間違えた・騙されたfor sale

知識が浅いところを突かれ、詐欺と感じるほど不当な契約だった

錯誤

民法に基づき、人がする意思表示は「法律上の錯誤」があった場合は無効となります。法律上の錯誤は、表示行為から推測される意思と意思表示した人の真実の意思に食い違いがあり、その人がその食い違いに気づいていない状態を示します。逆に食い違いに気づいている場合は、民法の別の概念である「心裡留保」や「虚偽表示」に関わる問題となります。
この「法律上の錯誤」に当たるとしても、全ての場合に意思表示が無効となるわけではありません。無効となるのは、その錯誤がなければ意思表示が行われなかったような重大な瑕疵があると定義される「要素の錯誤」があった場合です。

また、錯誤は<1>「動機の錯誤」と<2>「表示行為の錯誤」の2種類に分けられます。<1>は、意思と表示が一致しているのに、動機の時点で勘違いがあった場合です。ある人が購入した土地の地中に産業廃棄物が埋まっていたとします。購入者は「土地を買いたい」と意思表示しているものの、産業廃棄物が埋まっていることが分かっていたら買おうと思っていなかったはずです。こうしたケースは動機の錯誤に当たります。<2>はさらに<2-1>「内容の錯誤」と<2-2>「表示上の錯誤」の2種類に分けられます。<2-1>は表示行為の意味内容を誤ることで、例えば、保証債務と連帯債務を同一のものと誤解し、保証人になるつもりだったのが連帯保証人になることを承諾したというようなケースです。<2-2>は書き間違えや言い間違いのようなケースです。
<1>は原則として無効になりませんが、動機が示されていれば、無効になります。<2>は表示行為に要素の錯誤があれば、<2-1>も<2-2>も無効になります。ただ、裁判所が「錯誤無効の主張」を認めるケースは決して多いとは言えません。また、仮に錯誤無効が成立しても、意思表示した人が「追認」すれば、有効となります。
意思表示者が「錯誤無効」の主張と瑕疵担保責任など「他の法律上の主張」を同時にした場合、裁判所はどちらを優先して判断するのかという問題もあります。
かつては、まず錯誤について判断し、錯誤に当たらないとした場合に瑕疵担保責任に当たるかどうかを判断するとした裁判例が多かったのですが、近年はそうとも限りません。「瑕疵担保責任としての契約解除・損害賠償請求が認められる以上、消費者契約法による取消、錯誤無効又は詐欺取消を理由とする原状回復請求権の成否については検討するまでもない」として、先に瑕疵担保責任について判断した例もありますし、「消費者契約法違反(不利益事実の不告知)に該当するとして契約を取り消すことができる」として錯誤の主張について判断しなかった例もあります。
上述したように、「動機の錯誤」は原則として無効になりませんが、動機が表示されれば無効になります。動機の表示は黙示でもよいとされます。つまり、直接の発言でなくても、別の発言で暗に意思表示したと判断されるような場合です。「動機が表示されたか否か」が裁判上の争点となる場合もあります。

また、錯誤のうち、無効となる「要素の錯誤」については、「動機に錯誤があったとしても、通常人にあればその意思表示をしなかったであろうと考えられるほどに重要な部分についての錯誤があったとは認められない」として錯誤無効を否定した判例があります。また、「売買目的物の性状について買い主の認識と客観的な性状との間に齟齬があり、そのため売買契約が錯誤により無効というためには、客観的にみて、買い主において売買の目的を達することができないほどに右齟齬が重大で、公平の観点からして、そのまま売買契約を有効とすることが相当でないといえる程度のものであることが必要であるというべきで、右の程度に至らないものについては、売り主に対して瑕疵担保責任を追及することができるにしても、売買契約自体を無効とすることはできない」とした判例もあります。
要素の錯誤がある場合に意思表示が無効となるのは、意思表示した人の保護を取引の安全より重視するためです。ただ、意思表示した人が著しく注意を欠いていた場合(重過失)は保護対象とはならず、無効を主張できないとされています。この重過失に当たるかどうかは、意思表示した人の職業や行為態様などから総合的に判断されます。

詐欺

民法において詐欺は「人を欺罔して錯誤に陥らせる行為」と定義され、詐欺による意思表示は取り消せます。詐欺の構成要件は<1>欺罔行為<2>意思表示した相手方の錯誤<3>故意の3つです。

<1>は「虚偽の事実を告げる行為」をいい、原則として積極的な告知が必要です。例えば、土地を購入後に近隣に暴力団事務所があることを知った事案で、売り主が事前に積極的に告知しなかったことについて「土地の売買に当たって、本件土地の近隣に暴力団事務所が存在するかという点が話題になった事実が認められず、欺罔行為に当たらない」と詐欺を否定した判例があります。
ただ、いかなる場合も積極的な告知が必要というわけではありません。錯誤状態になっていた相手方に、事実と認識に齟齬があると知らせる義務がある人がこれを怠った場合は「沈黙していたこと」も欺罔になり得ます。判例でも「宅地建物取引業者である売り主は、信義則上、買い主に右法律による制限のある事実を告知し、それを知らしめる義務があるというべきであるのに、ことさら、沈黙して右事実を告知せず、買い主との間で本件売買契約の締結に及び、これにより、本件各土地上には右のような制限がない状態で別荘を建築することができるものとの誤信を解くこともなく、買い主に本件各土地を買い受ける旨の意思表示をさせたものであり、買い主の本件買い受けの意思表示は、売り主の詐欺によるものということができる」としたケースがあります。<2>は、相手方に客観的事実と主観的認識との食い違いが生じていることをいいます。この「食い違い」=「錯誤」がなければ、欺罔行為の成立を判断するまでもなく、詐欺は成り立ちません。また、欺罔行為と錯誤の間に「因果関係」があることも必要です。<3>の故意は「だます故意」と「意思表示させる故意」の2段階の故意がいります。

詐欺の効果は「取消が可能になる」ということで、意思表示した人は行為を取り消すかどうかを選択できます。民法により、取り消された行為は最初から無効だったことになります。これを「遡及的無効」ともいいます。また、契約が取り消された場合は、無効の場合と同様、売り主から買い主に交付済みの目的物は不当利得に当たるとして返還されます。逆に、売り主が買い主から売買代金を受領済みであれば、返還しなければなりません。もし、詐欺によって損害を受けた場合は、故意に権利を侵害されたことになりますから、不法行為による損害賠償を請求できます。
不動産取引を巡り、詐欺行為に当たるかどうかが争われた裁判は多くあります。売買代金が高額に上るだけに、犯罪グループが暗躍しますから、十分な注意が必要です。

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