海面埋め立てと土壌汚染対策法との関係

当社は海面を埋め立てた土地を数年前に購入して工場を操業していますが、最近、近隣の同様の埋立地から土壌汚染が発見されたと聞き不安になりました。当社の土地も仮に同様に汚染されているとしたら、土壌汚染対策法上何らかの義務を負うことになるのでしょうか。

海面埋立土地であるからといって、土壌汚染対策法上特別の取り扱いが行われるわけではありません。ただし、所定の基準に従って、港湾法に従って産廃物埋立護岸において造成された土地であって、港湾管理者が管理するものについては、土壌汚染対策法施行規則第41条により、汚染の除去等の措置が講じられた土地とみなされることになっており、これについては特別の取り扱いがされていると言えます。しかしこのような場合は限定的な場合ですので、以下はこのような場合に該当しない一般的な場合について説明します。
海面埋立地では場所によりますが、もともと埋め立てられた土壌に自然由来の特定有害物質が含まれ、その結果、汚染が存在することもあるようです。したがって、工場などの土地利用に伴って汚染が発生したわけではないものの、土壌汚染対策法上の濃度基準を超えた土壌汚染が判明することにより、問題が発生することがあるように思われます。以下に気にすべき問題をあげます。
第一の問題は、場合によっては土壌汚染対策法によって汚染の除去等の措置を指示されるおそれがあるということです。ただしかかる指示がされるのは、土壌汚染対策法に基づき土壌汚染状況調査が行われて汚染が判明し、かつ、健康の被害のおそれがあるとされる一定の要件を満たしているため(これはかなり厳しい要件なので、満たされる場合は相当に限定的です)、要措置区域に指定された場合のみです(法7条1項、6条1項)。したがって、任意の調査で判明した土壌汚染の場合は、要措置区域等の指定を自主的に申請しない限り(法14条)、措置を指示される可能性はもともとありません。
第二の問題は、あなたの会社の土地が広くて、これから開発を予定しており、形質変更の土地面積が3000平方メートル以上の場合は、平成21年改正で導入された法4条により、その計画を事前に知事に届け出なければならず、その場合に、土壌汚染の調査を命じられる恐れがあるということです。調査を命じられて汚染が判明すれば、要措置区域か形質変更時要届出区域かのいずれかに指定されることになります(法6条1項、11条1項)。要措置区域に指定されれば、上述の通り、措置の指示を受けて対策を講じることになります。形質変更時要届出区域に指定された場合は、形質変更時に計画を届け出ればよいのですが(法12条1項)、その計画は土壌汚染の拡散を防ぐに足りるものでなければなりません(法12条4項、施行規則53条)。これがコストの総統に係る対策を必要とするならば、あなたの会社は開発を進めるべきかどうかをその時点で判断することになるでしょう。開発を進める場合は、コストをかけても求められる土壌汚染拡散防止の対応を行う必要があります。
第三の問題は、あなたの会社の土地の予定する形質変更面積が3000平方メートル未満の場合であっても、土壌汚染があればこれを場外に搬出して処分するにはコストがかかるということです。形質変更面積が3000平方メートル未満の場合は、調査も義務付けられず、したがって対策も義務付けられるわけではありませんが、汚染土壌の処分については、法律上義務付けられた調査から判明したか否かにかかわらず、事実上これを許可業者以外が引き受けるということは、今後少なくなると思われることから、一定の追加コストの負担なくしてはなしえない状況になるということに注意が必要です。
第四の問題は、あなたの会社の土地の売却にあたっては、買主が土壌汚染の調査や対策を求めることが十分に考えられ、土地の評価減につながること、また、あなたの会社が既に近隣の埋立てに起因することが疑われる土壌汚染の事実を知っている以上、そのことを買主に伝えておかなければ、信義則上の売買契約に付随する義務違反として何らかの責任を問われかねないため、開示が望ましいと考えますが、これも土地の評価減につながることに留意すべきです。
第五の問題は、売主又は埋立者に損害賠償を求めることも必ずしも容易ではないということです。売主に対しては、瑕疵担保責任を追及できる可能性がありますが、売買時に当該汚染が判明していたら売買契約が行われなかったであろうとか、売買条件が変わっていたであろうといった状況であったかを、売買契約の成立時期や当時者の意識を探求して検討する必要があります。この点については、最高裁平成22年6月1日判決を参考にしてください。また埋立者に対して不法行為による損害賠償責任を追及する場合も、埋立行為時点で当時の法令に違反があるか、仮にあるとしても土地評価の減価が賠償すべき損害といえるのか、仮にそれも言えるとしても、消滅時効や除斥期間の問題をどう考えるかなど難問が多く存在するからです。

2017-12-13 15:58 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 東京永田町法律事務所