敷金のもめごとは時間をかけて徹底的に争っても問題ない

敷金をめぐるもめごとで裁判までもつれ込むケースでは、当事者双方とも感情的になっていることが多いものです。不動産オーナーや貸主からすると、果たしてそこまで徹底的に争う必要があるか、悩まれる方も多いかと思います。もし、裁判で言い分が認められなかった場合、結局は敷金に対する利息をつけて返さなければならないのではないかという懸念から、躊躇される不動産オーナーや貸主もいらっしゃると思います。 もともと敷金をめぐる訴訟は、オールオアナッシングで100か0かでどちらかの主張が完全に認められるというよりも、どちらにとっても部分的に敗訴する可能性がある種類の訴訟です。そこで負けた部分について利息を取られてはかなわないと思われるのも当然かと思います。 しかし結論から言うと、負けた部分について利息を取られることはありません。     つまり、時間をかけて徹底的に争っても実害はない。それどころか資金繰りを考えると、徹底的に争った方が不動産オーナーや貸主にとって有利に働くということになります。 この結論は、「敷金」だけではなく「保証金」名目であっても、基本的には一緒です。保証金の額が賃料の6~12か月分程度であって、賃料支払債務や原状回復債務等の賃貸借契約上の債務を担保するために交付されるものであれば、敷金と同じ性質であるからです。 そもそも、敷金・保証金は、一般的に契約書で無利息であることが明記されていることがほとんどです。実務上も、敷金・保証金の運用益は賃貸物を使用収益させることの対価の一部であると認識されています。 契約書で無利息である旨が明記されていない場合でも結論は変わりません。     ちなみに、貸付金について規定する民法第587条では、金銭消費貸借契約は、借主が金銭を返還することを約束して貸主から金銭を受け取ることにより効力を生ずる、としか定めていません。利息はそもそもとることが条件ではないのです。金銭を貸し付ける場合であっても、利息を付することは金銭消費貸借契約の成立要件とはされていません。 つまり、金銭消費貸借契約で利息についての定めがない場合、利息の約束がない以上はお金を貸し付けても利息はつかないのです。逆に言えば、お金を貸す側は注意が必要です。 貸付金ですら利息の約定がない限りは無利息なのですから、預り金である敷金や保証金は法律上、利息をつける定めがない以上、契約で利息の定めを付さない限り、無利息ということになります。 敷金・保証金は、賃貸借期間が10数年にも及ぶ場合、賃貸が敷金・保証金を運用すれば、かなりの運用益が得られるはずです。不動産遅滞経営が事業として有望である隠れた理由の1つです。   いずれにせよ、敷金をめぐる貸主と借主との争いは、圧倒的に貸主が有利です。 相手の手元にあるお金を回収することと、自分が持っているお金の返金額を争うことは、難易度が全く違います。おまけに敷金・保証金は裁判で時間がかかったとしても利息は付かない。裁判において時間がかかれば運転資金がショートするなどと心配して借主も妥協をしてくるかもしれません。敷金返還訴訟は貸主にとって、時間をかければかけるほど有利になっていくのです。 結論として不動産オーナー・貸主にとって、敷金のもめごとは時間をかけて徹底的に争うべきなのです。  
2021-08-20 15:18 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所