借家の破損と修繕

借家契約の目的となっている家屋が破損した場合の修繕義務・費用負担義務は、原則として家主にあるといっていいでしょう。なぜなら、家主には目的物である借家を本来の使用目的に適合した状態で提供する義務があり、借家人は、それを使用する対価として家賃を支払っているからです。ただし、借家の破損が借家人の責任によって生じた場合にも、家主は修義務を負うのかについては争いがあります。近時の通説は家主の修繕義務を否定していますが、家主の修繕義務を認めた判例(東京地判平7・3・16)もあります。 借家に雨漏りなどの欠陥がある場合には、原則として家主に修繕義務があります。修繕は借家人がするという特約がある場合は、通常、この特約に従うことになります。

■借家の破損と家主の修繕義務

家主は借家を住居・店舗・事務所等の使用目的に従って、日常使用できるようにして借家人に貸す義務があり、欠陥がある場合には、必要な修繕をしなければなりません。 具体的に、どういう具合に修繕義務があるかといえば、雨漏り、外壁の破損、畳・建具の破損、窓の欠陥などで、普通に建物を使用するのに支障をきたす場合です。 このような破損は、地震などの災害であろうと借家人の不始末による場合とを問いません。ただし、借家人の不始末の場合には、その不始末を理由に損害賠償の請求がなされることになります。

■借家人が修繕義務を負う場合

契約書に「修繕は借家人がする」などの特約がある場合があります。こうした特約は有効で、修理義務は借家人にあることになります。しかし、台風で借家の大部分が破損したというような場合にまで、修理義務はないとされています(判例)。というのは、こうした特約では、普通に使用する場合の破損が前提であり、台風などによる大損害まで考えてはおらず、原則に戻ることになるからです。

■低家賃の場合

修繕義務は家賃と無関係ではありません。家賃には、修繕費も含まれると考えられており、近隣の家賃に比較してあまりに低家賃で修繕費も出ないというような場合には、家主には修繕義務はないとされています。

■家主が修繕をしないとき

家主が修繕をしないときには、借家人には以下の2つの対抗法があります。 ①借家人が修繕して、その費用を家主に請求。 ②建物を利用できない割合に応じて、家賃の一部または全額の支払を拒む。

民法606条(賃貸物の修繕等) ①賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。②賃貸人が、賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人はこれを拒むことができない。
2020-03-19 15:49 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所