土地の所有者等が調査命令や汚染除去の措置命令に従わない場合はどうなりますか。
第一に、刑罰について検討します。調査命令に違反した場合ですが、今、調査命令を受けた者が法人で、その法人が調査命令を無視した場合を考えます。この場合、法人の不作為に責任があるのは、その不作為を決めた者たちでしょうから、取締役会でその不作為を決めたとすれば、これらの者が命令に違反したということで、法65条により、これらの者は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。また法68条に両罰規定がありますので、法人は、同様の罰金が科されます。また汚染の除去等の措置命令を無視した場合もまったく同様です。なお措置命令の前に措置の指示がなされますが、この指示に従わない場合は、措置命令が出るのであって、指示に従わないから罰則の適用が直ちにあるというわけではありません。
第二に、それならば罰金を払えばそれで終わりか、調査や汚染の除去を強制されないのかという問題があります。これについては、都道府県知事による行政代執行が可能なのかという問題があります。行政代執行は裁判所の関与なしに行政限りで執行を進めることができるというものですので、法律の根拠を必要とし、その根拠は行政執行行為そのものに必要であるとするのが通説です。土壌汚染対策法では。本事例のようなケースを想定した行政的執行行為を定めた規定はありませんので(都道府県知事が自ら行える場合は、法5条2項、7条5項に限られるように思われます)、本事例のようなケースでは行政代執行は認められないのではないかと考えます。