当社所有土地に深刻な土壌汚染が判明しました。土壌汚染がなければ評価は約10億円ですが、土壌汚染があるために売却しようにも掘削除去費用として8億円ほどかかりそうです。そこで売却するとなると2億円程度にしかならないと思います。しかし今年も例年通り固定資産税の課税通知が来ました。このような土壌汚染の土地であると説明することで、固定資産税評価額を下げてもらって、固定資産税を減額してもらおうと思いますが、可能でしょうか。
土壌汚染が存在する土地がマーケットで低く評価されていることが公知の事実であり、そうであれば適正な時価を反映すべき固定資産税評価額も同様に低く評価されるべきではないかという疑問はもっともです。
しかしこれまで土壌汚染による固定資産税評価額の減価につながる法改正も通知などもなく、現実にはほとんどかかる減価は行われていないと思われます。
ただ土壌汚染そのものではありませんが、土地にアスベストラッジが大量に埋設されていた事例で、処分に多額の費用が掛かるので、固定資産税評価額が減額されるべきであるとして争われた裁判例(佐賀地裁平成19年7月27日判決)があり、これが参考になります。
同事件では、アスベストは不溶性の物質であって、土地の構成要素である土壌を汚染するものではなく、そのために土壌汚染対策法の対象に土壌汚染対策基本法の対象ともなっていないこと、また当該アスベストは前所有者により時に敵に廃棄されたものであるが、これを除去することにより当該土地を現状に復することができるものであって、当該土地自体に内在する原因によって当該土地の区画、形質に著しい変化があったものということはできないこと、アスベストスラッジの廃棄されている土地の事例は稀有であって、類似する他の土地に批准することが容易ではないことなどを理由に、減価すべき「特別な事情」はないとして、固定資産税の賦課処分の違法性はないと判断しました。
この事件は、地中埋設物の存在による減価を認めていませんが、その理由としてこの事件で問題となったアスベストスラッジが土地の公正要素である土壌を汚染していないとしていると事に注目する必要がると思います。この事件では、土壌と分離できる廃棄物が減価要因であるため、土地自体の減価を認めなかったものと解釈でき、土壌それ自体が汚染されている土壌汚染が存在する場合は別であって、むしろその論理に従うと土地委を減価すべきことになるのではないかと思われます。
市町村長は固定資産の評価にあたって、固定資産評価員を置き、総務大臣が定めた固定資産評価基準(地方税法388条)により、固定資産の価格を決定します(地方税法403条)。この「適正な価格」とは、「正常な条件の下において成立する取引価格(独立当事者間の自由な取引において成立すべき価格)」と解されています。そうであれば、明らかにマーケットにおいて減価して取引されている土壌汚染土地は減価して評価されざるを得ないと考えます。もちろん大量処理を要求される課税手続きにおいて、市町村長がかかる原価を行って評価することまでは期待できません。土壌汚染がどのようなものであり、その対策としてどこまで行う必要があり、そのためにどれだけの費用がかかるかを確定させるには、多額の費用と少なからぬ時間を必要とするからです。しかし、それを明確にした資料を土地所有者が市町村長に提示した場合、これを無視することは上記法令に反するものと考えます。文献の中には大量処理を理由に、または土壌汚染土地を減価すると土壌汚染をもたらした者を不当に優遇するということを理由に、土壌汚染土地の固定資産税を減価すべきではないという見解を示すものがありますが、根拠はないと考えます。