土地を買いたいのですが、汚染の調査をしてから買うべきでしょうか。
土壌汚染対策法施工後は、大きな土地取引ではほとんどの場合、土壌汚染の調査を行ったうえで売買がなされているのが実情です。もっとも単に履歴調査を行うだけで土壌汚染の恐れがないとして売買がなされる場合もあります。履歴調査を行って土壌汚染の恐れがあると思われる場合は、土壌汚染対策法で定まった調査方法に従って、サンプル調査まで行うことが通常であろうと思います。
なぜこのように土地取引の際に調査がなされることになるのかというと、いくつかの理由が考えられます。可能性としては小さいですが、インパクトの大きな問題としては、当該土地が濃度基準以上に汚染され、かつ、そのままでは健康被害の恐れがあれば、都道府県知事から土地の所有者等が汚染の除去の措置の指示を受けたり命令を受けたりするリスクがあるからです。土地の所有者等は、自らが原因者でなければ原因者に対して指示を出してくれとか命令を出してくれとかいといえるのですが、原因者が誰だかわからないとか、わかってはいるが原因者に対策を行う資力もないということになると、結局、指示や命令を受ける立ち会に置かれてしまいます。その場合、対策費は時に巨額となりますので、事前に係るリスクを負わなくて済むように調査をしたいということは当然の対応だろうと考えます。
また平成21年改正で3000平方メートル以上の土地の形質の変更にあたっては、調査の要否を都道府県知事に確認せざるを得なくなりました(法4条、施工規則22条)。したがって、この規模以上の開発を前提として土地取引では土壌汚染の調査を無視した売買は、大きなリスクを負うことになりますので、事実上あり得ないであろうと考えます。
もっとも、健康被害の恐れがこの法律ではかなり限定的に解されるので、そのおそれさえなければいくら濃度基準を超えた汚染があっても、この法律上は汚染の除去等の措置を講ずることが義務付けられないことから、土壌汚染の調査をしないという考え方もあるだろうと思います。確かにすでに建物が存在しており、新たに開発するわけでもなく、また近隣に井戸水を飲用に利用している住民もなく地下水を通じた健康被害の恐れはなく、地表はコンクリートやアスファルト等で覆われ直接摂取による健康被害の恐れもなければ、何も恐れることはないという判断もあるかもしれません。しかしこれは、現在の法規制によるとリスクはないというだけで、今後の法改正の可能性を考慮すると、リスクのある判断です。またこのような判断は決して多くの人々の判断でもないため。土地を転売する場合のことを考えると、土壌汚染の有無を全く知らずに土地を購入することは大きなリスクを抱え込むことになると思います。なぜなら転売の際には、多くの場合、購入者から土壌汚染の有無を問われ、不明な場合は調査を求められることになると思われるからです。
もっとも、小さな土地の取引では、そもそも売主も買主も調査や対策の費用を負担する資力がないために、以上に述べたことがそのまま妥当しない場合も多いと思います。ただいくら小さな土地であっても、その土地が過去に土壌汚染の原因となる履歴を有していれば、土壌汚染の調査のないまま購入することは、特に転売時には大きな負担を負わされるリスクを引き受けることになるのだということに注意が必要です。