次第で更新料取れる

契約書に定めが必要

保証人の資力変動リスク

法定更新 手続不要

更新料取れない

保証人の資力変動リスク

自動更新・法廷更新後の契約期間と更新料を契約書に定める

 

2021-08-27 11:03 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所