借家期間中のその他のトラブル

建物の賃貸借では、特約の規定などをめぐりトラブルとなることがあります。
ここでは、起こりがちなトラブルについて解説します。

■特約をめぐるトラブル

賃貸借契約をする場合に、契約書などで特に定めた条項を特約といいます。契約の内容は、お互いの合意によって定まりますが、借家人に知識がないために、貸主に有利な契約になっている場合もあります。
こうした、特約は、従来から有効あるいは無効をめぐって争いとなったケースが多々あります。

特約の有効あるいは無効は、借地借家法などの法規に違反しないかどうか、あるいはその特約に合理的な理由があるかどうか(その特約を定めたことがもっともであるという理由が必要)が判断の基準となります。法令違反あるいは合理的理由がない場合には、その特約は無効ということになります。

■問題になりそうだったら事前に家主に話しておくこと

借家契約は、通常、長期間続くものです。したがって、その間には、部屋の階築をしたい、造作をつけたいなど、さまざまな問題が生じます。
こうした場合、家主に事前に話して了解を取り付けておくことが大切です。そうしておかないと、事後に契約違反だとして、明渡しを求められることにもなりかねません。

■隣近所との問題

アパートや賃貸マンションでは、隣近所とのトラブルも多くあります。
こうした場合、その建物の全体を管理するのは家主であり、家主に依頼された管理者(管理会社)ですので、問題があればこうした人に相談することです。
入居者同士の個人と個人の問題にするよりも、建物全体の管理という視点を持つことが大切です。

(個々の争いの解決方法はさまざま)

借家に関するトラブルは借地借家法のみで解決できるというものではありません。多くの法令がからみます。借家は家という重要な生活基盤の問題でもあります。こじれる前に、専門家に相談するなどの早めの対処が必要です。

借家で起こりがちな問題

□こじれる前に早めの解決を・・・。
①子どもができたら出ていってくれと言われた
→子どもができたことを理由に借家契約の解除はできない。また、契約書に同趣旨の特約があったとしても、公序良俗に反することになり無効となる。
②男子禁制なのに男子が出入りしている
→通常のアパートなどでこうした誓約は無効となると思われる。ただし、女子大の寮などの場合で、その誓約が居住者間の共同生活を維持する観点からみて合理的理由がある場合には有効と思われる。
③借りている建物の周囲の敷地を使いたい
→一般の借家の場合、借家人は貸借建物を本来の目的に従って使用するほか、常識上当然とされる必要な範囲において敷地も利用できる。
④借りていた建物が競売された
→抵当権が設定される前に賃借した場合は、そのまま使用できる。抵当権設定後に賃借し競売手続き開始前から使用していた賃借人は競売人買受時から6カ月間明渡の猶予を与えられる。なお、抵当権者の同意を得れば使用継続可能。
⑤不注意で借家人が火事を出した
→借家が全焼であれば借家権は消滅する。ボヤ程度で修理が可能な場合には、借家権は消滅しないが、注意義務を著しく怠ったとして、契約を解除される場合もあり得る。なお、全焼の場合もボヤの場合も家主に対しては債務不履行により損害賠償義務が発生する。
⑥新しい家主が出ていけと脅す

→家主の側に正当事由がなければ、解約できないので出ていく必要はない。場合によっては、損害賠償(慰謝料)の請求ができる。
⑦借家人が家財道具を残して蒸発
→遺留品に価値がなく、捨てていったと思われる時には処分はしてよい。ただし、勝手に捨てていったと決め込むことは禁物で、後に本人が出てきてトラブルとなる可能性もある。法的処置としては、適当な場所に保管し、動産の競売申立をして、その収入から滞納賃料や保存費を差し引き、残りは供託するということになる、手続は煩雑である。
⑧天井からの漏水で部屋が水浸しになった
→上階の人の不注意(過失)により漏水したのであればその住人に、また、建物に問題(排水管の詰まりなど)があった場合には、家主に損害賠償の請求ができる。建物に問題がある場合、当然、家主に修理の請求もできる。
⑨留守中に家主が室内に入った
→勝手に部屋に入ることは家主といえどもできず、住居侵入罪に該当する。ただし、ガス漏れがしているときなど緊急の場合は、室内に立ち入り適切な処置をすることができる。
⑩毎晩、隣室の麻雀の騒音に悩まされている
→家主に苦情を言うこと。家主は騒音を出す借家人に注意し、それでも改めないときは、違反の程度によって契約解除ができる。
⑪共同の水道で洗車する人がいる
→管理規約で定めがない場合には、洗車する借家人の責任を追及することは難しい。新たに、洗車に関する規定を盛り込んだ規約(水道料の負担)を作成するとよい。
⑫釘やビョウを打つことを禁止する特約は有効か
→釘やビョウを打つことを禁止する特約には、建物を大切にする。以後の賃借人に不愉快な思いをさせない等の合理的な理由があり有効。ただし、違反したからといって、それだけで契約の解除は無理。
●部屋の変更トラブル

5、角部屋を借りる契約なのに変更を言われた

賃貸借契約を結んだ後、賃貸借契約書は存在するが、契約書に記載されている契約内容と当事者間が認容している契約内容で食い違いが生じることも考えられます。

たとえば、賃貸借契約を結んだ際に契約した部屋とは異なる部屋に変更されてしまった場合が挙げられます。
そのときには、まず契約した部屋と変更後の部屋では、窓の数や日当たりの良さなど、部屋の環境にどのような違いがあるのかを確認してみる必要があります。これは、そのまま契約した部屋で押し通すにしても、あるいは、部屋の変更に納得がいかないことを理由に解除を求めるにしても、なぜ契約した部屋でなければならないのか、正当な理由が必要となるからです。

その上で、部屋に大きな違いがあれば、家主側の債務不履行(契約違反)となり、部屋の変更要求に応じる必要はなくなります。よって、借主は家主側の債務不履行を理由に、大家さんの要求を断って、契約を解除することも出来ます。
また、引っ越しのキャンセル料など、そのことによる損害の賠償を求めることも可能になります。

このことに対し、変更後の部屋が契約した部屋と窓の数や日当たりに関して、さほど変わらない場合では、角部屋でなければいけない理由はないので、角部屋でないことを理由に借主が契約を解除しようとするのであれば、信義則違反となることも考えられます。
信義則違反は、賃貸借契約において、当事者の一方が、賃貸借契約上の義務に違反したことで、当事者間の信頼関係を壊すような、賃貸借関係の継続が著しく困難となる行為をしたときは、相手方に、催告をすることなく、賃貸借契約の解除を行うことが可能となります。
ただし、ここでいう義務違反は、特約を含んでいる賃貸借契約の要素をなす義務の不履行だけでなく、賃貸借契約において、信義則上当事者に要求されるべき義務に反する行為も含まれることになります。

よって、契約した部屋とあまりにも違い過ぎるようであるならば、日当たりが悪いのを理由に、また、条件などは契約した部屋とさほど変わらないのであれば、両隣の部屋から騒音を受ける可能性が高いことを理由に変更後の部屋の家賃を安くしてもらえるよう家主に交渉して、変更みることもよいです。
それでも納得がいかないのであれば、賃貸借契約を解除することも1つの手段となります。
契約解除による賃貸借契約終了に基づき、信義則違反を原因とする建物明渡請求権の要件事実は、

  1. ①当該建物について、当事者間で、賃貸借契約を締結していること
  2. ②賃借人に対して、当該建物についての賃貸借契約に基づき、賃貸人が、本件建物を引渡していること
  3. ③賃貸人、および、賃借人双方における信頼関係が破壊されていることを証明する事実があること(評価根拠事実)
  4. ④賃借人に対して、賃貸人が賃貸借契約を解除する意思表示をしていること

になります。

どちらにしても、賃貸借契約書と実際の状況が異なっている場合、契約書の内容がいつからそうなったのか、また、当事者がその事実を知ったのはいつなのか、さらにその事実を知った後にどのような対応をとったのかなどの詳細を調査し、賃貸借契約書の内容が実際に変更されたのかを検討する必要があります。

6、入居後に部屋の変更を言われたが

賃貸借契約を結んだ後、賃貸借契約書は存在するが、契約書に記載されている契約内容と当事者間が認容している契約内容に変更があることも考えられます。

たとえば、入居後に部屋の変更を言われることも考えられます。その場合、重要となる論点は、その部屋の鍵を既にもらっている、あるいは、家具を部屋に運び入れているなどしていて、すでに入居が完了しているなどであれば、部屋の引渡しが済んでいることが認められ、家主と借主の間では有効に賃貸借契約が成立しているとみなされるので、借主が部屋を移る必要はないといえます。
この場合、家主の要求は債務不履行であるとみなされます。

これに対して、引っ越しをする前であったならば、こちらももちろん大家さんに対して角部屋の借主としての権利を主張することは出来ます。
ただし、別の借主が引っ越しを完了しているのであれば、借主自身はその部屋が自身の所有であるとは言えません。
さらに、大家さんが変わってしまった場合にも、新しい大家さんに対して、借主が主張することは出来ません。
つまり、行動が早いものの主張が優先されるのです。

もちろん法律的でない解決方法もあります。それは、あえて部屋は譲り、移るという方法です。その際に代わりの部屋の家賃をまけてもらえば、そちらのほうが得になるのです。
どのような状況になったとしても、賃貸借契約書と実際の状況が異なっている場合、契約書の内容がいつからそうなったのか、また、当事者がその事実を知ったのはいつなのか、さらにその事実を知った後にどのような対応をとったのかなどの詳細を調査し、賃貸借契約書の内容が実際に変更されたのかを確認し、把握しておく必要があります。

●その他のトラブル

7、間取り図面を見て入居したが実際は狭い

内見をせず、パンフレットや間取り図面などを見るだけで賃貸借契約をすることを「見本契約」と言います。「見本契約」の場合、実物を見たわけではないので、いざ入居をしてみると、見本と現物が明らかに違っていることもあります。

例えば、間取り図で見るより、現物の部屋が狭いことがあります。このようなことを法律で「数量不足・一部滅失の場合の担保責任」と言い、貸主に対して借主は以下のような請求が出来ます。

*請求内容は賃料の減額・契約の解除・損害賠償*

①賃料の減額
契約書の中で1平方メートルあたりの賃料が決められていた場合、見取り図と現物の部屋の大きさの差の分を減額してもらうべきです。
また、部屋全体の総額がいくらか決められている場合も、1平方メートルあたりの賃料を割り出し、部屋の広さの差の分を減額してもらうべきです。
②契約の解除
借主が部屋を借りるにあたって、何か目的があった場合に、その目的が達成されないほど部屋が狭かったならば、契約の解除にあたります。
ex.3人で住む予定にしていたが、思ったよりも狭く、必要な広さが足りない場合。
また、契約の解除をした場合、契約自体がなかったとみなされるので、礼金や前家賃、当月分の家賃(ただし、解除までの日割分は除く)などを返してもらうことが可能です。
③損害賠償
賃料の減額や契約の解除になった理由によって、借主自身に何かしらの損害があった場合、別途でその分を請求することが出来ます。
ex.部屋がパンフレットなどで見たよりも狭かったために、家具が搬入出来ず、やむを得ず一回り小さい物に買い替えた分の費用。
また、契約を解除した際に、新しく部屋を借りるために必要な費用(礼金と不動産会社の仲介料の差額)や、引っ越し費用などを請求することが可能です。
また、間取り図面に記載されている寸法や部屋数が足りない場合、1年以内に請求しなければならず、その場合は不動産会社か大家さんに連絡をし、交渉してみることもよいです。

8、室内に洗濯機が置けるはずだったが話が違う

賃貸借契約を結ぶにあたり、賃貸借契約書は存在するが、契約書に記載されている契約内容と当事者間が認容している契約内容に食い違いが生じることがあります。

たとえば、洗濯機置場があるという条件があったため入居したにも関わらず、その洗濯機置場自体がないという場合です。この場合、部屋に欠陥があるということになり、このような欠陥がある状態を、法律上で「瑕疵」があるということになります。

このような場合、借主はその欠陥がある分の家賃を安くしてもらうか、もしくは、部屋を解約することが可能となります(これを瑕疵担保責任という)。

しかし、家賃を安くするにも金額が決まっているわけではないので、大家さんに直接洗濯機置場を設置してもらえるように言う方がよい解決策であると思われます。もし、それでも大家さんが洗濯機置場を設置してくれないのであれば、そのときは契約を解除することが可能となります。
このような場合の解約は、法律上でも認められているので、借主が契約に要した費用はすべて返還してもらうことが出来ます。

ただし、契約の解除にしても、家賃を安くするにしても、洗濯機置場を設置してもらうにしても、パンフレットないし契約書などの記載に「室内に洗濯機置場がある」という条件が、入居する際の契約にあったことを証明する必要があります。

つまり、賃貸借契約書と実際の状況が異なっている場合、契約書を確認し、契約書の内容がいつからそうなったのか、また、当事者がその事実を知ったのはいつなのか、さらにその事実を知った後にどのような対応をとったのかなどの詳細を調査し、賃貸借契約書の内容が実際に変更されたのかを確認する必要があります。

9、駐車場付きということで契約したら抽選もれになった

賃貸借契約を結ぶにあたり、賃貸借契約書は存在するが、契約書に記載されている契約内容と当事者間が認容している契約内容に食い違いが生じることがあります。

たとえば、駐車場付きのマンションであるという条件で契約をしたにも関わらず、抽選もれにより駐車場が確保出来なかった場合が考えられます。一般的に考えても、車を持っている以上、部屋を借りる上で駐車場は必要不可欠なものであるといえます。なので、駐車場が無いのであれば、契約を解約し、全額返還を望むことは普通の要求であるといえます。

しかし、解約をし、さらに全額返金をしてもらうためには手順をふむ必要があるのです。

まず、不動産会社に対して「相当な期間内に適当な駐車場を確保」してもらうように催促をしなければならないのです。ここでいう「相当な期間内」とは、不動産会社が駐車場を探すために必要な期間のことを指し、場所によって異なりますが、だいたい2週間前後位が妥当であると考えられます。

また、「適当な」とは、こちらも場所によって異なりますが東京で考えるのであれば、徒歩5分圏内が通常であるといえます。

ただし、この不動産会社に対する催促は、口約束であると後にトラブルになってしまうことも考えられるので、郵便局の内容証明で出しておいた方がよいです。

なお、内容証明を行うにあたり、まずやるべきことは、事実にあった催告を相手方に対して行うことになります。

また、内容証明郵便を送付しても、留置期間満了(留置期間は原則7日間となっています。しかし、受取人の申出によっては、最大10日間まで延長することが可能となります。)に伴い、内容証明郵便が返送されてしまうことがあります。これは、配達の際に受取人が不在であれば「郵便物配達のお知らせ」が交付されることになっているが、差出人名前が記載されていることで、受取人が自身にとって不都合な内容が書かれていると思い、内容証明郵便を留置期間内に受領をしないように拒否しているためであると考えられます。

ただし、このような場合は、たとえ名あて人不在で内容証明郵便が返送されてきても、留置期間の満了をもって差出人の意志表示の到達はあったものとされることもあります。

また、相手方が内容証明郵便を受領しなかったとしても、内容を了知させるために、留置期間満了に伴い返送された内容証明郵便の差出人保管分をコピーし、いつ、何を送付し、留置期間満了により返送されたこと、さらに内容証明の写しを送付したことを記載した奥書を郵送することも1つの手段です。

このような手順を踏み、催促の期間内に駐車場が確保されれば、解約する理由はなくなります。

ですが、もしも不動産会社が期間内に駐車場を確保出来なければ、解約理由もあるため、やむを得ず解約する形を取ることになります。
その際、解約の意思表示も内容証明にするべきで、文面としては、「催促期間内に駐車場を確保されなかったため、賃貸借契約を解約したいです。よって、契約金の総額の返還をしてください」というようなものになります。

それでも契約金を返還してもらえないようであれば、最寄りの簡易裁判所へ行き、調停の申立てをする必要があります。なお、調停の申立ての手順は書記官室というところへ行けば教えてもらえます。

ちなみに調停とは民事調停のことをいいます。

民事調停とは、民事問題に対して、調停委員会が当事者間に入り、実情に即した問題解決を図ることを目的とし、話し合いによって合意を目指す手続のことをいいます。
通常、調停委員会は裁判官から1名・民間人から2名(弁護士や大学教授、不動産鑑定士など)によって組織され、調停の申込みを簡易裁判所へすると、第1回目の期日が1~2か月後に入ることになります。
裁判所の期日は、賃貸人と賃借人の間に調停委員が入り話を進めていくことになります。
また、話し合いは当事者の合意が得られるか、または、話し合いが成立しないことが明らかになるかまで期日を指定しながら続けられます。
そして、話し合いがまとまると、確定判決と同等の効力を持つとされる調停調書が作成されることになります。
調停は、かなり長い期間を要して話し合いが続けられることが考えられることため、賃料の滞納問題ではあまり利用することはないですが、賃貸人が賃借人との関係上、訴訟を避けたい場合や、複雑な要素が他にある場合などのときは、利用されることもあります。
あくまで、民事調停は、当事者間による合意が前提となっているため、賃借人が調停に出席する意思がないときや、最終的に合意する気がないときは、ズルズル話し合いを進めても結局は成立しないので、調停をする意味がないです。

どのような場合であっても、賃貸借契約書と実際の状況が異なっているのであれば、契約書の内容がいつからそうなったのか、また、当事者がその事実を知ったのはいつなのか、さらにその事実を知った後にどのような対応をとったのかなどの詳細を調査し、賃貸借契約書の内容が実際に変更されたのかを確認し、どのような対応を取るのかを検討する必要があります。

10、駐車場付きマンションで駐車場契約のみ更新を拒否された

建物の賃貸借契約は、旧借家法や現行の借地借家法を適用します。なので、普通の借家契約であれば、期間が満了したとしても自動的に更新されるものなので、原則的に借主が希望する限り、半永久的に借り続けることが可能です。

しかし、駐車場の賃貸借は、旧借家法や現行の借地借家法が適用されず、期間が満了になり、貸主が「更新しない」と言えば、契約は打ち切られてしまいます。
ですが、今回のように、「駐車場付きのマンション」での賃貸借契約がどうなるかというと、駐車場の契約と建物の契約が一体となって契約が結ばれているかが大事な基準となります。

つまり、駐車場と建物の契約が一体となっているのであれば、建物の契約が更新されると同時に、駐車場の契約も継続されます。

それに対して、駐車場と建物が別々の契約であるならば、建物の契約が更新されたとしても、駐車場の契約だけが終わってしまうこともあるのです。
建物と駐車場の契約が一体であるかを区別する上で、「建物と駐車場の位置関係」と「貸主が同じかどうか」が問題となります。パターンとしては4つが挙げられます。

  • ①建物の敷地の庭の一部またはマンションの敷地の一部が駐車場になっている。
  • ②建物と駐車場の場所が別々になっているが、貸主が同一であり、契約書も1通にまとまっている。
  • ③建物と駐車場の場所は別々であり、さらに契約書も別々だが、貸主は同一である。
  • ④建物と駐車場の貸主が別々であり、さらに契約書も別々である。

①と②に関しては、建物と駐車場の契約が一体となっていることが認められます。
③に関しては、場合によっては一体と認められる可能性もあるが、必ずしも一体であるとは言い切れないです。
④に関しては、一体ではないと言えるので、駐車場の更新のみ断られることはやむを得ないです。

11、留守中に大家さんが勝手に部屋を開けた

賃貸物件の場合、火事やガス漏れなどの緊急事態が起こった際の対応を行うため、もしくは起こりそうなときに未然に防ぐための予防の場合には、安全のため、部屋の管理権を持っている大家さんが入居者の留守中に部屋へ入ることは許されています。

また、賃借人が長期間賃料を滞納し、さらに賃借人の姿を見かけなくなった場合、家の内部に異常がないかを点検するための立入調査であれば、社会通念上妥当であるとみなされるため、賃貸人は合い鍵を使い、賃借人の賃貸建物に入室することも違法とみなされないと考えられます。
これは、賃借人が高齢者で特に一人暮らしであった場合、病気により室内で身動きが取れない状態にあることや、あるいは、亡くなっているおそれも考えられるからです。よって、賃借人と連絡が取れなくなった時期や引っ越しをしたのかなどを確認し、室内の状況を知る必要があると判断したときには、立入りを検討しなければならないのです。

しかし、ガスなどの点検の際は、事前に入居者に伝えておく必要があり、無断で入居者の部屋に入ることは、火事などの緊急事態にのみ許されるとされています。
よって、大家さんが借主の住居へ正当な理由もなく、無断で立ち入ることは「住居侵入罪(刑法130条)」にあたり、刑罰としてはかなり重いものとなります。

今回の場合、1か月後に部屋を明け渡すということから、大家さんは次の入居者の希望により内見あるいは部屋に破損がないかの点検をするために部屋を開け、中に入ったと考えられます。

ですが、この理由が事実であるとするならば、緊急事態にはあたらず、大家さんの立ち入りは認められないと言えます。
なので、まずは、大家さんに抗議をし、それでも大家さんが無断で部屋への侵入を続けるようであれば、警察に被害届を出すことをするのもよいと思います。

ただし、ドアを開けて、勝手に中を見ただけの場合は、他人の住居などをのぞき見る行為にあたるので、軽犯罪法第1条23号に該当すると言えます。

しかし、長期期間の家賃滞納や一定期間以上姿を見かけていないなどの場合は、緊急性が考えられるので、立ち入りは認められますが、賃借人の賃貸建物に入室する際には、賃貸人は1人で立入らないように気を付ける必要があります。これは、もし賃借人に特に異常がなく、ただ留守にしていただけのような場合に、不法侵入などのトラブルなどが起こることも考えられるからです。

なので、賃借人の安否を調べるために賃貸建物に入室する際は、可能であるならば、賃借人の親族や、賃貸借契約における連帯保証人等の賃借人の関係者に立ち会ってもらうことが後々を考えると無難といえます。また、事件性が考えられるのであるならば、所轄の警察署に連絡をし、警察官の立会いのもと、第三者を交え入室することがいと思われます。

違約金トラブル

違約金とは、契約の当事者である賃貸人または賃借人のどちらかが契約において違反するようなことがあれば、支払うことがあらかじめ決まっている罰金のことをいいます。

違約金は手付金とは異なり、当事者どちらかによる契約違反に対する罰金のことなので、あらかじめ支払っている申込金を諦めれば解決するというような簡単なものではないのです。

 

解約が契約違反になれば、契約書によって記載されている以上、違約金は発生することになります。この違約金は、たとえ相手に損害が発生していなかったとしても、払わなければならないものとされています。

この時点で考えれば、実際には損害が発生していないにも関わらず、違約金を支払うことは不合理に感じることもあると思えます。

 

しかし、仮に相手に違約金を上回る損害が生じたとしても、違約金が「損害賠償額の予定」と推定されている(民法420条)ことによって、原則、借主は違約金の限度内でのみ責任を負うことになるのです。

 

つまり、損害が発生していない場合で考えれば、違約金を支払うことに納得がいかないときもありますが、逆に考えれば、違約金以上の損害が発生したとしても、借主が負う賠償額が限定されていることから、違約金以上の金銭を支払う必要がないため、借主にとっては有利な条項であるといえます。

 

ただし、契約内容の中で高額な違約金が設定されている、もしくは、損害に対する全額を賠償するなどの条項が記載されていた場合には、記載通りの莫大な賠償を請求されることもあるので、契約時には注意が必要になります。

ですが、公序良俗違反にあたる金額である、また、消費者契約法における「平均的な損害」を超えている部分に関しては無効となる場合もあります。

 

 

違約金とは、貸主または借主の一方が契約に対して何かしら違反をした場合、支払うことが決められている罰金のことを言います。違約金は、手付金とは違い、契約違反による罰金なので、申込金を諦めることで解決することではありません。

違約金では、相手側に損害が発生したかしていないかは関係なく、必ず支払わなければならないものです。

 

また、違約金が「損害賠償額の予定」と推定されていることから、違約金に限度があり、たとえ相手に違約金を上回る損害が発生していたとしても、原則として借主は違約金の限度でしか責任を負う必要はないということです(民法420条)。

 

しかし、契約内容の中で高額な違約金が設定されていた場合、契約内容通りの賠償を請求されることもあります。

 

ただし、違約金の設定があまりにも高額であった場合、公序良俗違反や消費者契約法の「平均的な損害」を超えていることにより無効となります。

契約時になってリフォーム代を請求された

手付金を支払った際にリフォーム費用を負担するという話が出ていない以上、リフォーム費用に関して支払う義務はありません。

リフォーム費用は誰が負担するかですが、民法の中で「賃貸人は~修繕をなす義務を負う(民法606条)」となっているため、大家さんには貸す部屋を居住に適した状態にする義務があります。よって、リフォーム費用は部屋の建築費と同じ意味を持つため、当然大家さんの負担となります。

もし、契約になかったリフォーム費用を請求された場合は、建築費と同じ扱いになることや、法律上、大家さんが負担すべきものであるなどを申し入れ、費用負担なしで入居できるよう交渉します。

しかし、それでも話がまとまらないのであれば、契約を白紙に戻すことになります。その際は、貸主側による契約キャンセル(解約)となるので、違約金として手付金の倍額の返還を求めることが可能になります。

家賃、共益費、敷金などの賃貸借契約に基づいたものはたとえ契約時に話に出なかったとしても、借主は相場並みのものを支払う必要があります。

また、借りた部屋の電気、水道、ガスなどの料金に関しても、借主自身が支払う義務があります。

ピアノ持ち込み可のマンション

賃貸借契約において、まず確認しておくべきことは、借りようとしている賃借物(マンションやアパートなど)の所有形態です。マンションやアパート、特に持ち家を第三者に貸している可能性が高い分譲タイプのマンションでは、複数のオーナーによって、マンション管理がされていることがあります。その場合、オーナー間において管理規約が定められている可能性があり、たとえば不動産会社との話では、ピアノなどの楽器類の演奏が可能ということで賃貸借契約を結んだにも関わらず、オーナー間による管理規約では禁止されているということもあり得ます。
このようなときには、賃貸借契約書よりもマンションの管理規約が優先されるため、もしも管理規約を知らずに違反する行為をしてしまったときは、「建物の区分所有に関する法律」の58条や60条などの規定により、賃貸借契約の解除や立退きの裁判を起こされる可能性も考えられます。
また、管理規約では、禁止まではされていなかったとしても、演奏時間や楽器の種類などの細かい部分において、何かしらの制限がされていることもあります。

これに対して、マンション全部をオーナー1人で所有している場合は、オーナーの意思に反する管理規約はあり得ないので、オーナーが許可しているのであれば問題はないと思われます。

どちらにしても、入居する前にあらかじめ管理規約について不動産会社に調べてもらっておくと安心です。

賃貸借契約書や管理規約で禁止されていないことであっても、どんな場合でも隣人や近隣に対して迷惑になる行為など、マンション住民の共同の利益に反することは自身で気を付ける必要があります。もし、禁止されていないからといって、近隣の迷惑になるような行為をしているようであれば、賃貸借契約の解除や立退きの措置を取られることになりかねないので、たとえ規則になくても一般的に迷惑であると考えられる行為は避けるようにするべきです。

なお、「管理規約」とは、住民などが快適かつ安全に生活ができるようにと、管理組合の組合員によって、お互いに守るべきことを約束したルールのことをいいます。これは、一般的には国土交通省によって公表されている「マンション標準管理規約」というものをベースとして、それにマンションそれぞれの事情や特色などを考慮して作成および改正されています。

また、内容としては、「区分所有法」を元に、建物の共用部分・専有部分の範囲・費用の負担・管理組合の業務・理事の役割や職務などを定めているものになります。つまり、マンションの管理や運営を行っていく上で、守らなければならない基本的なものということになります。

さらに、理事会では、この管理規約をもとにして、住民や賃貸者による要望や苦情などに対処していくことになります。

管理規約はいわば管理組合の憲法のような役割を担っているため、最新の管理規約を手もとに持っておくことが必要になります。

以上のことから、管理規約は共同生活を送るにあたり、基本となる重要なルールであるといえます。

しかし、その管理規約が社会の変化に適用できなくなったり、将来建て替えや大規模な修繕を見越したときに対応できていないようでは、規約を見直す必要性がでてきます。
管理規約の設定および変更、または、廃止をする際には、まず理事会の下に専門委員会や部会を設け、問題となっている部分に対し検討することになります。検討した内容に関しては、広報誌などで経過がわかるように通知をするとよいです。最終的には、総会による「特別決議」において、区分所有者の4分の3以上と議決権の4分の3以上の賛成を得る必要があります。
さらに、管理規約を設定および変更または廃止することによって、特定の組合員の権利に何かしらの影響を与えるようなときには、その組合員に対して承諾を得る必要があります。
ただし、正当な理由がない限りは、その組合員であっても、管理規約の瀬低・変更または廃止に対して拒否することはできないのです。

転職しても会社の借り上げ社宅に住み続けられるか

転職しても会社の借り上げ社宅に住み続けられるか

社宅とは、本来会社が所有している建物を社員に対して、無償あるいは割安の賃料で貸し出すものです。このような形態で貸し出している場合、社員は会社を辞めるのであれば、その社宅から出なければならないのが通常です。
しかし、借り上げ社宅の場合は、建物の所有者は会社ではなく、別の第3者になります。なので、借り上げ社宅では、会社もしくは社員自身のどちらかが所有者から借りている形になります。このとき、会社が借りているのであれば、社員に無償あるいは割安の賃料で転貸し、社員が借りているのであれば、会社から賃料の全額あるいは一部を住宅手当などとして、社員に支給されます。
そこで、借り上げ社宅に転職しても住み続けられるかですが、まずは、賃貸借契約書の賃借人が誰であるかを調べます。(もしも、契約書が手元にないときは、会社の総務課で調べることが出来ます。)
そして、賃借人の欄が会社になっている場合は、社員が会社から転貸していることになるので、会社所有の社宅と同様の扱いになり、社員は会社を辞める際に部屋をでる必要があります。
これに対し、賃借人の欄が社員自身であれば、自身が家主から直接借りているということなので、会社を辞めたからといって、出て行く必要はないのです。
ただし、会社を辞めても住み続ける場合、会社とは無関係になるので、住宅手当はもらえなくなります。
また、賃借人が会社であっても、転職する理由が円満であれば、場合によっては、会社が契約を引き継いでもらえることもあり、その場合は、住み続けることは可能になります。
ですが、住み続けるためにも所有者(貸主)の同意は必要になります。

夫と離婚したら妻は賃貸マンションから出て行かねばならないのか

夫と離婚したら妻は賃貸マンションから出て行かねばならないのか

本来、同居人(賃借人ではないが、共に生活をしていた者)は、賃借人に対する占有補助者という立場になるのが一般的であるため、賃貸借契約の終了における、建物明渡請求訴訟が生じたとしても、被告になることはないです。
これは賃貸人が持つ、建物明渡請求訴訟の債務名義は、賃借人に対するものであるため、占有補助者である同居人も賃借人と共に退去させることができるからです。
しかし、建物明渡請求訴訟において賃借人が退去したにも関わらず、同居人が居座り退去をしないということがあれば問題になります。このような場合、退去をしない同居人に対して、自主占有が認められた場合、賃借人のときとは別に、建物所有者が原告となり、同居人を被告とした所有権に基づく建物明渡請求を行うことになります。
退去しない同居人に自主占有が認められなければ、賃借人に対する建物明渡請求訴訟の際に得た債務名義を持って、強制執行を行うことが可能となります。
ただし、離婚したとはいえ、元は夫婦であったことから賃貸借契約における賃料債務を共に負っていたということを考慮すれば、以下の2つの理由により、部屋を出ていく必要はないと考えられます。
まず1つめは、マンションを借りたときから、自身も同居していた場合です。夫婦や親子など、家族関係にある者が、同居するために部屋を借りたのであれば、家族全員が「家庭共同体」として契約するものであると考えられています。よって、借主としての名義が自身でなかったとしても、契約に関係のある当事者として住む権利を主張することはできます。もし、元夫が大家さんと合意で妻への嫌がらせのために契約を解除したとしても、妻には住み続ける権利を主張することが可能です。
2つめは、最初は夫だけが住んでいたが、結婚したことによって、妻が同居することになった場合です。このような場合、契約時には妻はいなかったので、妻が元夫と共に契約をしたとは言えません。ですが、少なくとも結婚してから離婚するまでの期間は、適法の元、元夫と共に居住していたことは明らかで、第三者というような遠い関係ではないと言えます。
つまり、賃借権を夫婦で共有していたと考えられます。また、夫がマンションから出て行ったことから、離婚をしたときに、夫は妻に対して、賃借権を譲渡したものであると、考えられます。
これらのことを考えると、この譲渡は、無関係な第三者に対するもの(無断譲渡)ではないので、大家さんへの背信行為にはあたらず、契約を解除する理由としては認められないです。さらに、元夫から妻へということを考えた場合、同居人に対するものであると言えるので、妻がマンションを出て行く必要はないです。
なお、無関係な第三者に対する譲渡とは、無断譲渡のことを指します。
無断譲渡とは賃借人が、賃貸人の承諾なしに、賃借物に対する賃借権の譲渡することはできないことになっています(民法612条1項)。よって、賃借人が賃貸人に無断で譲渡を行った場合、賃貸人には、賃貸借契約の解除権が発生することになります(民法612条2項)。
また、無断譲渡による解除は、法定解除(民法540条以下)の規定によるものではなく、民法612条2項が適用されることになるので、相当期間を定めた催告をする必要はないです。
賃貸借契約終了に基づく、無断譲渡を原因とした建物明渡請求権の要件事実は、
①当該建物について、当事者間で賃貸借契約を締結していること
②賃借人に対して、当該建物についての賃貸借契約に基づき、賃貸人が本件建物を引き渡していること
③ⓐ第3者に対して、賃借人が当該建物における賃貸借契約に基づく権利(賃借権)を譲渡(売買等)していること
またはⓑ第3者に対して、賃借人が本件建物について賃貸借契約を締結していること
④第3者が、賃借人から本件建物の引き渡しを受けて、これを使用収益していたこと
⑤賃借人に対し、賃貸人が賃貸借契約を解除する意思表示をしていること(この際、相当期間を定め、催告する必要はない。)
ただし、第3者が賃貸建物を占有していたとしても、それが譲渡によるものなのかを賃貸人が把握できていないことが多々あります。
これは、賃貸人が、賃借人と第3者間で結ばれた賃借権譲渡契約書を収得することが困難であることが原因といえます。
そもそも無断譲渡を、賃借者と第3者が契約を結んだこと自体はそこまで重要ではなく、賃借者が第3者に使用収益させたことが重要であるといえます。
裁判になった際に訴状において、原告(賃貸人)が賃借人によって無断譲渡があったと主張したことに対し、答弁書において、被告(賃借人)が無断譲渡はなかったと否認を主張した場合、被告側は否認するにあたる理由を記載する必要があります(民事訴訟規則79条3項)。さらに、被告側は、賃貸建物が第3者によって使用収益している理由を述べなければならず、その過程の中で譲渡か、あるいは、転貸かが判明することになります。
その後、原告は判明した内容をもとにあらためて要件事実に沿った事実を主張することになります。

借家人が亡くなった後も、その借家に内縁の妻が一人で暮らしています。

借家人が亡くなった後も、その借家に内縁の妻が一人で暮らしています。内縁の妻には、その家に住む権利があるのでしょうか。明け渡し請求できるのでしょうか。

土地の賃貸借でも建物の賃貸借でも、賃借人が死亡したからといって賃貸借契約は終了しません。その借家権は、借家人の相続人が相続します。その場合、家主の承諾は必要なく、名義書替料などの支払いも必要ありません。つまり借家権は、借家人の死亡により当然に承継される権利です。
今回の場合、借家人の死亡後に住んでいるのは内縁の妻であり、法律上の相続人ではありません。しかし、借家権を相続できないからといって、夫の死亡により借家から退出しなければならないというのは気の毒です。
そこで、借家人に相続人がいない場合には、その借家人と同居していた内縁の妻や事実上の養親子関係にあった者が借家権を引き継ぐことが、借地借家法で認められています。したがって、内縁の妻であったことを理由にして、借家の明け渡しを請求することは不可能でしょう。

夫が死亡した場合、借家権を相続できるか(内縁の場合はどうか)

夫が死亡した場合、借家権を相続できるか(内縁の場合はどうか)

まず、賃借権は財産的価値を有し、被相続人(=亡くなった者)だけが専属で所有する権利といえるものではないということから、賃借権は相続の対象であるとされます。なので、通常は、被相続人(亡くなった人)の相続人が被相続人の所有建物の賃借権を相続することになります。
では、正式な相続人ではない、内縁関係であっても、賃借権を相続することが認められるのかということになります。ここで重要視される事は、被相続人に正当な相続人(前妻との間の子供など)が存在するかということになります。
<被相続人に相続人がいる場合>
もしも正当な相続人がいるのであれば、相続した賃借権を援用し、対抗してくることが考えられます。
また、被相続人と一緒に住んでいたのであれば、同居人という立場にはなりますが、内縁関係は正当な相続人ではないので、賃借権を相続することは難しく、さらに、建物に対する占有権原を持たない占有者として、所有権に基づく返還請求権による建物明渡請求権の対象となってしまうことも考えられます。
ただし、判例上では、被相続人に正当な相続人がいないく、また、被相続人と同居していた場合に限り相続人が相続した賃借権を援用できるものとなり、被相続人と内縁関係にあった配偶者に承継され(借地借家法36条)、当該建物に居住し続けることが可能になります。
内縁が居住を認められるための具体的な要件としては、
①被相続人に相続人がいるということ(相続人が存在しないのであれば、借地借家法36条の問題ということになります。)
②当該同居者が被相続人にとって家族共同体の一員と評価することができること
③当該同居者が被相続人死亡後も引き続き当該建物に居住し続けていること
となります。
内縁関係という立場は、相続人が相続した賃借権を援用することしかできず、自身で賃借権を得られるというわけではないのです。つまり、賃貸借契約上の権利および義務は相続人に帰属し、内縁側に帰属されるということではないのです。
しかし、内縁側は債務不履行によって賃貸借契約が解除されないように賃料の第三者弁済をしなければいけないと考えられます。
結局のところ、相続人がいるのであれば賃借権は相続人が相続することになるので、内縁側が賃借権を相続することは難しいということになります。
さらに、催告や解除の意志表示、更新拒絶、解約申入れを希望する際は、当該相続人に対して行うことになります。

<被相続人に相続人がいない場合>
被相続人に相続人が存在しないのであれば、賃借権を相続する者がいないということになり、よって、内縁側が賃借権の援用をすることはできないということになります。
ですが、相続人がいないのであれば、正式な夫婦関係ではないにしても、被相続人と事実上の夫婦関係であり、一緒に暮らしてきた同居人であるならば、正式な関係の者と同等の立場とみなされ、そのまま引き継がれることも考えられます(借地借家法36条)。
さらに、借主と共にマンションで同居していた上に、内縁関係にあるのであれば、亡くなった夫を助けてきたことは明らかで、借家の居住権に関しては、他の相続人より強く保護されるべき立場であると言えます。
このような場合に、内縁側を保護するという目的から、特別規定が設けられたのです。これによれば、
①居住用建物の賃貸借契約において
②被相続人が相続人なく死亡した場合、
③被相続人と事実上の夫婦関係もしくは養親子関係にあった者で、
④被相続人と同居していた者は
当該建物の賃借権を承継することができると定められています。
よって、上記の要件を満たすのであれば、正式な相続人が相続をしたいというような特別な事情が無い限りは、内縁側であっても、賃貸借契約による債権および債務を承継することになります。
内縁側が承継を望まない場合は、被相続人に相続人がいないまま死亡したことを内縁側が知ってから1か月以内に賃貸人に対して、反対の意思を示したときには、内縁側に承継されることはないです。
居住用の借家ではなく、店舗や事務所といったものでは、上記のような引き継ぎの規定を適用することは出来ません。
相続人が他にいない場合、「特別縁故者への分与(民法958条の3)」という制度があり、被相続人と共に生計を立てるなどしていた人に対して、相続財産を与えるもので、家庭裁判所に申立てをすると、賃借権などの分与を請求することができるようになります。
請求するのに一定期間が設けられているので、早めの手続きが必要です。
また、相続を受けることに関する説明を大家さんにし、出来るのであれば、自身名義の契約書を作りなおすとよいです。

賃貸借の注意点とは

賃貸借の注意点とは

建物を貸す際に注意すべき規程として、借地借家法28条があります。これは更新拒絶における正当事由の規定であり、貸主が契約の更新を拒絶する際には、更新ができない正当な理由を借主に対して示す必要があります。

借地借家法28条
 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現状並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申し出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

借地借家法26条1項
 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

また、貸借人同士で期間を定めていた場合には、期間満了と同時に賃借物(部屋や建物など)を返還してもらうことが出来ます。(民法616条、597条1項)

民法616条(使用貸借の規定の準用)
第五百九十四条第一項、第五百九十七条第一項及び第五百九十八条の規定は、賃貸借について準用する。

民法597条1項
 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。

しかし、期間の定めは法律上20年が上限となっており(民法604条)、さらに契約における目的物が建物であり、1年未満の期間を設定した場合は期間の定めがないということになります(借地借家法29条1項)。

民法604条(賃貸借の存続期間)
賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。
2  賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。

借地借家法29条1項(建物賃貸借の期間)
 期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。

契約の目的物が建物であった場合、期間の定めが設けられていたとしても、必ずしも期間満了と同時に契約終了となり、建物から退去してもらえるとは限りません。契約満了の6か月~1年前までに賃借人から更新しない旨の通知が来なければ、従来通りの条件で契約が更新されます(借地借家法26条1項)。また、普通の借家契約では、期間満了後も借主が住み続けたい旨を主張すれば、自動的に更新が可能となってしまいます。

借地借家法26条1項
 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

2020-03-19 16:01 [Posted by]:BMB