はじめに

売買契約って何でしょうか。買い主は代金を支払う義務を負う一方、売り主は売買の目的物を引き渡す義務を負うのが売買契約です。つまり、どちらにも義務が生じます。そして、目的物が「特定物」であるなら、売り主の本来的義務は「目的物をありのままの状態で引き渡すこと」になります。つまり、目的物に何らかの欠陥があっても、売り主は欠陥を解消して引き渡す義務まで負わないのです。

不動産の売買契約において、実際の裁判でも、中古住宅を購入したところ、室内で雨漏りする欠陥があったケースで、「売り主は現状のまま引き渡せば債務を履行したといえる」「雨漏りが生じることのない物件を供給する債務を負っていたとは認められない」とした事例があります。また、土壌汚染や建築制限があるなど欠陥のある土地を売却した場合でも、裁判例は「あるがままの状態で引き渡し、かつ、移転登記をすることができる以上、売買契約違反があったとはいえない」などとしています。さらに、売買された土地について契約上と実際の面積が異なっていた場合でも「土地の坪数の表示は同一性を示すための標識たる意義を有するに過ぎない」として「売り主の義務は通常の特定物の売買におけると同じく目的物をその現在の状態で引き渡すことにある」と断じているのです。これが売買契約における本来的義務です。

付加的義務

不動産の売買契約における売り主の義務は、目的物をそのまま引き渡すという「本来的義務」にとどまりません。契約の趣旨や目的に従い、売り主は「付加的義務」を負担するからです。附加的義務には、売り主の①担保責任②説明義務③合意義務、があります。

合意による義務

売買契約は元々、「売り主から買い主への所有権移転」か「買い主の売買代金の支払い」が要素となりますが、他に様々な「約定」が付けられるのが一般的です。売り主は当然に、買い主との合意に拘束されます。また、合意に基づく義務以外に、信義則で義務を負担するケースもありえます。

2020-03-18 15:55 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所