- ■借地権の譲渡
- 借地権の譲渡とは、借地権そのものを譲渡することです。 借地上の建物を譲渡・売買した場合、借地権は従たる権利として建物とともに譲渡されるので、借地権の譲渡には、借地上の建物を第三者に譲渡する場合も含まれます。 なお、借地権には賃借権と地上権があり、賃借権の譲渡・転貸には賃貸人の承諾が必要とされているのに対して、地上権は、自由に売買できるとされています。
- ■借地の転貸
- 借地の転貸とは、借地人が借地をさらに第三者に貸すことをいいます。 なお、借地上の建物は借地人の所有物なので、借地上の建物を貸す場合は建物の賃貸であって、借地の転貸にはあたりません。
借地権や賃貸権を譲渡・転貸する場合は、地主の承諾が必要となります。 地主の承諾なしに借地権を譲渡・転貸した場合には、借地契約の解除理由となります。 ただし、例えば、離婚や内縁解消といった、背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、借地権の無断譲渡や転貸があっても解除権は発生しないとされています。
地主の承諾が得られないときは、借地人は裁判所に承諾に代わる許可を求めることができます(代諾許可)。 次のような要件を満たす場合には、代諾許可が認められます。
- ①土地賃借権が存在すること
- ②借地人が所有する借地上の建物が存在すること
- ③借地人が地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合であること
また、建物とともに借地権も譲渡または転貸しようとする場合であること - ④地主の承諾がないこと
- ⑤地主に不利となるおそれがないこと
- ⑥一切の事情を考慮して許可をすることが妥当な場合
なお、裁判所の許可にあたり、借地条件の変更や財産上の給付を命ぜられる場合があります。
(1)借地権を譲渡したい場合
地主の承諾なく借地権を譲渡することができるかが問題となります。
地主の承諾なく借地権を譲渡すると行うと借地契約の解除原因となります。 地主の承諾が得られない場合、借地人は、裁判所に地主の承諾に代わる許可(代諾許可)を求める裁判を提起することができます。
なお、無断譲渡を理由に地主が契約を解除した場合、借地人から建物を譲り受けた譲受人は、地主に対して時価で建物を買い取ってくれるよう請求することができます(借地借家法14条)。
(2)名義書換料を請求された場合
借地人が転勤することになったので、建物を借地権付で譲渡する場合、地主は承諾料を要求することができるかが問題となります。
借地人が借地上に建てた建物は、当然借地人に所有権がありますが、借地人が自由に処分できるとは限りません。 借地上に建物が存在するためには、借地権が必要となります。 借地権がなければ、地主の土地を不法に占拠していることになり、地主から立ち退き請求を受けた場合には、建物を取り壊して出ていくしかなくなってしまいます。 そのため、借地上の建物と借地権は主物と従物の関係にあり、借地上の建物を譲渡すると借地権も一緒に譲渡したことになります。 したがって、借地上の建物を建物所有者が売りに出す場合、通常は、建物の敷地を使う権利である借地権付で譲渡することになります。
借地権付で建物を譲渡するには、敷地の所有者である地主の承諾が必要です。 この場合、地主は承諾する代わりに相当の金額を承諾料として要求するのが一般的です。 承諾料について法定された金額はないので、当事者の話し合いがつけば、どのような金額でも問題ありません。 ちなみに、転勤するため建物を譲渡しなければならないというような場合の承諾料としては、借地権価格の一割前後が相場と考えられています。 なお、借地人と地主の間で承諾料について話し合いがつかなければ裁判所に申し立て、譲渡する理由や譲受人の有無等諸般の事情を考慮した承諾料を決めてもらうことになります。
(3)借地(底地)の担保権が実行された場合
土地を借りたところ、抵当権者から担保権の実行を通知された場合、借地人は土地を明渡さなければならないかが問題となります。
借地に担保権が設定されていた場合、賃借契約と抵当権設定登記のどちらが先になされていたかという、先後関係によって借地人の権利義務が異なってきます。
- ①賃借の後に抵当権設定の登記がなされた場合
- この場合、借地人は担保権が実行されたとしても、借地を明渡す必要はなく、契約の存続期間中は抵当権に対抗することができます。
- ②賃借の前に抵当権設定の登記がなされていた場合
- この場合、担保権が実行されれば、借地人は6カ月間の明渡し猶予期間の間に、借地を明渡さなければなりません。 この場合に借地人が抵当権者に対抗するには、賃貸借の登記前のすべての抵当権者の同意を得ること、及び同意の登記が必要となります(民法389条)。
土地を借りる場合、借地人は事前に登記簿を見て、抵当権設定の有無を調べておくべきです。
(4)建物の担保権が実行された場合
借地人が借地上の建物を担保に入れ、その担保権が実行された場合、地主の承諾がなくとも建物の所有権は移転するのかどうかが問題となります。
借地上に賃借人が建てた建物については賃借人に所有権があるので、借地人はその建物を地主に相談なく担保に入れることができます。 しかし、担保権が実行されると所有権が移動します。 このように、建物の所有権を移転する譲渡担保の場合は、借地権の譲渡を伴うので、地主の承諾が必要となります。 地主の承諾が得られない場合、借地人は裁判所に地主の承諾に代わる許可の裁判の申立をすることになります。 裁判所で承諾に代わる許可の裁判がなされた場合、担保権の実行により所有権の移転を受けた新しい所有者は、借地人になることができます。