手付金の一部支払いで契約を締結
手付金の一部支払いで契約を締結し
A新築マンションの分譲も残り数戸になり、値引きも考慮しながら早期に完売したいと考えています。先週の土曜日にモデル住戸来場のお客様にキャンペーン値引きをお話ししたところ購入の申出をいただき、手付金100万円で契約を締結しました。当日、買主は手付金の用意がないので、手付金の一部として10万円だけを受領し、残りの90万円については、週明けの水曜日までに振り込みでお支払いいただくことになりました。ところが、月曜日に買主から支払った10万円を放棄して契約を解除する通知があり、90万円の支払いについてトラブルになっています。
売主が宅建業者の場合、その手付がいかなる性質のものであっても解約手付とされ、買主は、売主が履行に着手するまではいつでも手付金を放棄して契約を解除することができます。本件では手付金100万円で契約していますが、契約時に10万円を支払い、残額を後日の支払いとしています。
宅建業法47条3号は「信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為」を禁止しています。手付を分割して支払うことで契約させることは信用の供与にあたり、宅建業法違反です。なお未払手付金について「手付けの要物契約性から手付契約は成立しておらず、売主に未払手付金の請求をする根拠はない」とする裁判例があります(大高昭58.11.30)。
売主業者としては、買主の10万円の放棄による契約解除申出を受けることが賢明な対応です。