抵当権の実行で借地人・借家人に対抗力はあるのか
駅前の土地に、銀行から融資を受けて商業ビルを建てました。当初からテナントも埋まり、ビルの経営は順調でした。しかし他の事業で失敗して、ここ半年間、融資金の返済も滞っています。最近になって、銀行が商業ビルに付けた抵当権を実行し、競売を申し立てました。この場合、テナントはどうなるのでしょうか。
抵当権が実行されても、抵当権設定前に契約した借家人は、抵当権者や競売の買受人にそれぞれの借家権を主張できます。しかし、抵当権設定後の賃借権契約の場合、たとえ登記や建物についての占有があったとしても抵当権者等に対抗できず、行うことができるのは、買受けの時から6カ月経過するまで買受人に建物の引渡しを拒むことだけです。 テナント契約は、通常建物完成後にするものなので、入居中のテナントはすべて銀行の抵当権の登記後に契約したものと考えられます。従来であれば短期賃貸借制度により、建物の賃借期間が3年間を超えなければ、その期間は借家人の賃借権は保護されました。しかし現在、短期賃貸借制度は廃止されましたので、テナントは法律の保護を得ることができません。もし、新しい買受人から明渡しを求められると、テナントは明渡しを余儀なくされ、借家権を保護されないという結果になります。