退社したら会社所有マンションの家賃値上げを要求された

退社したら会社所有マンションの家賃値上げを要求された

通常、家賃の値上げは、契約更新時に大家さんから通告され、その条件に対して、借主が合意するという形で成立します。契約期間途中での値上げに関しては、契約書にこの様な内容に関係のある条項がない限り、応じる必要はないといえます。
万一、合意が得られず、家賃を受け取ってもらえない場合は、家賃を法務局に供託することも可能です。
ちなみに、供託の方法は、まず郵便用の封筒に大家さんの住所および氏名を記入し、80円切手を貼ります。
次に、契約書の中で、家賃を支払うとされている場所の住所を管轄する法務局または出張所もしくは支局へ行き、「供託書」に記入および捺印をします。
封筒および供託書の準備ができたら、供託する賃料を添え、窓口に差し出します。この際、供託する金額は、値上げ前の賃料に、自身が適当であると考える金額を上乗せしたものになります。
この作業を行えば、供託は完了となり、少なくとも賃料不払いによる解除という状況は回避することができます。
なお、供託書を記入する上での注意点は、
①「供託金額」の欄に金額を記載する際には、金額の前に「¥」のマークを入れる。
②「賃借目的物」の欄には、契約書に記載してあるとおりに書く。
③「支払場所」の欄には、契約書の中で“借主方で支払う”など特に指定がない場合は、「1、被供託者住所」の欄に印をする。
④「支払日」の欄には、契約書に書かれているとおりに記入すればよいが、後ろに「限り」を入れておく。
→これは、ただ日付を記入しているだけであると、その日が来ない限り供託することができませんが、「限り」を記入することで、記入した日付より前であっても供託することが可能となり、混む時期を避けることができます。
⑤「供託の事由」の欄は、「家賃の改定をめぐり係争中」と記入し、「3、受領しないことが明らかである」に印をつける。
ということになります。
では、もし契約更新時ではないにも関わらず、いきなり家賃が値上げしたという状況が生じた場合の対処ですが、まずは、契約書の内容を確認し、「通常の契約書」であるかを確認する必要があります。 契約書で確認する内容としては、
①社員でなくなった場合、契約が終了する
②社員でなくなった場合、賃料の変更がある
③2年を超える長期契約であった場合には、契約期間の途中であっても貸主は賃料を改定することができる
などの条項が記載されているかということです。
まず、退社後に契約が終了するという条項が記載されていた場合、賃借物が会社所有のマンションであることから、会社側には退者する者に対してマンションからの退室を求める権利があるといえます。もし、どうしても退室をしたくないのであれば、賃料の値上げなど、会社側の要求に応じる必要があります。
次に、退社後は賃料を改定するという条項が記載されていた場合、もともと契約書に条項が記載されているものなので、賃料の値上げがあったとしても合法的であるといえるので、この場合も、退室をしないのであれば、会社側の提示した賃料に応じることが当然であるといえます。
さらに、2年以上の長期契約であれば、期間の途中であっても貸主は賃料の改定ができると条項に記載されていた場合、これに関しても契約書に条項が記載されていることから、会社側が値上げを行っても合法的であるといえるので、退室を望まないのであれば、会社側の提示した賃料に応じる必要があるといえます。
つまり、契約書に条項が記載されていなければ、値上げに応じる必要はありませんが、契約書に条項が記載されていた場合は、会社は合法的に値上げを行っているということになるので、退室をしたくないのであれば、会社側の提示した賃料に応じ、支払う必要があるといえます。

2019-10-24 12:06 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所