土地区画整理と土壌汚染

組合土地区画整理事業で当社が換地を受けた土地とその隣地で当社が購入した保留地から土壌汚染が見つかりました。当社としては誰にどのような請求が可能でしょうか。

土地区画整理事業は土地の交換分合であり、強制的な処分により従前地を失って換地を取得します。保留地は施行者が売却する土地であり、施行地区内の権利者であってもそうでなくでも購入できます。
ご質問によると、あなたの会社(甲)の従前地(A地)の換地(B地)も、甲が組合から購入した保留地(C地)も、汚染されているということですが、仮にB地とC地を両方含む土地(D地)があkつてあるメーカー(乙)の従前地であって工場用地であったとします。また乙はD地に対して清浄な土地(E地)を換地されていたとします。
まず換地の問題から考えます。甲は清浄な土地であったA地に対して汚染された土地であるB地を換地として取得させられたのですが、これは照応の原則(土地区画整理法89条)に違反する違法な処分ですので、換地処分について、不服申立て又は取消訴訟の提起を行うことができます。しかしこれらはいずれも期間制限がありますので、甲が土壌汚染を発見したのが換地処分を受けて当該期間(不服申し立ては処分を知った日から60日以内、取消訴訟は処分又は裁決があったことを知った日から6か月以内)を経過している場合は、もはやこれらの手段をとりようもありません。しかしこれらは違法な処分ですので、この処分によって被った損害について、組合に対して損害賠償を請求することができます。しかし換地処分の多くは、事業の終わり頃に行われ、組合は換地処分後速やかに解散することが多いので、組合に対して何らかの責任追及を行おうとしても、組合が解散して清算も結了している場合には、事実上責任追及は無理です。そうなると違法な換地処分を行った理事らに対して直接に損害賠償を請求できるかという問題がありますが、これは理事らが重過失でなければ無理であろうと思われ(重過失であれば一般社団法人又は一般財団法人に関する法律117条1項類推で可能性があります)、これは主張立証が難しいかもしれません。
残る手段は乙に対する損害賠償であろうと思います。ただ甲と乙とでは契約関係にはありませんので、乙の不当利得又は不法行為を理由とするほかないように思われます。不当利得については、困難であるように思われます。甲の損失と乙の利得との因果関係が直接的ではないと思われるからです。より可能性があると思われるのは、乙の不法行為です。これは、2つの点を問題にできます。第一は、現在、汚水を地下に浸透させる行為は、違法な行為として水質汚濁防止法により禁じられていますが、かつてはこの点の規制が存在していなかったり、汚水の規制も緩い時期がありました。したがって、仮に乙がD地を汚水で汚染されたとしてもその汚染行為を直ちに違法視していいかは議論となり得ますが、違法である場合が少なくないと考えます。汚染行為を違法な行為と言える場合、その違法な行為の結果、甲の損害が発生したことをどのように評価すべきかが問題です。事実的因果関係はありますが、そこに組合の換地処分が介在しますので、果たして相当因果関係があるのかという議論があります。ただ原因行為を不法行為とできなくても、換地処分以前に乙は組合に対して汚染の可能性のある土地利用をしていたということを告知すべき信義則上の作為義務があったのではという立論も可能ではないかと思われます。その作為義務がるとなると、その告知義務違反で損害賠償席を負う可能性があります。ただかかる作為義務を土壌戦に対する人々の意識が高まった契機となった平成14年の土壌汚染対策法制定以前にさかのぼらせることは、特別な事情がない限り困難があるように思われます。
次に、保留地の問題について検討します。保留地は土地区画整理事業における換地処分によって施行者が原始取得する土地です。上記説例でD地の中に保留地Cも含まれます。原始取得ですから乙から施行者、施行者から甲と転々譲渡されたとは考えません。保留地C値は足しあk氏にかつてはD地の一部であったとしても、乙から施行者への譲渡があったとは見ません。ただその点は、ここでは問題ではありません。なぜなら甲としては、保留地については、施行者から購入したわけでそこに土壌汚染があったのですから、土壌汚染のある土地の買主として、売主である施行者に対して契約不適合責任を追及できるからです。ただ施行者が組合であって、汚染が発覚した時点では既に解散し清算も結了している場合は、組合に責任追及が事実上できないという問題がありますので、換地について前述した理事らの責任と乙の不法行為責任を同様に検討するしかないと思われます。
以上のように、土地区画整理事業における土壌汚染はさまざまな問題を提起しますので、施行者としては施工にあたって施行地区内に土壌汚染がありそうか否か、土壌汚染がありそうな土地はどのような調査をいつから行うか、仮に土壌汚染が判明した場合、土地の評価をいかに行うかなど、さまざまに事前に十分検討が必要です。とりわけ困難な問題は、土壌汚染の判明した土地をどのように評価するのかという問題です。強制的な処分であるという点に着目すると土地収用の場合の議論が参考になりますが、一方で正常な土地と汚染された土地は、それぞれに照応した換地を受けなければ公平とはいえず、そこにアンバランスがあれば清算金で処理すべきと考えられるでしょうから、土地収用の場合と異なってより交換価値に着目した評価が求められるかもしれません。ただこの評価の点については、最終的には各施行者がこれらの事情(交換価値を強調すると代替地として機能しない換地しか与えられないが、交換価値を無視するとほかの権利者の犠牲の上に土壌汚染土地所有者を厚遇するという不公平な取扱になるという事情)を十分考慮のうえ土地評価基準を定めたのであれば、その基準は尊重するという方向で解決されるべきであろうと考えます。

2017-12-13 16:06 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所