買おうとしている物件に借家人がいる
一軒家を探していたところ、友人に「今、現在、賃貸している自分の持ち家を買わないか」と持ちかけられました。現在の借家人は来月末で立ち退くことになっていると言います。その物件が気に入ったので、ぜひ買いたいと思いますが、どのようなことに注意したらよいですか。
定期借家契約で契約期間が終了した場合などを除けば、借家人は、賃貸物件の所有者が変わっても引き続き借家に住む権利があります(借地借家法31条)。新しい所有者から立ち退きを迫られても、原則として借家を明け渡す必要はありません。つまり、借家人が立ち退かない限り、買主は購入した物件を自分で使うことができないということです。賃貸物件を買う場合、まず賃貸借契約書を確認してください。定期借家であっても契約の期間中は、立ち退きを要求できません。また、定期借地でなければ正当な事由がない限り、借家人を立ち退かせることはできません。 また、「借家人は立ち退きを了承している」という売主の言葉を鵜呑みにするのではなく、借家人に直接その意思を確認しなければなりません。借家人にその意思がないと、買主は借家人に対し改めて賃貸借契約の解除と明渡しを求めるしかなく、正当な事由がなければ借家人を立ち退かすことはできません。この場合に買主は購入目的を達成できないので、売主との売買契約を解除し、代金の返還を要求できます。しかし、売主が代金を費消しているなど、どうにもならない場合もあります。借家人が立ち退きを了承している場合には、「何月何日までに立ち退く」という内容の念書をもらっておくと、後々問題が発生した場合、買主に有利な証拠となります。借家人のいる物件を居住目的で購入する場合、できる限り借家人に立ち退いてもらってから売買契約を締結した方が安全でしょう。借家人の立ち退き前に契約する場合には、「代金支払いは借家人の立ち退き後とする」といった特約を付けるといいでしょう。