当社の所有不動産に深刻な土壌汚染(濃度基準を超過する汚染)が判明しました。この問題を財務諸表上明らかにする法律上の義務はありますか。また当社は東京証券取引所に上場しております。株主に対するディスクロージャーの関係で注意しておかなければならないことはありますか。
重要な減損損失を認識した場合は、減損損失を認識した資産、減損損失の認識に至った経緯、減損損失の金額、回収可能価額の算定方法などの事項について、財務諸表上、注記することが求められています(「固定資産の減損に係る会計基準」四2.参照)。
したがって、深刻な土壌汚染が判明した土地について減損損失を認識し、それが重要である場合には、財務諸表上、注記による開示が必要となります。
また資産除去債務の会計処理については、重要性が乏しい場合を除き、資産除去債務の内容についての簡潔な説明及び支出発生までの見込期間などを注記することが必要となります。また資産除去債務は発生しているが、その債務を合理的に見積もることができないため、貸借対照表に資産除去債務を計上していない場合には、当該資産除去債務の概要、合理的に見積もることができない旨及びその理由などを注記することが必要となります(「資産除去債務に関する会計基準」16項参照)。
したがって、深刻な土壌汚染が判明した土地に関連して資産除去債務を計上した場合、又は、金額を合理的に見積もることができないことを理由に資産除去債務を計上していない場合には、財務諸表上、注記による開示が必要となります。
財務諸表には重要な会計方針を注記しなければならないとされ、引当金の計上基準も会計方針の一例とされています(「企業会計原則注解」1-2へ参照)。
したがって、汚染の除去等の措置を講ずる費用について引当金を計上した場合、その計上基準を注記する必要があります。
これに対し、発生の可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金を計上することはできず、保証債務などの偶発債務は、貸借対照表に注記しなければならないとされています(「企業会計原則」第三の1C参照)。また金額を合理的に見積もることができない場合にも、引当金は計上できませんが、偶発債務に準じて注記の対象になると考えられています(起業家池淳委員会「引当金に関する論点の整理」20項参照)。
したがって、深刻な土壌汚染が判明した土地について、汚染の除去等の措置を講ずる費用の発生可能性が低い場合、又はその金額を合理的に見積もることができない場合でも、偶発債務又はそれに準ずるものとして、貸借対照表に注記を行うことが必要となる場合があります。
また東京証券取引所の上場会社は、業務執行の過程で生じた損害が発生した場合、影響が軽微であると認められるものを除き、直ちにその経緯、概要、今後の見通しなどを開示しなければならないとされています(東京証券取引所「有価証券上場規程」402条2号a、同「有価証券上場規程施行規則」402条の2第1項参照)。
したがって、深刻な土壌汚染が判明し、減損損失を認識した場合又は引当金の計上を行うこととなった場合、その影響が軽微である場合を除き、直ちに適時開示を行うことが必要となります。