クーリングオフ(事務所外)

取引する不動産物件など仲介業者の事務所以外で売買契約を締結した場合、業者によるクーリングオフに関する説明は書面で行わなければなりません。もし、口頭の説明にとどまっていたとしたら、物件を購入した顧客に対し「契約日から8日以上経過しているので、クーリングオフは不可能です」などと拒否することはできません。事務所外での契約締結は、契約からの日数に関わらず、買い主が契約解除を主張できます。

【メモ】クーリングオフ

一度は契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を考え直せるようにし、一定期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度。「一定の期間」については、訪問販売や電話勧誘販売は8日間、エステ▽学習塾▽パソコン教室▽結婚相手紹介サービスなど特定継続的役務提供も8日間、内職商法やモニター商法といった業務提供誘引販売取引は20日間と定められている。期間の起算日は、申込書面や契約書を受け取った日。宅地建物や金融商品の取引も対象となる。クーリングオフの手続きは、はがきなど書面で通知して行う。

クーリングオフ(事務所内)

宅建業者の事務所で顧客から物件購入の申し込みを受け、その後、事務所以外の場所で売買契約を締結した場合、買い主はクーリングオフを主張できるのでしょうか。

宅建業法はクーリングオフの可否について「事務所等において買い受けの申し込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買い主を除く」と定めています。つまり、買い主が事務所で最初の購入意思を示していれば、その後、事務所以外で契約を結んだとしても、クーリングオフを主張できないことになります。ただ、こうした場合であっても買い主の手付放棄による契約解除は可能です。

クーリングオフ(相手方の指定場所)

クーリングオフが適用されない場所として「買い主が自宅又は勤務する場所において宅地又は建物の売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合にあっては、買い主の自宅又は勤務先」とのルールがあります。従って、買い主が自分の方から「自宅か勤務先で売買契約に関する説明をしてほしい」と仲介業者に求めた場合、クーリングオフは適用されません。

しかし、「勤務先の応接室が空いていなかった」として、結局、購入希望者の勤務先の近くの喫茶店などで説明を受けた場合は、買い主の都合による変更でも、クーリングオフは適用されます。原則、売買契約の締結は宅建業者の事務所で行うべきものですから、後々のトラブルを回避するためにも、事務所以外での契約締結は買い主の希望により、そのように対応したと説明書に明記しておく必要があります。

融資否認と解除

融資利用特約は、買い主が不動産を購入する際、金融機関から融資を受けようとしたのに、融資の一部や全部を受けられなかった場合に備えて合意しておく特約です。宅建業者側が融資する金融機関を購入希望者に紹介するケースもありますが、そうした場合も、どの金融機関のどの商品を利用するのかは、買い主が決定しなければなりません。上記のような特約では、買い主が利用する金融機関を具体的に定めます。

もし、購入希望者が金融機関から融資を断られ、購入資金が確保できなかった場合、特約に基づいて契約を解除できます。業者がさらに別の金融機関から借り入れるよう、執拗に要求する行為は解除を妨害するものとして不当な行為となります。

転勤と解除

新築住宅の売買契約を締結し、手付金を支払った後、買い主に遠隔地への転勤が決まった場合、どういう手続きを取ることになるでしょうか。

「新築住宅の購入手続きを取ってしまった」として転勤を断るのも選択肢の一つでしょう。しかし、会社の転勤命令は「不可抗力」であり、断れないケースが大半ではないでしょうか。そうすると、契約を解除するしかありませんが、手付金はどうなるのかが問題です。

手付金を授受して売買契約を締結した場合、売り主と買い主は相手が履行に着手するまではいつでも、売り主は手付金を倍返しすることで、買い主は手付金を放棄することで契約を解除できます。上記のようなケースでは、買い主が手付金を放棄すれば、契約を解除できます。しかし、買い主にとっても急転直下の転勤命令でしょう。「不可抗力」の事情を説明し、手付金の返還を求めて、売り主と任意交渉する手もあるでしょう。

条件付売買契約

建築条件付きの土地売買契約とは、土地の売買契約締結後、一定期間(一般には3カ月程度)内に建築請負契約を締結しなかった場合や、請負契約を締結しないことが確定した場合は、大元の売買契約が解除になることを条件とした契約です。

しかし、土地の売買契約締結後、一定期間内に建築請負契約を締結した場合でも、買い主がいかなる建築物を依頼するのか決めることもないまま半ば強引に建築工事請負契約が結ばれた場合、売買契約そのものの成立が否定されます。宅建業者が契約成立を急ぐ余り、拙速に事を進めようとすると、こうしたトラブルの原因となります。不動産取引は買い主本位の対応が不可欠です。

2020-03-18 16:53 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所