借家の無断増改築・リフォーム

家主に無断で増改築をすると保管義務違反として債務不履行となり、契約を解除されることがあります。

□増築
既存の建物に建物部分を追加するか、別の建物を追加すること。
□改築
建物本体を変更すること(屋根全体の葺き替え、壁の撤去、建物の移動など)。
□模様替え
小規模で原状回復することが容易な改装。

■借家の増改築の原則

借家の場合には、建物の所有権は家主にあり、借家人がこの建物を家主に無断で増改築することは保管義務違反あるいは用法義務違反として債務不履行となります。無断で増改築を行った場合には、原則として借家契約の解除が認められます。 しかし、借家人のこうした違反行為が、家主に対する信頼関係を破壊する程度ではないと認められたときには、契約の解除は認められません(判例)。 なお、単なる模様替え(壁紙の張り替えや壁の塗り直し など)では契約解除の原因とはなりませんが、模様替えと言いながら、実際は増改築の場合などでは問題となります。

■解除が認められたケース

家主との信頼関係は破壊された場合です。判例では、無断増改築が建物の構造を変更する大規模なものである場合、あるいは、家主が増改築を何度となく精子したにもかかわらず強行した場合、などのときに契約解除を認めています。

■解除が認められなかったケース

家主との信頼関係が破壊される程度でない場合です。判例では、行政当局から汲み取り式の便所を水洗便所にするように指導を受けたが、家主が水洗便所にしないために借家人が改造した事例、内装がふるくなり(14年経過)内装工事を行った(同時にバーから洋装店に営業の変更)をした事例などがあります。

民法400条(特定物の引渡債務における保存義務) 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者はその引渡しをするまで善良なる管理者の注意をもってその物を保存しなければならない。

模様替えをするのには家主の承諾が必要か

模様替えをするのには家主の承諾が必要か

借主が貸主に無断で改築または改装を行うことは、賃貸借契約書で禁じられていることが多いです。なので、勝手に手を加えてしまうと、退室の際に補修費用として請求されてしまうこともあります。
これは建物本体に対するものであって、カーテンを取り替えることやじゅうたんを敷くなどの部屋の本体に手を加えなければ特に注意を受けることはありません。(ただし、元から設置されてあるカーテンやじゅうたんを捨てる際には大家さんに断りをいれてからになります。)
たとえ、原状回復が簡単に可能である程度であったとしても、部屋の本体に関わる場所を変えたいのであれば、事前に大家さんの承諾が必要になります。もちろん壁紙を変えることや壁に塗料を塗る場合も同様です。
また、間仕切りの壁を取り払うなどの大がかりな模様替えを大家さんの承諾もなく、勝手に行った場合、契約を解除出来る対象になります。そして、それが模様替えにとどまらず、増改築になれば尚更です。賃借人は、賃貸人から賃借物を借りている以上、返還するまでは、善良な管理者の注意を持って、賃借物を保管することになります(民法400条)。賃借人が善管注意義務を怠り、賃貸人に無断で賃借物を増改築した際には、債務不履行となり、賃貸人が相当の期間を定めた上で原状回復を求める催告を行うことになります。
しかし、催告をしたにも関わらず、賃借人が原状回復をしなかった場合は、賃貸人に解除権が発生することになります(民法541条)。
賃貸借契約終了に基づく、無断増改築を原因とした建物明渡請求権の要件事実は、
①当該建物について、当事者間で賃貸借契約を締結していること
②賃貸人が当該建物に基づき、賃借人に対して本件建物を引き渡していること
③賃借人が賃借物の増改築をしたという事実があること
④賃借物の増改築について、賃貸人が相当期間を定めた上で原状回復をするように催告をしていること
⑤催告の際に定めた相当期間を経過していること
⑥賃借人に対して、催告の際に定めた相当期間の経過後、賃貸人が賃貸借契約を解除する意思表示をしていること
たとえ、軽微なもので契約解除にあたらなかったとしても、更新の際の更新拒絶(契約の打ち切り)の対象となり得ます。
よって、部屋の本体に関わるような模様替えを希望する際は必ず大家さんの承諾が必要だということです。

2020-03-19 15:54 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所