退去時に汚れた一部分だけではなく、フローリングの全面張り替え費用を請求されています。

フローリングを汚してしまっているのですが、退去時に汚れた一部分だけではなく、フローリングの全面張り替え費用を請求されています。全部を張り替えるのは私のせいではないと思いますが、応じなければいけませんか。

借主は、部屋を借りる際に部屋や設置されている備品などの賃借目的物を破損させないように使用することになっています。これを、法律上では「善良なる管理者の注意義務(民法400条)」といって、借主の不注意で違反をし、貸主に対して損害を与えたときは、賠償をする必要があります。
ただし、ここでいう「不注意」とは、一般的に考えれば、どのような結果になるか予想がつくにも関わらず、気付くことが出来なかった場合のことを指します。よって、今回は借主の過失によってフローリングを破損させてしまったので、修繕費用は借主の負担となります。
しかし、管理会社からフローリングの全面張り替え費用を請求されたということですが、はたしてそこまで必要なのかは疑問なところです。たしかに借主の不注意によってフローリングを破損させましたが、あくまでフローリングの一部であって、全面を破損させたわけではないのです。
また、契約書には通常「原状回復」をして、明け渡すように書かれていることが多く、もし、記載されていなかったとしても、原則、「原状回復」の状態に修繕するものです。
ですが、原状回復とは、入居時のような現状に戻すということであって、全てを新品の状態にして明け渡すということではないのです。
最近では、部分補修も出来るようになりましたし、原状回復ということで考えても、部分補修で十分だと考えられます。破損した部分の修繕だけで済むのであれば、管理会社と交渉してみるべきです。
原状回復とは「賃借人の居住・使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常を超えるような使用により損耗・毀損を復旧すること」と定義されており、原状回復の修繕にかかった費用に関しては賃借人が負担するものであるとされています。ただし、年数が経つにつれて変化することはいた仕方ないものに関しては、通常の使用による損耗等の修繕費用は賃料に含まれているものとし、この場合の原状回復は、賃借人が借りた当時の部屋の状態に戻すことではないとされています。
通常の使用と言ってもその範囲が極めて広く、判断基準そのものを定義することが困難なことから、建物価値の減少ととらえられる損耗等の一般的な事例を以下のように区分して、復旧費用の負担の有無の検討が必要であるとしています。
A:賃借人が通常の住まい方、使い方をしても発生すると考えられるもの
B:借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられるもの(明らかに通常の使用の結果とはいえないもの)
A(+B):基本的にはAであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生又は拡大したと考えられるもの
A(+G):建物価値の減少の区分としてはAに該当するものの建物価値を増大させる要素が含まれているものBおよびA(+B)については賃借人の負担の検討が必要

2019-10-24 12:28 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所