友人の海外出張中部屋を借りたいが。

友人の海外出張中部屋を借りたいが。

友人が海外出張中に友人の部屋を借りることはできるのかということになります。
ここで問題は、純粋な留守番であるのか、それとも、又貸しにあたってしまうのかということです。
本来、賃借人は、賃貸人の承諾なしに、賃借物に対する賃借権の転貸することはできないことになっています(民法612条1項)。よって、賃借人が賃貸人に無断で転貸を行った場合、賃貸人には、賃貸借契約の解除権が発生することになります(民法612条2項)。
また、無断転貸による解除は、法定解除(民法540条以下)の規定によるものではなく、民法612条2項が適用されることになるので、相当期間を定めた催告をする必要はないということになります。
転貸の場合、まず確認しなければならないことは、転貸人が建物の所有者と賃貸契約を締結しているかどうか、また、転貸人が第三者に対して建物の所有者の許可を得た上で、建物を転借しているかになります。
また、転借人が転貸人に対して賃料を支払わないことがありますが、そのときは、転借人が直接賃貸人に支払を行っていることが考えられます(民法613条1項)。なので、転借人の支払いが滞った際は、慎重に経緯を聞くことがよいです。
ただし、この場合転貸人を原告、転借人を被告として、主張を提起することができますが、転貸人の請求に対して、転借人は、賃貸人の了承を得ていないことを理由に賃料の支払いを拒絶する抗弁を主張したとしても、その抗弁は主張として認められないのです。
つまり、純粋な留守番であるならば、なんの問題もありません。
しかし、留守番というよりも、自身が住むことがメインになり、ついでに留守番を兼ねるのであれば、これは部屋の転貸(また貸し)であると認識されてしまい、無断でのまた貸しは民法612条によって禁止されているため、また貸しが発覚したときは最悪、大家さんから契約を解除され、友人共々、退室を余儀なくされることもあります。
さらに、賃貸人は、近隣住人への聞き取りや部屋の現状など状況を見て、賃借人ではない氏名不詳の第三者が部屋を占有しているということになれば、占有者を特定せずに、占有移転禁止の仮処分を行います。その後、占有者の身元が特定されれば、占有者及び賃借者は被告という立場で、建物明渡請求訴訟を提起することになります。
ちなみに賃貸借契約終了に基づく、無断譲渡および無断転貸を原因とした建物明渡請求権の要件事実は、
①当該建物について、当事者間で賃貸借契約を締結していること
②賃借人に対して、当該建物についての賃貸借契約に基づき、賃貸人が本件建物を引き渡していること
③ⓐ第3者に対して、賃借人が当該建物における賃貸借契約に基づく権利(賃借権)を譲渡(売買等)していること
またはⓑ第3者に対して、賃借人が本件建物について賃貸借契約を締結していること
④第3者が、賃借人から本件建物の引き渡しを受けて、これを使用収益していたこと
⑤賃借人に対し、賃貸人が賃貸借契約を解除する意思表示をしていること(この際、相当期間を定め、催告する必要はない。)
では、留守番とまた貸しはどのように区別されるのかということになります。論点としては、①表札が借主である友人の名前のままになっているかどうか、②借主である友人の家具がそのまま置いてあるかどうか、③借主である友人が給料を支払ってくれているかどうか、などになります。
特に③では、借主が家賃を支払うことは当たり前のことであり、出張中に第3者に貸すからといって、たとえ一部であっても、家賃を第3者に負担させるのであれば、これはまた貸しであると言われても仕方がありません。
ただし、第3者が賃貸建物を占有していたとしても、それが譲渡によるものか、または、転貸によるものなのかを賃貸人が把握できていないことが多々あります。
これは、賃貸人が、賃借人と第3者間で結ばれた転貸契約書や賃借権譲渡契約書を収得することが困難であることが原因といえます。
そもそも無断譲渡や無断転貸を、賃借者と第3者が契約を結んだこと自体はそこまで重要ではなく、賃借者が第3者に使用収益させたことが重要であるといえます。
裁判になった際に訴状において、原告(賃貸人)が賃借人によって無断譲渡があったと主張したことに対し、答弁書において、被告(賃借人)が無断譲渡はなかったと否認を主張した場合、被告側は否認するにあたる理由を記載する必要があります(民事訴訟規則79条3項)。さらに、被告側は、賃貸建物が第3者によって使用収益している理由を述べなければならず、その過程の中で譲渡か、あるいは、転貸かが判明することになります。
その後、原告は判明した内容をもとにあらためて要件事実に沿った事実を主張することになります。
これはあくまで大家さんに対して「無断で」ある場合であって、たとえまた貸しであっても、大家さんの承諾を得た上でのまた貸しであれば、何も問題はありません。なので、前もって、大家さんに事情を話し、また貸しに対する承諾を得て下さい。
他のケースとして、貸主が一時的に不在となり、その間だけ自己所有の部屋を第3者に貸すことになっているということがあります。この場合、以前は借主側に権利が生じるため、半永久的に貸し続けることになっていたが、これでは貸主に不都合になってしまうため、今は、借地借家法38条によって、期間を定めた定期借家契約が可能になり、さらに、1年未満の借家契約も有効とされてきています。

2019-10-24 14:11 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所