借家権の無断譲渡・転貸

借家権(賃借権)の譲渡・転貸には家主の承諾が必要です。無断で譲渡・転貸をすると、家主から借家契約を解約される場合があります。

□借家権の譲渡
借家権者(借家人)が借家を第三者に譲り渡すことです。
□借家の転借
借家権者(借家人)が借家を第三者に賃貸することです。
■借家権の譲渡・転貸と家主の承諾

借地借家法には、借家権の譲渡転貸についての規定はなく、民法の原則に従うことになります。民法では、借家権の譲渡や転貸をするには家主の承諾が必要であり、家主の承諾なしに借家権を譲渡したり転貸したりした場合には、借家契約の解除理由となります。しかし、判例は、借家権の無断譲渡や転貸があった場合でも、「背信的行為と認めるに足りない(家主と借家人の信頼関係が破壊されていない)」場合には解除権は発生しないとしています。

■居住用建物の無断譲渡・転貸の場合

一般的には契約解除の原因となります。ただし、判例では、借家人が親族を同居(転貸)させる場合、あるいは内縁関係の解消に伴い譲渡・転貸が生じた場合には、契約解除は認められないとしています。しかし、この場合でも、借家人が転居するなどして独立した使用収益関係となった場合や、間貸しについて多額の権利金や高額の家賃を取るような場合には、借家契約の解除ができるとしています。

■営業用建物の無断譲渡・転貸の場合

この場合も、一般的には契約解除の原因となります。しかし、個人の事業所として建物を借りていたが会社組織にしたという場合には、借主に実質的な変更がないことから、契約解除は認めないとする判例があります。 一方、経営者(借家人)が交替し、経営の実権が第三者に移転し、実質はその者に賃借権が譲渡されている場合は、判例は分かれていますが、信頼関係が破壊されたとして契約解除は認められたケースが多いようです。

民法612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限) ①賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。②賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

兄のアパートを大家に無断で引き継げるか

兄のアパートを大家に無断で引き継げるか

本来、賃借人は、賃貸人の承諾なしに、第三者へ賃借物に対する賃借権を譲渡することはできないことになっています(民法612条1項)。よって、賃借人が賃貸人に無断で譲渡を行った場合、賃貸人には、賃貸借契約の解除権が発生することになります(民法612条2項)。
また、無断譲渡による解除は、法定解除(民法540条以下)の規定によるものではなく、民法612条2項が適用されることになるので、相当期間を定めた催告をする必要はないということになります。
無断譲渡において、建物所有者を原告とした、所有権に基づく建物明渡請求訴訟を起こすときに、無断転借人や賃借権の無断譲受人は、被告ということになります。
ただし、無断転借人および無断譲受人は、賃貸借(使用貸借)契約終了に基づく建物明渡請求訴訟で被告となることはないのです。
これは、賃貸人(使用賃借)との間に、何らかの契約関係があるわけではないからです。
賃貸借契約終了に基づく、無断譲渡を原因とした建物明渡請求権の要件事実は、
①当該建物について、当事者間で賃貸借契約を締結していること
②賃借人に対して、当該建物についての賃貸借契約に基づき、賃貸人が本件建物を引き渡していること
③ⓐ第3者に対して、賃借人が当該建物における賃貸借契約に基づく権利(賃借権)を譲渡(売買等)していること
または
ⓑ第3者に対して、賃借人が本件建物について賃貸借契約を締結していること
④第3者が、賃借人から本件建物の引き渡しを受けて、これを使用収益していたこと
⑤賃借人に対し、賃貸人が賃貸借契約を解除する意思表示をしていること(この際、相当期間を定め、催告する必要はない。)
なお、無断転借人や無断譲受人は、建物を自主占有する者には該当しないため、同居人のような賃借人(使用借人)の占有補助者という立場にはならないです。
以上のことにより、たとえ兄弟姉妹間であったとしても、大家さんに無断で引き継ぐことは出来ません。大家さんは、賃貸借契約の際に、借主の人柄を見て、トラブルを起こす心配がないかを確認した上で、契約を結んでいます。それが、知らないうちに違う人が住んでいて、さらにその人柄がわからないのでは、大家さん自身、心配で困ってしまいます。
引き継いで住むということは、厳密にいえば、「賃借権の譲渡」にあたるので、大家さんの承諾が無く、無断で「賃借権の譲渡」をしてしまうと、契約を解除されることもありえます(民法612条)。
他にも、自身が借りている部屋を、第三者から家賃をもらう代わりに貸すといういわゆる「また貸し」も「賃借物の転貸」ということにあたるので、「賃借権の譲渡」と同様に、契約を解除する理由となります。
つまり、どのような場合でも大家さんの許可は必ず必要であるということが言えます。
ただし、第三者が賃貸建物を占有していたとしても、それが譲渡によるものか、または、転貸によるものなのかを賃貸人が把握できていないことが多々あります。
これは、賃貸人が、賃借人と第3者間で結ばれた転貸契約書や賃借権譲渡契約書を収得することが困難であることが原因といえます。
そもそも無断譲渡や無断転貸を、賃借者と第三者が契約を結んだこと自体はそこまで重要ではなく、賃借者が第三者に使用収益させたことが重要であるといえます。
裁判になった際には、訴状において、原告(賃貸人)が賃借人によって無断譲渡があったと主張したことに対し、答弁書において、被告(賃借人)が無断譲渡はなかったと否認を主張した場合、被告側は否認するにあたる理由を記載する必要があります(民事訴訟規則79条3項)。さらに、被告側は、賃貸建物が第三者によって使用収益している理由を述べなければならず、その過程の中で譲渡か、あるいは、転貸かが判明することになります。
その後、原告は判明した内容をもとにあらためて要件事実に沿った事実を主張することになります。
さらに建物を占有しているのが賃借人ではない氏名不詳の第三者であることがあります。近隣の情報や建物の現状をもとに当該建物を占有しているのが、氏名不詳の第三者であるとわかった際には、債務者(占有者)の身元を特定せずに行える占有移転禁止の仮処分を行うことになります。
仮処分命令の執行により、第三者である占有者を特定することができれば(民事保全法54条の2)、第三者である占有者および賃借人を被告人とする建物明渡請求訴訟を提起することになります。
ただし、仮処分執行および強制執行の際に、第三者である占有者が抵抗することが予想できるのであれば、執行官と協議をした上で、所轄警察署に相談をすることも必要です。
ところで「賃借権の譲渡」をしてしまった人もいるかもしれませんが、譲渡した側とされた側の関係が兄弟姉や親子など親密な関係の者であれば、そこまで心配する必要はないです。大家さん自身が心配しなくても大丈夫な人ならば、すぐに事情を話すことで許可がもらえるはずです。ただし、そのときは、契約相手が変わることになるので、不動産会社が間に入り、契約書の書き換えや敷金の名義変更などの手続きをすることになります。ですが、それさえすれば、契約を解除されることはほとんどないと言えます。
また、大家さん自身、無断譲渡が行われている事実を知っているにも関わらず、借主から賃料を受け取っていたのであれば、直接大家さんの承諾を得ていなくても暗黙の了解があったと認められ、契約の解除が認められないこともあります。
ただし、「また貸し」をした上で、さらに、元の契約よりも高い家賃を貰っていたとすれば、悪質とみなされます。よって、「また貸し」をすぐに解除し、大家さんから直接借りるようにするべきです。

友人との同居はまた貸しになるのか

友人との同居はまた貸しになるのか

まず、「また貸し(=転貸)」とはどのようなことをいうのかですが、自身が借りている部屋を第三者に貸し、その代わりに第三者から家賃を支払ってもらい、本来の部屋の借主である自身はその部屋に住まない状態のことをいいます。
本来、賃借人は、賃貸人の承諾なしに、賃借権を第三者へ転貸することはできないとされています(民法612条1項)。よって、賃借人が賃貸人に無断で転貸を行った場合、賃貸人には、賃貸借契約の解除権が発生することになります(民法612条2項)。
また、無断転貸による解除は、法定解除(民法540条以下)の規定によるものではなく、民法612条2項が適用されることになるので、相当期間を定めた催告をする必要はないです。
転貸の場合、まず確認しなければならないことは、転貸人が建物の所有者と賃貸契約を締結しているかどうか、また、転貸人が第三者に対して建物の所有者の許可を得た上で、建物を転借しているかということになります。
また、転借人が転貸人に対して賃料を支払わないことがありますが、そのときは、転借人が直接賃貸人に支払を行っていることが考えられます(民法613条1項)。なので、転借人の支払いが滞った際は、慎重に経緯を聞くことがよいです。
ただし、この場合転貸人を原告、転借人を被告として、主張を提起することができますが、転貸人の請求に対して、転借人は、賃貸人の了承を得ていないことを理由に賃料の支払いを拒絶する抗弁を主張したとしても、その抗弁は主張として認められないのです。
賃貸借契約終了に基づく、無断譲渡および無断転貸を原因とした建物明渡請求権の要件事実は、
①当該建物について、当事者間で賃貸借契約を締結していること
②賃借人に対して、当該建物についての賃貸借契約に基づき、賃貸人が本件建物を引き渡していること
③ⓐ第3者に対して、賃借人が当該建物における賃貸借契約に基づく権利(賃借権)を譲渡(売買等)していること
または
ⓑ第3者に対して、賃借人が本件建物について賃貸借契約を締結していること
④第3者が、賃借人から本件建物の引き渡しを受けて、これを使用収益していたこと
⑤賃借人に対し、賃貸人が賃貸借契約を解除する意思表示をしていること (この際、相当期間を定め、催告する必要はない。)
さらに、同居人とは、賃借人(使用借人)の占有補助者という立場になるのが一般的です。賃貸借契約が終了するにあたって、建物明渡請求訴訟になった場合、同居人という立場であれば、被告となることはなく、責任を負う必要はないということになります。これは、賃借人に対して、賃貸人が建物明渡請求訴訟の債務名義を行使することによって、占有補助者にあたる同居人を部屋から退去させることが出来るからです。
しかし、賃借人が退去した後に、同居人だけが退去せず居座ってしまった場合はまた話が違ってきます。その場合、居座っている同居人に対して、自主占有が認められた場合、建物所有者は別件として原告となり、同居人を被告とした所有権に対する建物明渡請求をしなければならないが、同居人の自主占有が認められなければ、賃借人に対する債務名義によって、強制執行をすることが出来ます。
なお、部屋を共同で使用する場合が「また貸し」にあたるのかは、以下の2つの要素によって判断されます。
1つめは、同居人が家族や使用人という関係にあたる人かどうかです。同居する相手がこのような関係に該当するのであれば、同居をしても問題はないです。しかし、友人という関係であるなら「また貸し」とみなされる可能性があります。
2つめは、同居する相手から家賃または家賃の一部を徴収するかどうかです。家賃は自身で支払い、同居人は無償で住んでもらうのであれば、問題はないですが、家賃または家賃の一部を取るのであれば、「また貸し」になる可能性が高いです。
これは、賃貸建物が第三者によって占有されていた場合、賃貸人にとっては、譲渡なのか、それとも転貸なのかがわからないことがあります。このとき、賃借人と第三者の間で交わされた契約内容を賃貸人が把握することは困難だと言えます。このことから、譲渡や転貸に関しては、譲渡もしくは転貸の契約を結んだかではなく、賃借人が第三者から賃貸建物による使用収益をしていたかを重要視されるからです。
ただし、第三者が賃貸建物を占有していたとしても、それが譲渡によるものか、または、転貸によるものなのかを賃貸人が把握できていないことが多々あります。
これは、賃貸人が、賃借人と第三者間で結ばれた転貸契約書や賃借権譲渡契約書を収得することが困難であることが原因といえます。
そもそも無断譲渡や無断転貸を、賃借者と第三者が契約を結んだこと自体はそこまで重要ではなく、賃借者が第三者に使用収益させたことが重要であるといえます。
ですが、第三者が使用収益をしているかを立証することは可能であり、表札や郵便受けが第三者のものになっていることを示す写真、賃貸人や隣人による陳述書、第三者の住民票、賃借人が使用していないことを示す賃借人の住民票などによって出来ます。
ただし、転貸が背信行為として認められるものでなければ解除権の行使が制限されることもあります。
他にも建物を占有しているのが賃借人ではない氏名不詳の第三者であることも考えられます。近隣の情報や建物の現状をもとに当該建物を占有しているのが、氏名不詳の第三者であるとわかった際には、債務者(占有者)の身元を特定せずに行える占有移転禁止の仮処分を行うことになります。
本仮処分命令の執行により、第三者である占有者を特定することができれば(民事保全法54条の2)、第三者である占有者および賃借人を被告人とする建物明渡請求訴訟を提起することになります。
裁判になった際に訴状において、原告(賃貸人)が賃借人によって無断譲渡があったと主張したことに対し、答弁書において、被告(賃借人)が無断譲渡はなかったと否認を主張した場合、被告側は否認するにあたる理由を記載する必要があります(民事訴訟規則79条3項)。さらに、被告側は、賃貸建物が第3者によって使用収益している理由を述べなければならず、その過程の中で譲渡か、あるいは、転貸かが判明することになります。
その後、原告は判明した内容をもとにあらためて要件事実に沿った事実を主張することになります。
ただし、仮処分執行および強制執行の際に、第三者である占有者が抵抗することが予想できるのであれば、執行官と協議をした上で、所轄警察署に相談をすることも必要です。
結局のところ、友人と同居した際に、友人から家賃の一部であっても徴収すれば、「また貸し」とみなされるので、大家さんはそれを理由に契約を解除出来るので、今の部屋に住み続けたいのであれば、友人との同居はしないほうがよいです。
ただし、話を持ちかけただけで、実際には「また貸し」をしていなければ、契約解除の理由にはならないので、出る必要はないです。

結婚して妹の代わりに夫と同居したいが通知は必要か

結婚して妹の代わりに夫と同居したいが通知は必要か

同居人が変わる上で気をつけることは、「また貸し」にあたるかということです。本来、自身が借りている部屋で他人を同居させることは、原則「また貸し」していることになり、その事実を大家さんに無断ですることは禁止となっています(民法612条)。
さらに、賃貸借契約の中で、「第3者への譲渡または転貸(また貸し)」及び「貸室を第3者と共有して使用する」ことは禁止となっています。これには理由があり、大家さんは貸している部屋にどのような人が住んでいるのかを把握する必要があるのです。もしも、賃借権の譲渡または部屋のまた貸しにあたる行為をすれば、大家さんから契約を解除され、同居人と共に退室をせざるを得なくなります。
では、妹の代わりに夫と住むということがはたしてまた貸しにあたるかです。
まず、妹に関してですが、妹はこれから同居を始めるのではなく、部屋を出る方なので、また貸しにはあたらず、問題はありません。
次に、夫と今後は同居するという点ですが、夫は入ってくる方なので一見また貸しのように思えますが、夫婦が一緒に住むことは当たり前のことであるので、また貸しにはあたらず、
さらに、夫婦は同居するべきであると法律上の義務を持っているので、婚姻届を出した結婚相手との同居であれば、問題はないといえます。
なお、夫婦が同居するために締結された賃貸借契約は、契約に基づく賃料債務が、日常の家事についての債務であるとされ、契約者自身でないとしても、配偶者に対して請求することができることがあります。 よって、賃借人が賃料を滞納した場合、直接契約者となっていない配偶者に収入があれば、そちらを被告として扱うことも可能となります。
ただし、直接の契約者でない配偶者が契約時にあらかじめ賃料の支払いに対して連帯債務を負わない旨を明確にしていた場合には、連帯責任を負わないことになります(民法761条ただし書)。
ただし、その部屋が女性専用の部屋であるなどの条件がある場合は、夫であっても入居が認められないこともあります。
また、結婚相手との同居を禁止するなどの条項が契約書の中に記載されていたとしても、当然の権利を制限する内容に関しては無効になるので、夫と同居しても問題はありません(借地借家法30条、37条)。
最後に、夫との同居について大家さんに伝えるかということですが、大家さん自身は夫なのか、それとも、ただの同居人なのかわからず、不安に思ってしまうかもしれないので、婚姻届を出した後に、伝えておくべきです。

友人の海外出張中部屋を借りたいが。

友人の海外出張中部屋を借りたいが。

友人が海外出張中に友人の部屋を借りることはできるのかということになります。
ここで問題は、純粋な留守番であるのか、それとも、又貸しにあたってしまうのかということです。
本来、賃借人は、賃貸人の承諾なしに、賃借物に対する賃借権の転貸することはできないことになっています(民法612条1項)。よって、賃借人が賃貸人に無断で転貸を行った場合、賃貸人には、賃貸借契約の解除権が発生することになります(民法612条2項)。
また、無断転貸による解除は、法定解除(民法540条以下)の規定によるものではなく、民法612条2項が適用されることになるので、相当期間を定めた催告をする必要はないということになります。
転貸の場合、まず確認しなければならないことは、転貸人が建物の所有者と賃貸契約を締結しているかどうか、また、転貸人が第三者に対して建物の所有者の許可を得た上で、建物を転借しているかになります。
また、転借人が転貸人に対して賃料を支払わないことがありますが、そのときは、転借人が直接賃貸人に支払を行っていることが考えられます(民法613条1項)。なので、転借人の支払いが滞った際は、慎重に経緯を聞くことがよいです。
ただし、この場合転貸人を原告、転借人を被告として、主張を提起することができますが、転貸人の請求に対して、転借人は、賃貸人の了承を得ていないことを理由に賃料の支払いを拒絶する抗弁を主張したとしても、その抗弁は主張として認められないのです。
つまり、純粋な留守番であるならば、なんの問題もありません。
しかし、留守番というよりも、自身が住むことがメインになり、ついでに留守番を兼ねるのであれば、これは部屋の転貸(また貸し)であると認識されてしまい、無断でのまた貸しは民法612条によって禁止されているため、また貸しが発覚したときは最悪、大家さんから契約を解除され、友人共々、退室を余儀なくされることもあります。
さらに、賃貸人は、近隣住人への聞き取りや部屋の現状など状況を見て、賃借人ではない氏名不詳の第三者が部屋を占有しているということになれば、占有者を特定せずに、占有移転禁止の仮処分を行います。その後、占有者の身元が特定されれば、占有者及び賃借者は被告という立場で、建物明渡請求訴訟を提起することになります。
ちなみに賃貸借契約終了に基づく、無断譲渡および無断転貸を原因とした建物明渡請求権の要件事実は、
①当該建物について、当事者間で賃貸借契約を締結していること
②賃借人に対して、当該建物についての賃貸借契約に基づき、賃貸人が本件建物を引き渡していること
③ⓐ第3者に対して、賃借人が当該建物における賃貸借契約に基づく権利(賃借権)を譲渡(売買等)していること
またはⓑ第3者に対して、賃借人が本件建物について賃貸借契約を締結していること
④第3者が、賃借人から本件建物の引き渡しを受けて、これを使用収益していたこと
⑤賃借人に対し、賃貸人が賃貸借契約を解除する意思表示をしていること(この際、相当期間を定め、催告する必要はない。)
では、留守番とまた貸しはどのように区別されるのかということになります。論点としては、①表札が借主である友人の名前のままになっているかどうか、②借主である友人の家具がそのまま置いてあるかどうか、③借主である友人が給料を支払ってくれているかどうか、などになります。
特に③では、借主が家賃を支払うことは当たり前のことであり、出張中に第3者に貸すからといって、たとえ一部であっても、家賃を第3者に負担させるのであれば、これはまた貸しであると言われても仕方がありません。
ただし、第3者が賃貸建物を占有していたとしても、それが譲渡によるものか、または、転貸によるものなのかを賃貸人が把握できていないことが多々あります。
これは、賃貸人が、賃借人と第3者間で結ばれた転貸契約書や賃借権譲渡契約書を収得することが困難であることが原因といえます。
そもそも無断譲渡や無断転貸を、賃借者と第3者が契約を結んだこと自体はそこまで重要ではなく、賃借者が第3者に使用収益させたことが重要であるといえます。
裁判になった際に訴状において、原告(賃貸人)が賃借人によって無断譲渡があったと主張したことに対し、答弁書において、被告(賃借人)が無断譲渡はなかったと否認を主張した場合、被告側は否認するにあたる理由を記載する必要があります(民事訴訟規則79条3項)。さらに、被告側は、賃貸建物が第3者によって使用収益している理由を述べなければならず、その過程の中で譲渡か、あるいは、転貸かが判明することになります。
その後、原告は判明した内容をもとにあらためて要件事実に沿った事実を主張することになります。
これはあくまで大家さんに対して「無断で」ある場合であって、たとえまた貸しであっても、大家さんの承諾を得た上でのまた貸しであれば、何も問題はありません。なので、前もって、大家さんに事情を話し、また貸しに対する承諾を得て下さい。
他のケースとして、貸主が一時的に不在となり、その間だけ自己所有の部屋を第3者に貸すことになっているということがあります。この場合、以前は借主側に権利が生じるため、半永久的に貸し続けることになっていたが、これでは貸主に不都合になってしまうため、今は、借地借家法38条によって、期間を定めた定期借家契約が可能になり、さらに、1年未満の借家契約も有効とされてきています。

2020-03-19 15:54 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所