土壌汚染と相続税評価額

父が死亡したため父が長年操業してきた工場を取り壊し、跡地をマンション用地としてデベロッパーに売却したいと考えています。しかしデベロッパーが「おそらくこの土地には土壌汚染があると思われる。場合によっては更地価格の半分以上も調査対策費としてかかるだろう。」というのです。私たちとしては手放すしかない土地なので、売却しますが、相続税の計算において、土壌汚染の調査費や対策費は考慮していただけるのでしょうか。

この論点については、国税庁が平成16年7月5日付で「土壌汚染地の評価等の考え方について(情報)」(資産評価企画官情報第3号、資産評価税課情報第13号)を公表しています。これによりますと「土壌汚染地の評価額」とは「汚染がないものとした場合の評価額」から「浄化・改善費用に相当する金額」を控除し、また「使用収益制限による減価に相当する金額」を控除し、さらに「心理的要因による減価に相当する金額」を控除して得られた金額であるとする、いわゆる原価方式が土壌汚染地の基本的な評価方法とすることが可能な方法であるとしています。
また「相続税等の財産評価において、土壌汚染地として評価する土地は、『課税時期において、評価対象地の土壌汚染の状況が判明している土地』であり、土壌汚染の可能性があるなどの潜在的な段階では土壌汚染地として評価することができない」としています。
この国税庁の発した「情報」は、土壌汚染対策法の法制度を正しく理解していると思われます。例えば「封じ込め等の措置費用とその措置後の使用収益制限などに伴う土地の減価の合計額が除去措置費用を上回るような場合には、その選択する措置は、除去措置となるものと考えられる。」として、どの措置が経済合理的かはケースバイケースで考える必要があることが明確に示されています。
なお課税時期において既に浄化・改善措置を実施することが確実な場合は、土地の評価額からそれらを控除するのではなく、相続税法第14条に規定する「確実な債務」として、課税価格から控除すべきとしています。
以上の通りですから、あなたが相続した土地について、土壌汚染を考慮した相続税としたい場合は、土壌汚染の調査を行い、合理的な対策費を業者に見積もらせる必要があります。すでに対策の現実のスケジュールが決まっている場合、対策費は「確実な債務」として債務計上し、そうでない場合は、対策費の80%(相続税評価額が地下公示価格の80%相当水準だから)相当額を汚染がない土地評価額から減価すべきことになります(汚染の除去に至らない対策の場合は使用収益期限による減価を考慮でき、また状況に応じて心理的要因による減価も可能です)。なお調査費用については対策の方法や範囲を確定するためのものであれば、上記対策費に含めてよいと考えます。

2017-12-13 15:44 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所