第4章 快適な「住み替え先」の見つけ方

実際、転居先を見つけて引越しするとなるとそれなりの体力と時間を要するため、60歳前後から少しずつ始めたほうがよい。
では具体的に、「老後の住処」として、どのような住まいがよいのだろうか。
ここでは、「ゆとりある幸せな老後の生活」という観点から、「老後の住処」となる住み替え先について紹介していきたい。
実際に、一戸建てから「老後の住処」への住み替えにあたっては、マンション購入か、老人ホーム・介護施設への入所かのいずれかを検討することになる。ここでいう老人ホーム・介護施設というのは、「特別養護老人ホーム」(特養)、「有料老人ホーム」、「軽費老人ホーム」、「ケアハウス」、「グループホーム」、「サービス付き高齢者住宅(サ高住)」などを指す。
まずは、一戸建てからマンションへの住み替えについて見ていきたい。

マンションに住むメリット

マンションを購入するメリットは何かと問うと、多くの人が「利便性」と答えるだろう。
特に都市部に近いマンションであれば、駅から近い場所に立地することが多く、交通や買い物などに便利で、趣味を充実させる施設にも近く、生活が豊かにかつ楽にできることが大きな魅力といえる。
また、特に日本の新築マンションは、耐久性、耐震性、バリアフリー、セキュリティ、省エネなどに優れていて、設備機能も最先端。室内もフラットなワンフロアで移動しやすい。世界でもトップクラス水準といってよいだろう。
老後の生活において介護施設に移ることも考えられる。その時には新たな資金が必要になるが、この点でも、マンションは適している。なぜなら、マンションは一戸建てに比べて市場での流動性が高く、売り抜きやすいからである。

ただ、その際、立地が重要となる。マンションの価値は立地に左右される。「都市再生特別措置法」の改正で、国は一定のエリアに都市機能を集約させ、その周辺を居住区域として指定している。高齢化を見据えて居住区域の線引きを始めた自治体も多い。その区域内であれば税制面などの優遇もあり有利だといえるが、そうでなければ、今後、利便性や資産価値が落ちていく可能性がある。立地は、生活基盤を決める重要な要素。慎重な検討が必要である。
また、マンションを選ぶにあたって管理会社の管理の質やサービスの多様化も問われるようになってきた。
マンション生活では管理組合が毎月、管理費と修繕積立金を集めている。これらがどのように使われ、積み立てられているのかにも関心を持つことが大切だ。
建物などの管理は契約する管理会社に委託しているケースがほとんどである。そのため、つい他人事のように思われがちだが、マンションを管理する主体は、区分所有者全員で構成する管理組合である。そのため、そのマンションではどの管理会社に管理を委託し、どのような管理をしてもらっているのか、契約内容についても確認しておくことが重要だ。

定期的に開催される管理組合の総会に出席すれば、管理費の収支の内容や、翌年度の予算・支出計画などもわかる。一人ひとりがそれらに関心を持ち、気になることがあれば質問し、見直したりすることで、管理や建物の質が適切に保たれる。

有名な広尾ガーデンヒルズは、1984年から1986年にかけて販売された大規模マンション。現在でも価格は落ちず、中古市場でも人気を博している。このマンションが高く評価されている理由の一つが、管理体制である。全国ナンバーワンともいわれている。ともかく、管理体制がしっかりしていることは、立地の次に重要だ。

新築マンションでは、保育室やスポーツジム、ゲストルームなどが完備され、共用施設が充実したところも増えているが、最近では、そうした共用施設だけでなく、居住者の生活面でのサポートに管理会社のサービスが広がっている。例えば、住まいを快適にするためのリフォームやハウスクリーニングの手配、家事代行や高齢者見守りサービスなど、その内容は幅広く多岐にわたっている。
マンション選びにあたっては、このようなサービスについても注目すると、老後の生活がより快適になるだろう。

マンションの選び方、見分け方のポイント

マンション選びにおいてチェックするポイントは多数あるが、基本的なことは、後から自力で変えられないものを、まずチェックするということに尽きる。万一思い通りでないと分かったときに、変えることが容易なら不満を解消できるが、変えられない場合は不満を持ちながら生活することになり、ストレスがたまる。
では、後から変えることができないものとは何か。次の7つが考えられる。

  • ・マンションの立地・周辺環境
  • ・マンションの規模
  • ・マンションの基本構造
  • ・マンション管理レベル
  • ・室内の広さ、高さなどの空間の広がり
  • ・室内の向き、窓の位置や大きさなど通風・採光
  • ・室内からの眺望(窓からの見通し)

マンションの立地や規模、基本的な構造を変えることはできない。室内でも、空間のサイズや窓の向き・位置、窓からの眺めは変えることができない。こうした点は決して見逃してはいけない。
マンションに長く快適に暮らすには、基本的な構造が重要で、それらには、次の三つの条件がある。

第一に、基本構造が丈夫で長持ちすること。つまり耐久性だ。マンションの構造の多くは、鉄筋コンクリート造りだ。鉄は錆びると劣化し耐久性に影響があるので、鉄筋の酸化をアルカリ性のコンクリートで厚く覆うことで補強している。
新築マンションであれば、モデルルームを見学する際に、設計上どのような構造になっているのか、コンクリートの密度や厚みはどの程度なのかを確認することができる。一方、中古マンションの場合は、新築時の資料を見れば確認することができるが、劣化が進んでいれば、外壁に大きなひび割れが生じたり、鉄の錆びが染み出て色染みがあったりする。これらの外観チェックを怠ってはいけない。

第二に更新性だ。マンションの構造が頑丈で長く持ったとしても、給配水管やガス管などの配管類が同じだけ長持ちしないと快適に暮らせない。配管の種類にもよるが、交換の目安は20年から30年というものが多い。したがって、定期的な点検や補修、交換の作業がどうなっているのかもチェックすべきだ。

第三は可変性だ。つまりリフォームのしやすさである。水回りであるキッチンや浴室、洗面所などの床下は、基本的に二重床になっている。コンクリートの床とフローリングの床の間の空間に配管を通すことで点検や交換の作業がしやすく、その空間内であれば移動も可能なのでリフォームしやすいといえる。天井も二重天井となっていれば照明器具の位置も変えやすくなる。
かなり古いマンションでは、床が二重構造になっていない場合もある。この場合、リフォームに制約が生じたり、配管類の点検・補修が難しいといった問題が生じたりする可能性がある。
耐震性は、1981年6月以降の「新耐震基準」が安心の目安といわれている。最近では制振や免震といった地震の揺れを抑え、吸収する工法が登場し、タワーマンションなどで採用されている。

最後に新築マンションを購入する場合のモデルルームの見方や、中古マンションを購入する場合の情報収集に参考となるチェックポイントを挙げるので参考にしてほしい。

  • ・周辺の建物との位置関係
  • ・構造部分の床や壁の厚さ
  • ・天井や床の構造
  • ・給配水管の構造や遮音対策
  • ・基礎部分の耐震対策
  • ・サッシの省エネ性・遮音性対策
  • ・フローリングの遮音対策
  • ・セキュリティ対策

新築か中古か築年数以外にも違いが多い

「最初に住むのは自分たちでありたい」「最新の工法や住宅設備が導入されていると安心する」という人は新築が向いているだろう。
ただし、新築と中古の違いは、単に築年数によるものだけではない。最大の違いは、もちろん価格。例外はあるものの、同程度の条件であれば、築年数に応じて価格は下がるのが一般的だ。中古は価格が下がる分だけ、同じ予算でより駅に近いマンションや、広いマンションを買うことができ、リフォーム費用と合わせても新築より費用を抑えることができるといったメリットがある。

マンションの探し方にも違いが生じる。新築はまとまった住居が集中的に販売されるが、中古は個人の事情で所有する住居を売り出すため、分散して中古市場に出回る。物件ごとの情報量や入居のタイミング、物件のチェック方法も違ってきくるので、あらかじめ違いを理解しておくと効率的に探せるだろう。

さらに、中古マンションの場合は、同じ築年数でも管理の状況によっては、建物の状態に違いが生じる。実物を確認できるのが中古マンションの強みであるので、個々のマンションをしっかり自分の目で確認し、心配ならば専門家に相談することが重要となる。
最近では、リノベーション済みの中古マンションを販売する不動産会社も多く存在する。不動産会社が物件をチェックし、必要な改修をしたうえで販売するので、こうしたものも選択肢となるだろう。

新築マンションと中古マンションの比較

  新築マンション 中古マンション
価格・費用 価格は中古より高い傾向 価格は新築より安い傾向
リフォームが必要な場合あり
選びやすさ 一度にまとまった数の住戸を販売するため、住戸の選択肢は多いが、供給が不規則でタイミングが難しい 1住戸ごとに売りだされ、住戸の選択肢は少なく、出たもの勝負
物件ごとの情報量 大型広告などで情報入手は可能 情報量は少ないので、不動産会社を通じて情報を集めることになる
入居時期 完成済みの場合を除き、入居までに時間を要する スピーディーに入居が可能
物件チェック 完成済みの場合を除き、モデルルームなどでチェック可能 実際の住戸を確認できる。管理状態や管理規約まで確認が可能
構造 耐震性、耐久性、バリアフリー、リフォームのし易さなど配慮あり 築年が古いと、リフォームが難しい物件もあり
間取り・設備 人気の間取りや最新設備が採用されている リフォームで改装することも可能
管理組合・入居者 同時期に入居するので仲良くなり易い 管理組合の活動が分かる

管理会社の管理の質もチェック

マンションの共用部分を管理するのは管理組合であり、理事会や理事長が代表して管理を担当するが、日常の管理業務は管理会社に委託するケースが大半だ。管理会社は管理組合との間で委託契約を結び、委託された管理業務を行う。その業務内容は多岐にわたるが、国土交通省のマンション標準管理委託契約書によると、「事務管理業務」「管理員業務」「清掃業務」「建物・設備管理業務」の四つに分類される。

事務管理業務というのは、管理組合の会計や出納などのことである。管理組合の理事会は総会で収支状況や決算状況の報告を行う。実際には管理会社が会計業務や予算・決算案を作成するケースが一般的だ。また管理費や修繕積立金の滞納を防ぐため、催促するのも管理会社の仕事である。
管理会社が派遣して、受付などをするのが管理員業務である。宅配便の預かりや共用施設の予約の受理、外注業者の業務の立会いなど、その仕事内容は様々だ。最近は管理員とは別に、受付を専門とするコンシェルジュのいるマンションも増えてきた。
清掃業務のうち、床の簡単な掃除やゴミ集積所の清掃などの日常清掃は、管理員が行う場合がある。床の洗浄やワックス仕上げなど大がかり清掃業務は管理会社の清掃スタッフや専門業者に委託するケースが一般的だ。
また、建物や設備の点検や検査を行うのが、建物・設備管理業務である。

大規模か小規模か

近年増えているのが、再開発に伴う大規模なマンション。特に、都市部では、20階を超えるタワーマンションも多く販売されている。200戸を超えるような大規模マンションと小・中規模マンションでは、そこでの暮らしのあり方も違ってくる。
大規模マンションでは管理組合の総会が開けるような集会所も必要となるうえ、大型キッチンやカラオケを備えた専用ルーム、入居者の関係者が宿泊できるゲストルームなど多様な共用施設を設けているマンションも見られる。

日中は管理員、夜間は警備員が24時間体制で常駐できるのも大規模ならではのこと。費用を戸数で割れば、1戸当たりの負担はそれほど大きくならないからだ。一方、小・中規模マンションには、居住者の顔がわかりやすく、コミュニティを形成しやすいなどの特徴がある。どちらを選ぶかは、住む人の好みによるので、どういった老後の暮らしがしたいのかじっくり検討してから決めるべきだろう。

もちろん、購入せずに借りることも選択肢の一つだ。その際、購入と賃貸との違いに留意したい。住み替えのしやすさと住居費の柔軟性、資産価値の有無などの違いがあるが、長期的な老後のライフプランやマネープランを考えて判断するとよい。

管理会社によるサービスの充実

マンション管理を請け負う管理会社では、管理組合の運営をサポートするほか、居住者に向けて、マンション生活を快適に暮らしやすくするための様々なサービス、サポートを提供している。特に最近は、シニア向けのサポートを強化している会社が増えている。管理会社のホームページ、情報誌などをチェックしてみてほしい。

例えば、給湯器などの設備の故障で困った時や、換気扇・エアコンなどの掃除、衣類のクリーニングや家事代行などは、居住者専用の電話窓口などで受け付け、提携業者を手配してくれるところもある。照明の電球交換や、ちょっとした家具の移動を手伝うなど、痒いところに手の届くサービスを実施している会社もある。費用は依頼内容で異なるが、通常よりも割安な場合が多く、簡単な駆けつけ対応ならば一定の範囲まで無償とする会社もあるようだ。
管理会社によっては、さらに福祉用具の貸し出しや、携帯端末による見守り、訪問介護サービス、看取りサービス、葬儀・遺品整理・納棺サービスなど提供しているところもある。
住み替えでマンションを購入する際には、管理会社のサービスの充実度は一つの判断基準になるのではないだろうか。

購入時に必要な諸費用と税金

マンションを購入する際に諸費用がかかると説明したが、それらはそれぞれ支払うタイミングが異なる。売買契約時に支払う必要があるもの、登記手続き時に支払う必要があるもの、入居後に支払う必要があるものとおおよそ三つに分かれる。

まず、購入するマンションを決めて売買契約を結ぶ際に、大きな金額が動くことになる。契約時には手付金として物件価格の1割程度を支払うからだ。通常は数百万という額を現金で用意することになるので、慌てなくてもよいように準備しとくことが大切だ。
また、売買契約書に収入印紙を貼って印紙税を納めるために、数万円の印紙代が必要となる。中古マンションの場合は、不動産会社に仲介手数料(物件価格の3%+6万円と消費税)を支払うが、契約時にその半額を支払うことが多いので、その分の現金も用意する必要がある。

最も諸費用がかかるのが、物件価格の全額を支払い、物件を引き渡してもらうときである。引き渡し時には、頭金(手付金を除く)や諸費用も支払う必要があるので、かなりの金額が動く。計画的に資金を用意することが大切だ。
引き渡しが終わった後も不動産取得税や翌年以降の固定資産税・都市計画税がかかる。それぞれどの程度かかるかは不動産会社に確認するとよいだろう。

マンション購入では、様々な税金がかかるが、居住目的のマイホームについては、税金を軽減する措置も用意されている。印紙税の軽減措置や、固定資産税の軽減措置などがあるが、住宅などに一定の条件が付いている場合もあるので、適用されるかどうかは個別に確認する必要がある。

マンション購入のステップ

マンション購入のステップをまとめてみると、およそ次のようになる。

予算を立てる
物件情報を収集して希望条件を整理する
新築:見学し物件を選ぶ、中古:不動産会社を選んで、希望条件を伝えて物件探しを依頼する(媒介契約)
現地見学に行く
物件を決めて購入を申し込む
契約前に最終確認して売買契約を結ぶ
住宅ローンの契約を結ぶ
引き渡しを受けて入居する

十分に確認して納得のうえでマンションを購入したいのなら、購入プロセスの全体像を把握すべきだ。大きく分けて、購入マンションを決めるまでの検討時期と、実際に購入するまでの最終確認時期に分かれる。どちらも大切だが、後半戦が不動産会社のリーダーシップで進むのに対し、前半戦は自分の判断力がものをいうので、やるべきステップを理解しておく必要がある。
まずは、マンションを購入する目的や必要な時期、希望条件を明確にし、おおよその予算を立てる。市場にどういったマンションが売り出されているのか、相場や傾向を知ることも大切。高額マンションほど、立地がよかったり、仕様や設備のグレードが高かったりするので、漠然と見ているだけでは目移りして希望条件だけが増えてしまう。そこで、どのようなポイントに着目して物件を選ぶか優先順位をつけておくことが重要になる。

また、新築と中古では物件の探し方が違う点も注意すべきだ。
新築の場合は物件ありき、中古の場合は営業担当者ありきといわれている。新築なら、気になるマンションを個々に見学して販売する不動産会社から情報を得ることになる。一方、中古の場合は不動産会社選びを先にすることがおすすめだ。希望のエリアの情報を多く持っている複数の不動産会社に物件探しを依頼し、最も信頼できる担当者を絞り込んで相談しながら物件を探すことが効率的だ。

物件探しで気に入った物件が見つかれば、実際に現地に行って見学する。複数のマンションを見学することで比較検討ができるので、できれば5~6物件は見学することをおすすめする。
情報収集や現地見学をしていく途中で、気づかなかった情報を入手し、希望条件や予算が変わることもあるだろう。現地見学した後に、購入目的に立ち戻り、無理のない資金計画であるかについても確認のうえ、物件を絞っていく必要がある。
最終的に購入するマンションを決めたら、購入の申し込みを行う。

Column損害保険もチェック

建物と家財の保険について、各住戸の専用部分については個人で保険に加入する必要がある。火災保険は、火災、落雷、ガス爆発などの破裂、爆発による損害をカバーするもの。自分の住まいでボヤを起こしたとき、床、内壁、天井(躯体部分を除く)などの補修は建物の火災保険でカバーできるが、家具、家電、衣類、カーテンなどは対象外である。家財の火災保険に加入していれば、そこから損害額に応じた保険金が受け取れる。自宅の水漏れなどで床、内壁などを補修する際にも火災保険は役立つが、隣家や下の階の住戸に損害を与えた場合は、自分の火災保険では補償できないので注意が必要だ。セットで個人賠償責任保険をつけていれば相手に与えた損害も補償されるので、この特約をつけておくと安心だろう。
地震、噴火、それらに起因する火災、津波による損害は、火災保険では補償されず、地震保険の対象となる。かつては地震保険には加入していない住戸も多かったが、阪神大震災や東日本大震災の影響もあり、加入者は増加傾向にある。地震保険は火災保険とセットで加入することになる。単独で加入できないが、火災保険の加入中に後から付けることは可能だ。火災・地震ともに保険料は住居地域と建物の構造で決まり、一戸建てに比べると安い。
また、専用部分以外の建物本体や、共用部分については、管理組合が管理し、保険での備えも管理組合で行うので、その火災保険・地震保険もチェックしておきたい。平成25年度の「マンション総合調査」による管理組合の損害保険契約の締結状況では、火災保険は掛け捨て型が58.5%、積み立て型が30.0%で、約9割弱が加入しているものの、地震保険については、43.2%と全体の半分弱にとどまる。
マンションの区分所有者は、個人の火災保険や地震保険だけでなく、管理組合で契約している保険も確認し、必要に応じて見直すことがよいだろう。また、マンションを購入する際にも、自分自身が加入する火災保険や地震保険だけではなく、管理組合がどのような保険に加入しているかについても確認しておくと安心だ。

高齢者住宅も動けるうちに見ておこう

老人ホーム、ケアハウス、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など、多種多様化した現代の高齢者向け住宅。一昔前までは、養老院といった趣の老人ホームが主流だった。しかし、現在では、人生を謳歌したいという高齢者向けのシニア向け分譲マンション、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)から、要介護3以上で自力での暮らしが困難になった人向けの特別養護老人ホーム(特養)など、介護の不安を解消し、快適に暮らせる高齢者住宅の整備が進んでいる。

要介護度 施設の費用 料金目安(月) 特徴

軽い
1、シニア向け分譲マンション 物件購入費後、管理費+生活費で数十万円 食事、家事代行、リクレーションなどのシニア向けサービスあり。売却、相続、賃貸が可能。
2、グループリビング 家賃と食事代などで12万~20万円。初期費用あり 身の回りのことができる60歳以上が対象。個室+共同設備の老人向けシェアハウス。
3、生活支援ハウス 10万円+生活費(食事、光熱費などの実費) 主に自治体が運営。介護保険施設のサービス利用者で家族の支援が困難な人向けの福祉施設。
4、シルバーハウジング 家賃+生活費(年間所得により1万~10万円程度) URなどが運営するバリアフリー設備を施した公営住宅。介護は別途契約。
5、サービス付き高齢者住宅 賃貸契約で、家賃・管理費・食費などで15万~30万円 特養などに入居できない人の受け皿的施設。在宅介護事業所が併設されていることが多い。
有料老人ホーム
6、健康型
一時金(数百万~数千万円)+月額利用料(30万円程度) 自立した高齢者がシニアライフを楽しむための施設。ジムやプールなど設備充実。介護認定を受けると退去も。
有料老人ホーム
7、住宅型
一時金(数百万~数千万円)+月額利用料(20万円程度) 健康者と要介護者の両方を受け入れ。介護は別途サービスを利用。
有料老人ホーム
8、介護付き
一時金(数百万~数千万円)+月額利用料(15万円程度) 65歳以上で、「要介護度1」以上。施設常駐のスタッフによる介護サービスと生活支援サービスを提供。
重い
9、養護老人ホーム 利用料として0~10万円 生活困窮者を対象とした老人向け養護施設。「65歳以上で身の回りのことは自分でできるのが条件。入居には自治体による審査が必要。
軽費老人ホーム
10、A型
初期費用なし、利用料6~17万円 身寄りがない生活困窮高齢者向け。食事提供と見守りがあり。要介護者には不対応。
軽費老人ホーム
11、B型
初期費用なし、利用料3~4万円 身寄りがない生活困窮高齢者向け。夫婦でOKのところも。食事なし、見守りあり。
軽費老人ホーム
12、ケアハウス
30万~数百万円の保証金、利用料7万~20万円 「一般型」と要介護認定者を受け入れる「介護型」の2種類。原則として個室。見守り、食事・掃除・洗濯などの援助あり。
13、認知症グループホーム 初期費用0~数百万円、利用料は15万~30万円 65歳以上で要介護1以上の認知症患者を受け入れ。個室でキッチン、お風呂などは共同。
14、介護療養型医療施設 利用料10万~20万円 病院施設のところが多い。65歳以上で「要介護1」以上。いわゆる「老人病院」で医療施設のため、医師・看護師が常勤。
15、介護老人保健施設 初期費用なし、利用料8万~15万円 65歳以上で「要介護1」以上。在宅復帰をするためのリハビリ施設のため、3ヶ月~半年で退去が基本。
16、特別養護老人ホーム 初期費用なし、利用料5万~13万円 65歳以上で「要介護3」以上。寝たきりや認知症患者のための施設。介護とリハビリ、生活支援を提供。

出典:『不要なクスリ 無用な手術 医療費の8割は無駄である』 (富家孝・著、講談社現代新書、2016)

多様な高齢者住宅の中から、自分に合った住宅を選ぶのは一苦労。介護が必要になってから、慌てて老人ホームなどを探そうとすると、その複雑さに途方に暮れる方が多いのも事実だ。
住宅探しは、自分に合ったものを選べる判断力と見て回る気力・体力がどうしても必要となる。自分の生活の面倒や介護をお願いし、身を委ねることになるからなおさらである。頭と身体がしっかりと働き、自分に合った住宅を選べる体力と気力があるうちに始めることが大切だ。

高齢者住宅の入居条件を確認してみよう。
入居条件でまずチェックすべきポイントは、入居時に「介護が必要な状態=要支援・要介護」であるのか、「身の回りのことは自分でできる状態=自立」であるのかという点だ。この違いで、入居できる高齢者住宅のタイプが絞られる。ここで注意しなければならないのは、今後年齢と共に健康状態が日に刻々と変化しているということだ。
「満足のいく住宅がやっとみつかった!」と思ったのもつかの間、体調を崩したり大怪我をしたりして、寝たきりになり要介護となれば、せっかく見つけた住まいに住めないということになるかもしれない。

一方、要介護者が入居する介護施設を探す場合、まず候補に挙がるのは公的な支援があり、比較的費用が安い特養であろう。しかし、特養を必要としている人に対して圧倒的に施設の数が足りておらず、入所待機者は、2009年から4年間で約10万人増え、約52万人である。最近では、入居者を絞るため、入居要件を原則として要介護3以上に変更したが、それでもなお入居希望者が多く、入居待機者は増加傾向だ。

公的施設に入れなかったり、サービス水準が希望通りに適わなかったりした場合、次に有力な選択肢となるのが民間の高齢者住宅だ。具体的には有料老人ホームやサ高住、シニア向けマンションなどが該当する。
それぞれの高齢者住宅ごとに独自性の高いサービスを展開しており、その線引きは曖昧になっている。確認しておきたいのは、施設の種別により異なる「介護保険の使い方」だ。この点を十分注意して、高齢者住宅を選ばなければならない。

(1)有料老人ホーム

有料老人ホームといえば、どれも介護を提供してくれる住まいと考えがちだ。しかし、有料老人ホームにも種別がある。大きく三つのパターンがあるといえる。一つは「健康型」で、これは健康な高齢者が、シニアライフを楽しむために入居するもの。そして次が「住宅型」で、これは健康な人と介護が必要になった人の両方を受け入れている。そして三つめが、「介護付き」である。

「住宅型」も「介護付き」のどちらも食事や清掃といった日常生活のサポートが受けられる点は共通だが、大きな違いは介護の受け方である。要介護になったときにも切れ目のないサービスを受けたいなら「介護付き」が安心だ。元気なとき、そして、軽介護くらいまでは自立棟で過ごし、介護度が進んだ場合には、施設側と合意の上で介護棟に移行して常時ケアを受けるケースが一般的である。

自立棟から介護棟への移行の際には、一時介護を最大で6ヶ月間試してみて、介護棟で安心して生活できることを納得してから移行できる施設もあるようだ。
介護付き有料老人ホームは、「要介護者3人に対し介護職員1人(3:1)」以上の職員配置が法令上義務づけられている。もちろん、2:1となれば、より手厚く目配りの届いた介護を受けることも可能となるが、やはり料金次第。介護が手厚くなれば料金も高額となる。「住宅型」のホームは、快適な住環境、栄養管理された食事などの生活支援サービスを提供する住まいである。

介護が必要となったときは、自宅にいる場合と同様に、ケアマネージャーにケアプランの策定を依頼し、介護事務所と個別に介護サービス契約を結ぶことになる。これは多くのサ高住などの住宅系サービスも同じ。「何でも全てお任せ」とまではいかないが、ニーズにあった介護用品を自由にレンタルしたり、昔から顔なじみのヘルパーにケアしてもらえたりするなど、融通を利かせやすい点は魅力だ。介護付有料老人ホームは、そのホームの職員が介護サービスを提供する。要介護の程度によって1日あたりの介護費用が決められているので、いくらサービスを利用しても一定額以上の費用はかからないのが原則だ。

これに対し、住居型有料老人ホームは、外部の介護サービスを利用するため、サービスを利用するたびに費用が発生する。そのため、介護サービスの利用頻度が上がると介護付有料老人ホームよりも介護費用が高額になることがある。また、重度の要介護状態になると、退去しなければならないこともありうる。
有料老人ホームの中には、「健康型」と呼ばれるホームがある。ここでは、基本的に食事などの生活支援サービスは提供されるが、介護が必要となると原則として退去しなければならないことが難点だ。

有料老人ホームでは、入居一時金をめぐるトラブルが後を絶たなかった。そもそも、入居時に数千万円もの大金を支払って入居したにもかかわらず、すぐに亡くなってしまったり、さまざまな事情で退去した場合、入居一時金が全く返還されなかったり、ごく一部しか戻らないなど、契約、解約にまつわるトラブルが一時期相次いだ。また、終の住処と決め、自宅を処分して入居したにもかかわらず、生涯を預けた有料老人ホームが倒産し、返還金もなく退去せざるを得なくなり、路頭に迷うことも。

この問題に対処すべく国が動いた。2006年4月以降に開設された有料老人ホームには、入居一時金の保全措置を取ることが義務付けられた。事業者は返還に備えて銀行等と連帯保証委託契約を結ぶことなどが求められたのだ。また、老人福祉法施行規則が改正され、2012年4月以降に入居した人については、入居一時金返還ルールが明確化された。契約締結日から3ヶ月以内に入居者が死亡したり、解約の申し出をしたりした場合、事業者は入居一時金から実際に住んだ日数分の利用料を差し引いた金額を全額返還するクーリングオフという制度が設けられた。契約時には、この短期解約特例制度が入居契約書等に明記されているか是非チェックしてほしい。
せっかく入居した有料老人ホームも、暮らしてみたら不満が出てきたり、自分に合わなかったりして退去することもありうる。そうした場合、入居一時金はどれほど返還されるのであろうか。

入居一時金を検討する上で重要なのは「初期償却」と「償却期間」だ。初期償却は、入居した時点で有料老人ホーム側の取り分となる金銭で、仮に入居一時金が2000万円で、初期償却率が30%であれば、入居時点での有料老人ホーム側の取り分は600万円となる。では残額の1400万円はどうなるのか。そこで、問題となるのが償却期間だ。償却年数が5年である場合、5年間かけて1400万円が償却されることになるので、入居後1年で退去した場合の返還金は1220万円、2年後は940万円、3年後は660万円、5年後は退去しても返還金なしということになる。

「ホームが自分に合わないかも」「ホームが自分に合っていなかったら、高額な入居金が無駄になるかも」と不安に思っている高齢者や、特養に申し込んでいて入所までのつなぎに介護付き有料老人ホームに入りたいという高齢者におすすめなのは、入居一時金ゼロの有料老人ホームだ。気軽に入居でき、住み替えもしやすいとあって、人気が出ている。
有料老人ホームは、何といっても共同生活の場。様々な人が集まってくるため、やはり、多少の我慢を強いられることは覚悟しなければならない。これまでの一戸建てでの生活スタイルのままで生活し続けることはできない。長年の生活スタイルを変更することに耐えられるだろうかと心配になる高齢者も多いだろうが、そうした心配は不要となる有料老人ホームが増えている。有料老人ホームも進化し続けて、多様化しているようだ。

老後はリゾートライフで人生を満喫したいという方には、例えば、沖縄のオーシャンビューの有料老人ホームなど検討してみてはどうだろうか。抜けるような青空とエメラルドグリーンの海を見ながらの優雅な暮らしは、これまでの日常生活を一変させ、不安も解消してくれるだろう。
また、愛犬と離れたくない人には、ペットと共に暮らせる老人ホームを探してみてはいかがだろうか。ペットは、他の入居者とのコミュニケーションにも一役買ってくれる。不安でいっぱいであった老人ホームでの生活を楽しいものに変えてくれるだろう。
最近では、介護にハイテクロボを導入している老人ホームもある。歩行を補助してくれるロボットスーツや、会話支援装置など、暮らしに安心を与えてくれるだろう。

(2)様々なサービスが受けられるサ高住

「高齢者が安心して暮らせる」住居として注目されるサービス付き高齢者住宅は、高齢化社会のニーズに対応して整備された住まいの形態である。自立生活ができる人や軽介護者向けではあるが、特養への入居が難しい今、特に注目されている。
有料老人ホームと異なり、賃貸住宅であるが、入居費用が比較的安いことや、居室の広さも原則25平方メートル以上と十分な広さがあることが魅力の一つだ。

利用対象者は、原則60歳以上の自立、または要支援者・軽度の要介護者である。住居設備もバリアフリー化されており、また、ケア専門家が日中常勤し、入居者の安否確認と生活相談を行うことが標準サービスとして義務付けられている。高齢者の親を家に一人にしておけない家族にとっても大きな味方だ。家族の精神的・肉体的負担を軽減してくれる。ただ、食事や介護などのサービスは選択制なので、これらを標準サービスだと勘違いしていると、費用面で問題が生ずる可能性もあるので注意が必要だ。また、要介護度が高くなると住み続けることができなくなる点も、注意すべきデメリットだ。

入居者の安否確認と生活相談のサービスに加え、食事サービス、洗濯・掃除などの家事サービス、入浴などの介護サービス、健康の維持増進サービス、外部の医療機関と連携した医療サービスを受けられるサ高住もある。ケアスタッフだけでなく、看護婦が24時間常駐して医療的ケアを含めた手厚いケアを行い、看取りまで行っているサ高住さえある。それぞれの施設で提供しているサービス内容や費用に差があるのは事実。自分に合ったサ高住を選ぶことが大切だ。

入居費用についてもメリットがある。民間の有料老人ホームでは、高額な入居費を要求するところも少なくない。入居費の金額を見て、検討を控えようと考えた方も多いだろう。これに比べ、サ高住は家賃の2ヶ月から3ヶ月分程度の敷金を支払えば入居が可能なところも多い。施設によっては、将来の家賃を前払いする制度を採用している施設もあり、入居時の費用が一時的に高額に見えてしまうこともあるが、そこは冷静な判断が求められる。なお、礼金や権利金、更新料といった名目の金銭の受け取りは禁じられている。そのため、入居時に支払うのは、敷金、月額家賃、共益費、サービスの対価のみだ。経済的負担を最小限に抑えられることから、まだ介護は必要ないが将来を考えると不安という単身者や、夫婦のいずれかが要介護となった高齢夫婦の住み替えの受け皿として人気を博している。

夫が要介護になった場合、妻は夫の介護のために趣味や外出をあきらめざるを得なくなることが多く、その結果、精神的ストレスが蓄積し、また健康面でも問題が生じ、妻まで要介護となってしまったという話をよく耳にする。しかし、夫婦でサ高住に住んでいれば、夫の食事の心配は要らなくなるし、見守りはケア専門家に任せて安心して外出できるので、妻の負担は軽減される。もちろん、その逆もしかり。要介護の妻を抱えた夫にとって、食事作りや身の回りの世話をするのは簡単ではない。これまで妻に家事を任せっきりであったならばなおさらだ。サ高住で食事サービスなどを依頼することで、不安を解消できるはずだ。

(3)シニア向け分譲マンション

サ高住は賃貸住宅なので、もちろん入居者に所有権はない。有料老人ホームも然りだ。
これに対し、通常の分譲マンションと同様に、買い取って所有権を持てる高齢者住宅がある。シニア向け分譲マンションだ。サ高住や有料老人ホームと同じように食事サービスがあり、ケアスタッフが常駐して見守りや緊急時の対応をしてくれる。

しかも、買い取りなので所有権を持つことになる。つまり、そのマンションは相続対象となるうえ、自分が利用しなくなった場合には人に貸して賃料を得ることも可能なのだ。販売価格は新築物件の場合、数千万から1億円以上となる。不動産取得税や毎年の固定資産税の支払いなど通常のマンション購入の場合と同様に諸々の経費が発生する。

シニア向け分譲マンションの毎月の管理費は、通常のマンションよりかなり高額となる。それは、食堂、大浴場、余暇のための施設など共用部分が広いことと、見守りや生活支援のために常駐しているスタッフの人件費がかかるためだ。月額管理費は、シニア向け分譲マンションの物件ごとに異なるが、大体4万円から10万円程度。このほか、修繕積立金が1万円前後、食費が4万円から5万円、水道光熱費等が1万円くらい必要なので、1ヶ月にかかる費用は10万円から17万円くらいになる。

しかし、中古で購入すれば初期投資を抑えることができ、月々の費用はサ高住や有料老人ホームよりは安くなる。その上、豪華な共用施設を無料で利用でき、自分の資産にもなるので、検討する価値は十分にあるだろう。
シニア向け分譲マンションに住んでいて要介護となった場合、介護保険を利用して外部の介護サービスを受けることになる。軽度であればそれで対応できるが、寝たきりや認知症になった場合、介護付き有料老人ホームやグループホームなどに住み替えなければならない可能性もある。賃貸のサ高住ならば気軽に転居できるが、シニア向け分譲マンションの場合はそうは行かない。また、いざ売却しようともなかなか買い手がつかない場合、毎月の管理費を自ら負担しなければならず、貸しに出すことも検討しなければならない。購入時に要介護になった場合の対応も検討し、しっかり確認しておくことが何よりも重要といえるだろう。
多くの人は、高齢者住宅や介護施設を選択することは初めての経験のはず。しかし、要介護者の住まいを探す場合には、時間がないことがほとんど。そんななか、頼りになるのは、最寄りの市区町村の福祉窓口や地域包括支援センター。時間がないと妥協しがちであるが、専門家の知恵を借りることでよりよい住まい選択ができるだろう。

一方で、自分が快適に過ごすための高齢者住宅探しである場合、比較的時間に余裕があるだろう。その場合は、インターネットで下調べすると効率的だ。大手検索サイトから条件にあった住まいを絞り込むことができ、施設のパンフレットも公表されている。
また、権利形態や費用は、高齢者住宅の類型によって異なり、かなり複雑になっている。例えば、有料老人ホームでも、その種類や経営方針によって、「入居一時金」「月額費用」「介護保険」「サービス料」など必要となる費用も多様である。専門家のアドバイスがあると心強く、思いもしない費用がかかることを防ぐことができるだろう。
このように高齢者住宅では、物件のリストアップや見学、契約だけでなく、資金の用意など、やらねばならないことが沢山ある。何から手を付ければよいのだろうか。

まず、保有資産の棚卸しである。入居する住まいの金銭的な目安を決めるのに重要となる。「入居一時金」「月額費用」「介護保険」「サービス料」など必要な費用と比較し、シミュレーションする。住み替えしたにもかかわらず、金銭的に新生活を維持できないのであれば、意味がない。
次に、自分が求める条件に優先順位を決める。例えば、「医療や介護の充実具合を優先する」や「都会に近く買い物に便利な立地」など、自分にとってどのような考慮要素を優先すべきかを検討する。優先順位はこの後物件を見学することにより入れ替わる可能性もある。

重要なのが情報収集である。インターネット上で入手するのが手っ取り早いが、腰を落ち着かせじっくり相談したいのであれば、民間の相談センターを利用してもよいだろう。
自分の条件に合った物件を絞り込む。有力候補となりうる高齢者住宅を、できれば10ヶ所以上はリストアップして、自分の目で確認する必要がある。絞り込む際には、少なくとも以下のポイントを押さえおきたい。

  • ・交通が便利か
  • ・経営は健全か(特に入居率がポイント。80から90%以上は欲しいところ)
  • ・どのような介護サービスが用意されているか
  • ・想定居住期間と初期償却の有無
  • ・自炊は可能か、食事は複数メニューから選択できるか
  • ・有料サービスの種類や料金は納得いくか
  • ・介護棟への住み替えの際に、追加費用は必要か
  • ・家族との面会に時間制限があるか
  • ・職員が散歩など外部に連れ出してくれるか
  • ・家族の自宅との距離は近いか

最後に見学や体験入居をすることになる。施設に連絡して足を運び、入居者の様子や職員の対応などを自分の目で見極めるのだ。夫婦で入所する場合は、是非一緒に見学してみるとよい。夫と妻では住まいを見る視点が全く異なり、各々参考になるだろう。季節を変えて再度見学や体験入居すると、前回とは異なる大きな発見が見つけられる可能性もある。もっとも、ネット情報ではいつでも体験入居できるような書き方をしている施設は多いが、はやり人気の施設はなかなか難しいようだ。
まだ頭も身体もしっかりしているうちに、早めに少しずつ準備を進めておくことが、将来の住み替え成功の秘訣である。

Column 高齢者住宅の基本Q&A

Q.認知症が進行すると追い出されてしまうのか
A.認知症が急激に進んでしまった場合、家族と病院で診断を受け、投薬で病状の緩和を図る。また、徘徊などの症状が出ても安全には配慮されている。それでも、暴力・暴言で共同生活が送れないようになると、退去の可能性はゼロだとはいえない。介護を外部サービスに頼るサ高住などでは24時間介護が難しくなるため、住み替え先を探す費用が必要となる。

Q.高齢者住宅は「相続」できるのか
A.有料老人ホームの入所契約は、一般的に部屋、設備、サービスを利用するための利用契約である。仮に契約者が亡くなった場合には、契約は終了し、利用する権利も消滅するため、相続人がその権利を相続することはできない。
また、サ高住は賃貸借契約であり、有料老人ホーム同様に相続することはできない。
シニア向け分譲マンションを購入すると所有権を持つことになるため、相続対象となるが、未入居期間であっても固定費が発生するため、注意が必要だ。

2020-02-16 22:19 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所