瑕疵担保責任期間

汚染した土地の買主は売主にいつまで瑕疵担保責任を追及できるのでしょうか。

これは売買契約の瑕疵担保責任の問題ですので、民法の適用がある売買と商法の適用のある売買とで別に考える必要があります。商法の適用がある場合とは、商人間の売買ですので、会社間の売買には商法の適用があります。それ以外は民法の適用があります。まず民法の適用がある場合ですが、買主が事実を知ったときから、すなわち、汚染の事実を知ったときから1年以内に瑕疵担保責任を追及する必要があります(民法570条、566条3項)。ところが、商法の適用がある場合は、隠れた瑕疵であっても、引渡しから6か月以内に瑕疵を発見して瑕疵があればその旨を売主に通知しなければ瑕疵担保責任を追及できません(商法526条2項)。もっとも多くの不動産売買契約書では宅地建物取引業法で宅地建物取引業者が売主の場合の瑕疵担保責任免除特約に関する規制、すなわち引渡し2年未満に責任を限定する特約を無効とする規制が存在することから(同法40条)、瑕疵担保責任期間を2年としていることに注意が必要であり、これは民法の適用のある売買にも商法が適用になる売買にも妥当します。したがってこのように不動産売買契約で瑕疵担保責任を2年と限定していれば、その間は瑕疵担保責任を追及できますが、それ以後は売主に悪意がない限り、売主に瑕疵担保責任を追及することはできません(商法572条)。
なお実務上は、土地の売買契約書において特約として瑕疵担保責任期間を上記の通り定めるのが通常ですが、これを定めなかった場合が問題になります。原則に戻って考えると会社間の取引であれば、上記の通り商法526条が適用されてしまい、引渡しから6か月以内に瑕疵を発見して売主に通知しなければならなくなります。しかしこの6か月という期間は土地取引、特に土壌汚染が問題になる場合にはいかにも短いと思われます。他方、商法の適用がない事例では、瑕疵を発見して1年以内に請求しなければならないという制約がありますが、その制約だけでは瑕疵の発見がいくら売買から経過しても逆にいつまでも責任を追及することができ、不都合であると思われます。このうち後者の問題については、平成13年に最高裁により判断が出されました(平成13年11月27日判決)。すなわち、引渡しから10年を経過すると事項による瑕疵担保責任(民法570条)も消滅するという判断が示されて、それまで分かれていた議論に決着がつきました。一方、前者の問題については、不動産取引にも商法第526条の適用があるという判断を複数の下級審が出しており、この下級審の判断の傾向が変わらない限り(条文の文言解釈からはかかる判断を覆しがたいため)、そのように考えておくべきかと思われますが、土壌汚染の瑕疵発見機関として6か月では短いと思われる事例が実際のところ多いと思われます。したがって、下級審の中でもそのように解することで不都合があると考えらえれる事例では、後述の裁判例の分析にある通り、売主に信義則上の何らかの義務を課することでその不都合を解消しようとする工夫がされていることに注意が必要です。
なお大まかにいうと以上の通りなのですが、さらに細かな問題が多少あります。
まず上記の平成13年最高裁判決の引き渡しから10年という期間は民法の時効期間です。したがって商法の時効期間が適用される場合は引き渡しから5年となりそうです。商事時効は当事者の一方が商人の場合も適用されますので、売主、買主がともに株式会社である場合だけでなく、売主は株式会社であるが買主は個人のような場合、売主は個人であるが買主は株式会社であるような場合もすべて適用になります。したがって、これらの場合は、平成13年の最高裁判決の「10年」は「5年」となると解しておくべきかと思います。もっとも売主が株式会社で買主が個人の場合も引渡しから5年とすることには疑問もあり、債権者にとって商行為である場合のみ商事時効の5年が妥当するという解釈をとるべきであるかもしれず、そうなると買主が商人でない場合は、最高裁判決の「10年」が妥当すると解すべきことになると思われます。
次に瑕疵担保責任を負う期間について、例えば売買当事者間の契約において「売主は引渡しから2年間に限り瑕疵担保責任を負う。」という特約条項があった場合、この2年間とはどういう意味を持つ2年間なのかという点も難しい問題を含んでいます。この2年間は、ちょうど民法570条で準用している民法566条第3項の「1年間」と同様に、その期間内に瑕疵担保責任である解除や損害賠償を請求する期間に過ぎないのか(以下、この考え方を「除籍期間説」という)、それとも時効期間の短縮の特約なのか(以下、紺考えを「消滅時効説」という)という問題があります。また単に、このように定めた場合、承認間の取引に適用のある商法第526条の検査通知義務はどうなるのかという問題があります。もともと2年間という期間が宅地建物取引業法の規制を背景に生まれたものであると考えられるところを考慮すると、商法第526条を適用されたのでは特約の意味をなくしてしまうので、当事者の意図としては、少なくとも商法第526条の適用廃除は含意されていると解すべきものと考えます。除籍期間説に立てば、引渡しから2年以内に調査をして瑕疵を発見し、その間に解除又は損害賠償の請求を裁判外で行えば足り、その後消滅時効が完成するまで(引渡しから5年又は10年)に訴訟を提起すればよいということになります。一方消滅時効説に立てば、引渡しから2年の間に訴訟を提起するしなければ、権利が消滅することになります。除籍期間説の場合、引渡しから2年の間に権利留保の請求を裁判外で行っていればそのあとのんびりと訴訟を提起できるということになり、果たして2年間という特約を結んだ趣旨に副うのか疑問もありますが、一方で、消滅時効の特約ということが明らかではない場合に、安易に消滅時効の特約と解すべきではないも考えられ、議論が分かれるところです。この点についての判断は、特約を盛り込んだ当事者の意思を探求して解釈するしかないだろうと考えます。

2017-12-13 15:24 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 東京永田町法律事務所