建物明渡し請求裁判
本来、賃料の滞納が生じた場合、賃貸借契約を解除することによって、明渡が完了します。 しかし、賃貸借契約が解除されたにも関わらず、物件から退室しないことがあります。その場合、賃貸人は、賃借人に対して、強制的に明渡しを行うことになり、そのためには、裁判(明渡訴訟)を行い、「判決(債務名義)」を得ることが必要となります。
1、訴訟手続の流れ
訴訟手続は、たいていが次のような手順で行われます。
- ①訴状提起(訴状の提出、民事訴訟法133条)
- ②口頭弁論期日の指定、被告(相手方)の呼出し
- ③審理(弁論、証拠調べ)
- ④判決
2、訴えの提起(訴状の提出)
(1)提出先(管轄)
事案ごとに法律で、訴訟の提起ができる裁判所が決められています。(これを「管轄」といいます。)もしも、管轄でない裁判所に訴訟を提起したとしても、管轄のある他の裁判所に事件が移送されてしまうことになります。 原則として、建物明渡訴訟は、相手方の住所地または建物の所在地を管轄している地方裁判所が訴訟の提起に関する管轄裁判所となります。 訴訟における、訴額が140万以下であるときは、簡易裁判所に訴えの提起をすることも可能ですが、相手方(賃借人)が地方裁判所での裁判を希望した場合には、必ず地方裁判所で裁判を行うことになります(必要的移送、民事訴訟法19条2項)。
(2)提出書類等
訴状は、民事訴訟法133条1項によって、「訴えの提起をするためには、裁判所に対して訴状を提出してからでなければならない」と規定されています。 また、訴状には、 ①当事者(訴えを提起する者、および提起をされる者) ②請求の趣旨(裁判所に対して判決を求める請求の内容) ③請求の原因(請求の基礎を付ける事実) を記載する必要があります(民事訴訟法133条2項、民事訴訟規則53条1項)。 賃貸借契約の解除および終了の一般的な建物明渡訴訟では、訴状に記載する「請求の原因」に、
- ①賃貸借契約が成立していること(成立の日時、契約内容)
- ②賃貸借契約に基づき、賃借人に物件を引渡していること
- ③賃料の滞納が生じていること
- ④賃料の支払いに対して、相当期間を定めた上で催告をしたこと
- ⑤賃貸借契約の解除に対する意思表示をしたこと
を記載しておく必要があります。
- ①建物の登記簿謄本(民事訴訟規則55条1項①)
- ②立証が必要なものに対して、その証拠となり得る文書の写しなどの重要なもの(規則55条2項)→一般的に「書証」と呼ばれるもので、主に、賃貸借契約書・賃料の滞納に対して相手方に催告した証明書のようなもの・契約の解除に対する意思表示をしたという照明の文書(内容証明郵便など)等を指します。
- ③資格証明書(民事訴訟規則15条および18条)→自身または、相手が法人であるときに必要となります。ただし、一般的には法人登記の現在事項証明書等を送付することになります。
- ④代理権を証する書面(民事訴訟規則23条)→一般的には「委任状」と呼ばれるものです。事件処理を弁護士に委任する際に必要となるものです。
- ⑤固定資産評価証明書→裁判所に対して支払う訴訟費用(印紙)の算定に使用されるものです。
- ⑥訴状の副本(規則58条)→②における書証の写しと同様に、相手方へ郵送するために当事者分の枚数が必要です。
訴訟を提起するにあたり、民訴費用法に定められている手数料を納付する必要があります。 また、手数料の納入は訴女湯に相当額の収入印紙を張り付ける方法等を利用します。
- *訴額の計算方法*
- (計算式) 賃貸物件の固定資産税評価額÷2=訴額 →建物の一部(マンションのうちの一部屋など)の場合は、建物の総床面積と明渡しの範囲の割合によって算定されます(明渡しを求める賃貸物件の床面積÷建物全体の床面積)。 さらに、訴額によって貼用印紙額が変わります。
裁判所によって、納付の方法や金額・切手で納付する場合の内訳などが異なります。
3、口頭弁論期日の指定、相手方の呼出し
裁判所に必要書類を提出し、適法な状態で訴訟を提起すると、裁判所が第1回口頭弁論期日を指定し、相手方(被告)を呼び出すことをします(民事訴訟法139条)。 つまり、相手方は、裁判所から訴状の副本などとともに、口頭弁論期日の呼出状を送付されることによって、賃貸人から提起された訴訟の内容を知りことになります。 なお、このような相手方に訴状の副本が送付された状態を「訴訟係属」といい、相手方が賃貸借人に対して裁判で争う機会を設けられたということで、訴訟上とても重要なことであるといえます。なので、相手方(被告)への書類の送付に関しては、手続が厳格に決められており(民事訴訟法98条)、これを「送達」といいます。 また、相手方が郵便の受け取りを拒否した場合、あるいは、行方不明で相手方の送付先が明らかでないなどの理由がある場合は、実際に相手方に書類が渡らなかったとしても、例外として、書類が送付されたとみなす手続が法律で定められています(これを付郵便送達といいます)。 ただし、この手続を成立させる上で、裁判所から相手方の所在調査などを求められることがあるので、相手方の住所や勤務先など最低限は調べておく必要があります。
- *様々な送達方法*
- ①公示送達
- 住所や勤務先がわからない等、賃借人が行方不明である場合、送達をしたところで相手方に届くことはなく、送達は失敗ということになります。なので、このように相手方の所在が明確でないときは、裁判所の掲示板に送達の旨を貼り紙し、それによって送達をしたことになるのが「公示送達」です。
- ②付郵便送達
- 住所や勤務先はわかっているが、住居では受け取り拒否や不在によって受け取らない、また、勤務先では、差置くことが出来ないなどのときには「付郵便送達」によって送達をします。これは相手方が送達の受け取りがあったかは関係なく、裁判所によって郵便が出された時点で送達が完了したとみなされます。 このように、相手方に郵便が届かないからといって、訴訟手続が滞ってしまわないように、民事訴訟法では様々な送達方法が認められています。どんな場合であっても、訴訟手続を進めることはできるということを知っておくことが大事です。
4、審理
相手方への呼出しが無事完了すると、法廷での審理に入ります。相手方が訴訟に対してどのような対応をしてくるかによって、訴訟の進行は変わってくるものです。 相手方の対応は大きく分けると、
- ① 賃貸人の主張に対して、相手方は争わない場合
- ② 相手方が行方不明のため、裁判所に出頭してこない場合
- ③ 相手方が裁判所に出頭し、賃貸人の主張に対して争う場合
が考えられます。
(1)賃貸人の主張に対して、相手方は争わない場合
相手方が適法に呼び出しを受けたにも関わらず、答弁書(=答弁書とは、賃貸人(原告)の主張や請求に対して認めるのか、あるいは、認めないのかを明確にするために記載する書面のことをいいます。)も出さず、口頭弁論期日に欠席をしたときや、あるいは、期日には出席したが、賃貸人(原告)の主張に対して争うことを主張しなかった場合は、相手方(被告)が賃貸人(原告)の主張に同意したものであるとみなされます(民事訴訟法159条)。 つまり、賃料を滞納している事実や賃貸人が賃貸借契約の解除に対する意思表示をしている事実などの記載に対して相手方(被告)に争う意思がなければ、この事実を認めたとみなされることになります。 このようなときは、一般的に裁判所がすぐに審理を終結させ、判決の言渡しを行うことになります。
(2)相手方が行方不明のため、裁判所に出頭してこない場合
相手方が行方不明の場合は、裁判所に書類を掲示することによって、相手方に対して書類が送付されたとみなされるので、それによって、手続を進めることが出来るようになります。(これを「公示送達」といいます。民事訴訟法110条ないし、民事訴訟法113条) 「公示送達」は、相手方が行方不明ということで、なかなか裁判が進められないということがないようにするための制度になります。 ただし、相手方が、裁判所に掲示された書類を見るということは、実際には考えにくいです。したがって、この制度はあくまで、相手方が書類を受け取ったとみなすという手続だということになります。 なので、相手方の権利をある程度配慮するため、法律的にも、公示送達の手続を進める上で、期日に相手方が出席しなかったとしても、書類は受け取ったがその内容を認めたとはいえないことになります(民事訴訟法159条3項)。 よって、公示送達の手続を進めるには、賃料の滞納などを理由とする解除の事実を裁判所が認定するための証拠となるもの(内容証明郵便など)を提出する必要があります。
(3)相手方が裁判所に出頭し、賃貸人の主張に対して争う場合
このような場合は、賃貸人(原告)と相手方(被告)の間でどの事実に対して争いがあるのかを整理し、裁判所が証拠をもとにその争点を認定することになります。訴訟の進行としては、賃貸人(原告)と相手方(被告)双方の主張を整理し、争点がどこなのかを明確にします。その後、争点の審理において、証拠調べ手続が必要であれば、争点に絞って、証人尋問などを行うことになります。 ただし、具体的な争点の審理が必要なときは、弁護士に訴訟を委任することが妥当であるといえます。
5、訴訟の終了
訴訟手続の手順を踏んで、裁判所が賃貸人(原告)の主張を認める判決を言い渡し、判決が確定したとき、訴訟が終了したということになります。判決の言渡しが終わった後、賃貸人(原告)と相手方(被告)の双方に対して判決書の正本を送付することになります。ここで送付された判決書の正本は、強制執行にあたり必要な「債務名義」となります。
- *仮執行宣言*
- 判決は、裁判所が言い渡すものですが、原則として、確定しない限りは効力が発生することはありません。 ちなみにここでいう“確定”とは、上訴によって、賃貸人(原告)および相手方(被告)の双方が判決内容に対して争えなくなった状態のことをいいます。 つまり、賃貸人(原告)の主張を認める判決を裁判所が出したとしても、相手方(被告)が上訴をすることで、判決が確定することはなく、控訴審によって、審理が続くことになります。ですが、判決が確定するまで強制執行に移せないとなると、相手方(被告)が時間稼ぎを考え、上訴することも考えられます。 なので、そのようなことがないように「仮執行宣言」という制度があるのです。 「仮執行宣言」とは、判決に対して控訴されることが考えられ、確定には至っていないが、強制執行をする力を付与することをいいます。したがって、判決に「仮執行宣言」が付されれば、すぐに強制執行を行うことが可能になります。 ただし、控訴審によって判決の内容が変更された場合、損害賠償義務が課せられることになります(民事訴訟法260条2項)。
- *訴訟上の和解*
- 判決前の訴訟手続中に、裁判所から和解を勧められることがあります(民事訴訟法89条)。 賃貸人(原告)は、多少の妥協をして和解をするか、あるいは、判決を求めるかの選択をする必要があります。
- ~和解による解決のメリット~
- ○任意の履行を期待できる
- 相手方の申出を受け入れることで、退居期限の猶予を認めることになった場合、任意による退居が望めます。 もしも、強制執行になったときは、執行官の手数料や荷物の撤去・保管等の費用など、賃貸人が負担するものが多くなってしまいます。しかし、相手方(被告)の退居期間に猶予を持つことで、相手方に転居先が決まり、退居が確実になれば、余計な費用を負担することがなく、費用を節約することができます。 このことから、和解に応じることも1つの選択肢として考える余地があります。
- ○早期解決
- 賃貸人の補修義務が裁判の争点であった場合など、争点によっては、審理が長期化することも考えられます。その場合に和解に応じれば、賃料の滞納による支払いの免除などと引き換えに、退居を早めさせることも考えられます。 裁判上の和解が成立すると、裁判所によって、和解調書が作成されます。この和解調書は、判決と同様に「債務名義」となります(民事訴訟法267条、民事執行法22条7号)。 なので、調書に「平成○年○月○日限りで、建物を明渡す」というような和解内容が記載されていれば、期限内に相手方(被告)に義務の履行がない場合であっても、和解調書によって強制執行を行うことができるので、裁判を再び行う必要はないのです。
- *占有移転禁止の仮処分について*
- まず、「仮処分」は、訴訟手続とは異なる手続のことをいいます。なお、「仮処分」は「保全手続」といいます。 占有移転禁止の仮処分は、賃貸物件の占有を賃借人が第三者に移転し、裁判の中で提起された内容で、賃借人に対する裁判で得られた判決の効果を第三者に対しても及ぼし、強制執行を行うことができるように占有関係を固定させるための手続です。 もしも、賃借人に対して裁判を起こし、勝訴判決をして、いざ強行判決に移そうとしたら、第三者に建物が占有されていたとしたら、民事訴訟法上、訴訟手続の審理が終わった時点で、賃借人から物件を借り、住んでいるのと同等である状態の者ならば、賃借人に対する判決の効力が第三者にも及ぶことになっています(民事訴訟法115条3号)。訴訟手続の審理以前から、または、賃借人とは無関係である状態で占有を開始している者に関しては、賃借人に対する判決の効力が及ばないことになります。 つまり、訴訟の審理に時間をかけていると、賃借人が強制執行から免れることを考え、第三者に物件の占有を移し、強制執行ができないようにしてしまうことも考えられます。 そこで、占有移転禁止の仮処分によって、占有関係を前もって固定し、仮処分の後に占有が移転していたとしても、賃借人への判決が第三者にも及ぶようにし、強制執行が可能となる手続になります。 ただし、裁判中に物件の占有が移されてしまうことは、考えられますが、仮処分手続の申立をすれば、それに対する負担もかかってくるので、その負担をしてまでも回避する必要があるのかと考えることから、訴訟前に占有移転禁止の仮処分を申立てることは少ないです。 なお、住居として貸したら事務所として使われているなどの不自然な兆候が見られるようであれば、仮処分の申立をすることも考える必要があります。
建物明渡しの強制執行
物件に対する明渡しの判決が出されると、判決を債務名義にして、強制執行手続を申立てることができるようになります。
明渡しの強制執行は概ね
- ① 強制執行の申立
- ② 明渡しの催告
- ③ 明渡しに断行
というような流れで行われます。
1、強制執行の申立
強制執行の申立は、問題となっている物件の地域を管轄している地方裁判所の執行官に対して、必要事項を記載した申立書を提出することで申立が完了します。 申立書を提出する際には、執行文が載っている債務名義(判決書や和解調書など)の正本、送達証明書、確定証明書(仮執行宣言付判決に基づいたものであれば不要)等を送付します。 また、強制執行の申立をする際には、執行官手数料および執行官の職務執行に必要な費用の概算額を前もって納めておく必要があります。
- *動産執行中立の必要性*
- 明渡しの強制執行の手続と動産執行の手続は、共にその物件を管轄する地方裁判所で執行官に対して申立てを行うものです。 しかし、明渡しの強制執行の手続は、強制的に物件の占有をしている者から返還を受ける手続であり、動産執行の手続は、物件内の動産類を処分することでお金に換え、債権の回収を得るための手続きになります。 賃料の滞納を理由に、契約を解除するにあたり、物件の明渡しを裁判で求める際に、明渡しと合わせて、滞納賃料の支払いを求めることも多く、同じ判決書によって、明渡しの強制執行の申立と滞納賃料に対する動産執行の手続を合わせて申立てることが合理的であると考えます。 しかし、動産執行の申立による実益はないに等しいといえます。その理由として、まずは、動産執行の手続では、一般家庭にある家財道具などの多くは法律上「差押禁止(民事執行法131条)」となっているため、換価が可能なものを見つけることは難しいといえます。 さらに、賃貸人にとって、賃借人が断行の際に物件内に置いていった家財道具等を引取り、保管しなければならないことは、動産類の保管費用などもかかり、大きな負担となります。 つまり、動産執行を申立てた上で、賃借人が家財道具を置いていったとしても、差押禁止の動産であれば、売却も出来ず、さらに保管費用の負担を回避することはできないことになるので、動産執行の申立を避ける理由の1つとなるのです。 また、もう1つの理由としては、賃借人等の占有者が強制執行物件内の物を引取らせることが出来なかったときは、動産執行手続にしたがって、執行官が物件内の物を売却し、執行費用にあてることになります(民事執行法168条5項、8項、民事執行規則154条の2)。よって、執行費用に充てられるものに関しては、動産執行手続を申立てなくても、動産類の換価が明渡しの手続のみで出来るので、あえて申立をする必要がないのです。 結果、滞納賃料に充てる換価可能な高価品が物件内にあるときのみ動産執行の申立をする必要があるということになります。
2、明渡し催告
従来であれば、強制執行断手続を断行する際には、前もって、物件の占有者に対して、物件を任意に明渡すように勧告することが常でした。しかし、平成15年に法改正により、催告手続が明文化されるようになりました。 催告手続きの具体的な内容は、執行官が指定された催告期日に現地へ赴き、債務者に対して、物件を明渡すように通知し、同時に、期限内に第三者へ物件を明渡すことを禁止する内容などを記載した公示書を物件内に掲示することで行われます(民事執行法168条の2)。 催告手続は一般的には申立人側(=弁護士でない者が代理人であっても可能。民事執行法13条の反対解釈を適用)も立ち会うことになります。手続は、強制執行前に物件内を実際に見る唯一の機会なので、内部の確認をするという意味でも、内容物の搬出を手配して、補助者として同伴などをし、搬出作業等にかかる時間や費用などの見通しをつけておくと便利です。
明渡し期限は、催告の日から1か月と規定されています(民事執行法168条の2第2項)。なので、催告の日から1か月以内に執行官は断行の日を指定することになります。
(1)断行の日まで
賃借人には、催告のときに断行日が伝えられます。よって、断行日までに退居することがほとんどになります。なので、催告のときと物件の状況に変化がないか事前に確認しておくとよいです。
- *所有権放棄書*
- 催告後、断行日までに退居する人も多いため、催告の手続と同時に動産類に関する「所有権放棄書」を交付することがよく行われています。 催告後、不要な物を置いたまま引越しをし、そのまま賃貸人側に連絡をせず、退居したとき、断行の際に、置いていったものを一定期間保管しなければならないなどの手間がかかってしまいます。なので、署名押印をした所有権放棄書を物件内に残しておけば、残置物の所有権を賃借者が放棄したものであるとみなされ、断行のときにそのまま廃棄処分することが可能になります。
(2)断行日
執行官は、立会人を同席させた(民事執行法7条)上で、物件の中に立ち入ります。 物件の占有があるときは、物件内の動産類(家財道具など)を搬出し、それらの動産類を賃借人等の物件の占有者に引き渡すことになります(民事執行法168条4項、5項)。 ただし、動産類の搬出作業を執行官が行うことはできないので、一般的には専門の業者を執行する上での補助者として手配することになります。 もし、断行の段階で、まだ人が居住をし、強制執行を妨害するようなことがあれば、執行人は実力で賃借人を賃貸物件から外に出すことができます。また、物理的な抵抗を賃借人がするようであれば、警察に援助を求めることも可能です(民事執行法6条)。また、このような妨害行為は「公務執行妨害」といい、刑事罰の対象になり得ます。 残された動産物などで、債務者に対して引渡しが完了できないときは、原則、外に搬出後、一定期間保管しておくことになります。 ただし、保管人としては、執行官が主体となりますが、保管場所については、あくまで強制執行を申立てた側で管理する必要があります。
(3)断行日以後
保管物があったとき、執行官が定めた期間内に保管物を賃借人が取りにきたときは、引き渡すことになっています。 ただし、保管期間内に賃借人が保管物を取りに来なかったときは、動産執行手続に従い、売却可能なものは売却し(民事執行法168条6項)、その他は処分することになります。
3、執行費用について
強制執行に必要な費用(執行費用)はどのようになっているかについえですが、執行費用は債務者が負担をすると民事執行法では規定されています(民事執行法42条)。なので、明渡しに対する強制執行にかかった費用に関しては、執行費用として扱われるので、賃借人に請求することが可能ということになります。 ですが、執行手続を行うにあたって、申立人は予め費用を予納しなければならないので、実際は、賃貸人側が負担していることがほとんどであるといえます。 また、残置動産の売却においても、換価価値のあるものは極めて稀であるため、執行官が設定した値段で債権者が買取り、廃棄処分をしていることが多く、債権者の負担が大きいということが事実です。