更新をめぐるトラブルと解決法
借家契約の更新に関して最も問題となるのは正当事由の判断です。家主の側から更新を拒絶するには、かなり厳しい条件が付されています。
■更新しない旨の合意
借家契約を締結する際には、多くの場合は貸す側の立場が強い系項にあるようです。そこで、家主の事情によっては、貸した建物が借家期間満了によって必ず返却されるように、契約書に「更新を認めない」などという条項(特約)を入れることがあります。
このような特約は、借家人に不利な特約として無効となります。これは、最初の存続期間が満了した後に、更新契約の際に「更新は今回に限る」という特約を付した場合でも同じです。
ただし、定期借家契約の場合は期間の満了で契約は終了し更新はありません。
■立退料の支払いと更新拒絶
正当事由の判断の際に、家主からの建物明渡しと引換えに借家権者に対して財産上の給付をする旨の申出が問題になることがあります。
ここでいう財産上の給付とは一般に言う立退き料のことですが、立退料を支払えば、それで更新を拒絶できるというものではありません。立退料の支払いは、あくまで補助的な正当事由の一要素に過ぎないからです。
■更新拒絶と裁判手続き
家主は更新を拒絶したいが、借家人は更新を認めてほしいという場合には、まず話し合うことが大切ですが、話合いがつかなければ、法的手続きによって解決するしか方法がありません。
結局は、家主が建物明渡しの調停あるいは訴訟を起こすことになります。
訴訟になった場合には、裁判所は家主に正当事由があるかどうかの判断をすることになります。
更新料を支払ってもらえない。
更新料を支払ってもらえない。
賃借人が賃貸人に対して更新料を支払わなかった場合の直接的な効果は、更新料を支払うことによって、当事者間による合意がなされ、更新が成立することが一般的になっていることを考えると、遡ったときに無効になると解釈ができます。
さらに、更新料の不払いが発生したときは、契約を更新すること自体が解除の原因となることは明らかであるといえます。このようなことになれば、法定更新に対する成否が改めて問題視されると考えられます。
約定更新料の不払が賃貸借契約の解除原因になるか。
約定更新料の不払が賃貸借契約の解除原因になるか。
賃貸借契約の解除に関しては、民法541条の規定によるものであるとされていますが、判例では更に、無断転貸や賃料不払、用法違反、保管義務違反等、解除原因になり得ることがあったとしても、賃貸人に対する背信行為にあたらない段階であるときは、賃貸人は賃借人に対して、契約の解除を行うことは難しいとされる一方で、賃借人の義務違反によって、賃貸借契約の継続が著しく困難となる行為が行われたときは、無催告で解除することが認められているのです。賃貸借契約上で債務不履行に当たらなかったとしても、賃借人に賃貸借契約に基づいて信義則上要求される義務に反する行為を一種の債務不履行として、解除権の発生原因となり得ることを認めるものであるということができます。
更新時の敷金の追加を要求された。
更新時の敷金の追加を要求された。
敷金とは、不動産の賃貸借契約において、賃借人が家賃の滞納や備品の破損などの債務不履行が生じた際の担保として、賃貸人に対して交付される金銭のことをいいます。(同じような趣旨の金銭で、保証金と言われるものもありますが、保証金についての規定は民法の中では、定められていません。ちなみに、敷金については、民法619条2項などに規定が定められています。)
そして、賃貸借契約が終了した後に、賃貸人は、家賃の滞納や備品の破損など、賃貸借に対する債務を敷金から差し引き、敷金から債務にかかった費用を差し引いた残りの残額を賃借人に返還するということになります。
賃貸借契約中に敷金返還請求権を他の第三者に差し押さえられたとしても、賃貸借契約が終了するまでは、賃貸人が敷金を預かっておくことも可能ですし、また、契約が終了したとしても賃借人の債務分を回収後の残額が差押えの対象になるに過ぎず、敷金に関しては、賃貸人が優先して返済してもらうことができます。
さらに、敷金は賃貸借契約時に前もって預かることができる担保なので、連帯保証と比べると、確実性のある回収方法であるといえます。
そこで、更新にともない、敷金の不足分として別途金銭を要求された場合に支払わなければならないのかということになります。
まず、敷金の増額についてですが、このようなときはまず契約書を確認します。契約書の中に敷金の増額に関する特約が記載されている場合、必ずしも法律的に問題がないとはいえませんが、「更新時に敷金を増額する」や「敷金は、更新時に賃料が改定された際に、新賃料の○か月分とする」など、特約の内容によっては、有効となることもあり得るので、そのときは大家さんの提示額に従うことになります。
それに対して、特約がない場合、敷金不足分の請求には理由はないと考えられるので、法律的には敷金の追加に応じる義務はないと言えます。
なぜかといいますと、「家賃」の値上げに関しては、旧借家法7条や新借地借家法32条に法律的な規定として定められていますが、「敷金」の値上げに関しては法律的な規定がないのです。
ただし、法律論でのみ考えるのではなく、大家さん側にも何かしらの主張があるのかもしれません。
家賃が毎更新ごとに値上げされるにも関わらず、敷金が変わらないということであれば、保証されている分で支払うことが出来る不払い分(例えば、家賃2か月分が敷金であれば、家賃2か月は不払いであっても回収が可能ですが、更新後に家賃が値上がりしたにも関わらず、貸主が預っている敷金はもとの家賃2か月分なので不払い2か月分の保証さえなく、貸主側としては不安になってしまう。)が減ってしまいます。
つまり、大家さんは安心を得るという目的のために敷金を値上げしたいと考えていることもあります。
賃借物を賃貸借する上で、大家さんとの信頼関係を良好に保ちたいのであれば、特に特約がなかったとしても、高額に増えるということでない限り、敷金の追加に応じることもよいと考えます。
契約更新をしたければ1㎡当たりの時価10万円の10%の更新料を払ってほしいと言ってきました。
昭和40年代に、期間30年で土地を借地してソバ屋を開業しています。ところが、最近、地主から契約期間が満了するので、契約更新をしたければ1㎡当たりの時価10万円の10%の更新料を払ってほしいと言ってきました。この更新料は必ず支払わなければならないのでしょうか。
今回の場合、昭和40年代からの契約なので借地法が適用されます。借地法では、契約期間が満了するに伴い、更新料を支払って契約の更新をするという制度はなく、地主側が更新を拒絶する正当な事由がないときは、同一条件で契約の更新を行うことになっています。ただし、借地契約は何十年にも及ぶ継続的な関係なので、地主との間を円満に保つために、借主から地主に更新料が支払われる場合もあります。更新料が納得いく額であれば支払ってもよいと思う場合、金額について地主と協議を重ねるとよいでしょう。その際、たとえ折り合いがつかなくても契約を解除されることはありません。
定期借家での更新
現在住んでいる家の契約を更新したいと考え、家主にその旨を伝えると「定期借家だから更新はできない」と言われました。契約書は確かに、定期借家契約となっており、「期間満了後は、直ちに家を明け渡す」と書かれていました。本当に更新はできないのでしょうか。
一般的に、家主は正当な事由がない限り、借家契約の更新を拒めません。定期借家契約は、その例外です。定期借家契約の場合、借家人は契約期間満了後に借家の明け渡しが義務付けられており、契約の更新は原則できません。ただし、契約書のタイトルや内容が「定期借家契約」となっていても、それだけでは定期借家契約とは認められず、法律で定められた要件と立ち退き請求の手続きが必要になります。 まず法律上の要件としては、公正証書等による書面で契約をすること、契約前に更新のない契約であることを家主が借家人に書面を交付して説明すること、が挙げられます。定期借家である旨の説明をしない場合には、「更新がないこととする」という定めは無効になります。 次に立ち退き請求の手続きですが、契約期間が1年以上ある場合、家主は期間満了の1年前から6カ月前までの間に、借家人に対して「契約期間満了により建物の借家契約は終了する」ことを通知しなければなりません。その通知を通知期間内にしなかった場合、契約の終了を借家人に対抗できません。なお、通知期間経過後でも家主がこの旨の通知をすれば、借家人に通知が届いてから6カ月経過すると、借家契約終了の効果が生じます。
契約更新日の日割家賃
契約更新の日に鍵を渡したのに日割家賃を請求された。払わなければいけないのか。
家賃は、部屋の引渡しが完了するまで発生します。 部屋の引渡しが完了したと言えるには、第1に借主が持ち込んだ家財道具などをすべて搬出し、部屋を完全に空っぽの状態にします。ただし、入居時に元から置かれていたものに関しては、そのまま置いておきます。 第2に部屋が空っぽの状態であることを不動産会社もしくは大家さんの立ち会いで確認をしてもらいます。 第3に大家さんあるいは不動産会社に直接鍵の返却をします。 この3つの条件が完了した時点で引渡しが完了したと言えるようになります。 また、敷金については、鍵の返却と引き換えに返還されることもありますが、多くの場合は、引き渡し後一定の期間が経った頃に返還されると契約書に記載されています。 ちなみに敷金とは、不動産の賃貸借契約において、賃借人が家賃の滞納や備品の破損などの債務不履行が生じた際に担保となるもので、賃貸人に対して交付される金銭を指します。(同じような趣旨の金銭で、保証金と言われるものもありますが、保証金についての規定は民法の中では、定められていません。ちなみに、敷金については、民法619条2項などに規定が定められています。) 賃貸借契約が終了した後に、賃貸人は、賃貸借に対する債務を敷金から差し引き、敷金から債務を引いた残りの残額が賃借人に返還されることになっています。もしも、賃貸借契約中に敷金返還請求権を他の第三者に差し押さえられたとしても、賃貸借契約が終了するまでは、賃貸人が預かっておくことも可能ですし、契約が終了したとしても賃借人の債務分を回収後の残額が差押えの対象になるに過ぎず、敷金に関しては、賃貸人が優先して返済してもらうことができます。 さらに、敷金は賃貸借契約時に前もって預かることができる担保なので、連帯保証と比べると、確実性のある回収方法であるといえます。 つまり、部屋の引き渡しは、借主の一方的な判断で出来るわけではなく、貸主側との双方が確認をすることで完了になるので、お互いの協力が必要になります。 もしも、借主は引渡しを完了したつもりでも、不動産会社や大家さんが確認をしていない場合は、日割家賃が発生し、請求された際は支払わなければならないので注意が必要です。 双方間における契約書などの中で、特約として結んでいなければ、更新料は発生せず、借主に支払う義務はないです。よって、借主・貸主双方が一定の金額を定め、借主が支払うことで、お互いの信頼関係を維持することが出来ます。更新料については多くの契約書で取決めがあり、家賃1か月分前後の更新料を契約更新の際に支払うことになります。 また、更新日よりも前に解約したならば、更新料を支払う必要がないかというと、必ずしもそうとは言えず、契約書の中で、「契約満了1か月前までに借主・貸主双方のどちらからも契約解除の申し入れがなされなければ、契約を更新とする」などの自動更新に関する特約が記載されていれば、更新解除の申し入れが満了1か月未満であれば、更新料が発生し、支払うことになります。 さらに更新後の契約では、貸主側の好意によって、借主側による一方的な解約権が認められる条項が定められていることもあります。その場合、借主は契約期間の途中で解約することができます。 しかし、契約書にそのような条項の記載がない場合には、途中解約は出来ず、更新の際に定められた契約期間内は借り続けることになります。 ただし、更新料の支払いがなく、さらに更新契約書の交換がない状態で自動更新された場合は、期間の定めがないことになり、いつでも借主から解約を申し出ることが可能になります。