仲介業者とのトラブルfor sale

不親切な仲介業者とトラブルになってしまった…

準委任契約

「仲介」は「媒介」の表現を用いることもあり、不動産取引では、売買契約の当事者間で契約成立を取り持つことを言います。「仲介契約」は、不動産を売買したい人が業者に仲介を委託し、業者が受託する契約で、法律行為ではない事務を委託する「準委任契約」に属します。この準委任契約は、民法上の「委任」の規定が適用され、受任者(=仲介業者)は「善管注意義務」を負います。善管注意義務とは、善良な管理者の注意を持って委任事務を処理する義務です。善良な管理者の注意は、受任者の職業や地位、知識において一般的に要求される平均人の注意です。常識的な範囲の注意といえるでしょう。

そして、不動産取引の仲介は、国土交通大臣か都道府県知事の免許なしでは行えません。公的免許を受けた専門家である以上、高度な善管注意を要求されます。この注意レベルは、委任者が非宅建業者であっても宅建業者であっても同じです。宅建業法は、非宅建業者が業として不動産取引の仲介をすることを禁じています。判例では、仲介業者の善管注意の内容は「売買契約が支障なく履行され、当事者双方がその契約初期の目的を達することができるよう配慮して、仲介事務を処理」することだとされています。

具体的に仲介業者が求められるのは、売買目的物に関する権利調査▽本人確認や本人の権限の調査▽取引相場の調査▽契約書案の作成などです。

国土交通省が告示する「専任媒介契約約款」は、仲介業者に履行義務がある事項として「契約の相手方を探索するとともに、相手方との契約条件の調整等を行い、契約成立に向けて積極的に努力すること」と規定しています。仲介業者は、売り主が提供する情報だけに頼らず、自らの通常の注意を尽くせば確認できる範囲で、外観や内観を調べて欠陥の有無を調べ、その調査結果を買い主に正確に伝える契約上の義務を負います。

第三者への注意義務

仲介業者は仲介契約の相手方とのとの間で契約上の責任を負いますが、第三者との間では契約上の責任を負いません。委託関係があればそれに伴う責任が生じますが、委託関係がなければ責任は生じません。しかし、第三者が一般消費者なら、その信頼も法的に保護されなければなりません。従って、仲介業者は、仲介契約を結んでいない(委託関係がない)第三者に対しても信義誠実を旨とする「一般的注意義務」があるとされます。

上述したように、依頼者と仲介業者の間で結ばれる仲介契約は「準委任契約」です。この契約において、仲介業者が説明義務違反をしたことで、依頼者に損害が発生した場合は依頼者に対する債務不履行により賠償義務が生じます。一方で、委任契約の関係にない第三者に対しては、不法行為による損害賠償義務が発生する場合があります。

説明業務

宅建業法は、趣旨として「取引の公正を確保し、購入者等の利益保護を図ることを目的に制定された」としており、業務上の原則として「宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし誠実にその業務を行わなければならない」としています。具体的に「重要事項の説明」などの業務上の義務や、「誇大広告」などの禁止事項を定めています。こうした規定は、行政目的の意味合いだけでなく、民事上の注意義務も課すものです。仲介業者に法律に反する行為があった場合は民事上の賠償義務を負うことになるのです。もちろん、仲介手数料が低額過ぎたなどの事情があったとしても、注意義務が料金に比例して軽減されるものではありません。

重要事項の説明義務は、業者の信義誠実義務を具体化するものとして、取引の相手方に土地や建物に関し、売買(又は貸借、交換)契約が成立するまでに、取引主任者をして、法定の重要事項を書面交付により説明させなければならない義務です。この説明義務の対象は、民事上は宅建業法35条の列挙事項に限定されません。同条の列挙事項は「例示列挙」なのです。

例えば、判例は、根抵当権の設定登記の説明について賃貸借契約締結時に限らず更新契約の際にも説明義務があると認定しています。

海外不動産

宅建業法上の「宅地」は国内の土地を意味しますので、海外の土地は含みません。このため、重要事項の説明義務は海外不動産には適用されません。しかし、日本の仲介業者が海外物件を扱う場合がないわけではないため、民事上は海外不動産を扱う場合も善管注意義務を負います。判例も、海外不動産の売買で過失による誤認により買い主に損害を発生させたとして、仲介業者の損害賠償責任を認めたケースがあります。

契約締結

仲介業者は不動産取引の仲介契約を結んだ時は、遅滞なく規定事項を記した書面を作成して記名・押印し、依頼者に交付する必要があります。宅建業法上のルールです。作成書面については、国土交通省が「標準媒介契約書」と「標準媒介契約約款」を定めています。

また、仲介業者は不動産の価額について意見を述べる場合は根拠を明らかにしなければなりません。上記約款も「媒介価額の決定に際し、依頼者にその価額に関する意見を述べる時は、根拠を示して説明を行うこと」と定めています。ある裁判例は、依頼者が仲介業者に評価額の算定根拠を告知する義務を果たさなかった違反行為があったと主張したケースで「査定報告書で告知されており、評価額に客観的な合理性が認められる」として依頼者の訴えを退けています。

なお、仲介契約締結に伴う「特約」も契約内容ですが、特約が明示的な合意となっていないことも少なくなく、合意を否定した判例もあります。

説明義務の範囲

宅建業者は、不動産の購入検討者に対し、購入するかどうかの判断や売買代金を決めるに当たり重大な影響を及ぼす事項について説明をしなければなりません。その説明義務対象は民事上、宅建業法35条の列挙事項に限られません。過去の多くの裁判例が、同条について非限定列挙とする判断を示しています。

ただ、宅建業者といえども、あらゆる物理的な専門性のある事項まで調査能力を備えているわけではありません。こうした事項については、通常の注意で確認できた状態を説明すれば足ります。判例は、宅建業者に対し、取引される不動産の「隠れた瑕疵」に関する専門家的な調査や鑑定能力まで求めることはできないとしています。

認識可能性

仲介業者に説明義務違反がある場合は「契約責任」又は「不法行為責任」が生じますが、いずれも過失責任です。このため、業者の責任を問うには、説明事項を認識していたり、認識できた可能性があったりしたことが必要とされます。実際、仲介業者が説明事項を認識しておらず、認識することも困難だったとして責任を否定した裁判例もあります。

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