ペット可物件はなぜ少ない?なぜ高い?

昨年から始まったコロナ禍によって、以前から高まっていたペットブームに拍車がかかっています。
在宅勤務で家にいる時間が増え、1人ぼっちの寂しい時間を過ごす中でペットを飼い始めた人たちは多いはず。
ペットの価格も大幅に変化しました。
都内ペットショップでは、トイプードルやチワワなど人気の小型犬はコロナ前の約1.5倍上がり、1匹40万円程で売られるようになったようです。

今回は「ペット可物件」について解説していきます。

ペットの需要が高まったからといって、ペット可の物件がそれに伴って増えているわけではありません。
少しずつ増えてきている印象はありますが、まだまだ物件数は少なく、飼い主の希望に沿った物件を見つけるのは難しいのが現状です。

では、なぜこんなにも需要があるはずのペット可物件は少ないのでしょうか。
その理由はいくつか挙げられます。

 

1、原状回復が難しい

ペットを飼育すると絶対に免れないのが、匂いや傷。
これは皆さんも何となく想像がつくはずです。

ペットを飼っていた物件については、預けた敷金よりも原状回復にかかる費用が高くついてしまい、退去後にさらなる費用を入居者が請求されることもあります。
原状回復できればまだいいのですが、ハウスクリーニングなどをしても匂いがとれない場合は、大家さんが次の入居者を募集する際の家賃がひくくなってしまいます。

事前に契約書で、修繕費についてしっかりと明記しておいたとしても、トラブルが起きないとは限りません。
敷金の平均は1~2カ月分でしたが、年々減少の傾向にあり、最近では敷金ゼロという物件もよく目にするようになりました。
しかし、ペット可の物件の敷金は、今も変わらず最低でも家賃2カ月分で、比較的敷金の高い物件が多くみられます。物件をペット可能にするにあたっての不安感が、敷金の設定額の高さに表れているのでしょう。

 

2、住人同士で起こるトラブル

 

 

ペット可物件は貸主と借主のトラブルだけではありません。

マンション・アパート内での住人同士のトラブルも多くあります。

匂いや鳴き声でトラブルに発展することもあります。犬を散歩に連れ出すときなどに頻繁に共用部を出入りする場合、他の住人に怪我をさせてしまうトラブルもあります。芸能人夫婦が飼う犬が同居マンションの住人にけがをさせたトラブルも報道されたことがあります。

さらには、トラブルが原因で住人が退去してしまい、空き家状態が続くことになれば貸主にとって、さらに大きな損害になってしまいます。

ペット可物件だからといって、ペットを飼っている人だけが住んでいるわけではなく、ペットを飼っていない人も、ペット可の物件に住んでいます。

ペット可の物件では、住人への配慮が大切になります。

 

3、一度ペット可にしてしまうと後戻りできない

空き家対策等を考え、貸主がペット不可からペット可の物件に変更した場合、ペット不可の物件に戻すことはかなり難しいでしょう。

大きなトラブルがあり借主に過失があったとしても、借地借家法などにより借主が保護される傾向にあります。
トラブルを原因に退去を申し立てても、すんなりと退去に応じる人は少ないでしょうし、多くのケースでは借主が保護されてしまいます。

借主からすると、ペット可の物件から退去をすると、ペット可の物件はまだまだ多くはないためになかなか転居先が見つからず時間がかかります。それだけに、借主はなかなか退去をしたがりませんし、ましてや、トラブルも起こしていないような住人に対して、貸主がペット不可に戻したいと言ってもそれに応じる人はいないでしょう。

以上のことから、大家にとっては、一度ペット可の物件にしてしまうと、ペット不可の物件には戻せなくなってしまいます。

 

まとめ

 

上記のような問題を考えると、やはり賃貸をペット可にすることは貸主にとってリスクが高い転用であると言えるでしょう。
もし、ペット可にしたとしても、トラブルに備えて家賃や敷金を上げざるを得ないのが現実です。
それを考えると、ペット可の物件が高く、数が少ないことは納得できる気がします。

 

しかし、もし空き家が

続いて悩んでいる貸主の方は、契約書等を見直し、しっかり対策をとってから、物件をペット可にすれば、新しい入居者が見つかる可能性は一気に上がるはずです。たとえば定期借家契約にすることで、一定の期間、様子を見ることも可能です。
検討してみるのもいいかもしれません。

2021-04-16 17:00 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所