借地権を巡る瑕疵
借地権付きの建物の売買においては、売り主は買い主に借地権を取得させる義務を負います。売り主が地主の同意なく借地権を譲渡したとして、地主から借地契約を解除された結果、売り主から買い主への借地権移転が不可能になった事例で、民法561条を類推適用し、買い主による解除が認められた裁判例があります。
賃借権は法律上、原則として譲渡が禁じられています。しかし、賃貸人が承諾すれば、賃借権の譲渡は可能です。賃貸人の承諾で賃借権が譲渡された場合、賃借権の譲受人が賃借人の地位を引継ぎ、法律上も賃貸人と賃借権譲受人が賃貸借契約の当事者となります。この当事者間において、賃貸人は賃借人に対して目的物を使用収益させる義務があります。その結果、賃貸人の義務の当然の帰結として、使用収益に差し支える欠陥があると賃貸人に欠陥の正常化義務が発生します。
このため、土地に瑕疵があれば、借権の譲受人は土地の賃借人として地主に瑕疵を修補するよう請求する権利があります。そして、地主は借地権譲受人からの請求に応じなければなりません。
一方、借地権の買い主が売り主に対し、敷地の瑕疵担保責任を問うことができるかが問題となる場合があります。借地権付きの建物の売買で、擁壁に亀裂があり、雨水の圧力に耐えられず、土地の一部に沈下や傾斜が生じた事案で、1、2審で判断が分かれた裁判例がありました。最終的に、最高裁は1審を支持し、売買対象が借地権である場合は土地に瑕疵があっても、借地権の買い主が売り主に瑕疵担保責任を問うことはできないとの結論を示しています。
他に、借地権を購入したところ、隣地の建物の一部が越境していたとして、売り主の瑕疵担保責任を追及し、認められた裁判例があります。また、借地権付きの建物の売買で、借地権の対象となった土地の上にかかる高圧架空電線が瑕疵に該当すると判断した裁判例もあります。