外国人

日本語の苦手な外国人が不動産を買いたいと希望している場合、重要事項の説明は慎重を期するべきです。購入希望者が説明内容を十分に理解しないまま契約を結んでしまった場合、事後のトラブルに発展しかねません。

例えば、購入希望者の未成年の子どもの方が日本語が理解できるということで、通訳代わりになって子どもの方に説明したとしても、売買契約を巡る法的な約束事を理解しているとは限りません。未成年が不動産取引の当事者の代理人になること自体が即座に違法とはいえませんが、避けた方がいいでしょう。仲介業者であれば、英語の堪能な取引主任者を雇うか、通訳可能な人に依頼するかどちらかにした方が無難です。

視覚障害者

不動産の購入希望者が視覚障害者だった場合も相手の立場にたった対応が必要です。重要説明事項の説明に関しては、口頭の説明で十分に理解してもらう必要があるのはもちろん、購入希望者の親族や友人など書面を見ることができる人に立ち会ってもらい、口頭での説明内容が書面上にも記載されていることを確認してもらった方が間違いありません。あるいは、点字付きの書面を用意して説明するのも一つの手段です。

住宅の購入を希望する視覚障害者の場合、物件がバリアフリーであることなどを条件としているケースが多いと考えられます。実際に購入を検討する住宅に同行してもらい、生活する上で支障がないか実際に導線などを体験してもらい、売買契約を締結するかどうか判断をしてもらうべきでしょう。

共有名義

単独名義で中古住宅を購入した男性が、売買契約成立後の決済直前に「妻との共有名義」に変更したいと言ってきた場合はどうでしょうか。こうした場合、妻にも改めて重要事項を説明する義務があるかどうかが気になりますが、重要事項の説明は宅建業法で「契約が成立するまでの間に行う」と定められています。従って、契約成立後の説明義務はありません。ただし、もちろん妻が説明を求めてきた場合は、任意ではありますが、改めて重要事項を説明して理解を得た方がいいでしょう。なお、契約書の書き換えなどの手続きについては、登記や課税に関する内容もありますので、専門家に相談した方が無難です。

遠地の依頼者

不動産の購入希望者が物件所在地から遠い場所に居住する人で、現地での検分を経て自宅に戻った後、売買契約を結びたいとの意向を示してきたので、業者として受諾しました。「重要事項の説明」は再度の訪問が多忙のために難しいとして、「電話と文書の郵送で十分」と言われた場合、それで足りるのでしょうか。

答えは「足りるとは言えません」。重要事項の説明は、購入希望者にとって購入するか否かを決める上で順守されるべき大切なルールです。購入希望者の側が「面談での説明は不要」と主張したとしても、宅建業法上のルールだと説得し、面会して説明する必要があります。

ただし、近年はインターネットを活用したテレビ電話の普及など、事実上、面談と同様のやり取りが可能なIT環境が整備されています。このため、平成29年に「IT重説(ITを活用した重要事項説明)」の本格運用(賃貸借契約における借り主に限定)が始まるなど技術の進歩に対応する試みが始まっています。

取引主任者以外の説明

仲介業者が不動産の購入希望者に行う重要事項の説明は、専門知識を有する取引主任者がしなければなりません。従って、取引主任者が立ち会い、主任者以外が説明する方法も認められません。説明の相手方の質問に応じたのが取引主任者であったとしても、認められません。

不動産取引は高額な売買となることが多く、購入する側からすれば、一生をかけた買い物となります。そうである以上、仲介する側の責任は重いのです。取引主任者が自ら責任を持ってしっかりと説明義務を果たさなければなりません。仲介業者が得る手数料は、こうしたプロの仕事に対する報酬なのです。

【メモ】取引主任者

取引主任者(=正式名称は宅地建物取引主任者)は、宅地建物の取引に精通した専門家。都道府県知事が実施する宅地建物取引主任者資格試験に合格し、その都道府県の知事の登録を受け、宅地建物取引主任者証の交付を受けてなることができる。不動産業者は事務所には従業員5人に1人以上、案内所には1人以上置かなければならない。取引主任者の登録には2年以上の実務経験が必要で、主任者証の有効期限は5年となっている。「重要事項の説明」は取引主任者が行わなければならず、説明する際に主任者証の提示が義務付けられている。

買い主が宅建業者

不動産の購入希望者が素人の個人である場合、仲介業者による重要事項の説明が情報格差を解消する意味を持ちますが、購入希望者も宅建業者である場合はどう考えたらいいでしょうか。

結論は、購入希望者が業者でも素人の個人と同様に重要事項の説明は行わなければならないということになります。業者同士の取引の場合、購入希望者の業者も当然、専門知識を持っていますから、購入希望物件に関する調査は先方も独自に行っている可能性が高いと言えます。実際に重要事項を説明しても、購入希望者側が全て把握している内容であるかもしれません。それでも、購入希望者に対する重要事項説明は義務なのです。

法律上、宅建業法は重要事項説明に関して買い主が業者である場合も適用を除外していません。ルール通り、仲介業者側が重要事項説明書を作成・交付し、購入希望者に対して取引主任者に説明させなければならないのです。

不動産の買い主も業者である場合、重要事項に関する説明義務を十分に理解しているがゆえに、悪徳な場合は説明義務違反だと主張されて法外な賠償請求をされないとは限らないのです。そうした意味で、個人の素人に説明する以上に細心の注意を要すると言えます。

外国人に土地を媒介して売った

外国人に買ってもらったが……
外国人に土地を媒介して購入してもらいました。契約の解除についてのトラブルになってしまいました。日本語は簡単なあいさつ程度ができる程度でほとんど理解できないことから、重要事項説明は買主の18歳の長男が立ち合い、通訳をしてもらいました。契約の解除に関する理解ができていなかったようです。説明について媒介業者に責任があるといいますが……。

重要事項説明はその物件を購入しようとしている買い受け希望者に対して、取引をするかどうかの判断をしてもらうためのものです。説明を行う取引主任者は、重要事項説明の内容を買主になろうとしている者に対して理解できるように説明するのが非常に重要なことです。
未成年者が代理人になることもできますので、未成年者への説明が直ちに違法性があるとはいえませんが、未成年者が不動産取引に関する知識を有し、説明を理解できるとは思えません。日本語が不案内である買い受け希望者であるときに、宅建業者は通訳を準備しあんければならないといった義務まではありませんが、「理解できる人の立ち合いを求める」など、説明義務を果たすための環境整備をする努力はあると考えられます。

目に障害がある買主への説明

目に障害がある買主への説明は。
建売業者です。このたび当社の新築建売住宅がオール電化であることや、バリアフリー仕様であることなどを気に入っていただき、購入をしていただくことになりましたが、購入予定者はご夫婦ともに目に障害があり視力がありません。重要事項説明書を交付して、視覚障害があることを念頭に置いてご理解いただけるようにできる限りの説明をするように予定していますが、宅建業法上、またトラブルが生じないようにするためには、どのようなことに注意しておく必要がありますか。

このたびの購入予定者には視覚障害があることから、説明されていることが重要事項説明書に記載されているのか確認できない状況にありますので、後日、説明の内容について誤認などによるトラブルが生じる可能性があります。
トラブルの未然防止のためには①買主予定者が信頼する知り合いなどに立会を依頼して、説明する内容が重要事項説明書に記載されていることを確認してもらう。②後日のことを考えて、説明内容を録音しておくなどが考えられます。
また、視覚障害者や高齢者などにとって住宅がバリアフリーであることは、購入判断の重要な要素です。説明ではなく、実際の建物の使い勝手を自分の身体でしっかりと確認していただくことが大事なことです。十分な納得が得られるまで、契約を急がせてはいけません。

買主が共有に変更した場合の重要事項説明

買主が共有に変更……重説は。
媒介した中古マンションの契約において、売買契約時において買主は1人でしたが、決済直前になり、奥様も買主にして夫婦の共有名義にしたいとの申し出がありました。契約前の重要事項説明の時には奥様は立ち会っていません。この場合、奥様に改めて重要事項説明が必要でしょうか。また売買契約書の変更は必要でしょうか。

決済前に、登記は共有名義にしたいとの申し出を受けることは、実務において珍しいことではありません。契約書の変更(書き換え)は必要なのか、書類はどのようにしておけばいいのかについては、税金や登記手続と関係してきますので、弁護士や税理士、司法書士などの専門家に確認します。
重要事項説明書は改めて奥様にもする必要があるでしょうか。
宅建業法は「契約の成立するまでの間」に重要事項説明書を交付して説明することを義務付けています。本件においても契約を締結する前までに重要事項説明を行っていますので、宅建業法上の義務は果たしています。このような買主の共有名義への変更について、すべての場合に改めて追加された買主への重要事項説明が必要ないとはいえませんが、ご夫婦の共有名義への変更の場合に、改めて奥様に重要事項説明しなければならない必然性はなく、説明義務はないと考えられます。もちろん、説明を求められた時には説明を行います。

買主が遠隔地のときの重要事項説明

買主が遠隔地のとき重説は。
他県に住むAさんから、土地を購入したいとの依頼を受け、複数の物件を紹介し、現地を案内したところ、そのうちの1件が気に入り契約したいとの連絡を受けました。ところが、「仕事が忙しいので、重要事項説明は郵送してくれれば印鑑を押して送り返す。現地を見たときの説明で状況は把握したので問題ない」といいます。他県に居住されており遠隔地であることから、無理に出てきてもらうこともできません。郵送の上、電話で説明する予定です。このような事情があるときは、郵送と電話での説明で問題ありませんか。

宅建業法は、重要事項の説明の方法について、電話などによる説明は認められないとはしていません。最近はIT技術の目覚ましい発達でTV電話により相手の顔を見ながら、面談と同じように説明することも可能になりつつあります。しかし、不動産取引に関して多くのトラブルが生じており、しかも不適切な説明など重要事項説明が原因となっているトラブルが一番多いという現実があります。このような状況もあり、電話での説明では十分な理解が得られない事項もあることから電話での説明は認めていません。理由の如何を問わず直接の面談による説明が必要です。
今後、さらなる技術革新などによりTV電話が一般的になるなど、社k際の状況変化により、面談と同様に買主の十分な理解が可能となれば、面談以外の説明も可能になると思われます。

重要事項説明の内容について買主からクレーム

取引主任者が立ち会っていても
中古一戸建ての媒介をして、契約を成立させましたが、重要事項説明の内容について、買主からクレームがあり、トラブルになってしまいました。買主は「そもそも重要事項説明に際して、説明を主任者でないAが行っている。これは宅建業法に違反している」と言います。確かに、説明は取引主任者でないAがしましたが、取引主任者が立ち合い、買主の質問には取引主任者がお答えしています。説明義務は果たしており、宅建業法には違反していないと考えるのですが。

宅建業法は、宅建業者に対して、取引主任者に重要事項の説明をさせることを義務付けています。重要事項説明は、専門知識を有した取引主任者しか行うことができないのです。主任者資格のない人がどんなに丁寧に説明したとしても、宅建業法上の重要事項説明を行ったことにはなりません。もちろん取引主任者が立ち会ってもダメです。
不動産取引は高額の取引ですから、知識不足などから予期しない多大の損害を被ることもあります。専門性が高く、取引を安全に行うためには硬派にの専門知識が必要になります。そのようなことから、宅建業法は、宅建業者に対し、専門知識を有する取引主任者に説明させることを義務付けています。
媒介業者は、買主などに不測の損害が生じないように取引を安全に行う責任があり、その対価として報酬(手数料)を受領しています。

買主業者からは説明は不要と言われた

買主業者からは説明は不要と……
建売分譲を計画している宅地業者から依頼を受けて、土地を紹介したところ気に入ってもらい、重要事項説明書を作成しました。重要事項の説明をしたい旨連絡したところ、「自社において必要な調査を行って確認しているので、説明は不要である。重要事項説明書には記名・押印する」といいます。重要事項説明書を交付していれば、買主業者の希望通りに説明を省略しても問題ないでしょうか。

宅建業法35条の重要事項の説明義務は、買主が宅建業者である場合も適用を除外していませんので、媒介する宅建業者は重要事項説明書を作成交付して、取引主任者に説明させなければなりません。
建売事業のために土地を仕入れる買主業者は、媒介業者の調査以上の調査をして、あらゆる角度から計画に適した物件であるかを検討しているはずですので、媒介業者の行う重要事項説明の内容はすでに把握しているのが通常と思われます。
しかし、買主がプロであるということが、逆に細心の注意を払う必要があります。何らかのトラブルが生じた場合、宅建業法違反の指摘を受け、法外な賠償金の請求を要求されたりする場合もあり、窮地に陥りかねません。油断は禁物です。取引の相手方が業者であるときは、より慎重な対応が必要であると考えておくことが必要です。

2020-03-18 17:59 [Posted by]:BMB