汚染土地と会計

土壌汚染のある不動産は、会計上どのような評価を行わなければならないのですか。

企業の主たる営業活動のために使用することを目的として長期間に保有される資産などを固定資産といい、原則として土地も固定資産に含まれます。ただし販売用不動産は棚卸資産として流動資産に含まれるため、不動産会社等が販売目的で所有する土地は流動資産として扱われます。
固定資産については、平成17年4月1日以降開始する事業年度から、「固定資産の減損に係る会計基準」が適用されています。同基準によれば、①現存の兆候のある資産について、②減損損失を認識するかどうか判定し、③減損損失を測定することになります。
減損の兆候とは、資産に減損が生じている可能性を示す事象をいいます(同基準二1.参照)。土壌汚染が発生した場合、資産の回収可能価額を著しく低下させる変化が生じた(同基準二1.②参照)、又は、資産の市場価格が著しく下落した(同基準二1.④参照)として、減損の兆候があると判断されるものと考えられます。
減損の兆候がある資産について、資産から得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価格を下回る場合には、減損損失を認識すべきと判定されます(同基準二.(1)参照)。汚染の除去等の措置を講ずる費用は、割引前将来キャッシュ・フローのマイナス要因となりますので、その金額が多額に上る場合、割引前将来キャッシュ・フローの総額が土地の帳簿価格を下回ることになれば、減損損失を認識すべきと判定されます。また、土地の処分を予定している場合にも、土壌汚染の存在により売却価格が下落することで、割引前将来キャッシュ・フローの総額が土地の帳簿価格を下回ることになれば減損損失を認識すべきと判定されます。
減損損失を認識すべきと判定された資産については、帳簿価格を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失とします(同基準二3.参照)。この回収可能価額とは、売却による回収額である正味売却価額(資産の時価から処分費用見込額を控除して算定される金額)と、使用による回収額である使用価値(資産の継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)のいずれか高い方の金額をいいます(同基準注解(注1)1、「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」28頁、31項参照)。
土壌汚染のある土地については、売却価額が下落することで正味売却価額及び使用後の処分によって見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値が減少し、又は、汚染の除去等の措置を講ずる費用が発生することで、将来キャッシュ・フローの現在価値が減少します。したがって、土壌汚染のある土地については、売却価格の下落額又は汚染の除去費用の現在価値が、減損損失の額に反映されることになります。
このように現行の「固定資産の減損に係る会計基準」においては、減損の兆候のある資産について、割引前将来キャッシュ・フローをベースに減損損失を認識すべきかを判定し、減損損失の測定自体は、将来キャッシュ・フローの現在価値等の回収可能価額をベースに行うという2段階の処理を行っています。しかし平成27年又は平成28年度からは強制適用が検討されている国際会計基準(IAS第36号「資産の減損」)では、減損の兆候のある資産については、すべて減損損失の測定を行うという1段階の処理となっています。したがって国際会計基準が適用された場合には、減損を認識すべき場合がより広がります。また資産の回収可能価額が回復した場合、「固定資産の減損に係る会計基準」においては、減損損失の戻入れは認められていませんが、国際会計基準においては戻入れが強制されています。
このほか、平成22年4月1日以後開始する事業年度から、有形固定資産の除去に関する法律上の義務などについては、「資産除去債務に関する会計基準」により、資産除去債務を計上し、当該負債の計上額と同額を関連する遊泳資産の帳簿価格に加え、減価償却を通じて各期に費用分配することが必要となります。
資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務などをいいます。この中には、有形固定資産の除去そのものは義務でなくても、有形固定資産を除去する際に当該有形固定資産に使用されている有害物資等を法律などの要求による特別の方法で除去するという義務も含まれます(同基準3項(1)参照)。資産除去債務はそれが発生したときに有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積り、割引後の金額(割引金額)で算定します(同基準6項参照)。
土地の原状回復費用等については、一般に当該土地に建てられている建物や構築物等の有形固定資産に関連する資産除去債務であると考えられています。そのため、資産除去債務と同額が建物や構築物等の帳簿価格に加算され、当該有形固定資産の減価償却を通じて各期に費用分散されることとなります(同基準45項、7項参照)。したがって直接的には土地の評価額には影響しません。
この点、土壌汚染対策法上の有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地の調査義務(法3条1項)については、当該特定施設の使用を廃止した時点で生じる義務であることから、資産除去債務に該当すると考えられます。ただし引き続き工場などとして土地を使用し続ける場合などに都道府県知事の確認を受けることで、調査義務が猶予されるため(法3条1項ただし書、施行規則16条2項)、資産除去債務の合理的な見積もりができない場合はあると考えられます。この場合には、資産除去債務額を合理的に見積もることができるようになった時点で、負債として計上することになります(同基準5項参照)。
なお、有形固定資産の使用を終了する前後において。当該資産の除去の方針の公表や、有姿除去の実施により、除去費用の発生の可能性が高くなった場合には、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用により生じるものには該当しないと考えられています。ただしこのような場合には「固定資産の減損に係る会計基準」の対象となるほか、引当金計上の対象となる余地もあるものと考えられています(同基準27項参照)。
したがって土壌汚染の恐れがある土地の形質の変更が行われる場合の調査(法4条)に関する費用については、資産除去債務の対象とはなりません。
以上は、国際会計基準(JAS第16号「有形固定資産」、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」)においてもほぼ同様の処理となります。しかし「資産除去債務に関する会計基準」では、土地に係る資産除去債務について、建物や構造物等の有形固定資産に関連する資産除去債務とされ、負債計上額と同額を建物や構築物等の帳簿価額に加算し、有限の耐用年数により償却を行うものとされています。
これらに対し、販売用不動産については、平成20年4月1日以後開始する事業年度から「棚卸資産の評価に関する会計基準」が適用されています。同基準では、通常の販売目的で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合は、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用として処理するとされています(同基準7項参照)。
販売用不動産の正味売却価額については、販売見込額から販売経費等見込額を控除した額とされています(「販売用不動産等の評価に関する監査上の取り扱い」2.(2)参照)。したがって、土壌汚染のある土地について、販売見込額が下落し、正味販売額が取得減価を下回っている場合には、その差額を当期の費用として計上する必要があります。
なお前期に計上した簿価切下額の戻入れに関しては、当期に戻入れを行う方法(洗替え法)と行わない方法(切放し法)のいずれかの方法を棚卸資産の種類ごとに選択適用できることとされています(「棚卸資産の評価に関する会計基準」14項参照)。
これら棚卸資産の評価については、国際会計基準(IAS第2号「棚卸資産」)でも同様の処理となっています。

2017-12-13 15:46 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 東京永田町法律事務所