土壌汚染調査義務の発生

どのような場合に土壌汚染の調査を義務付けられるのですか。

第一に、水質汚濁防止法で特定施設とされている施設で、かつこの法律で特定有害物質とされた物質を製造、使用又は処理をしていた施設の使用を廃止した時に土壌汚染調査が義務づけられます(法3条1項)。汚染の可能性が十分にありますし、汚染の調査も容易だからです。その施設を設置した土地の所有者等は、当然にその使用の廃止時に調査義務を負います(法3条1項)。その施設を設置していない土地の所有者等も都道府県知事からその施設の使用の廃止の通知を受ければ調査義務を負います(法3条1項、2項)。 第二に、平成21年改正により、3000平方メートル以上の土地の形質の変更時にも調査の義務が発生しうることになりました。すなわちかかる大規模な土地委開発時には開発者は、工事着手の30日前までに着手予定日その他の事項を都道府県知事に届け出なければなりません(法4条1項)。この届出を受けて、都道府県知事は土壌汚染の恐れがある土地に該当すると判断すれば、土地の所有者等に調査をさせることができるとされています(法4条2項)。このような大規模開発に伴う調査義務については、東京都をはじめとして若干の地方公共団体において既に導入されていたものです。
第三に、都道府県知事は、土壌の特定有害物質により人の健康に係る被害が生ずる恐れがあると認めた場合は、汚染調査を土地の所有者等に命じることができます(法5条1項)。ただしその調査を命じる要件は、施行令及び施工規則によるとかなり限定的です。すなわち、要措置区域又は形質変更時用届出区域の指定の基準となる濃度基準を超える土壌汚染がある恐れがなければならず、地下水汚染リスクの観点からは、土壌汚染に起因する地下水汚染が現に生じ、又は生ずる恐れがあると認められ、かつ、周辺の地下水の利用状況等からみて、地下水汚染が生じたとすれば飲用などを通じて健康被害の恐れがなければならず(ただし公共用水域の水質汚濁を招くほどの場合は地下水の引用という要件は不要)、また、土壌の直接摂取のリスクの観点からは、当該土地が立ち入ることができる区域であることが必要です。したがって、地下水が汚染されている可能性があっても、およそ飲用に利用されないと思われる場合は、この命令は出されませんし(ただし公共用水域の水質汚濁を招くほどの場合は地下水の飲用という要件は不要)、土壌の直接摂取だけが問題になるような土地であれば、立ち入りができないようにしてしまえば、調査命令が出せません。

2017-12-13 14:56 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所