賃貸人保護のための定期借家契約のデメリットは

賃貸人保護のための定期借家契約のデメリットは

定期借家契約は、借主が期間満了と共に退去しなければならないため、一般的に通常の賃料よりも多少安くなります。しかし相対的に見ると、定期的に一定額の賃料を得られ、期間満了とともに契約終了するので、貸主にとっては有利な契約といえます。

普通借家契約と定期借家契約の相違点
定期借家契約 普通借家契約
1 契約方法 (1)公正証書等の書面による契約に限る
(2)さらに、「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書とは別に、あらかじめ書面を交付して説明しなければならない
【借地借家法38条1項】
書面でも口頭でも可
2 更新の有無 期間満了により終了し、更新はない
【借地借家法38条1項】
正当事由がない限り、更新される
【借地借家法26条1項】
3 建物の賃貸借期間の上限 無期限 ●2000年3月1日以前の契約は20年まで
●2000年3月1日以降の契約は無制限
4 期間を1年未満とする建物賃貸借契約の効力 1年未満の契約も有効
【借地借家法38条4項】
期間の定めのない賃貸借とみなされる
【借地借家法29条1項】
5 建物賃借料の増減に関する特約の効力 賃借料の増減は特約の定めに従う
【借地借家法38条7項】
特約にかかわらず、当事者は、賃借料の増減を請求できる
【借地借家法32条】
6 借主からの中途解約の可否 (1)床面積が200㎡未満の居住用建物で、やむを得ない事情により、生活の本拠として使用することが困難となった借主からは、特約がなくても、中途解約ができる
(2)上記(1)以外の場合は中途解約に関する特約があればその定めに従う
【借地借家法38条4項】
中途解約に関する特約があれば、その定めに従う

①定期借家契約を結ぶための手続き
(1)公正証書などの書面を作成
借地借家法38条1項
 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。

定期借家契約のでは、口頭でも成立する普通借家契約とは違い、必ず書面を造らなければなりません。その際書面には「この契約は定期借家契約であり、平成○年○月○日をもって終了する」「この契約は更新されない」などの旨の条項を入れる必要があります。

記載すべき事項 記載すべき理由
1 当事者の氏名・住所 誰と誰が締結した契約であるかを明らかにします
2 建物の所在・地番 賃借の目的となる建物を特定します
3 家賃の額 家賃額は最低限必要です
4 建物の引渡し時期 借家人がいつから使用できるのかを明らかにします
5 契約の存続期間 期間を定める場合には、必ず契約期間を記載します
6 使用目的 居住用であるか、事業用であるかなどを記載します
7 家賃以外に授受される金銭がある場合には、その金銭の額、授受の時期、目的 家賃以外に、敷金、権利金、礼金、更新料などを交付する場合には、額を明示します。また、権利金や礼金などは法律上性質が明らかではないので、契約書にその性質を記載して、内容を明らかにします
8 契約の解除に関する定めがある場合にはその内容 一定の場合には契約が解除されるという定めをした場合にはその内容(どのような場合に解除されるか)
9 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め v地震や洪水などの天災で建物が毀損した場合に、その修繕義務を家主と借家人のいずれが負担するのかをあらかじめ明らかにしておきます
10 転貸の承諾の有無 借家人が借家を転貸(又貸し)することについて承諾する場合には、その旨を記載します
11 更新の有無 定期の場合には必ず、更新がなく、期間満了により契約が終了する旨を定めます

1)契約書について
定期借家契約を締結する場合、必ず書面をつくらなくてはなりません。必ずしも公正証書にする必要はないのですが、不慣れな場合、少なくとも最初の契約では、公正証書を利用する方が無難です。一度でも公正証書を利用すれば、2回目以降はその書式を参考にして自分で書面を作成することもできます。

■公正証書について
 公正証書は、公証人役場で作成できます。
 公正証書は場合によって「債務名義」になり得ることもありますが、建物の返還を請求する強制執行手続においては「債務名義」になることはありません。建物明渡請求のように、金銭ではない特定の物を対象とする請求は、公正証書が「債務名義」として扱われることはありません。つまり、賃借人を強制的に退去させたいということがあれば、賃貸人は必ず裁判手続をとらなければなりません。(民事執行法22条5号)

2)契約書以外に
定期借家契約の場合、契約書とは別に、定期借家契約であることを記載した書面を予め交付して直接説明することが必要です(借地借家法38条2項)。説明をすることで、後々「定期借家契約だと知らなかった」と借主から言われ、トラブルになることを避けられます。
また、「書面の交付」「定期借家である説明」のどちらかが書けた場合は、当該契約は普通借家契約とみなされるリスクもあるので、注意が必要です(借地借家法38条3項)。

3)その他
定期借家契約の対象は、住居用に限りません。営業用建物や倉庫などに関する建物であっても、定期借家契約を結ぶことができます。

■住居用以外の借家契約
住居用の建物の場合、普通借家契約(自動的に更新)から定期借家契約へ変更することは出来ません。しかし、住居用以外の建物の場合、普通借家契約から定期借家契約へ変更することが可能です。

■期間・更新
定期借家契約の期間は、1年以内でもよいとなっています(借地借家法38条1項)。夏の数ヶ月のみ貸すという契約も可能(但し、常識的に明渡期限が判断できる場合には一時使用契約)ですし、長期の制限もないので20年を超える定期借家契約を結ぶことも可能です(借地借家法29条2項)。但し、契約上20年を超える期間であっても、契約書上の記載は20年と定めます(民法604条1項)。

②定期借家契約を終了させたい
1)貸主が期間満了を理由に、契約を終了させる場合
定期借家契約は、契約の期間満了と同時に契約終了となります。

しかし、定期借家契約の契約期間が1年以上である場合、契約終了の1年から6月前までの間に、「期間満了により契約は終了する」といった旨の通知を借主にしなければならず、この通知がされなかった場合、契約終了を主張できません(借地借家法38条4項)。

■契約終了の通知方法
期間満了による契約終了の通知は必ずしも書面にする必要はなく、口頭による通知でも可能です。しかし、口頭による通知の場合、後日トラブルになることも考えられるので、内容証明郵便などの書面による通知が望ましいでしょう。

■書面での通知の注意点
書面で通知をする場合、郵便を出した日ではなく、相手に書面が届いた日が通知日となります。内容証明郵便には配達証明をつけ、通知日を特定しておくべきです。

■定期借家の通知期間の特約について
定期借家において、契約期間満了の通知に関して借主に不利な内容の特約は無効とされます。「この契約では更新がなく、期間が満了した時点で終了となる」という内容の通知が、通知期間(契約終了の1年から6月前)に遅れてしまった場合、通知到達日から契約終了まで6月以上に設定する特約は有効ですが、6月未満に設定する特約は無効です(借地借家法38条4項)。
つまり例えば、通知日から契約終了まで8月に設定することは可能ですが、通知日から契約終了まで2月に設定することは、借主に不利なため無効となります。

2)借主が期間満了前に終了を申し出る場合
期間が決められている契約においては、定期借家契約に限らず、通常その期間が満了するまでは終了することはありません。借主に転勤などで引越しの必要が出来て、契約期間の途中で契約終了をしたいと主張しても、貸主が同意する義務はなく、契約は継続し続けます。つまり、借主がその家を出て他の家に引っ越したとしても、貸主はその家の家賃を期間満了まで受け取ることが出来ます。

■特約について
多くの契約には特約があり、その特約によって借主は保護されます。定期借家契約における解約の特約は中途解約条項というもので、例えば「借主が1か月の予告期間を持つ事によって契約を解約することが出来る」「1か月の予告期間分の家賃を支払った場合も契約を解約することが出来る」などです。

テナントを貸す場合、一度空き家になると次のテナントがなかなか入らない傾向が高いので、中途解約条項は入れないことが望ましいでしょう。

■契約終了の特約
居住用の建物における定期借家契約では、建物の床面積が200平方メートル未満の場合、転勤や親族の介護、療養などのやむを得ない理由によりその建物における居住が困難となったときは特約が無かった場合でも、契約を中途解約できるため、借主は解約の申し入れができ、解約の申し入れから1か月後に契約を終了させることが出来ます(借地借家法38条5項)。
定期借家において、この規定に関して借主に不利な内容の特約は、無効とされます。借主の解約の申し入れから1か月よりも短い期間での契約終了が出来る旨の特約は可能ですが、1か月よりも長い期間で契約が終了する特約は家賃なども発生するため、借主にとって不利な特約であるといえるので、無効となります。

3)定期借家契約での賃料改定
賃料の改定に関する特約があった場合、普通の借家契約(自動的に更新)では、特約にとらわれず、貸主及び借主双方が自由に賃料の増減を請求出来ます(借地借家法32条1項)。ただし、増減の時期について「一定の期間は賃料増額しない」などの特約がある場合は、その特約に従う必要があります。
これに対し、定期借家契約では、貸主及び借主はその特約に従う必要があります(借地借家法38条7項)。

≪内容証明について≫
建物明渡請求事件でまずやるべきことは、適切な事実関係を相手方に対して通知することです。賃借人が賃料を延滞している場合、滞納賃料の支払がないなどの理由から、賃貸借契約を解除する旨を配達証明付内容証明郵便に記載し、相手方(賃借人)に送付します。
しかし、賃借人に対して、内容証明郵便を送付しても、留置期間満了(留置期間は原則7日間。受取人の申出があれば、最大10日間まで延長可能)に伴い、内容証明が返送されてしまうことがあります。これは、配達の際に受取人(賃借人)が不在であれば「郵便物配達のおしらせ」が交付されることになっていますが、差出人の欄に賃貸人や代理人の名前が記載されていることで、賃借人が自身にとって不都合な内容が書かれていると思い、内容証明郵便を留置期間内に受領を拒否しているためであると考えられます。

■相手が”受領”しないとダメなの?
受取人(賃借人)が内容証明郵便を受領しない場合、たとえ名宛人不在で内容証明郵便が返送されても、留置期間の満了をもって賃貸人の意思表示の到達はあったものとされることもあります。
また、受取人(賃借人)が内容証明郵便を受領しなかったとしても、内容を了知させるために、留置期間満了に伴い返送された内容証明郵便の差出人保管分をコピーし、「いつ」「何を」送付し、「留置期間満了に伴い返送されたこと」、さらに「内容証明の写しを送付したこと」を記載した奥書を郵送することも1つの手段です。

2019-10-25 11:45 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 東京永田町法律事務所