第5章 どうしたらよい?「身じまい」

一口に「家じまい」といっても、一戸建てを売ってマンションに住み替えるという話だけでは終わらない。「老後の住処」を定めることとともに、やらなければならないことは多岐にわたる。つまり、どうやって自分の人生を終えていくのかを、「家じまい」とともに考えなければ、「ゆとりある幸せな老後の生活」はやってこない。
これらのことを「身じまい」と呼んで、どうすべきなのかを考えてみたい。

カーシェアリング

(1)自動車の重要性

健康長寿のポイントとして、積極的に外出する習慣を挙げたが、高齢者の外出機会を支える手段として、自動車は大きなウェイトを占めている。特に、高齢者の外出手段に関する意識調査(内閣府『平成26年度高齢者の日常生活に関する意識調査結果』)によると、外出にあたり57.4%を超える高齢者が自動車・バイク・スクーターを利用している。

一方で、自動車の運転にはリスクがつきまとう。最近、高齢者ドライバーによる「逆走」、「急発進」、「ブレーキ踏み間違え」による事故の報道をよく耳にする。歩行者を含む交通事故死に占める高齢者(65歳以上)の割合は、50%強と、半数を占める。高齢者は、認知症、がんといった病気のほかに、モビリティの場面でも大きなリスクを抱えているのだ。

このような話を高齢者にすると、「まだまだ若い者には負けない」「馬鹿にするなよ」などと言われる方が多い。年齢が上がると急激に事故率が上がるという単純なものではないのは確かだ。人口に占める若年層が減り、さらに若年層での自動車離れも相まって、若い運転者が減っている一方、団塊の世代を境に高齢者の免許保有率は高くなり、また高齢者人口は27.3%まで増え、高齢者ドライバーが増えているという理由もあるだろう。

しかし、事故の内容を見てみると、による事故は、出会い頭や右折時など交差点での事故が多いという傾向にある。交差点に事故の原因となる危険要因が多く、様々な確認をして対応しなければならないため、脳にかかる情報処理負荷が高いが、高齢者は運転時にその負荷に対応しきれないといわれている。交差点の確認箇所は、ケースバイケースではあるが、瞬時に色々なものを見なければならない。この瞬時に認知し、判断し、対応する能力が高齢になると衰えてしまい、見えていないにもかかわらず「見ている」と勘違いしていることが多いのだ。いわゆる、「ぼんやり運転」である。また、信号無視や逆走も実はこの「ぼんやり運転」が原因なのだ。つまり、見えていないので、信号や標識の「見落とし」をしてしまい、事故が起きる。
気力は維持できるかもしれないが、加齢による身体的能力の衰えは避けることはできない。単に「私の運転は大丈夫だ」というのは、健康診断にも行かず「私は健康だ」と言っているようなもの。一度、健康診断のように、自動車教習所で自分の運転能力をチェックしてみてはいかがだろうか。

身体的能力や体力の衰えは、自動車運転を直ぐに止めることにはつながらないものの、段々とその機会を奪っていく。運転機会が少なくなると、自動車の維持費用ばかりが目に付くようになる。特に車検や自動車税の支払いの際に、気づくことが多いのではないだろうか。実際、1000ccクラスのクルマを維持するだけで、保険料、税金、駐車代、消耗品代などで約2000円/日程度かかる。
自動車を運転できる環境は維持したい、しかし、クルマの維持費用は減らしたい、高齢者からこうした要望を聞くことが多くなってきているのが実情だ。
これを解決する方法として注目されているのが、「カーシェアリング」という仕組みだ。

「カーシェアリング」とは、マイカーを所有するのではなく、複数の人が車を共同で使用(シェア)するシステムのこと。事前に会員登録し、使いたいときに予約すればよいだけで非常に簡単であり、好きなときに好きな時間だけ自動車を利用することができる。
コストが安いのもカーシェアリングのメリットの一つだ。
例えば、マイカーと異なり維持費用(車検代、自動車税、保険料、駐車場代など)は不要なうえ、料金は利用時間分だけ支払えばよいので、レンタカーのように、余裕をもったレンタル時間にしたことで実際使用した時間以上の料金を支払う必要もない。
車に毎日乗るわけではないのであれば、維持費用がかかるマイカーではなく、カーシェアリングを利用してはいかがだろうか。

カーシェアリング、レンタカー、マイカー比較

カーシェアリング レンタカー マイカー
費用 初期費用(入会金など)
月額費用
利用料金
利用料金
付帯料金(保険・オプション)
車両代
自動車税
登録費用(自賠責保険料・リサイクル料など)
車庫証明費用
駐車場代
ガソリン代
メンテナンス代
支払 月払い 前払い 随時払い
ガソリン代 利用料金に含む 使用分別払い
(満タン返却)
都度払い
自動車保険 利用料金に含む 任意 任意
利用時間 15~30分単位で利用 6時間から利用可能 自由
貸出場所 カーステーション 営業所
貸出手続 PC・スマホ・携帯からの予約のみ PC・スマホ・携帯からの予約+所定書類記入
貸出・返却時間 24時間いつでも 営業所の営業時間内

(2)一度試してみることが重要

このような便利な仕組みがあるにもかかわらず、高齢者の利用率が上がっていない。その理由の一つとして考えられるのは、「仕組みがわからないこと」だ。
これまでクルマといえば、マイカーかレンタカーのいずれかであり、それらの仕組みはよくわかっている。しかし、カーシェアリングとなると、どうすれば予約できるのか、どこでクルマを借りられるのか、保険は、ガソリン代は、など知らないことばかり。そこでおすすめするのが、60代の早い段階で一度利用してみることだ。「百聞は一見にしかず」というが、新しい仕組みは体験してみないと理解できないもの。是非確認して試してみるべきだ。

訪問介護サービス

「訪問介護」とは、要介護認定で「要介護」と判定された高齢者が、可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、訪問介護員(いわゆる「ホームヘルパー」)が高齢者の自宅を訪問して行う、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活支援(生活援助)や、食事・排泄・入浴などの介護(身体介護)をいう。
サービス内容、サービス時間などによって高齢者の負担金額が異なるので、介護保険が適用されるサービス内容なのかなど、事前に確認する必要がある。
シニア向けマンションなどでは管理会社から訪問介護事業者を紹介してもらえることもあるが、自らのニーズにあった訪問介護事業者を選ぶことが一番重要である。

訪問介護事業者選びのポイント

ポイント 内容
1 営業時間で選ぶ ホームヘルパーに来てもらいたい曜日や時間帯に対応可能かどうかで選ぶ。
例えば、土日など週末の訪問介護や、深夜の訪問介護を希望する場合には、土日や深夜に営業している訪問介護事業所を選ぶ必要がある。
2 馴染がある事業所を選ぶ 馴染がある事業所であれば信頼がおけるのではないだろうか。例えば、担当のケアマネージャーが所属している会社の訪問介護や、デイサービスと同じ会社の訪問介護を使用するというのも、1つの手だ。
3 自宅からの距離で選ぶ 「何かあった時にすぐに対応してもらえる近さが良い」と、自宅から近い訪問介護事業所を選択するケースも多い。
一方で、「知り合いがヘルパーかもしれない」と、自宅から少し離れた訪問介護事業所を選ぶ方もいる。
4 訪問時のヘルパーの服装や車で選ぶ 「訪問介護を利用していることを近所に知られたくない」とのことから、訪問時の服装や車が訪問介護であることがわからないもので来てくれる事業所を選択する方もいる。

なお、自宅で医師の診療を受ける「訪問診療」とは、医師の診療を定期的に受ける必要があるが、通院するのが困難という患者の自宅に医師が定期的に伺い、診察や治療を行うものである。転倒や寝たきりの予防、肺炎や褥瘡などの予防、栄養状態の管理など、予測されるリスクを回避し、入院が必要な状態を未然に防ぐことも重要な役割だ。
将来、訪問診療が必要となる可能性もあるので、今のうちから訪問診療に対応可能なかかりつけ医を探して決めておくとよいだろう。

生命保険を活用した相続対策

将来生じ得る相続に向けて、生命保険の利用を検討してみるのもよいだろう。

(1)争続対策

相続トラブルの定番中の定番は、例えば、複数の兄弟姉妹がいるのに目ぼしい相続財産が自宅だけというケースである。両親と自宅で同居していた長男がこのまま住み続けたいと主張した場合、他の兄弟との間でいわゆる「争族問題」が勃発する。長男が、自宅を相続する代わりに、他の相続人に代償金を渡すことができれば問題ないが、資金的な余裕がなければ現実的な方法とはいえない。自宅を売却して金銭を相続人間で分け合う「換価分割」もあるが、現在住んでいる自宅を売却することもできず、代わりの家を探さねばならない。本当に買い手が現れるのかという心配もある。

このような打つ手がない状況に陥らないためにも、事前の準備として、生命保険に加入しておくとよいだろう。生命保険金は相続財産には含まれず、保険金受取人の固有財産となることから、長男を保険金受取人とする終身死亡保険に加入しておけば、保険金を代償金に充てることができ、「争族問題」を回避することができる。

(2)相続税対策

生命保険の非課税枠を利用することにより、相続税対策を行うことができる。生命保険の死亡保険金は、相続人1人につき500万円までが非課税となる。相続税は、非課税分を差し引いた金額が課税対象となるため、非課税部分が節税対象となる。。
すなわち、将来相続財産となる被相続人の財産から生命保険料を支払い、相続人が非課税枠を利用して保険金を受け取れば、非課税で財産移転をしたのと同じ効果を期待できる。
また、相続財産が不動産のみで、現預金がほぼない場合、相続人にとって相続税の納税資金の捻出は非常に頭が痛い問題であるが、相続税の納税資金を生命保険の保険金でまかなうことも考えられる。

(3)相続放棄しても受け取れる

相続財産として多額の借金もある場合、相続人は相続放棄をすると、借金だけでなく財産は一切相続することができなくなる。しかし、生命保険金は、放棄した相続人でも受け取ることができる。多額の借金がある方におすすめの対策といえる。

遺言の作成

(1)今すぐ確認!もめるパターン11例

不動産が絡むと相続でもめ易い。相続トラブルを事前に回避する方法として有効な方法は、遺言を作成しておくことだ。
相続トラブル回避方法である遺言作成について検討する前提として、相続でもめるパターンを把握しておくことが重要である。一般的にどのような要因が絡むともめるのかを理解しておけば、どのような場合に遺言を作成すべきなのか、どのような内容の遺言を作成すべきなのかについても理解することができる。不動産に限らず、もめるパターンには共通点がある。対象を不動産から広げて、一般的にもめるパターンを紹介する。一般的にもめるパターンを知ることで、将来の争族トラブルを回避することにもつながる。以下、もめやすいパターンを11例挙げる。

①兄弟姉妹の仲が悪い場合

遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要である。兄弟姉妹の仲が悪いと、協議がまとまらず、遺産分割協議が長引く可能性がある。兄弟姉妹が対立関係にあると、何よりも他の兄弟姉妹に負けたくないという気持ちが強くなる。もともとは相続財産についてそれほどこだわりがなくても、自分が相続財産をもらわないことで兄弟姉妹の相続分が増えるのはおもしろくない。かつて親から多額の現金をもらっていた兄弟姉妹に対して、その分は絶対取り返したい、などと意地になっていることもある。

誰にどの財産を渡すかを明確に遺言に残しておけば、遺産分割協議を経ることなく遺産分割が可能になる。例えば、元々仲がよかった兄弟が、遺産分割協議を機に仲違いし、家族の交流もなくなりギクシャクした関係になるような悲劇も防ぐことができるのだ。

②相続させたくない相続人がいる場合

親不孝な子どもや自分の面倒を全く見てくれなかった子どもには財産を残したくないと考える方もいるだろう。相続させない、または相続分をゼロにするような遺言を作成して、財産が渡らないように準備する方も。親不孝な子どもが「自分は今まで周りに迷惑をかけてきたのだから、相続できなくても仕方がない」と思ってくれればよいのだが、それを期待するのは現実的に難しい。

そのような者に限って、自分の権利はしっかりと主張してくるものだ。相続分をゼロにしても、法律で認められている最低限の相続分(遺留分)を求めてくるのは必至。子ども同士で争いや問題が生じないために、あらかじめその遺留分を考慮した遺言を作成することが必要となる。

ちなみに、遺留分とは、民法の定めにより、一定の相続人が最低限相続できる財産のことである。相続財産をどのように処分するかは、原則として、被相続人の意思が尊重される。しかし、被相続人に全くの自由を認めると、被相続人に依存して生活してきた者の経済的基盤が失われてしまうなどの弊害が生じることも。そのため、一定の相続人は、一定の割合を相続する権利が認められている。例えば、相続人が直系尊属のみの場合は法定相続分の3分の1、それ以外では2分の1を相続人で分け合うことになる。遺留分を侵害された相続人(遺留分権利者)は、自分の遺留分を侵害している人に対して、侵害された限度で、贈与または遺贈の効力を失わせることができる。これを遺留分減殺請求という。

③子どもがいない場合

被相続人夫婦の間に子どもがいない場合、配偶者と被相続人の父母や兄弟姉妹が相続人となる。夫婦で築いてきた財産を、血のつながりのない義理の父母や兄弟姉妹と分配しなければならない事態が発生するのだ

例えば、被相続人(夫)名義の自宅マンションでも、実質は妻とともにローンを返済して築いた財産というケースは多いだろう。それにもかかわらず、そのマンションの3分の1もしくは4分の1を法定相続人である義理の父母や兄弟に持っていかれる場合があるのだ。実の家族でさえもめる遺産分割。義理の家族との話し合いで全くもめないということはまず考えられないだろう。

もっとも、相続人が配偶者と義理の兄弟である場合、兄弟姉妹には遺留分は認められていないので、遺言を作成することで財産を配偶者にだけ渡すこともできる。遺言がなければ、兄弟姉妹が相続分を主張することで、家を売らねばならなくなり、妻は住居さえも失ってしまう可能性もある。

④相続人が多い場合

遺産分割協議は相続人全員の合意が必要なので、相続人が多くなると遺産分割協議がまとまりにくくなる。一昔前は兄弟姉妹が6人、7人といった家庭も珍しくなかったが、最近では大家族の家庭は少なくなってきており、2人兄弟姉妹、3人兄弟姉妹が一般的で、今後は少子化が進み、一人っ子家庭が多くなっていくことが予想される。

ところが、兄弟姉妹の数が少ないからといって、相続人の数も少なく遺産分割協議もまとまりやすい、ということにはならない。
近年の高齢化社会の影響と女性の平均寿命の上昇から、子どもよりも親、特に母親の方が長生きする場合もあり、その結果、代襲相続(被相続人の子や兄弟姉妹が相続以前に死亡等で相続権を失った場合、その者の子がその者に代わり同じ地位に上がって被相続人を相続すること)が増えている。さらに、相続人が高齢者であれば再代襲や相続人の相続などが発生して、相続人が一気に増える可能性もある。ますます全員参加の遺産分割協議をまとめるのは困難になるので、遺言や遺言執行者の存在が重要になる。

⑤結婚相手に連れ子がいる場合

相手が初婚であっても、再婚であっても、結婚すれば配偶者となり相続権が発生する。しかし、結婚相手に連れ子がいた場合、結婚によってその連れ子と法律上の親子関係に生じるわけではない。連れ子と親子関係を生じさせるためには養子縁組を行う必要がある。配偶者との間に子どもが生まれた場合、その子どもは父母両方の相続人となるが、連れ子は養子縁組をしない限り、実の親についての相続権しか持たない。小さいころから分け隔てなく同じように育てられてきたのに、相続が開始して初めて、1人には相続権があり、1人には相続権がないということが判明し、トラブルになることがありうる。
もっとも、養子縁組をしていなくとも、遺言による遺贈によって他の子どもと同じように財産を残すこともできる。

⑥前妻・後妻ともに子どもがいる場合

離婚・再婚をしている場合、婚姻期間に関係なく、相続が開始した時点で婚姻関係にある者が配偶者として相続をすることができる。20年、30年と婚姻期間が長くとも、別れた配偶者には相続権はない。
もっとも、分かれた配偶者との間に子どもがいる場合、その子どもには相続権がある。例えば、自分の実子を前妻が引き取っていたとする。その子どもが未成年の場合は、たいてい母親の名字を名乗り、父親の戸籍から出ていることになる。名前が変わり、別々に暮らしていて関係が疎遠になったとしても、親子であることは変わらず、相続権はなくならない。

前妻との間の子どもと離婚後も定期的に会っていても、後妻やその子どもには一度も会わせたことがない、あるいはその存在さえも秘密にしていることも考えられる。そして、遺産分割協議の際に初めて顔を合わせるということも。後妻たちからすれば、一緒に暮らしていなかった他人に家族の財産を分配しなければならないのであるから、どうしても抵抗を感じてしまう。前妻の子どもが未成年の場合、前妻がその法定代理人として遺産分割協議に関わってくる可能性もある。この場合、もめないはずがない。
相続人の関係性が複雑なケースでは、遺言を残しておく必要がある。遺言執行者を選任しておけば、よりスムーズに遺産分割を行うこともできる。

⑦内縁の配偶者、子どもがいる場合

配偶者は常に相続人になることができるが、ここでいう「配偶者」とは、法律上の婚姻関係にある人をいうので、婚姻届を提出していない内縁の配偶者や事実婚の配偶者は、法律で認められる配偶者には当たらない。長年普通の夫婦と変わらない生活をしていた場合でも、法律上の婚姻関係がないと相続権が発生しないため、2人で築き上げた財産が、法定相続人にすべて持っていかれる可能性がある。

内縁の配偶者等に財産を渡したい場合には、生前贈与しておくか、もしくは遺言を作成しておくべきだ。遺言を作成する場合は、法定相続人の遺留分を侵害しないように注意する必要がある。遺留分を侵害していた場合、侵害された相続人から遺留分減殺請求がなされる可能性があるからだ。無用な争いを起こさないためにも、その点の確認が重要である。

内縁の妻との間に子どもがいる場合、認知していれば、その子ども(非嫡出子)には相続権が発生する。注意が必要なのは、そもそも認知がなければ内縁の妻との間の子どもに相続権はないということだ。諸事情で生前の認知が難しい場合には、遺言で認知することもできる。

⑧相続人以外にお世話になった人がいる場合

実の息子や娘ではなく、同居している長男の妻、つまりお嫁さんが、義理の両親の介護をするということはよくあるだろう。しかし、いくら献身的に世話や介護をしてくれても、お嫁さんには相続権はないので、義理の両親から当然に財産をもらうことはできない。そして、介護に対しての寄与分も認められない。世話になったお嫁さんに財産を残したい場合には、お嫁さんの貢献を考慮して長男の相続分を多く指定することもできるが、直接財産を渡したい場合には、遺贈によって財産を残すこともできる。

⑨行方不明の相続人がいる場合

遺産分割協議は相続人全員の合意が必要で、相続人が1人でも欠けていると有効に成立させることができない。相続人の仲が悪い場合はもちろん、家を出たきり帰ってこない行方不明の相続人がいる場合にも、全員合意が絶対必要となる。行方不明の相続人が見つからなければ、遺産分割協議が永遠に保留になる危険性もあるのだ。

相続人の仲が悪いだけで所在は分かっている場合には、なんとか頼んで出てきてもらえれば遺産分割協議を進めることはできるが、行方不明の相続人がいる場合には少し厄介である。行方不明の相続人がいる場合には、まず戸籍謄本や住民票を取り寄せてその相続人の生死や現在の住所を調査する。この方法でだいたいの相続人が見つかるはずだが、それでも見つからない場合には、家庭裁判所に対して財産管理人の選任の申し立てをするか、失踪宣告の申し立てをすることになる。

失踪宣告の申し立てによって法律上は死亡したものとみなすことができるので、残りの相続人だけで遺産分割協議を行うことができる。ただし、行方不明になったときから原則として7年経たなければ失踪宣告の申立てを行うことができないので、そこまで時間が経過していない場合には、行方不明者に対して財産管理人を選任し遺産分割協議を行う方がよいだろう。
いずれにしても相続開始後に余計な手続きが生じてしまい、相続人に手間をかけることになるので、事前に行方不明の相続人がいることが分かっている場合、遺言を作成して、遺産分割協議がなくとも遺産分割ができるようにしておくべきである。

⑩相続財産がどこにどれだけあるのか分からない場合

被相続人の相続財産をすべて把握しているのは、被相続人だけである。しかし、遺産分割を行うのは、被相続人が亡くなった後なので、どこにどれだけ財産があるのか本人に確認することができない。特に、被相続人が一人暮らしだった場合は、財産構成が分からない可能性が高くなる。

財産の内容を明らかにせずに被相続人が亡くなった場合、遺産分割協議に入る前に相続人自身が財産調査をすることになる。不動産であれば、納税証明書や名寄帳を基に比較的簡単に調査することができるが、預貯金の場合は全く当てがなければ金融機関に対してひとつひとつ照会をかけて財産を探すことになる。金融機関もたくさんあるので、ある程度の情報がなければ、すべて探しきれないことも。

遺言やエンディングノートに財産を明記しておけば、探す手間も時間も省略することができる。また、預貯金などは金額まで記載をしておけば、同居していた相続人が財産を隠したのではないか、使い込んだのではないかという不信感を抱くことも少なくなるだろう。
遺言作成なんてまだ早いと思う方も、将来の遺産分割をイメージするために自分が今どのような財産を持っているのか洗い出してみるとよいだろう。

⑪相続財産の大部分が不動産の場合

不動産は価値が高いため、相続財産全体の約半分以上の割合を占めているケースが多く、相続財産の中に不動産がある場合、遺産分割の際に必ずといってよいほどもめる。
相続人が2人の場合であれば、1人が不動産を、もう1人がそれ以外の財産を相続するというように分ければよい場合もあるが、いずれも不動産の取得を望んでいる場合はどうなるのだろうか。土地だけであれば、2つを分筆することによって現物分割することもできそうだが、どちらかがその土地の上に住んでいたら、そう簡単にはいかない。代償分割にするとしても、不動産を相続した相続人が代償金などを準備できなければ、トラブルが生じることは必至だ。
遺言で誰に何を相続させるかまで指定しておけば、トラブルを防ぐことができる。

(2)遺言でやってはいけないこと、やるべきこと

遺言には大きく分けて①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3種類がある。このうち、自筆証書遺言が最も簡単に作成することができる遺言といえる。

自筆証書遺言とは、遺言者本人が、遺言の内容全文と日付を自筆で書き、署名・押印して作成する遺言である。紙とペンさえあれば自分1人でいつでも気軽に作成できるという特徴がある。また、公正証書遺言や秘密証書遺言にように公証役場に出向く必要も、証人を用意する必要もないうえ、遺言の内容や存在も他人に知られることなく作成できる。なによりも費用がかからない。

手軽に作成できる自筆証書遺言だが、いくつか気をつけるべき点も。その注意点を守っていなければ、せっかく作成した遺言が無効となって、ご本人の遺言として扱ってもらえないこともありうるからだ。注意点は以下のとおりである。

①すべて自筆で作成すること

自筆証書遺言を作成する際には、公正証書遺言や秘密証書遺言のように証人は必要ない。なぜなら、自筆証書遺言は、遺言の全文と日付、署名を遺言者の自筆で書くため、確かに遺言者本人の意思に基づいて作成されたと考えられるからだ。パソコンなどで作成された遺言が無効になるのは、本人が書いたものか確かではなく、遺言者の意思が明らかではないためである。同じ理由から、自分の文字に自信がないからと他の人に代筆してもらった遺言も無効となる。なお、財産目録など遺言に添付する資料も含めすべて自筆で書く必要がある。

②日付を記入すること

遺言には遺言を作成した日付を書かなければならず、日付のない遺言は無効となる。日付ぐらいなくてもよいのではないかと考えるかもしれないが、遺言の日付の存在が重要になる場合がある。

例えば、遺言が複数出てきた場合。特に自筆証書遺言の場合、自分1人で手軽に作成できるので、何度も遺言を書き直す人が意外に多い。矛盾する内容の遺言が複数あった場合には、一番新しい遺言、つまり亡くなった日に一番近い日に作成された遺言が有効とされる。遺言者本人であれば日付がなくともどれが最新の遺言か分かる。しかし、遺言を開くときには遺言者は既に亡くなっているので確認のしようがない。そのため、遺言の日付が重要なのだ。

また、日付は遺言を作成したときの年齢を判断するためにも必要となる。遺言を作成できる年齢には満15歳という制限があるので、遺言を作成したときに満15歳に達しているか否かを判断するためにも日付が記載されている必要となる。
さらに、遺言能力を判断するためにも、日付は重要な意味をもつ。遺言が作成された時点での遺言者が、遺言を作成できる遺言能力を備えていたか否かによっても、遺言の有効性が判断される。遺言能力を備えていない者の遺言は、無効となる。例えば、亡くなる2年ほど前から重度の認知症を患っていた者の遺言が、亡くなる1年前に作成したものであった場合、この遺言は遺言能力のない者が作成したとして無効とされる可能性がある。

なお、遺言の日付については、ただ記載されていればよいというわけではなく、記載方法も問題となる。
遺言がいつ作成されたかを判断するためにも、遺言が作成された年月日までが特定されている必要がある。「平成○○年○○月○○日」と書くのが一般的だが、年月日が特定できるという意味では、「平成○○年元旦」という書き方でも問題ない。ただし、「平成○○年○○月吉日」という書き方では、日にちの特定ができず無効となるので、注意が必要だ。

③氏名の自署・押印をすること

遺言には、遺言者の氏名の自署(署名)と押印が必要である。署名・押印を忘れていた場合は、その遺言は無効となるので注意が必要だ。
まず、誰が書いた遺言であるかを明らかにするため、氏名の記載が必要となる。また、遺言の本文を自筆で作成することと同じ理由で、署名・押印があれば遺言者本人の意思に基づいて作成された遺言であると考えられるので、証人が必要ない自筆証書遺言では特に重要となる。

④正しい方法で加除訂正すること

自筆証書遺言は全文を自筆で書かねばならないので、誤字や脱字、記載ミスはどうしても起きてしまいがちである。通常の文章であれば、修正液や二重線で消して書き直せば問題ないが、遺言の場合はそう簡単ではない。自筆証書遺言を加除訂正する方法は法律で決められており、その方法に従わずになされた訂正は、訂正されていないものとして取り扱われる(遺言全体が無効となるわけではない)。このように厳格な方法を採用したのは、他人による遺言の改ざんを防止するためである。
自筆証書遺言の訂正方法は、次のとおりである。

  • 1.削除箇所を二重線で消す
  • 2.削除箇所に押印する
  • 3.訂正後の正しい文言を記載する
  • 4.余白に訂正した箇所と字数を付記する
  • 5.訂正した字数の脇に署名する

訂正箇所が1、2箇所であれば、また一から手書きで遺言を書き直すよりも訂正した方が楽だろう。しかし、訂正箇所が多くなると、訂正の文言ばかりで大事な遺言の内容が見にくくなってしまううえ、訂正手順を誤って訂正が無効となってしまう可能性もある。訂正箇所が多数である場合には古い遺言を破棄し、もう一度書き直すべきである。

⑤適切な場所に保管すること

自筆証書遺言の場合、遺言書は自分で保管しておく必要がある。
生前に相続人などに遺言書が見つかると、遺言書を隠したり、偽造してしまったりする可能性がある。だからといって、分かり難いところに保管しておくと、亡くなった後に見つけてもらえない可能性も。せっかく書いた遺言書も発見されなければ無意味となる。
したがって、生前は見つかりにくく、死後は見つかりやすいところに隠しておく必要があるが、そのような隠し場所はなかなかないもの。相続人と同居している場合には、特に隠し場所に困ることだろう。
例えば、遺言書を見つかりにくいところに隠しておいて、その場所をエンディングノートに書いておく、または信頼できる第三者に場所を伝えておくという方法がよいと考える。

(3)将来の争いを避けるために今すぐやるべきこと

加えて、将来の相続人間の無用な争いを避けるためにやっておくとよいことがある。

①遺言とともにメッセージを遺す

自分の遺言なのだから、自身の意向を一番大切にするべきだ。例えば、先祖代々受け継いできた田畑を守りたい、面倒を見てくれた長男に全財産を相続させたい、実家に寄り付かない次男には一切相続させたくない、など。このような想いを実現するためにこそ、遺言を作成するのだ。しかし、例えば次男の取得分をゼロにしてしまうと、次男から長男に対し遺留分減殺請求を受けることになる。思いを大切にするあまり、各相続人間の取得分がアンバランスな内容の遺言になることも。

特定の相続人だけ優遇された内容の遺言を作成した場合、他の相続人からすれば、優遇された相続人が無理やり作成させたものではないかと疑いたくなるだろう。
遺言の内容をめぐって相続人の間で争いが生じるのは、遺言者が亡くなっているからなので、遺言者の意思で遺言を作成したか否か、直接確認することはできない。自分の面倒を見てくれたことに関する感謝の気持ちを伝えるためなど、正当な理由に基づいた結果として偏った内容の遺言を作成した場合には、その旨を遺言に付記しておくのがよい。それによって、分割方法について相続人が納得してくれれば、争いを回避することができる。

法定遺言事項ではないけれども、遺言に書き添えた事項のことを付言事項という。遺言者の最後のメッセージ、追伸のようなものである。具体的には、相続分を指定した理由や、葬式や法要の仕方、家族・親族の付き合い、今までの感謝の気持ちについて書き加えることが多い。もっとも、この付言事項には法的拘束力がないので、相続人は必ずしも付言事項を守らねばならないというわけではない。しかし、遺言者の最後のメッセージとして、相続人への説得力はあり、自分にとって不利な内容の遺言であった相続人としても納得せざるを得ないことになるだろう。遺言者の意思を実現して、円満な相続につながる効果があるといえる。

②専門家に確認してもらう

どんなに注意をしても、自分1人で作成する自筆証書遺言は、要件不備で無効となる可能性がゼロとはいえない。また、せっかく遺言を作成しても遺産分割協議が必要となることもある。自分だけでは複雑なシミュレーションをできないことが多く、単純な内容の遺言しか書けないということが原因だ。例えば、均等に相続させる内容の遺言を書くパターンでは「甲に財産の3分の1を相続させる・乙に財産の3分の1を相続させる・丙に財産の3分の1を相続させる」というのが、自筆証書遺言でよく書かれているパターンだ。しかし、具体的な財産の帰属が書いていないので、結局、遺産分割協議が必要になる。不動産など、簡単に分けられない財産について、分け方を巡って相続争いが起きることがある。そうなると、せっかく家族がもめないようにと作成した遺言がもめごとの原因になってしまいかねない。

一度、専門家である弁護士に内容を確認してもらうとよいだろう。弁護士には守秘義務があるので、遺言を見せてもその内容が外部に漏れる心配はない。
そもそも自分で遺言を書くことはなかなか難しいというのであれば、遺言の作成を、弁護士・税理士に依頼することも検討すべきだ。遺言作成において考慮すべき要素は、前述の遺言者の思いだけでなく、遺留分対策(紛争防止)、相続税対策もポイントになる。
この三つのバランスを取った遺言の最適解を提案することこそが、専門家の役割なのだ。

遺留分対策について、遺留分を侵害された相続人が権利行使すれば、認めなくてはならない。せっかく遺言を作成して、遺産分割協議を不要にしたにもかかわらず、遺産分割協議以上に面倒で時間もかかる遺留分減殺請求訴訟に相続人が巻き込まれてしまうことになる。そこで遺言者としては、遺留分を侵害しないように配慮する必要がある。一つは取得分を少なくしたい相続人の相続分を確保するように、遺言の内容を調整する。もう一つは遺留分自体を少なくすることによって、遺留分減殺請求封じをする。後者の遺留分減殺請求封じには、遺言者の置かれた状況に応じた方策を取ることができる。しかし、これでも不完全なのだ。相続税対策が不十分で、節税効果がゼロになってしまうこともあるからだ。

そこで、相続税対策も同時に行うことになる。相続税増税に伴って、相続税対策を考慮した遺言の作成を検討する方が増えている。相続税は現金で一括払い。納税資金の準備として、現金を残すことが必要になる。また、増税によって納税額が増えるので、節税効果が高い対策をすることも検討が必要だ。相続税額は遺産の分け方によって異なるので、遺言の作成内容によって節税が見込める。
また、配偶者控除(配偶者の税額の軽減)を使って相続税額を下げたい、不動産を購入して節税対策を立てたい、小規模宅地等の特例を用いて土地の評価を下げたいなどの要望に応えるためには、税務面についてもアドバイスできる専門家に相談することが重要だ。

2次相続時の相続税も考慮した相続税額のシミュレーションやそもそもの財産構成の見直しなども含めて専門家にアドバイスをもらい、遺言の内容を提案してもらう必要がある。

③検認手続きが必要なことを伝える

自筆証書遺言の場合、遺言者だけでなく相続人も注意すべきことがある。
まず、自筆証書遺言の場合、遺言の検認の手続きが必要となる。遺言の検認とは、相続人に対して遺言の存在及び内容を知らせるとともに、遺言の形状や加除訂正の状態、日付、署名などの遺言の状態を明らかにすることで、遺言の偽造・変造を防止するための手続きである。

自筆証書遺言の場合、保管も自分で行わねばならないので、自宅に保管するのが心配な人は、第三者に保管を依頼することがある。遺言書の保管者が遺言者の死亡を知った場合や、相続人が遺言書を発見した場合には、速やかに家庭裁判所の検認の申立てを行う。なお、検認手続きは遺言の中身についての有効・無効を判断するものではないので、遺言の中身について疑わしい部分がある場合には、検認後に有効・無効を争う裁判をすることもできる。

また、封印のある遺言書の場合、遺言書の開封は検認手続きの中で行われるので、勝手に開くことはできない。相続人や代理人が立ち会い、検認を受けると検認調書が作成され、検認に立ち会わなかった相続人に対しては、検認されたことが通知される。家庭裁判所以外で勝手に開封をした者は、5万円以下の過料に処せられることがある。

すべての相続人がそのような知識を持っているわけではない。遺言書を見つけた相続人が勝手に開封してはいけないことを知らず、また遺言書を自分に有利なように改ざんしようという気もなく、何となく開封してしまった場合でも、それが原因でもめることになってしまう可能性がある。遺言者は、遺言書の封筒に「開封せずに家庭裁判所に提出し検認を受けなければならないこと、家庭裁判所以外で開封した場合には過料に処せられること」と記載しておくのがよいだろう。

葬儀・お墓

「終活」の一つとして、自分意向に沿ったより良い葬儀・お墓を用意するために、事前に相談し、準備しておく方が増えている。

(1)葬儀の種類

ここ10年くらいの間に、急速に葬儀の形式や内容が変化し、多様化してきている。その流れは、葬儀で「自分らしさ」を表現したいという風潮からきているのだろう。
つまり、葬儀は、自分が家族、友人、知り合いとお別れをする場なので、自分らしい葬儀とすべきであると考える方が増えているのだ。
そのため、葬儀の事前相談がより重要となり、人生のエンディングに向けて総合的なアドバイスを背景とした、葬儀のプランニングが必要不可欠となる。
もっとも、いったい葬儀にはどのような種類があるのか、あらかじめ知識を持ってから事前相談した方が、自分の希望を伝えやすいだろう。

葬儀の種類

種類 特徴
自宅葬 ・住み慣れた自宅から見送られる葬儀。
・自由度が非常に高い葬儀が可能。
・式場費用がかからない。
家族葬 ・参列者を家族・親しい友人に限定し、少人数でゆっくりと見送られる葬儀。
・自由なスタイルの葬儀が可能。
・密葬と異なり、2日間かけて通夜・葬儀告別式を行う。
・費用を抑えることができる。
一般葬 ・友人・ご近所・会社関係者を招いて、しっかりと見送られる葬儀。
・2日間かけて、通夜・葬儀告別式を行う
一日葬 ・通夜がなく、葬儀告別式・火葬を一日で行う葬儀。
・通夜がない分、家族や参列者の負担を軽減できる。
・費用を若干抑えることができる。
直葬 ・最も費用を抑え、慎ましやかに見送られる葬儀。
・火葬のみ

(2)葬儀社の選び方

葬儀社を選ぶのは人生に1度か2度あるかないか。どの葬儀社がよいのか分からない方が多いのではないだろうか。
そのため、「大きそうだから」「有名だから」という理由だけで選びがちになってしまうのではないか。自分の意向に沿った葬儀とするためには、ポイントを抑えて選択する必要がある。思い込みだけで選んでしまうと、費用が高額になったり、自分の意向に沿わない葬儀になったりしかねないので注意が必要だ。

葬儀社を選択する際には、7から8社程度くらいを目安に候補業者を絞って、資料を取り寄せて平均的な費用や葬儀内容を把握したい。このとき、全国規模の葬儀社と共に地元で長年続いている葬儀社も候補に入れるとよいだろう。地元の葬儀社は、長年続けられるだけの理由と信頼があるはず。また、独自の丁寧なサービスを提供している葬儀社もある。地元の葬儀社の候補を探すときはこの点を抑えるべきだ。一方、全国規模の葬儀社は、規模を生かして費用を抑えられることや、プランもあらかじめ決められたものがあるので選択しやすい。

また、追加料金のない業者も選択肢に入れておくとよい。一般業者の場合、見積もり金額を提示した後、追加料金が発生することがある。葬儀の最中に急に何かをお願いしたとき、それがプランに入っていないと、別料金となって加算されてしまうからだ。プランの内容を把握していたとしても、あわただしい葬儀の最中に、そこまで考えてられないというのが実情だろう。葬儀社の中には、この点を改善し、あらかじめ追加料金なしのプランを用意しているところがある。このような葬儀社であれば、当日余計なことを考えずに済むので、残された家族は安心だ。

次に、資料を取り寄せた後、どのようなサービスをどの程度の金額で行ってもらえるのか確認する。これを行わないと、実際に葬儀を行っている際に納得できなかったり、費用が高額となったりするトラブルにつながる。

そのため、資料を取り寄せた後の比較はとても重要といえる。
また、自分がどのような葬儀を依頼したいのか明確にすることが大切である。そのためにも「いま世の中でどのような葬儀が用意されているのか」「費用によってサービスがどの程度変わってくるのか」など幅広く情報収集しておくことが重要である。その上で、規模、価格、サービスを総合的にみて、どのサービスにどの程度の費用をかけるのか決める。
葬儀社には、それぞれ特徴があり、当然強みと弱みがある。何を優先するのか、どの程度費用をかけるのかという希望がなければ、到底選ぶことができない。
葬儀は「人生の最後を飾る儀式」と考え、自分らしさを演出した葬儀を希望する方が増えている。個性的な葬儀を希望するのであれば、その点重視したサービスを提供している葬儀社を選択することも検討しなければならない。

ある程度候補が絞られたら、担当者と直接話して情報収集することになる。「将来に備えて話を聞きたい」と断っておけば、気軽に話を聞くことができる。その際、サービスなどの細かい点についてチェックすべきだ。細かな点でずれがあると、残された家族がトラブルに巻き込まれることになるかもしれない。また、担当者は、葬儀を依頼するにあたっての窓口であり、かつ、残された家族が連絡を取る窓口となる。その担当者の人柄を確かめ、信頼できそうになければ担当者を代えてもらう必要がある。
担当者と話す際のチェックポイントを以下とおりである。

  • ①資料、パンフレット、過去の事例などを使って、わかりやすく説明するか。
  • ②希望を聞いて色々と選択肢を提案してくれるか。
  • ③質問に対し、丁寧な対応をしてくれるか。
  • ④契約を急かさないか。
  • ⑤事前に明確な見積もりと、その詳細の説明があるか。
  • ⑥支払期日に余裕があるか。

そして、葬儀社を最終決定する前に、資料等を用意して家族に話し、理解を得ておくことが重要だ。
家族との良い別れの儀式にするために、家族を巻き込んだ準備が必要となる。

(3)墓じたく

お墓の準備はきわめて重要だ。遺骨を埋めることができる場所は、墓地埋葬法によって墓地(霊園)だけとされているためだ。
仮に、勝手に遺骨を埋めると死体遺棄罪に問われる可能性がある。したがって、「散骨する」といって、自宅の庭や山林に埋めたら違法となるのだ。自宅の敷地にお墓を作ればよいのではと考える人もいるだろう。確かに、地方に行くと、自宅の敷地内に建ててある家墓や屋敷墓という風習が残っているところもある。しかし、墓地や納骨堂を経営できるのは、地方公共団体、宗教法人、公益法人など一部に限られており、自身の敷地にお墓を新たにつくることはできない。ちなみに、現在では、家墓や屋敷墓を新たにつくることはできないことになっている。

死後お墓に入りたいと考える人は、まず、お墓選びを検討すべきだ。選ぶにあたって、墓地に墓石を建てて遺骨を埋葬する従来型の墓のみならず、納骨堂などを選ぶ人が増えている。購入費用が比較的安く、配偶者、子ども、孫など残された家族の負担も小さいというのが大きな理由のようだ。
もちろん、船をチャーターし近海に散骨する海洋葬や、多数の骨と一緒に樹木の下に散骨される樹木葬もある。ただ、遺骨は一瞬で海に散ってしまい、その後の供養ができなかったり、樹木は墓石に比べ寿命が短かったりするなどデメリットもあるようだ。
埋葬せずに手元に置いておくことは問題ない。「手元供養」といって骨壷にいれて仏壇に置いたままにしている人や、遺骨を宝石やアクセサリーに入れて持ち歩く人もいる。ただ、遺骨の持ち主がなくなると、遺骨を供養できなくなる危険がある。
それぞれ一長一短であるので、それぞれの特徴を知り、納得のいく墓じたくをすべきだ。

(4)永代供養墓とは

一族の墓である「同族墓」や「家墓」を継承しない人の受け皿として、「永代供養墓」が急増している。寺院墓地や公営霊園の一般的な永代供養墓だけでなく、最近は、慰霊空間を工夫したビル型納骨堂や、「自然に還る」イメージがある樹木葬などが人気だ。永代供養の特徴として、宗教・宗派を問わないこと、檀家になる必要がないこと、料金が明確であることなどが挙げられる。このように一見、個性的で、料金やしくみも分かり易い永代供養墓。しかし、例えば、永代供養ならば「永久に供養してもらえる」と安心していないだろうか。実際、このタイプの墓はどのような弔い方をするのかなど知らない人が多い。そこで、この永代供養の主な方法について次の三つを紹介する。

  • ①遺骨を入れた骨壷を一定期間安置。その後、遺骨を骨壷から取り出して他の遺骨と一緒に合祀。
  • ②半永久的に骨壷で安置。
  • ③最初から遺骨を骨壷から出し、他の遺骨と一緒に合祀。

一般的な永代供養は、①のタイプだ。例えば、33回忌(お寺によっては、17回忌や50回忌など)の節目で合祀するようだ。最終的には、墓地の管理者が遺骨を供養することになる。また、費用については、永代使用料、永代供養料、収蔵料を支払うが、一度支払ってしまうとその後の管理料などはかからないようだ。
「永代供養墓」の種類についても様々だ。

①単独墓タイプ

個人墓、夫婦だけで入るお墓(夫婦墓)などがある。

②集合墓タイプ

遺骨は個別のカロート(納骨室)に安置され、全体が一つの大きな墓となっている。

③共同墓タイプ

他の人と一緒に埋葬する墓で、合祀墓、合葬墓とも呼ばれている。共同墓は、個別の墓石費用がかからず、納骨と供養の費用が抑えることができる。

④納骨堂

お墓のように土の中に埋葬する形態ではなく、屋内の収蔵庫に遺骨を骨壷のまま安置する。ロッカー式、棚式、仏壇式、お墓式など様々な形式の納骨堂がある。

住まいに例えていえば、旧来の「家墓」は一戸建て、「永代供養墓」は賃貸マンションといったところだろうか。つまり、一定期間は供養してもらえるが、「同族墓」や「家族墓」と違って死後ずっと供養してもらえるかの保証はないのだ。
また、費用を安く抑えられるといっても、安易に考えるべきではない。実際にかかる費用についても情報収集し、比較してみる必要がある。
墓じたくにあたっては、自分や配偶者の死に際し、死後の住まいを心配しなくてもすむよう、確かな情報・知識によって選びたいものである。

(5)散骨も大変

墓じたくの選択肢として人気が出てきた自然葬。「死後、大自然に還ることができる」というイメージもあり、選択する人が増えている。海へ散骨する海洋葬、木の根元などに埋葬する樹木葬が人気だ。その理由としては、埋葬費用が抑えられること、お墓の継承の問題もないので単身者が利用しやすいこと、自然に還ることができること、遺骨保管料がかからないこと、無宗教でもよいことなど、誰でも利用しやすい形態であることが挙げられる。

しかし、現実はそう簡単なことではない。散骨を行うには、まず、遺骨を粉末状にしなければならない。その上で、陸地から数十キロ離れた海域まで出向くなどして、散骨することになるのだ。散骨する現場に立ち合う家族からは、散骨という形態の理解が得られなかったり、すべて散骨するとお参りする場所がなく、残された家族が戸惑ったりするなど、理想と現実のギャップに困惑するケースがあるのも事実。
自分の希望だけに固執するのではなく、家族の理解を得た墓じまいを検討すべきである。

(6)墓石にも個性がある

近年墓石についても伝統にとらわれない様々なものが見受けられるようになった。
建てる場所や宗教に関係なく自由に選べることもあり、近年は、伝統的な和型のお墓よりも、自分を象徴するような言葉を刻んだり、趣味などを反映した形にしたりとデザインにこだわった「デザイン墓」や、シンプルな洋風のお墓が選ばれているようだ。ただ、事前に墓石を準備しなければならず、資金確保も必要だ。

Columnデザイン墓

一般社団法人全国優良石材店の会が実施した「2015年お墓購入者アンケート調査」の調査結果によると、墓石の購入者のうちデザイン墓を選ぶ人の割合は2004年から約2倍に増加しているとのこと。
そのデザインも人それぞれ。生き甲斐であったピアノをかたどり、思い出の曲のメロディを彫刻したお墓、趣味のゴルフにちなんでゴルフボールをかたどったお墓、乗り続けた愛車をかたどったお墓など、自らの想いをそのまま形にしたものが多いようだ。

(7)お墓選びの注意点

このようにお墓も多様化する中で、どのような形のお墓を選択するのか迷うことであろう。

お墓選びの主なポイント

実際に現地に行くこと

例えば、新聞などのチラシで紹介されたものは1番安い価格のものであることが多く、小さな墓石を狭いスペースに目一杯を使って建てるということになるため、思った以上にお墓が窮屈に感じることがある。実際に自ら買おうとしている区画に墓石をのせるとどのようになるのか現地で確認する必要がある。
また、急斜面を上らないといけない場所ではないか、駐車場、トイレなどお墓参りの設備が整っているかも併せて確認する。

遺族の住まいからの距離

月命日や祥月命日、お彼岸、年忌法要など、意外とお参りに行く機会は多いもの。
定期的な掃除やお墓参りなどを考えると、ある程度生活の拠点からのアクセスも考えなければならない。

法要等を見据えて墓地・霊園の設備もチェック

定期的に法事があることを考えると、僧侶の読経・焼香、お墓参り・会食のことも考えなくてはならない。法事を営むホールなどはあるのか、会食を行う施設はあるのかなども考慮しておくべきだ。
霊園自体にはなくとも、周辺に代わりに使えるホールや料理屋があるかどうかは見ておいた方がよい。これらがない場合は準備に手間取ることになる。

さらに、次の2点もお墓選びでは、注意しなければならない。

①関東と関西ではお墓への納骨方法が異なる

関東と関西では、納骨方法が異なる。関東では、骨壷ごと墓に納骨するが、関西の多くの墓は骨壷から出して納骨する。「遺骨を永久に墓の中に残しておきたい」と考える人が関西地区でお墓を購入する場合は、事前に納骨方法について下調べしておく必要がある。
また、骨壷の大きさも関東と関西では異なる。東京では、火葬場ですべての遺骨を持って帰るため、骨壷のサイズは7から8寸とかなり大きい。

一方、関西では、喉仏など一部の遺骨を拾い、多くの骨を火葬場に置いて帰るので、骨壷の大きさは5寸が多く、関東より小さい。そのため、関西の墓の納骨室は、関東よりも小さいのだ。関東で火葬し関西のお墓に納めようとすると、すべての遺骨が納骨室に入りきらないため、手元に置くなど対処が必要となる。

②お墓と納骨堂の違いは

地面に穴を掘って遺体や遺骨を埋めるのがお墓。つまり「死者の家」だ。納骨堂は「室内型のお墓」であり、死者のマンションのようなものだ。お墓の場合、最終的には土に還ることを目的とする一方、納骨堂は遺骨の仮置きといった意味合いが強い。

(8)契約の流れ

新しい墓地を見つけてから契約するまでの大まかな流れを確認する。

①情報収集

広告チラシを見たり、インターネットなどで調べたりして、販売されている墓地を大まかに把握する。

②墓地の絞り込み

費用、立地、慣用、設備、申し込み資格などを検討して、絞り込みをする。

③墓地の下見

広告チラシやインターネット画像は、加工されていることが少なくない。実際の永代供養墓や樹木葬の場所は、めったに日が差さず、湿ったところであるにもかかわらず、広告では空を明るくしたり、背景の木々も色鮮やかにしていたりする場合がある。また、イメージダウンになるような画像はカットされ、上手に差し替えられていることも。そのため、交通の便、実際の環境、管理状況などを必ず自分の目で確かめる必要がある。

④使用規約の確認

永代使用権に関する事項、墓石に関する事項などを確認する。例えば、お墓を管理する人がいなくなった場合、そのお墓がどうなるのかという点まで調べておく。墓じまいされて永代供養墓に移されるのは何年後かなどについて確認が必要だ。

⑤申し込み・契約手続き

条件が全てクリアになったら、申し込み・契約手続きに入る。併せて解約したくなった場合の条件も確認しておく。

(9)葬儀・お墓に関するトラブル

葬儀社と契約をしたり、お墓を購入したりすることに慣れている方はいない。人生において1度あるかどうかというのが現実だ。葬儀やお墓は自分の生き様の集大成ともいえる重要なものであり、慎重に契約などを進める必要がある一方、葬儀やお墓に関するトラブルも多くみられる。
複数の葬儀社を見学し、ある程度候補を絞ることができたので、候補のうちの一社と仮契約を結ぶつもりで書面にサインしたら、その書面は本契約の書面であり、葬儀社から契約費用を請求されたというトラブルもある。葬儀社との契約に限らないが、今自分がサインしている書面がどのような書面であるのか、最終的に本申し込みする場合にはどのような手続きが必要となるのか、途中で解約することができるのか、解約には費用がかかるのかなどについて十分に確認する必要がある。葬儀という非日常的な出来事に関する契約を進めるがゆえに、どうしても冷静になれないこともあろうが、自分の人生の最後を飾る儀式であるから、慎重に行動すべきであろう。
また、墓地を決めて永代使用料を支払ったが、誰に支払ったかもよくわからず、領収書などの書面ももらわなかったところ、その後に実際に墓石の値段を聞いてみたら200万円と言われてしまったというケースも。多くの墓地を見学し、ようやく気に入る墓地を見つけて安心し気が緩んでしまったのか、通常であれば確認する契約条件などを確認せずにお金を支払ってしまうというケースが多い。金額の差はあるが、お墓の購入は家の購入と同じ感覚で進めるべきだ。家を購入する際に、見積りや領収書をもらわずに契約を進めることはしないだろう。お墓を購入する場合も同様に、契約書や見積書、領収書を確実に受領する必要がある。
後にトラブルに発展しないためにも、契約するうえでわからないことや不備などがあれば、躊躇することなく葬儀社や墓石販売店などに確認し、十分に契約内容を理解したうえで気持ちよく購入したい。

(10)葬儀・お墓の費用の準備

「より良い葬儀」「より良いお墓」を準備するには、プランだけでなく、費用面も気にしなければならない。
実際、総額費用がどれくらいになるか、費用を準備する方法として何が適切なのか不安に思われる方が多く、プランニングと共に、事前相談の重要度がますます高まっている。
日本消費者協会による「葬儀についてのアンケート調査」の結果によると、葬儀費用の全国平均額は188万9000円(出典:日本消費者協会「第10回葬儀についてのアンケート調査」報告書)との報告があり、また、お墓に関しても、地域差はあるものの、新たに建てるとすると、墓石の購入費用と永代使用料を併せて約200万円程度が目安となる。
つまり、葬儀・お墓に関して、ある程度まとまったお金を準備しておく必要があるのだ。
葬儀費用の準備方法については、従来の預貯金や積立だけでなく、最近では、保険、葬祭信託もある。

葬儀費用の準備方法のメリット・デメリット
メリット デメリット
預貯金:
金融機関に預ける方法
・自由に出し入れできる。
・葬儀・お墓以外の目的でも使用できる。
・出し入れが自由な分、なかなか貯まらないおそれがある。
・口座名義人が亡くなると口座凍結され、引出しが難しくなる。
積立:
互助会などで毎月一定額積み立てる方法
・計画的に費用を準備できる。
・葬儀・お墓以外の目的でも使用できる。
・積立金だけでは費用を全て賄えないことが多い。
・積立先が破たんすると、積立金が保証されないおそれがある。
保険:
保険に加入し、万が一の時、保険金を費用に充てる方法
・計画的に費用を準備できる。
・加入期間が短くとも一定の金額を準備できる。
税法上のメリットがある。
・年齢や健康状態によって加入できないおそれがある。
葬儀信託:
葬儀内容を事前に協議し、その葬儀費用を銀行に信託財産として預ける方法
・葬儀の内容・費用を全て生前に準備できる。 ・預ける時点である程度まとまった金額を準備しなければならない。
・事前に喪主候補者の選出が必要となる。

遺品整理

「遺品整理」は、家族にとって、単なる物の整理ではなく、思い出の整理でもあるため、精神的に辛いものであり、なかなか踏ん切りがつかないまま整理できず、ずるずると先延ばしにしてしまう。
家族が常に忙しく遺品整理の時間を確保することができなかったり、日程調整が難しく一同に揃うことが難しかったり、子どもも既に高齢であり肉体的衰えから整理するのが難しいなど様々な問題を抱え、手間と時間をかけて遺品整理や片付けを行うことができないケースも多くみられる。

また、遺品整理は持ち主の方が亡くなっているので、「いる物・いらない物」の区別が難しい。そのため、残された家族に多くの手間と精神的負担が、重くのしかかってくるものである。いざ遺品整理を始めても、残すモノと捨てるモノを決めるのにかなりの時間と決意を要し、結局片付けが遅々として進まない。

そこで、家族のためを思って、生前に遺品整理の準備・手配をしておき、「自分の整理は生きているうちに自分でつけておく」こと、「生前整理」が必要となる。ポイントとなるのは、自分が元気できちんと判断できるうちに行うこと。健康のあいだは「まだまだ大丈夫」と思って手をつけないことが多いが、体力が衰えたり、病に倒れたりしてから、やらねばと思っても遅すぎる。まだ片付けができるうちに始めてこそ、満足いく整理ができるのだ。
遺品整理や、住み替えのことを考えると、まず実行すべきは、年を重ねて増えるだけ増えた荷物の数々の断捨離。これからの生活に本当に必要であるか考え直すべきだ。断捨離は避けて通れない大きな問題なのだ。

断捨離の目的は、物を捨てることではない。「捨てる」という言葉に抵抗感があるかもしれないが、本来の目的は、「健康、安全、快適に暮らすこと」と「遺品整理で残された家族に迷惑をかけないこと」。無理やり捨てるというわけではなく、捨てたくないものは捨てなくともよいのだ。

具体的には、まずは、荷物を分類することから始める。ここで多くの人は、「使える物」「使えない物」という両極端の分け方をする。しかし、これは大間違い。この分類では、高齢者はほぼ「使える物」に振り分けてしまう。そこで、「使っている物」「使っていない物」「使っていないけど捨てられない物」という分け方をしてみるとよい。例えば、1年に一度、元旦にしか使わないものでも、「使っている物」にする。そして、使っていないけど、捨てるのはどうかと迷ったときの救済措置を残しておくことで、作業を効率的に進めるのだ。「使っていない物」に分類された物は、処分する。処分といっても、捨てる必要はなく、リサイクルショップに持ち込む、ネットオークションで売り出すなど色々な処分方法を活用したい。使っていない物にも需要があるはずだ。次に、「使っていないけど、捨てられない物」は、一時保管箱としてダンボールなどに入れてそのまま保管する。

まずは、分類しやすいものから手をつけるべきだ。例えば毎日使っているキッチンや洗面所から始めるとよいであろう。衣服や書類などは思い入れもあるので、ここから始めるとなかなか進まない。

断捨離した結果、家族宛に、「何を残しておいて欲しいのか」書き置きをしておくことで、家族がスムーズかつ納得がいく遺品整理をすることできる。また、通帳、印鑑、不動産の権利証、生命保険証書など、相続財産の所在は、遺産分割協議が円滑に進むように明確にして書き置きしておくべきだ。
遺品整理業者を選択しておくことも残された家族にとって心強いもの。その費用は、30万円以内で収まっていることが多い一方で、100万円以上かかることも珍しくないようだ。このように、遺品整理にかかる費用に幅があるのは、きちんと業者間で決められた相場があるわけではないからだ。遺品整理の料金は、①部屋の間取り(3LDKなど)による料金設定と、②処分品を運ぶトラックのサイズと台数による料金設定が多いようだ。①の場合、部屋数が多い割には荷物が少ないと割高になるので、料金設定基準をみて慎重に検討する必要がある。一方、極端に安い値段で料金設定している業者も見受けられる。こういった業者は「とりあえず見積もりを依頼させ、後で割増料金を請求しよう」と考えている可能性があるので注意が必要だ。

業者への依頼は、問い合わせ後、業者による見積もりを見たうえで打ち合わせをして、その後正式依頼となる。ここでのポイントは、きちんと打ち合わせをすること。業者が見積もりに来たときに、何を頼めるのか確認することと併せて、相続財産になりそうな物や貴重品の選定などを頼めるのかも聞いてみるとよいだろう。
なお、相続人が遺品整理に着手すると、単純相続とみなされて、相続放棄をできなくなる場合がある。マイナス資産が多く相続放棄する可能性があれば、業者を手配する前に弁護士や税理士に相談することをお勧めする。

2020-02-16 22:19 [Posted by]:BMB