自然由来の土壌汚染

自然由来の土壌汚染については、土壌汚染対策法の適用はないと聞いたのですが、本当でしょうか。もし本当ならば、自然由来の土壌汚染であれば気にすることは何もないと考えてよいのでしょうか。

土壌汚染対策法施行時の土壌汚染対策法の環境省解説と言うべき平成15年2月4日付け通知(環水土第20号、環境省環境管理局水環境部長から都道府県知事・政令市長宛の「土壌汚染対策法の施行について」と題する通知)では、「法における『土壌汚染』とは、環境基本法(平成5年法律第91号)第2条第3項に規定する、人の活動に伴って生ずる土壌の汚染に限定されるものであり、自然的原因により有害物質が含まれる土壌については、本法の対象とはならない。」と明言していました。もっとも、土壌汚染対策法、同法施行令及び同法施行規則の中には、どこにも自然由来の土壌汚染が法の対象外との規定はありませんでした。いずれにしても対象外と環境省が明言した以上、自然由来か否かが大きな問題となります。そこで同通知には別紙1として「土壌中の特定有害物質が自然的原因によるものかどうかの判定方法」というものがあり、判定基準が記載されていました。
ところが平成21年改正後の土壌汚染対策法の環境省解説と言うべき平成22年施行通知では、「なお、旧法においては、『土壌汚染』は、環境基本法(平成5年法律第91号)第2章第3項に規定する、人の活動に伴って生ずる土壌の汚染に限定されるものであり、自然的原因により油外物質が含まれる汚染された土壌をその対象としていなかったところである。しかしながら、法第4章において、汚染土壌(法第16条第1項の汚染土壌をいう。以下同じ。)の搬出及び運搬並びに処理に関する規制が創設されたこと及びかかる規制を及ぼす上で、健康被害の防止の観点からは自然的原因により有害物質が含まれる汚染された土壌をそれ以外の汚染された土壌と区別する理由がないことから、同章の規制を適用するため、自然的原因により有害物質が含まれて汚染された土壌を法の対象とすることとする。」として、自然由来の土壌汚染も土壌汚染対策法の外に置かれるものではないことが明確になりました。
それならばもはや、自然由来か否かは議論をする意味もないかというと、そうでもありません。ある土壌汚染が自然由来か否かは、なお意味がある局面であると考えます。第一に、ある土壌汚染が自然由来であることが明らかになれば、原因者を理由とする法的責任を議論する余地がなくなります。つまり不法行為責任、売主としての信義則などが原因者責任の文脈で論じられている場合に、自然由来であることが判明すれば、責任を否定する理由になります。第二に、瑕疵担保責任の「瑕疵」を議論するにあたり、自然由来であるということは、瑕疵を否定する方向での有力な理由になります。少なくとも最近まで自然由来の土壌汚染を気にする土地の買主はほとんどいなかったといえると思うからです。
以上の通り、今や自然由来の土壌汚染であるか否かは、土壌汚染対策法上の義務の発生の有無に影響を及ぼすものではなくなったため、自然由来の土壌汚染であるから気にすることは何もないといったことにはなりません。しかし自然由来であることが判明すれば、民事責任の有無の判断を大きく左右する場合があるといえます。
なお自然由来かどうかを判断するためには、周辺の土地も同様の汚染状況であるか、敷地内の汚染状況が特定の場所に集中していないかなど、かなり調査が必要であり、簡単ではありません。しかも自然地盤の汚染状況を調査する必要があり、覆土などで自然地盤の上に人工的に別の土壌が堆積しているような場合は、調査サンプルの採取に注意を払う必要があります。

2017-12-13 16:02 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 東京永田町法律事務所