土壌汚染土地担保債権の評価

金融機関の融資先に対する抵当権付き債権の抵当不動産に深刻な土壌汚染(濃度基準を超過する汚染)が存在することが判明した場合、金融機関はその債権につき財務諸表上どのように処理しなければならないのですか。

債権の貸借対照表は取得価額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額とされています(「金融商品に関する会計基準」14項参照)。
貸倒見積高は債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、債権を「一般債権」、「貸倒疑念債権」、「破産更生債権等」に区分し(同基準27項参照)、損も区分に応じて算定します(同基準28項参照)。
「一般債権」とは、経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権をいい(同基準27項(1)参照)、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定します(同基準28項(1)参照)。
したがって抵当不動産に深刻な土壌汚染が発生したとしても、融資先の経営状態に重大な問題が生じていなければ、当該債権は「一般債権」に区分され、過去の貸倒実績率等合理的な基準により算定した貸倒見積高を貸倒引当金として計上すればよいことになり、土壌汚染の影響は受けません。
「貸倒懸念債権」とは、経営破たんの状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債務をいい(同基準27項(2)参照)、債権の状況に応じて「財務内容評価法」又は「キャッシュ・フロー見積法」により貸倒見積高を算定します(同基準28項(2)、「金融商品会計に関する実務指針」113頁(1)参照)。
貸倒懸念債権について、担保の処分により債権回収を行うことが見込まれるなど、財務内容評価法を用いることが適当な場合、深刻な土壌汚染の存在は、担保の処分見込額を下落させることになりますので、貸倒見積額が増加し、貸倒引当金をその分多く計上する必要があります。
「キャッシュ・フロー見積法」とは、債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積もることができる債権につき、債権の元本及び利息について元本の回収及び利息の受取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり、当初の約定利子率(条件緩和による引き下げ後の利率ではなく、当初の契約上の利子率をいいます)で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法をいいます(同菌28項(2)②、「金融商品会計に関する実務指針」113項(2)参照)。したがって貸倒引当金の計上額は新たな合意に基づくキャッシュ・フロー(元金返済+利息支払額)を当初の利子率で割り引いた現在価値と期末帳簿価額との差額になります。貸倒疑念債権について利子率の引下げや弁済期のリスケジュールを行うことで債権回収を行うなど、キャッシュ・フロー見積法を用いることが適当な場合、土壌汚染の存在は貸倒見積高の算定上影響を与えません。
「破産更生債権等」とは、経営破綻または実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権をいい(同基準27項(3)参照)、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とします(同基準28項(3)参照)。
この場合、深刻な土壌汚染の存在は、担保の処分見込額を下落させることになりますので、貸倒見積額が増額し、貸倒引当金をその分多く計上する必要があります。なお貸倒引当金の計上に代えて、債権金額から直接減額することもできます(同基準注10参照)。

2017-12-13 15:47 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 東京永田町法律事務所