土壌汚染に関する保険にはどのようなものがありますか。
現在、日本で販売されている土壌汚染に関する保険商品は、おおよそ以下の通りに分類することができます。①対策費用保険、②対策コストキャップ保険、③第三者賠償責任保険、④調査会社賠償責任保険、⑤施行会社賠償責任保険です。
対策費用保険とは、一定の調査の上対策が不よ言うと判断された土地に後日汚染が判明した場合に、対策に要する費用を保険で賄うものです。
対策コストキャップ保険とは、一定の対策費用として予定されていた費用を超えて要する費用を保険で賄うものです。
第三差賠償責任保険とは、土壌汚染により第三者に対して損害賠償責任を負う場合の費用を保険で賄うものです。
調査会社賠償責任保険とは、調査会社が貯砂の不備について責任を問われた場合の費用を保険で賄うものです。
施行会社賠償責任保険とは、土壌汚染対策工事の施行の不備について責任を問われた場合の費用を保険で賄うものです。各保険会社の具体的な保険商品の内容については、個別の損害保険会社の保険約款によって変わりますが、おおよそ以下の通りであると思われます。
対策費用保険とは、一定の調査を行って汚染の可能性が低い又はないと判断する場合に、かかる判断に誤りがあったことが将来判明するリスクに備えるものです。調査は単に履歴調査にすぎない場合もあるでしょうし、まらサンプル調査まで行う場合もあるでしょう。したがってリスクはその調査又は対策の内容で大きく変わるものと思われます。この対策費用保険は、多くの損害保険会社が商品化しています。
対策コストキャップ保険とは、一定の対策費用を見積もってそれ以上の対策費用を要しないと判断する場合に、かかる判断に誤りがあったことが将来判明するリスクに備えるものです。対策を行う過程で新たに対策を必要とする汚染状態が判明するということは十分あり得ますので、対策費用の正確な見積もりは難しい場合もあると思われます。この保険を商品化している保険会社は極めて限られています。
第三者賠償責任保険とは、土壌汚染によって隣接地所有者等第三者に損害賠償責任が発生する場合にその損害を賠償するためのものです。多くの損害保険会社が商品化しています。
調査会社賠償責任保険は、これを土壌汚染に特化して商品化している大手の損害保険会社はさなそうですが、一般の専門家賠償席に保険を利用することができる場合もあるようです。
施行会社賠償責任保険も、これを土壌汚染に特化して商品化している損害保険会社は極めて限られています。
以上の通り、日本においても、土壌汚染関連の損害保険は一応の品ぞろえはあるのですが、実際の利用実績はかなり低いようです。環境汚染委起因する法的な賠償責任についてカバーする保険は、アメリカにおいても試行錯誤の上さまざまに工夫されたものの、リスク評価を精密に行うことの困難さから、保険会社が過去苦い経験をしてきたということが言われています。まして日本のように英米に比べて保険によるリスクヘッジを行うことが数段少ない社会においては、商品化が活発ではないことも自然なことです。保険商品開発のために活用できる情報が限定的であるなどの事情がこの傾向に拍車をかけているように思われます。
土壌汚染対策法の制定以降、大きな土地取引にあっては、土壌汚染の調査を行い、汚染が判明すれば掘削除去をはじめとして相当に徹底的な対策が講じられているのが実情ですが、実はこの調査や対策には限界があります。なぜなら土壌汚染対策法で要求される土壌汚染調査自体が実は完璧なものではないからです。完璧を期すのであれば、土地の土壌の占領検査を行わなければなりませんが、そのような非合理的なことを土壌汚染対策法では求めていません。あくまでも10メートルとか30メートルとかのメッシュを切って、その好天で調査ポイントを決め、一定の深度の土壌の調査をするだけです。それで相当高い濃度で汚染状況が把握できるからです。しかしこの方法は、一定の確率で汚染を把握できるだけのことなので、どうしても土壌汚染の把握に漏れがあります。この漏れのせいで汚染がないものとして購入した土地が実は汚染を含んでいたということで争いになった紛争も少なくないように思われます。このような事態を避けるために、メッシュをさらに細かくして調査の精度を上げていくという方向よりは、むしろ一定の確率で汚染が残されてしまう場合のリスクを保険でカバーするという方向がよほど合理的であろうと考えます。このような避けられない事故ともいうべき事態のリスクへヘッジには保険の活用しかほかに現実的な対応がないと思われます。そうである以上、今後土壌汚染に関する損害保険商品の開発がさらに進むことにより、有望な保険商品も必ず生まれるに違いないと考えます。