汚染原因者に対する責任追及

当社は汚染した土地を有していますが、汚染の原因者に対してどのような請求がいつまで可能ですか。

土壌汚染対策法では都道府県知事から土壌汚染対策法に基づいて汚染の除去等の措置の指示を受け、これに従って実施に支出した費用について、原因者に求償するための特別の措置が設けられています(法8条1項)。なおこの場合の請求は、当該指示措置を講じ、かつ原因者を知ったときから3年以内に行う必要があり、また当該指示措置を講じた時から20年を経過すれば請求できません(法8条2項)。
土壌汚染対策法が原因者に対する土壌汚染対策費用請求に関してとくによういしている条項は法8条のみですから、道場に該当しないケースはすべて民法の一般理論から考えなければいけません。例えば平成21年改正により導入された法4条の大規模な土地の形質の変更にともなう調査の結果、汚染が判明し、汚染対策を行わなければ所期の開発ができない場合も、その対策費用について、これを原因者に求償する手助けとなる規定はこの法律にはないことに注意が必要です。もちろん、調査の結果、濃度基準を超えるだけでなく、放置すれば健康被害をもたらす恐れがあるとして要措置区域に指定され、指示措置を講じる場合は法7条の問題になりますので、法8条の求償規定が適用されますが、調査の結果、濃度基準を超えるだけで放置しただけでは健康被害の恐れがない場合は、法7条や法8条の問題にはならず、形質変更時変更届出区域における規制に服するだけです。しかし、かかる区域での現状の形質変更を行う場合も、形質の変更の内容次第では、健康被害をもたらす恐れが生じるかもしれませんし、それはなくても汚染土壌を土地の外に搬出し処分するにあたって、規制に服さざるを得ないので、費用が掛かります。これは、開発をするにあたっては不可避の費用となります。その意味で、土地の所有者等にとっては損害が生じるといえます。しかしかかる損害については、この法律では何らの救済手段も置いていませんので、この損害発生に対してこれを回復する手段があるのかは、上記の通り、民法の一般理論から考えざるを得ないことになります。
それでは法第4条の大規模な土地の形質の変更に伴い、この法律の規制に服するために必要となる費用を原因者に対して請求する民法上の根拠は果たしてあるでしょうか。可能性のある理論は、不法行為であろうと考えます。しかしこの論点はかなり慎重に考える必要があります。
実は13、14で説明したように、日本では水質汚濁防止法や廃棄物処理法により、土壌への汚染行為が行政法規上禁じられたのは、昭和45年ころからであり、それ以前は少なくとも土壌の汚染行為自体は行政法規に反した行為ではありませんでした。したがって、規制後は規制に反する態様の土壌汚染行為は当然に違法行為となるでしょうが、それ以前の自ら所有する土地の土壌汚染行為は直ちに違法な行為と評価できません。これは例えば、自分の車を叩き壊すことがバカな行為かもしれませんが、違法な行為ではないということを考えると理解がしやすいと思います。ただ土壌汚染行為が原因で現在原因者以外の者が被害をこうむっているという事実があれば、その土壌汚染行為は違法な行為として評価できるのではないかという議論もあろうかと思います。しかしここで考慮しなければならないことは、その被害というものが健康被害であれば、そのように言うことができると思いますが、健康被害リスクを抑えるためにあらたに土壌汚染対策法に導入された規制に服するために発生させる費用であれば、そのようにはいえないのではないかということです。つまりそのような費用の発生は事後的規制によるものであり、原因行為時点で当然に予測すべきものではないだろうということです。当然予測すべきものであれば、その予測可能性があったということで、不法行為責任の成立があり得ますが、そうでなければ不法行為責任の成立はないだろうと考えます。
以上の通りですから、昭和45年ころ以降に水質汚濁防止法や廃棄物処理法に違反して土壌汚染が発生し、原因者以外に被害が生じた場合は、その原因行為は違法な行為ですから、それと現在の土壌汚染対策法の規制による費用の発生について予測可能性があれば、不法行為責任を問われうるということになろうと思います。ただこの場合は、不法行為責任の20年という除籍期間の問題があり、この除籍期間を過ぎているとして責任が否定される場合もあろうと考えます。しかし汚染をもたらす行為が終わった時点から20年を経過すれば全く責任を問われないかというと、またこれも議論がありうると思います。いったん、自分が違法に土壌汚染をもたらした以上は、かかる汚染の存在若しくはその可能性を誤解のない形で処分先に知らしめる作為義務があり、その作為義務に反する不作為を不法行為と評価することもできそうだからです。
汚染の原因者が売主の場合は、売買契約上の売主の責任を追及できます。

2017-12-13 15:14 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 東京永田町法律事務所