住宅品質確保法の概括
平成11年に制定された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」の目的は、住宅の品質確保の促進▽住宅取得者の利益保護▽住宅に関わる紛争の速やかな解決――です。これらの目的を達成するため、同法は住宅の性能に関する表示基準や評価制度を設けています。また、新築住宅の供給における瑕疵担保責任に関する特別の定めも明記し、住宅に関わる紛争の処理体制も整備しています。
性能表示
品確法の第一の目的は「高い品質を有する住宅の供給促進」です。この目的を達成するために設けられたのが、住宅の性能表示と評価制度です。
まず、住宅の性能表示は、平成12年に国土交通大臣により表示基準が定められました。「日本住宅性能表示基準(住宅性能表示基準)」です。この基準は、客観的な指標で住宅の品質を表示するもので、客観的な指標で住宅の品質を表示した書面が「住宅性能評価書」です。他の基準について、同じ名称又は紛らわしい名称を用いることは禁じられています。また、表示基準に合わせ、同13年に表示すべき性能に関する評価・検査の方法も定められました。それが「評価方法基準」です。
住宅性能評価の制度には、「設計された」住宅に係る住宅性能評価(設計住宅性能評価)と「建設された」住宅に係る住宅性能評価(建設住宅性能評価)があります。住宅性能表示基準の制度は、あらゆる住宅に強制的に適用されるものではありません。制度利用は任意で、当事者は制度を利用するか否かを選択できます。
売り主が「住宅性能評価書」又はその写しを売買契約書に添付し、又は買い主に交付した場合、同評価書又はその写しに表示された性能があるものとして住宅を引き渡す契約をしたものとみなされます。
評価書の記載内容は契約内容として保証され、評価書の記載内容と異なる住宅を引き渡した場合は、売り主はそれだけで補修工事の義務を負います。ただし、売り主が売買契約書でこれと異なる意思を表示している時は保証されません。なお、評価書で示された性能は「登録住宅性能評価機関」が性能評価を行った時点のものです。評価内容について、一定期間の保証が与えられるものではありません。
瑕疵担保責任
品確法の第二の目的は「住宅取得者の利益保護」です。
品確法はこの目的を達成するため、新築住宅の売り主の瑕疵担保責任について特例を定めました。この特例で、新築住宅の売買では、新築住宅の構造耐力上の主要部分や雨水侵入防止部分の瑕疵担保責任に関して民法の原則と比較し、瑕疵担保責任期間を10年間とする▽この特例と異なる特約の効力を否定する▽売買でも修補請求を認めない――という3点で、売り主の責任を強化しています。
品確法は平成12年に施行され、上記ルールは施行以降に契約された全新築住宅に適用されます。
構造耐力上主要部分や雨水侵入防止部分の責任期間は不動産の引き渡しから10年間とされました。この期間の長さは、経年劣化や機能低下の一般的状況、買い主の瑕疵の知りやすさ、国際水準などを考慮して決められました。
新築住宅の売り主は、引き渡し後10年以内に瑕疵が判明した時は、買い主に無償で修補を行い、又は損害を賠償しなければなりません
また、品確法の定めと異なる特約は効力が認められません。「構造耐力上主要部分と雨水侵入防止部分は責任期間を10年より短縮する特約」や「瑕疵が発生した場合にも修補をしないという特約」は効力を生じません。
民法の原則で瑕疵担保責任の内容は、損害賠償と契約の目的が達成されない時の契約解除であり、修補請求は認められません。これに対し、品確法は売り主の修補義務を認めています。
品確法で「特別の保護」を付与される瑕疵は、対象部位が①構造耐力上主要な部分(構造耐力上主要部分)か②雨水の侵入を防止する部分(雨水侵入防止部分)に該当する場合です。①は基礎、土台、床、屋根、柱、壁などを指し、②は開口部の戸や枠などを言います。
これらの部位は住宅の基本構造部分で、本来は10年程度で劣化するものではありません。もし、瑕疵が存在するならば、住宅全体の存立や使用に重要な影響が及ぶ部分でもあります。また、瑕疵発見の困難さなどを考え合わせれば、一般消費者が瑕疵の不存在を強く望む部分でもあります。
このため、品確法はこれらの部位について瑕疵担保責任を強化し、新築住宅の取得者を保護しているのです。