報酬トラブル

受領時期

宅建業者は成功報酬です。報酬を請求できるのは、売買契約の成立が前提となります。どんなに手間をかけても、契約が成立に至らなければ、報酬を請求できません。「標準媒介契約約款」も、不動産売買契約が成立したら業者が依頼者に報酬を請求できると明記しています。なお、一定の条件の発生によって効力が生じる「停止条件付契約」の場合は、その条件が成就した場合に限り、報酬を請求できます。

報酬の受領時期は、上記約款で業者が宅建業法37条の書面を契約当事者に交付した後と定めています。一般的には、売買契約成立時に半額を受領し、登記や引き渡しなどを終えたら残り半額を受け取ることになっています。このルールは、旧建設省が昭和26年に都道府県知事宛に発した通達で「宅地及び建物の売買、賃貸及び交換の契約が成立した際に半額、代理又は媒介の責任を完了した時に残額を受領する」と定めていることから、普及したものです。依頼者は売買契約成立時に全額報酬を支払ってしまうと、登記や引き渡しまでちゃんとやってもらえるか心配になりますから、不安を払拭するための仕組みと言えます。

報酬額

宅建業者が受け取る報酬の額について、宅建業法46条に基づく「旧建設大臣告示」(昭和45年)は上限額を定めています。これはあくまで、受領できる最高額を意味するだけなので、具体的な報酬額は当事者間の合意で決めることになります。

判例も「宅建業者が受け取るべき報酬について約定がない場合には、宅建業者は宅建業法46条及びこれに基づく『旧建設大臣告示』によって計算した最高額を当然に請求しうるものではなく、業者の貢献度、すなわち媒介の難度、媒介行為の内容、程度、期間、努力等と取引額、その他諸事情を考慮し、客観的に相当と認められる金額を請求しうるものと解するのが相当」としています。

仲介手数料の制限

売買契約が解除された場合、媒介業者に責任がなければ、仲介手数料の請求権には影響を及ぼしませんが、請求額が制限されるケースがあります。他方、契約の解除に業者の責任が存するなら、業者は受領済みの仲介手数料を依頼者に返還しなければなりません。業者の説明義務違反で売買契約が錯誤無効になる場合も、業者に仲介手数料を返還する義務が生じます。

契約解除と返金

ローンが成立しなかった場合は売買契約を解除するという「ローン特約条項」が付された売買契約について、実際にローンが不成立となり、契約解除となった場合、業者は報酬を受領できるでしょうか。標準媒介契約約款は、こうした「解除条件付売買契約」で契約が解除された場合、依頼者を保護する観点から、業者は報酬を請求することはできないと規定しています。このため、契約が解除された段階で既に報酬を受け取っていた場合は返還しなければなりません。

義務違反と報酬

民法は「善良な管理者の注意をもって受任事務を処理する義務を負う」と定め、宅建業法は「宅建業者は取引の関係者に対し、信義誠実にその業務を行わなければならない」としています。宅建業者は、依頼者に不測の損害を生じさせないように配慮し、取引する不動産の瑕疵や取引当事者の権限の有無について十分に注意すべき業務上の一般注意義務を課されています。

具体的には、業者が調査義務を果たさない債務不履行により、媒介行為に瑕疵があり、それが原因で売買契約自体に欠陥が生じ、結果として契約解除となった場合、もちろん報酬請求はできません。逆に、契約解除によって依頼者に損害を生じさせた場合は、損害賠償を求められる可能性もあります。

直接取引

宅建業者が紹介した相手方と依頼者が直接取引してしまった場合、業者に報酬請求権は認められるのでしょうか。答えはイエスです。本来は媒介する立場の業者を依頼者が排除して直接取引してしまうようなケースは、業者にとって不合理な取引です。このため、判例は、こうしたケースについて業者に報酬請求権を認めています。

標準媒介契約約款は、元々の媒介契約の有効期間内あるいは有効期間の「満了後3年以内」に、依頼者が業者の紹介で知った相手と売買契約を直接締結した場合は、業者は依頼者に契約成立に寄与した割合に応じた報酬を請求することができると定めています。

請求できる報酬額は、媒介の難易度や依頼者の受ける利益など諸々の事情を総合的に判断して決めることになります。報酬の請求が可能な期間を「満了後3年以内」まで認めているのは、紹介行為と契約成立の間に相当因果関係があるといえる期間を大まかに「3年」と見込んだことからとみられます。

複数業者

不動産売買の媒介に関与した宅建業者が複数だった場合、原則として、依頼者に報酬を請求できるのは最初に依頼を受けた業者(「元付業者」とか「客付業者」とも言います)だけです。媒介契約の当事者は、依頼者と最初に依頼を受けた業者になるからです。このため、当事者外で媒介行為に関与した業者(「中間業者」とも言います)は、あくまで履行補助者と位置づけられ、最初に依頼を受けた業者との間で報酬を決めます。

一方、複数の業者が媒介契約の当事者となって契約を成立させた場合は、この複数の業者が依頼者に報酬を請求できます。しかし、依頼者を保護するためのルールとして、受領できる報酬の総額は当事者の業者が単独の場合と同じ上限となります。

売り主が原因の解除

不動産の売買契約が成立した後に、売り主の債務不履行があり、契約が解除されてしまった場合、宅建業者は報酬を請求できるでしょうか。

そもそも宅建業者は売買契約の成立について依頼を受けたわけですから、契約が成立した時点で媒介契約の目的は達成されています。このため、業者は契約が解除となっても報酬を受け取る権利があります。

ただ、売り主の債務不履行に関して、業者に媒介契約上の義務違反があり(売買する不動産に瑕疵があり、業者の調査不足で発見できなかった場合など)、それが原因で契約解除に至った場合は、業者は報酬を請求できません。

媒介以外の報酬

宅建業者は、不動産取引の売買や賃貸借の媒介業務に関して依頼主に報酬を請求できます。そして、この報酬とは別に依頼者の求めで不動産の明け渡しの交渉や賃貸借契約の更新、更新料の授受などの業務を行った場合、慣習として依頼者に労務報酬を請求できます。なお、媒介以外の業務については、宅建業法上の「旧建設大臣の告示による報酬額の規制」は適用されませんので、報酬額は依頼者との契約次第で任意となります。

一般媒介契約と専任媒介契約

「専任媒介契約」は、媒介契約の一種で、依頼者が他の宅建業者に重複して依頼できない契約を言います。宅建業者の側からすると、依頼者を他の業者に横取りされないようにできるメリットがあります。これに対し、「一般媒介契約」は、依頼者が複数の宅建業者に重複して依頼できる契約で、業者は依頼者を独占できません。

もし、依頼者が、ある業者と一般媒介契約を締結し、その契約の有効期間内に他の業者と専任媒介契約を締結した場合、売買契約を成立させた業者の方が依頼者に報酬を請求できます。なお、業者は専任媒介契約を締結する場合は、依頼者に契約の趣旨を説明する必要があり、依頼者が別の業者と一般媒介契約を締結しているかどうかを確認すべきです。

標準媒介契約約款により、専任媒介契約を締結した業者は、依頼者が契約に反して別の業者に依頼した場合は報酬相当額の違約金を請求できますが、業者が依頼者に対する確認や説明を怠った場合は請求できない場合があります。

買い替えと報酬

不動産を買い替えるため、売る方の媒介と買う方の媒介を同一の業者に依頼した場合、依頼者の側が「危険負担」を引き受ける明白な意思表示をしない限り、宅建業者の報酬請求権は「売り」と「買い」の両方の契約が成立した時に同時に発生すると考えられます。

ただ、「買い」が成立したのに「売り」が成立しない場合、買い換えという目的が実現できないので、いずれの報酬請求権も発生しないことになります。

「売り」と「買い」を異なる業者に依頼した場合は、特約がない限り、それぞれの契約ごとに報酬請求権が発生します。

手付放棄と報酬

原則として、宅建業者の報酬請求権は、業者の媒介によって売り主と買い主(貸主と借主)という当事者間で契約が成立することで発生します。このため、特約がない限り、契約成立後に当事者間の債務不履行などで依頼者が手付放棄して契約を解除したとしても、業者の報酬請求権が失われることはありません。こうした場合の契約解除は、当事者間の自己都合であり、業者に責任はないからです。

支払い拒否

土地を売りたいという所有者の情報を入手した宅建業者の方から所有者にアプローチし「土地を売らせてほしい」と相談して了承を得た後、売買契約が成立した際に、売り主から「売らせてほしいと言ってきたのは、あなた(業者)なのに、報酬を支払うのか」と支払いを拒まれたら、どうなるのでしょうか。

不動産取引に関する報酬トラブルを防止するため、宅建業法は業者が媒介契約を締結した際に所定の事項を記載した書面を作成して依頼者に交付しなければならないと定め、「書面による契約」を義務付けています。仮に書面による契約が交わされていない場合でも、業者の仲介行為は「商行為」に当たり、その商行為で契約を成立させた場合は当然に相応の報酬を請求できます。

報酬額は売り主との話し合いで決まりますが、いかなる場合でも「報酬告示」の上限を請求できるわけではありません。上記のような、売り主が報酬の支払いを拒むような状況に至るというケースは、媒介契約の締結をしていないことになり、宅建業法違反です。つまり、通常の手続きを踏んでいれば、このような支払い拒否は起こりえません。

特別の報酬(通常報酬+交渉経費)の請求

特別の報酬を請求したが……
A会社から「自社ビル用地に適した更地の土地があり、所有者Bに売却の打診をしてみたがうまくいかない。売却の交渉をしてほしい」という依頼を受けました。売買が成立したら相応の手数料を支払うことの約束をしました。Bとの交渉は困難をきわめましたが、何とかA社の予算内で契約が成立しました。交渉はかなりの回数に上り、人件費などの経費が予想以上にかさんだことから、A社に対して媒介の報酬(通常報酬+交渉経費)として売買代金の5%に相当する額を請求しました。ところがA社は交渉経費の負担はできないといいます。

宅建業法46条2項は、報酬告示で規定された額を超えて報酬を受領してはならないと規定しています。また、47条2号は不当に高額の報酬を要求する行為を禁止しています。
売買の交渉(媒介行為)とともに、媒介業務以外のほかの業務の依頼も受けたときには、媒介報酬とは別に報酬を受けることも可能です。ただしその場合には、媒介業務との区分を明確にするために、媒介契約とは別に、業務内容、報酬額などを明らかにした書面により契約を締結することが必要です。本件では、売主の同意を得るまでに相当の苦労があり、金銭に換算すると相応の経費が掛かっているとは思われますが、それはあくまでも媒介業務の中の経費ですので、別途請求することはできません。宅建業法違反に注意します。

2020-03-28 17:31 [Posted by]:BMB