売買対象土地の汚染を調査せずに売却することにはどのようなリスクがありますか。また汚染の調査後に売却するにはどのようなことに気を付けるべきでしょうか。
まず、売主自身が汚染の原因を作っている可能性がある場合は、後日、原因者として汚染の除去等の措置に要した費用の償還を請求される可能性があります(法8条1項)。売主自身が原因を作っているのであれば、このような費用負担は当然でもありますが、問題なのは買主が汚染行為を行う可能性がある場合(又は汚染行為を行う恐れがある者に転売する可能性がある場合)です。後日、買主が汚染行為を行ったにもかかわらず、売主が自らの潔白を証明できずに、原因者として認定されるリスクもないとはいえません。したがって買主が汚染行為を行うおそれがある場合(又は汚染行為を行う恐れがある者に転売する可能性がある場合)は、引渡しの時点で汚染がないことを確認する意味でも汚染の調査が望ましい場合があると思われます。
それでは、土壌汚染の調査を行った場合に売却にあたってはどのようなことに注意すべきでしょうか。
まず、土壌汚染の調査は、多くの場合、土壌汚染対策法で定められた調査方法のものであることが求められると思います。土壌汚染調査の方法が粗くて汚染が発覚しなかっただけというのであれば、問題が将来起こるからです。なお、土壌汚染調査を土壌汚染対策法で定められた調査により行って土壌汚染が判明しなかったとしても、それはその土地が100%清浄であるということを意味するものではないということに注意をすべきです。つまり土壌汚染対策法で調査をすべきとされているポイントでは汚染が判明しなかったというだけで、それ以上のものではないからです。もっとも土壌汚染対策法で定められた調査であれば、相当程度の確率で汚染を明らかにしてくれると思われますが、その確率もそれほど高くはないようです。実務家の間からは80%くらいの確率でないかといわれることもあり、そのような限界があることを理解していなければなりません。
この土壌汚染調査の限界については、むしろいったん、調査を行って土壌汚染が判明し、対策を講じて売却する場合に注意が必要です。実際、対策を講じたため売主としては清浄な土地となったと思って売却した場合に、買主が念のためにまたは金融機関の要請により再度調査をした場合に、汚染が発覚したという事例が少なからず発生しているからです。もちろん、可能性として、調査や対策に不備がある場合もあるでしょうが、土壌汚染対策法で定める調査を完璧に行ったとしても、上記の限界からそもそも判明していなかった汚染は地中に眠っていたという場合もあるように思われます。したがって、売却にあたっては、土壌汚染対策法に準拠して一定の調査を行い、一定の対策を行ったという客観的な事実のみを告げるべきで、安易に「この土地は真っ白だ」といった買主を誤解させる発言は慎むべきです。