かねてから保有している遊休地で任意に汚染の調査を行ったところ、要措置区域等(すなわち要措置区域又は形質変更時届出区域)の濃度基準を超える汚染が発覚しました。黙っていてよいのでしょうか。
平成11年に環境庁が定めた「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針適用基準」という行政指導のガイドラインでは、事業者が任意に土壌・地下水汚染を調査し、その汚染が判明した場合は、必要な追加的調査及び対策を実施するとともに、汚染の拡散を防止する観点から、速やかに都道府県にその旨を報告することが望ましい旨定められていました。実際、環境問題を重視する多くの企業にあっては、このガイドラインに従って任意の調査で判明した汚染についても、都道府県に報告の上、都道府県と協議し対策を検討してきていました。このガイドラインの趣旨は、土壌汚染対策法の施行後も尊重されるべきこととに変わりはありません。
しかしこの法律では、任意の土壌汚染の調査が行われ、その結果、汚染が判明しても、その結果を行政庁に報告しなければならないという報告義務を定めた規定はありません。したがって、別に条例でそのような報告義務が定められていなければ、報告する法律上の義務はないといえます。ただ汚染が判明していながらこれを放置して、その結果、将来近隣住民が健康被害を受けたような場合は、未必の故意または過失による傷害とでもいうべき事態を招くでしょうから、汚染の除去等の適切な対応を行っておかなければ将来、大きな問題に巻き込まれる恐れがあります。
それならば心配でも汚染の調査を行わないのが賢明なのでしょうか。しかしこのような対応は汚染があった場合も何の対策もしないという対応ですので、将来多大なリスクを抱え込むことになります。万一、将来近隣住民が健康被害を受けたような場合、不法行為責任を問われると思われ、しかも汚染の程度をわからず放置するわけですから、時には深刻な被害をもたらし、会社に致命的なダメージを与えることにもなりかねません。
なお平成21年改正により、任意の土壌調査で判明した土壌汚染についても、土地の所有者等から要措置区域等(すなわち要措置区域又は形質変更時要届出区域)の指定を申請し、法の規制に復せしめることが可能となっています(法14条)が、かかり申請が土壌汚染対策法上の義務ではないという点は改正前と何ら変わりがありません。