賃料滞納による明渡請求

賃貸借契約において、賃借人には賃料の支払い義務があり(民法601条)、賃料を滞納することは、賃借人の契約義務違反になります。よって、賃貸人は滞納賃料の支払いを賃借人に対して請求することができ、また、賃借人が支払いに応じないのであれば、滞納賃料に対する裁判を起こすことも可能になります。しかし、賃料を支払わない賃借人に対して、賃貸人が賃貸物件から退居させたいと考えることもあります。

1、賃貸借契約解除の必要性

賃貸借契約が締結されると、賃借人は、賃料を支払う代わりに賃貸人から物件を使用する権利を与えられることになります(=これを「賃借権」といいます、民法601条)。 つまり、賃借人は、賃貸借契約によって「賃借権」を得る代わりに賃貸人に対して、決められた賃料を支払わなければならないという契約上の義務を負担することになります。なので、賃借人が賃料の支払いを怠れば、賃借人の契約違反ということになってしまうのです。 しかし、賃借人に契約義務違反があったからといって、自動的に「賃借権」が消滅することはなく、直ちに物件から退居させられるということはないのです。 これは、一見すると不合理なように感じますが、賃借人が賃料の支払いを1回遅れたからといって、すぐに「賃借権」を失い、退居しなければならないのであれば、賃借人にとってあまりにも酷な話であり、賃貸人からしても、小さな義務違反程度であるならば、契約を継続することを希望することも考えられます。 よって、法律では、賃料の滞納があった際は、自動的に契約を終了するのではなく、原則として、賃借人に義務違反を解消する機会を与え、それでも義務違反が続くようであれば、賃貸借契約を解消することができるよう定められています。 上記のように、賃貸人が賃借人の同意を得ることなく、賃貸借契約を終了させて、さらに賃借人の「賃借権」を消滅させることを契約の「解除」となります。 つまり、賃貸人が賃料滞納を理由に賃借人を退居させるためには、まずは賃貸借契約の解除を行い、その後、賃借人の「賃借権」を消滅させる必要があります。

2、賃貸借契約解除の方法
(1)法律上の解除の要件

それでは、どのような方法を取れば賃貸人は賃貸借契約を「解除」できるのかを考えます。

「解除」の方法については、民法541条および民法540条第1項によって定められています。 この規定によれば、賃借人が賃料の支払いをいなかった場合、 1)賃貸人は、相当の期間を設定し、賃借人に対して、滞納賃料を支払うよう請求する。 →これを法律では「催告」といいます。

2)催告によって定められた期間内に、賃借人が滞納賃料を支払わなかったときは、賃貸人が賃貸借契約を「解除」する旨を賃借人に対して伝える。 →これを法律では「意志表示」といいます。

この手順を踏んだ上で、賃貸借契約は解除されることになり、よって、賃借人は「賃借権(物件を使用する権利)」を失うことになります。

なお、1)における「相当の期間」には、明確な基準があるわけではなく、相手方(賃借人)が支払う費用を準備する期間と考えるので、1週間程度に設定されていることが多いといえます。 また、2)における意志表示は、特に方法は指定されていませんが、後々トラブルにならないように、口頭よりは内容証明郵便など、証拠として残る方法を取ることが一般的です。

*相当の期間*
相当の期間とは、賃借人が滞納している賃料を実際に支払うための準備として必要な期間のことです。 ですが、滞納している時点で、本来の履行期間(=本来支払うべき日。)は過ぎているので、その事実を前提とした上での催告期間で足りるといえます。 賃借人の事情によってどのくらいの期間を設けるのが相当かは異なりますが、一般的には1~2週間程度で定めれば、妥当かつ法的にも十分な期間であるといえます。 ただし、相当の期間は、あくまで金銭の準備にかかる期間になるので、賃借人の病気や旅行などの主観的事情は考慮しないものとされます。
*催告期間を定めないか不相当である場合*
そもそも、賃貸借契約を解除するのに、相当の期間を定め、催告することが必要とされているのは、1回滞った時点で、賃貸借契約を解除することは酷であるといえるため、賃借者に対して、滞納家賃を支払う機会を与えるためです。 つまり、催告され、相当の期間を設けたにも関わらず、期間内に履行(=支払い)がなされなかったときは、賃貸借契約を解除しても賃借人にとって酷ではないとみなされます。 なので、賃貸人が催告期間を定めることが重要というわけではなく、催告後、相当の期間が経過しているということが重要ということになります。 よって、賃貸人が定めた催告期間が不相当であったとしても、催告を行ってから、相当の期間が経過していれば、賃貸借契約の解除を認めてもよいとされます。 また、賃貸人が催告期間を設けずに、賃貸者に対して催告を行った場合は、催告から相当の期間が経過すれば、賃貸契約の解除が認められることになります。
*賃貸人が定めた催告期間が不相当に長い場合*
賃借人が催告期間を相当の期間よりも長く定められている場合、その催告期間中であれば、賃借人は支払準備の期間に充てられると考えられています。よって、その期間内に解除を認めてしまうと、賃借人にとって酷なことになってしまいます。 なので、賃貸人は自ら定めた催告期間内は解除の効果が生じないので、解除することができないことになります。
(2)判例による解除の要件の加重

建物賃貸借契約では、賃貸人側からの契約の解除が認められる場合には制限があることに注意をする必要があります。つまり、建物賃貸借契約は、賃料を1か月でも賃借人が滞納したところで、直ちに契約を解除できるというわけではありません。 これは、建物賃貸借契約が当該物件を事業や居住などの生活の基盤として使用されていることが通常であり、急な契約の解除によって、物件からの退居を求められたときに、賃借人は大きな影響を受けることになりかねません。 そこで、軽微な契約違反によって、生活の基盤を奪う行為は行き過ぎであると判断されることから、賃貸人による「契約」の解除は、他の異なる契約とは違う基準が設けられています。

その基準とは、たとえ賃借者に賃料の滞納があったとしても、その事実が賃貸人との信頼関係の破壊に値するものではない場合は、賃貸人は契約を解除することができないとされています。 ex、賃借人が1回でも賃料の支払いが遅れたときは、賃借人の契約義務違反にはなりますが、その1回で賃貸人との信頼関係が破壊ということまでは言えないので、直ちに契約を解除することはできません。

どのレベルであれば、信頼関係が破壊されたと言えるのか、明確な基準はありませんが、何度も賃借人が滞納を繰り返している場合や、滞納が連続して続いている場合(基準としては、3か月くらい滞納が続いている状態)などであれば、信頼関係を維持することは困難であると考えられるので、賃貸人による契約の「解除」が認められることになります。

よって、賃貸人が賃貸借契約を解除するには、

  1. ①賃料不払いがあること
  2. ②催告すること
  3. ③催告の期間内に滞納した賃料の支払いがないこと
  4. ④賃貸借契約を解除する意思表示をすること
  5. ⑤信頼関係が破壊されていること

の条件が必要になります。

3、裁判手続(債務名義の取得)
(1)自力救済の禁止

法律上、賃貸人が賃貸借契約を解除することによって、物件を使用する権利(=賃借権)を失うことになり、賃借人は物件を使用することを止め、賃貸人に対して、直ちに明け渡す必要があります。 しかし、賃借人が納得せず、契約解除後も自ら物件を明渡すことをせず、使用し続けることも考えられます。賃借人が賃借権を失ったことによって、賃貸人が自ら強制的に明渡しを実現することが出来るのであれば、よかったのですが、日本の法制度では、原則として、それが許されていない(自力救済の禁止)ため、強制的な明渡しができないのです。 つまり、賃貸借契約が終了した後も賃借人が物件の明渡しに応じなかったとしても、賃貸人は、勝手に物件内に立ち入ったり、室内の物を処分したりすることはできず、もしもそのようなことを賃貸人がした場合、民事上で損害賠償を請求されたり、または、刑事処罰(器物損壊罪等)にあたることも考えられます。 なお、緊急性があるときには、自力救済が許容され、認められることもありますが、それは例外的であり、一般的に認められることは少ないです。

(2)強制執行の前提として「判決」(債務名義)

賃貸人は賃借人を退居させ、物件を返還させるために、法律に則り、「強制執行」の手続をとることになります。強制執行手続は、権利者自身が賃借人に対して、法律上、実行に移せない代わりに、権利者の主張に則って、裁判所が強制的に権利者の主張を実現させるものです。 そこで、賃借人を退居させるのは、具体的にどのような手順を踏んで、「強制執行」を行うかということですが、これは、大きく分けて

  1. ① 権利内容を確定する手続(裁判所が賃貸人自身に賃借人を退居させる権利があるのかを判断する手続です)
  2. ② ①によって確定した権利を実現する手続(確定した権利に則って裁判所が実行する手続です)

の2つになります。

①は具体的にいえば、裁判の訴訟手続のことをいいます。 まず、賃貸人は裁判所に、賃借人に対する物件の明渡しを求める訴訟を提起します。その訴えに対して裁判所は内容が正当であるかを判断し、正当であると認められると、裁判所から賃借人に対して、物件の明渡しを指示する「判決」を出すことになります。賃貸人は、裁判所が「判決」を出すことによって、裁判所から「判決正本」という書類を受け取れるようになります。なお、この「判決正本」は、裁判所によって出された判決書の原本と同等の効力を持っていることを示した判決書の写しのことです。

また、この「判決正本」は②の強制執行手続において必要になる書類でもあります。 つまり強制執行を行うにあたり、裁判所の手続によって権利を証明する「判決」を出してもらうことが必要ということになります。 ちなみに、「判決正本」のような強制執行を行う上で必要な書類を「債務名義」といいます。

*債務名義とは?*
「債務名義」は一般的に「強制執行によって、権利者の主張を実現するにあたり、請求権の存在や範囲を証明するための公な文書」であると定義されているものです。つまり、この「債務名義」に基づき強制執行は行うものであると規定されているのです(民事執行法22条)。 また、強制執行によって権利者の主張を実現させるためには、① 権利内容を確定する手続と② ①によって確定した権利を実現する手続の2つに分けられることになります。ですが、同じ裁判所の手続であっても、この2つの手続きは進め方が全くことなるのです。 まず、①の権利内容を確定するには、裁判所が相手方(被告)にも意見を述べる機会を与え、当事者間において争うべきことがあれば、証拠を提示しながら裁判所が判断するため、慎重かつ時間のかかる手続が必要となります。 これに対して、②は①で権利内容を確定するための手続を慎重に行っているので、①による内容等の記載がされた文書の提出があれば、②の手続きは形式的な審査のみの手続で進めていけばすむということになります。 このように考えれば、①の裁判手続は②の手続において必要な書類ということになるので、「債務名義」を得るために必要な手続であるといえます。 よって、賃借人に対して、物件から退居することを命じる判決を裁判所が出し、さらに判決が確定することで、「判決正本」は②の執行手続で必要となる「債務名義」となるのです(民事執行法22条1号、25条)。
*公正証書について*
公正証書について勘違いしがちですが、公正証書は、場合によっては「債務名義」になり得ることもありますが、建物の返還を請求する強制執行手続では、「債務名義」となることはありません。公正証書が「債務名義」になるとされるのは、民事執行法22条5号に定められている場合に限定されています。 つまり、金銭の賃借などでは、債務者が強制執行において直ちに従う旨を契約書などに記載し、その内容を公正証書で作成することで、差押などの強制執行の場合に「債務名義」として扱うことができます。 しかし、建物明渡請求のように、金銭ではない特定の物を対象とする請求に関しては、どんなに公正証書に記載されたとしても、「債務名義」として扱うことはできないのです。

以上のことから、賃借人を強制的に退居させるためには、必ず裁判手続をとらなければならないということになります。

4、強制手続

裁判の訴訟手続によって「判決」が出されると、自らの権利を実現するために強制執行のてつづきに移ることになります。明渡しに対する強制執行は、裁判所の執行官によって行われる手続のことをいいます(民事執行法2条、および、168条1項)。 この際賃貸人は、裁判の訴訟手続によって受け取った「判決正本」をもとにし、裁判所の執行官に対して強制執行の申立をすることになります。裁判所の執行官は、裁判の訴訟手続によって確定した賃貸人の権利の内容を実現するための役割を果たす機関であるといえます。 強制執行の手続は、裁判の訴訟手続によって受け取った「判決正本」に基づき行われる(民事執行法25条)ことになりますが、執行官に対して、強制執行の手続を申立する際には、他にも提出しなければならない書類もあります。

強制執行の手続を申立てるにあたり、提出しなければならない書類は、民事執行法によって定められています。 なお、強制執行に必要な書類は

  1. ① 強制執行の申立書
  2. ② 判決正本債務名義
  3. ③ 裁判所書記官の付与する執行文
  4. ④ 判決正本送達証明書
  5. ⑤ 判決確定証明書

になります。

*裁判所書記官の付与する執行文とは?*
民事執行法25条では、「執行文の付された債務名義」と定められています。ここでいう執行文とは、手続によって得た「債務名義」に強制執行を行う効力を持っているかということを、裁判所書記官が証明するものになります(民事執行法26条)。
判決正本を裁判所から受け取る ↓ 「執行文付与の申立」を裁判所書記官の行う という手順を踏むと、裁判所書記官が債務名義の末尾に、「債権者○○は、債務者××に対し、この債務名義により強制執行することができる」と記載された「執行文」を添付してもらえます。これを「執行文の付与された債務名義」といいます。 つまり、「判決正本債務名義」と「裁判所書記官の付与する執行文」は一体の書類ということになります。 執行文の付与において問題になることもありますが、賃借人に対する明渡しの判決では、問題になることはほとんどないので、以上のような証明手続きが必要となります。
*判決正本送達証明書とは?*
債務名義による正本または謄本が相手方(賃借人)に送達されたときのみ強制執行を開始することが可能となる旨が民事執行法29条で規定されています。 なので、債務名義の送達が相手方(賃借人)にされていることを証明するもの(証明書)が必要ということになります。裁判所は判決を出すと、当事者にその判決の内容を送達しなければならないと法律で決められている(民事訴訟法255条)ため、裁判記録がある裁判所書記官に申請をせれば、送達の証明書を交付してもらえます。
*判決確定証明書とは?*
本来、3審制の体制を取っている日本では、裁判所で第1審の判決が出たとしても、相手方が不服申立(=「控訴」といいます)をすることで、最終的な結論が決まっていないということも考えられます。 このことに対して、「確定」は、不服申立をすることができなくなった状態のことをいいます。原則として、強制執行の手続による債務名義にするには、判決が「確定」していることが必要であり、また、判決が「確定」していることを証明できる書類の提出が求められます(民事執行法22条1号)。 ただし、判決の主文において、「仮執行宣言」ということが付されているのであれば判決確定証明書は不要ということになります(民事執行法22条2項、民事訴訟法259条)。
5、まとめ

賃借人の賃料滞納を理由に物件の明渡しを賃貸人が求める場合の手順は

  1. ① 賃貸借契約を解除する。
  2. ② 訴訟をして判決正本(債務名義)を収得する。
  3. ③ 強制執行を申立てる。

となります。

また、裁判所で判決をもらえれば問題は解決したと誤解する人もいます。もちろん、賃借人がその判決に対して異論を唱えず、明渡しを自発手的に起こしてもらえるのであれば問題は直ちに解決することになります。

ですが、裁判所の判決であったとしても、賃借人の中には従わないこともあります。 賃料の滞納があったときには、手続の流れを理解した上で、強制執行手続まで迅速に対応し、損害を最小限に抑えることも大事になります。

*仮執行宣言①*
仮執行宣言とは、裁判所が判決の確定がなされる前に執行手続きを行うことを認めるものをいいます。この場合、まだ最終的な裁判所の結論が決まっていない状態で、強制執行手続をすることが認められることになるのです。なので、仮執行宣言が付されている判決に基づき、強制執行を行ったにも関わらず、控訴審によって、裁判所の結論が変更されることも考えられます。このような場合、強制執行を行ったものを、元の状態に再度戻さなければならず、さらに、その強制執行によって相手方(賃借人)が受けた損害を賠償することになります(民事訴訟法260条)。

賃料滞納の発覚と滞納賃料の請求・回収方法

①調査

賃料の滞納があったとしても、賃貸人はすぐに賃貸借契約を解除出来るわけではありません。契約を解消し、退室させるためには、まず前提として、当事者双方の信頼関係が壊れている状態であることが必須になります。一般的には3か月程度の滞納があった場合は、解除が認められるケースが多いと思われます。 ですが、賃貸借契約において、賃料を支払うことは、賃借人にとって最も基本的な義務であるため、賃料の滞納は、義務違反行為にあたるといえます。賃借人の手違いで生じてしまった賃料不払いであるならまだしも、継続的に滞納が続くようであるならば、専門家に相談し、物件の明渡請求へ向けた対応をするべきです。

②支払いの督促

賃料の滞納がわかった時点で、賃貸人は賃借人に対して、直ちに賃料の支払いを要求するべきです。特に順調に支払われていた賃料が、急に滞った場合、賃借人側に経済的な面で何かしらの変化があったことが考えられます。 ただし、滞納された賃料に対する督促方法は、社会的に相当な範囲内で行わなければなりません。 また、賃貸人側が、相手に対してどのような意思をもって、どのような行動に出るかを明確にすることで、相手方に任意の弁済を促すこともできます。 さらに、1度は賃料の滞納が解消されたとしても、再び賃料の滞納が発生したとしても、過去に督促をしたことから、信頼関係破壊の1つの判断基準になります。 このような督促行為は、滞納が発生したら速やかに行うことが大事になります。

*連帯保証人への督促*
賃借人が賃料の滞納を発生させた場合、連帯保証人に対しても督促を行う必要があります。その際に、賃貸人は連帯保証人に対して、連帯保証人であることを確認し、賃借人が賃料を滞納している旨を伝えた上で、滞納分の賃料を支払う責任があることを説明する必要があります。 また、連帯保証人に対して滞納賃料を請求することも可能ですが、出来るのであれば、賃借人が滞納賃料を早めに支払い、賃貸借関係をよい方向へ持っていくことが一番なので、連帯保証人に対してどのような請求をするのかを前もって検討しておくことが必要です。
③家賃回収のための法的手続

賃借者に対して滞納分の家賃の支払いを請求する法的な手続はいくつか挙げられます。 これは、賃貸借契約を解除するまでは考えていないが、滞納分の支払いはしてもらいたいというときの手段になります。明渡請求などのように一般的な裁判手続ではなく、比較的簡単な手続きで、かつ履行を強制する制度を利用することで、金銭請求をすることが可能です。 なお、「履行を強制する」とは、「強制執行」のことをいい、「契約上において守るべきことを守らせる」ための手段の1つとなります。 強制執行は、明渡請求の場合と賃料請求(金銭請求)にわけることができ、どちらの場合かによって、方法が異なってきます。 明渡請求における「差押え」の場合には、執行官によって、賃借人の退居を強制的に実現させることに対して、賃料請求(金銭請求)における「差押え」は、相手方(賃借人)の財産を「差押え」することによって、実現させることを意味します。 また、「差押え」に関する具体的な手続は、どの財産を対象にするかによってことなりますが、「差押え」が強制執行の1つにあたり、強制執行を行うにおいて、「債務名義」を収得する必要があるということでは、どの財産が「差押え」の対象になったとしても明渡請求の場合と同じであるといえます。

*差押えについて*
「差押え」は、賃料請求(金銭請求)の際の手段の1つで、相手方の財産を差し押さえることをいいます。 「差押え」は、どのような手続きを取るかは、どのような財産を「差押え」の対象にするかによって異なります。民事執行法では、「差押え」の対象物を不動産(建物・土地)、船舶、動産類、債権(預金や給料など)に分類され、それぞれ手続きは異なり、手続きに関して細かく規定がされています。ですが、ここで重要になってくることは債権者(賃貸者)が、相手方のどの財産を差し押さえるかを特定しておくということです。なぜかというと、判決を取ったとしても、差し押さえる目的物が何かを具体的に指定しなければ、裁判所は財産を見つけてくれるわけではないので、差し押さえようがないのです。また、年金など財産内容は特定できていても差押えの時点では実際に存在していない財産を差押えすることは出来ないです(国民年金法24条)。 このように財産の所在を債権者自身がわかっていないと「差押え」は成立しないので、もし、債務者側が「差押え」の対象となり得るものを持っていないということになれば、「差押え」の対象がないということになり、また、「財産がある」または「財産がある可能性がある」という場合であっても、債務者がその財産について債権者に黙っていれば、債権者はその財産の存在を特定することができず、結局は「差押え」が成立することはないのです。 相手方が支払うべき金銭を支払わないのであれば、「差押え」の手続をして、債権の回収をすることになりますが、容易なことではないのです。
④簡易な「債務名義」の取得方法

簡易的に滞納賃料請求についての「債務名義」の取得方法は、「相手方と支払い方法などについての話がつかない場合」と、「相手方と支払い方法などについての話はついているが、履行を確保したい場合」の2つに分けることができます。

相手方と支払い方法などについての話がつかない場合1
<支払い督促手続> ①意義

支払督促は、債権者(賃貸者)が給付請求権についての主張を、実質的な審理はせず、簡易迅速かつ経済的に債務名義を収得する手続のことをいいます。ただし、これは、債務者(賃借者)が争わないことが前提です。

②手続き

申立てをする際は、請求する金額に関わらず、原則として、賃借人の普通裁判籍の所在地を管轄している簡易裁判所へ行き、裁判所書記官へ申立ての趣旨および原因の記載された書面を提出します。その後、申立書の審査を行い、認められれば裁判所書記官から支払督促が発付されます。債務者(賃借人)への支払督促の送達から2週間を経過すれば、債権者(賃貸人)は30日以内に支払督促に仮執行宣言を添えるように申立てることができます。 仮執行宣言が発付されることによって、支払督促に対して、執行力が付与されると債務名義となるので、強制執行することが可能になります。 一方、支払督促を受け取った債務者(賃借者)は、それに対して支払督促を発行した裁判所書記官が所属している簡易裁判所に対して、不服申立をすることが出来ます(これを督促異議という)。そのときは、通常訴訟に移行することになります(民事訴訟法395条)。

相手方と支払方法などについての話がつかない場合2
<少額訴訟手続> ①意義

少額訴訟は、60万円以下の支払いの請求を目的とした比較的小規模な紛争では、係争額に合った時間・費用・労力によって、効果的に解決に繋がるように、手続きを出来る限り簡易に行った訴訟手続のことをいいます。 明渡の要求が出来ないことから、家賃の滞納に関わる問題ではあまり利用することはありませんが、明渡後の賃料の未払い請求では利用されることがあります。

②手続

原告(賃貸人)が少額訴訟手続を選んだ場合、少額訴訟手続によって行ってほしい旨を記載した訴状を、簡易裁判所に提起します。 少額訴訟は、原則、1回の口頭弁論期日で審理を終了した後、直ちに判決を言い渡すことになります(民事訴訟法370条1項、374条1項)。 判決の中では、賃借人や連帯保証人の資力状況などを考慮しながら、分割払いや猶予期間などを定めた判決にすることも可能です。 これに対して、被告(賃借人、連帯保証人)は、口頭弁論期日で弁論し、あるいは、期日が終了する前に通常訴訟に移行するための申述することが可能で、そのように申し出た際は、通常訴訟手続に移行することになります。 ただし、同一の簡易裁判所に対して、同一の原告が行える少額訴訟の申し立ては、年間で10回までとなっています。

*民事調停について*
民事調停とは、民事問題に対して、調停委員会が当事者間に入り、実情に即した問題解決を図ることを目的とし、話し合いによって合意を目指す手続のことをいいます。 通常、調停委員会は裁判官から1名・民間人から2名(弁護士や大学教授、不動産鑑定士など)によって組織され、調停の申込みを簡易裁判所へすると、第1回目の期日が1~2か月後に入ることになります。 裁判所の期日は、賃貸人と賃借人の間に調停委員が入り話を進めていくことになります。 また、話し合いは当事者の合意が得られるか、または、話し合いが成立しないことが明らかになるかまで期日を指定しながら続けられます。 そして、話し合いがまとまると、確定判決と同等の効力を持つとされる調停調書が作成されることになります。 調停は、かなり長い期間を要して話し合いが続けられることが考えられることため、賃料の滞納問題ではあまり利用することはないですが、賃貸人が賃借人との関係上、訴訟を避けたい場合や、複雑な要素が他にある場合などのときは、利用されることもあります。 あくまで、民事調停は、当事者間による合意が前提となっているため、賃借人が調停に出席する意思がないときや、最終的に合意する気がないときは、ズルズル話し合いを進めても結局は成立しないので、調停をする意味がないです。
相手方と支払い方法などについては話がついているが、履行を確保したい場合1
<公正証書>

滞納賃料の支払い交渉において、賃借人と合意が取れたときには、合意書を作成することになっています。 このときに、執行受諾文言付の公正証書を作成しておけば、「判決」と同等の強制執行が可能な債務名義になります。 また、公正証書を作成するためには、当事者双方が公証役場へ出向き、公証人に相談しながら作成してもらえます。 なお、作成は本人の意思であることを明確にするために、実印と印鑑証明の持参が必要となります。

*執行受諾文言*
執行受諾文言とは債権者が債務者に対して強制執行を行う旨の陳述が記載されたものをいいます。 執行受諾文言付き公正証書は金銭債務において「債務名義」の1つとして扱われます。 これに対して、特定物の給付を目的とする請求にあたる建物明渡請求などでは、性質上、債務者が強制執行になる旨の陳述をすることができないので、債務名義となる執行証書とはならないのです。
相手方と支払方法について話がついてはいるが、履行を確保したい場合2
<則決和解手続> ①意義

訴訟係属を前提とせず、簡易裁判所の専属管轄に属する裁判上のことを即決和解といいます(民事訴訟法275条)。

②目的

訴訟を提起後、訴訟手続の中で和解が成立すると、裁判所から合意内容が記載された「和解調書」が作成されます。 和解調書は判決と同等の効力を有するものであると考えられ(民事訴訟法267条)、約束違反があったときは、和解調書に基づき、強制執行を申立てることができます。 ですが、訴訟提起前に合意になったにも関わらず、「和解調書」をもらうために訴訟提起をすることも考えものです。 なので、訴訟提起をせず「和解調書」に合意内容を記載してもらい、強制力のあるものにできるよう申出る制度を即決和解の手続といいます。

③手続

即決和解は、まず、賃貸人と賃借人ならびに連帯保証人が話し合いをし、双方の合意をとります。合意がとれたら、請求としての趣旨・原因・紛争の実状を表し、和解の申立てを行うことになります。 これは、申立てから1~2か月後に和解期日が設定され、指定されている最初の期日に和解が成立することが一般的です。 また、執行受諾文言付公正証書のように内容上の制約がないため、合意条項の中に明渡を定めることも可能となります。 その後、和解が成立すると、調書に記載されますが、これは、確定判決と同等の効力を持っているため、万が一和解内容が守られなかったときでも、改めて訴訟を起こす必要はなく、直接強制執行を行うことが可能になります。

賃料滞納をする賃借人に対する対応

1賃貸借契約を維持するのか、賃料はどうしても回収したいのか

建物賃貸借契約に関する問題の一番大きなものが「家賃の滞納」です。 賃借人が賃料を払わないときに、賃貸者がどのように対応したいのか、最終的にどのような状態に持っていきたいのかが重要になります。 ①家賃は要求せず建物の明渡しを求めている②明渡しを求めると同時に未払い家賃の請求をしたい③未払い家賃の請求のみ④賃借人だけでなく、保証人も対象としたいということが挙げられます。 必ずしも退去させることが最終目的ではありません。 たとえば、「家賃の減額や家賃の未払い分の一部免除を認める代わりに、賃貸借契約を維持させたい」または、明渡しを求めはするが、立退きにかかる時間や、引っ越しの実費等の負担などを考慮し、立退きまでの猶予や引越料の提供等に関して任意の交渉をし、和解による解決を望む」こともあります。

2 裁判だけではない選択肢

任意交渉によってトラブルが解決すれば最善ですが、交渉だけで解決しないことも多々あり、建物の明渡しにおける法的対処方法は賃貸者の目的によって変えていく必要があります。選択肢の例は次のものです。

①任意交渉

電話や書面の送付、面談などによって、裁判は行わずに交渉をして、解決を目指す方法です。この方法では、相手の状況を見て、勧め方を使い分けることが可能です。 ただし、訴訟になった際の判決内容を考えながら交渉を進めなければなりませんが、予測をしながら相手方のマイナス部分を探すことが出来ます。

②民事調停(民事調停法1条)

賃貸者は簡易裁判所に対して、民事調停を申し込むことが可能です。相手方ときちんと話し合いたい場合などに有効です。 ただし、申し立てられた側には調停期日に出頭する義務はないため、調停成立の可能性は低いと言えます。

                                                         
③訴え提起前の和解(即決和解)(民事訴訟法275条)

建物の明渡しにおいて、相手方との交渉はおおむね合意でまとまっていますが、明渡しによる債務名義を得る目的で即決和解を利用することがあります。即決和解を利用するにあたって、相手方との間で即決和解の申立てを前提とした合意書をあらかじめ取り交わすことが大事になります。そのとき、即決和解の期日に相手方が出頭しなければ、賃貸借契約の解除事由に相当するという内容を追加することで、即決和解を成立させることに役立つと思われます。

また、合意書を取り交わした上で、相手方との間で管轄の合意(民事訴訟法11条)を行い、期日指定を受けることができる裁判所を早期に探すことによって、短期間で手続を終わらせることができるようになります。 さらに、一般的な賃貸借契約書には連帯保証に関する条項があり、「連帯保証人は、本契約により、生ずる一切の義務を保証する」という条項が多くありますが、このような条項であれば、連帯保証人に対して執行文の付与を受けることはできないので、気を付ける必要があります。つまり、即決和解において連帯保証に関する条項にするのであれば、「連帯保証人は、第○○条、および第○○条の借主が貸主に対して負担する債務について連帯して支払う」のように連帯保証人が保証し得る責任の範囲を明確にしておく必要があります。

④支払督促(民事訴訟法382条)

家賃の未払いに対する支払を求める際に利用することが出来ます。支払督促に対して異議申し立てがされた場合、通常訴訟に移行(民事訴訟法395条)するが、1回目の口頭弁論期日までの時間がかかることもあるため、賃料の延滞に関する問題であるならば、支払督促の申立ては時間の浪費になることもあります。

⑤本案訴訟

建物の明渡しや家賃の未払いの請求を求める際に、裁判所に対して訴訟を提起します。ただし、本案訴訟提起を行った後であっても、双方間で和解をすることも可能です。

⑥少額訴訟および少額債権執行

滞納家賃が60万円以下の場合、延滞家賃に対する支払いを求めるための少額訴訟(民事訴訟法368条)を提起することが可能です。 賃貸人は、少額訴訟における判決を債務名義として、簡易裁判所に対して、少額債権執行(民事執行法167条の2)の申し立てをすることが出来ます。このような場合、滞納家賃の回収を迅速に行うことが可能となります。

⑦占有移転禁止の仮処分(民事保全法2条)

建物明渡請求に関する問題では、占有移転禁止の仮処分の申し立てが必要かを検討することが常に必要になります。もしも、賃借人が建物の占有に対して移転する可能性があるのであれば、占有移転禁止の仮処分の申し立てをする必要があります。 また、占有移転禁止の仮処分執行では、これを契機として、問題が解決されることもあります。これは、占有移転禁止の仮処分が、執行官が直接現地に臨場し、占有移転を禁止する旨を公示するものであり、仮処分執行の際に、債権者もしくは債権者の代理人が現地で立ち会うことによって、相手方と直接話し合う場を設けられる可能性もあるからです。

⑧家事調停

建物明渡請求の問題が、親子または、親族間で行われている場合、親子関係・兄弟関係調整調停事件として、家庭裁判所に申し立てをすることができます。その場合、法的な基準に基づいた解決というだけではなく、利害関係のある人間関係の調整を重視しながら解決を図ることも視野に入れつつ問題解決に取り組みます。

どの方法を選ぶにしても、メリットやデメリットがあります。なので、どの手続き方法を選ぶかは、依頼者の内容や目的に応じて適切な方法を専門家と共に考え、解決に繋がるようにしていかなければなりません。 賃貸借契約を結ぶ上で、誰が賃貸人であるかを確認しておく必要があります。

3 交渉や裁判にあたっての検討事項

債権者は、自身の権利を実現させるために、趣旨にあった最良の法律構成を考え、権利を実現するためにも、問題となる実体法上、手続上の問題点を考える必要があります。

(1)内容証明郵便

建物明渡請求問題でまずやるべきことは、事実にあった催告を相手方に対して行うことになります。賃借人が賃料を延滞していることに対して、一般的には、滞納賃料の支払いがないこと等の理由から、賃貸借契約を解除する旨を配達証明付内容証明郵便に記載し、相手方(賃借人)に送付することになります。

しかし賃借人に対して、内容証明郵便を送付しても、留置期間満了(留置期間は原則7日間となっています。しかし、受取人の申出によっては、最大10日間まで延長することが可能となります。)に伴い、内容証明郵便が返送されてしまうことがあります。これは、配達の際に受取人(賃借人)が不在であれば「郵便物配達のお知らせ」が交付されることになっているが、差出人の欄に賃貸人や代理人の名前が記載されていることで、賃借人が自身にとって不都合な内容が書かれていると思い、内容証明郵便を留置期間内に受領をしないように拒否しているためであると考えられます。

このような場合は、たとえ名あて人不在で内容証明郵便が返送されてきても、留置期間の満了をもって賃貸人の意志表示の到達はあったものとされることもあります。 また、相手方が内容証明郵便を受領しなかったとしても、内容を了知させるために、留置期間満了に伴い返送された内容証明郵便の差出人保管分をコピーし、いつ、何を送付し、留置期間満了により返送されたこと、さらに内容証明の写しを送付したことを記載した奥書を郵送することも1つの手段です。

なお、賃貸人がこれまでの賃借人の行いから、賃貸契約の解除を望んでいるにも関わらず、催告後に延滞賃料を賃借者が全額支払うことがあれば、賃貸契約の解除は困難となってしまいます。さらには、賃貸人の催告には応じないにも関わらず、代理人の司法書士など第3者の催告には応じるという賃借人もいるため、未払い賃料などの催告を行う際は、支払期限等催告書の記載内容に十分注意が必要になります。

賃借人が催告書の送付を受けた後に賃貸人に対して、未払い賃料の一部のみを支払った場合は、未払い賃料を一部充当した旨、また、支払期限後に全額あるいは一部を支払ったときには、期限後に支払いがあったことと、未払い賃料にあてられた旨を通知することになります。

(2)賃貸人の事情
(A)建物の所有権が売買等により移転している場合

賃貸借契約が凍結した後、建物の所有権が売買または贈与によって、移転することもあります。新しく所有者が賃借人に対して、建物の明渡請求訴訟を提起された場合、賃借人(被告)は対抗要件の抗弁を主張することができます。そのときに新しい所有者が最高弁するためには、当該建物につき所有権移転登記手続を経由しているということを主張することになります。

(B)転貸の場合

転貸の場合、まず確認しなければならないことは、転貸人が建物の所有者と賃貸契約を締結しているかどうか、また、転貸人が第三者に対して建物の所有者の許可を得た上で、建物を転借しているかになります。

また、転借人が転貸人に対して賃料を支払わないことがありますが、そのときは、転借人が直接賃貸人に支払を行っていることが考えられます(民法613条1項)。なので、転借人の支払いが滞った際は、慎重に経緯を聞くことがよいです。

ただし、この場合転貸人を原告、転借人を被告として、主張を提起することができますが、転貸人の請求に対して、転借人は、賃貸人の了承を得ていないことを理由に賃料の支払いを拒絶する抗弁を主張したとしても、その抗弁は主張として認められないのです。

(3)賃借人の事情
(A)賃借人の所在が不明の場合

賃貸借契約を解除する際に意思表示をしなければなりませんが、これは、賃借人に対して行う必要があることから、賃借人が問題となっている建物に居住していない、または、長期間不在である場合、賃借人の所在を確認しなければならず、転居先を確認するためにも賃借人に関する住所を知るための資料が必要になります。そのためには、賃借人の賃貸契約書上に書かれた住所、あるいは、賃貸建物の住所をもとに、賃借人の住民票を取り寄せる必要があります。

住民票の請求をしても、市区町村長から該当者なしの職務上請求用紙が返送されてくることが考えられます。このようなときは、賃借人が外国人登録をしている可能性があり、契約時の申込書等の印鑑証明書などの資料の提供や賃借人の国籍等に関して再度事情を確認する必要があります。

もし、賃借人が外国人登録をしている確認が取れれば、外国人登録原票記載事項証明書を職務上請求用紙を用いて取り寄せることになります。

また、住民票等を請求したときに、該当者なしで住民書等を入手することができなかった場合、相談者自身または代理人が建物の近隣の住民に賃借人の転居先などについて話を聞きにいく必要も出てきます。

それでも賃借人の所在がわからず、行方不明であるとなれば、賃借人の住所・居所・勤務先などが一切不明ということもありえ、この場合、訴状に賃貸借契約の解除をする旨を記載し(民事訴訟法113条)、訴えを提起することになります。賃借人の所在がわからないことで通常の方法による送達ができないので、公示送達によって訴状および判決の送達が行われることになります。

(B)賃借人が死亡している場合

周りの話しや住民票等から、賃借人が死亡しているということが判明することもあります。その場合、賃貸人側は、賃借人の戸籍謄本などの資料を集め、相続人を調査確定することになります。

また、賃借人の相続人が複数いる場合は、共同相続人全員に対して、滞納賃料の督促および賃料の支払いがないときには、賃貸借契約の解除する意思表示をしなければならないことになっています。

なお、賃借人の相続人に対して催告書を送るにあたり、相続人自身が事情を知らないことも考えられるので、文面には注意が必要です。 もしも、共同相続人全員と賃貸人の間で明渡しの交渉がうまくいかないときには、最終的には訴えを提起することで解決に繋がることになります。

(C)賃借人が夫婦の場合

夫婦が度拒するために締結された賃貸借契約は、契約に基づく賃料債務が、日常の家事についての債務であるとされ、契約者自身でないとしても、配偶者に対して請求することができることがあります。 よって、賃借人が賃料を滞納した場合、直接契約者となっていない配偶者に収入があれば、そちらを被告として扱うことも可能となります。

ただし、直接の契約者でない配偶者が契約時にあらかじめ賃料の支払いに対して連帯債務を負わない旨を明確にしていた場合には、連帯責任を負わないことになります(民法761条ただし書)。

(D)氏名不詳の第三者が占有している場合

建物を占有しているのが賃借人ではない氏名不詳の第三者であることがあります。近隣の情報や建物の現状をもとに当該建物を占有しているのが、氏名不詳の第三者であるとわかった際には、債務者(占有者)の身元を特定せずに行える占有移転禁止の仮処分を行うことになります。

本仮処分命令の執行により、第三者である占有者を特定することができれば(民事保全法54条の2)、第三者である占有者および賃借人を被告人とする建物明渡請求訴訟を提起することになります。

ただし、仮処分執行および強制執行の際に、第三者である占有者が抵抗することが予想できるのであれば、執行官と協議をした上で、所轄警察署に相談をすることも必要です。

(4)現地確認
(A)建物の利用状況の確認

賃借人の建物を契約上とは違う利用状況であり、問題になることがあります。この場合、現地調査に望み、証拠となる現地の写真やビデオおよび撮影日時や撮影した目的物などを記録として残しておく必要があります。 現地で建物の利用状況を確認し、賃貸借契約上賃貸建物の利用目的が、契約上では居住となっているにもかかわらず、店舗として使用されているなど、用法遵守義務違反であった場合は利用状況について違反を主張することで、賃貸借契約を解除することができるようになります。

また、建物明渡請求訴訟において、現地の写真やビデオなどは証拠資料として使用することができるので、現状を正確に記録する必要があります。

(B)賃借建物への立入り

賃借人が長期間賃料を滞納し、さらに賃借人の姿を見かけなくなった場合、賃借人は合い鍵を使い、賃借人の賃貸建物に入室することも考える必要がでてきます。 これは、賃借人が高齢者で特に一人暮らしであった場合、病気により室内で身動きが取れない状態にあることや、あるいは、亡くなっているおそれも考えられるからです。よって、賃借人と連絡が取れなくなった時期や引っ越しをしたのかなどを確認し、室内の状況を知る必要があると判断したときには、立入りを検討しなければならないのです。

しかし、賃借人の賃貸建物に入室する際には、賃貸人は1人で立入らないようにする必要があります。これは、もし賃借人に特に異常がなく、ただ留守にしていただけのような場合に、不法侵入などのトラブルが起こることも考えられるからです。 なので、賃借人の安否を調べるために賃貸建物に入室する際は、可能であるならば、賃借人の親族や、賃貸借契約における連帯保証人等の賃借人の関係者に立ち会ってもらうことが後々を考えると無難といえます。また、事件性が考えられるのであるならば、所轄の警察署に連絡をし、警察官の立会いのもと、第三者を交え入室することがいと思われます。

(5)賃貸借契約
(A)契約書

場合により、賃貸人と賃借人の間において賃貸契約書が作成されていないことがあります。ですが、賃貸借契約の当事者が親族間である等の場合で考えると、契約書が作成されていなかったとしても特に不自然というわけではないのです。

また、契約当時は契約書を作成していたとしても、賃貸借契約が長期間にわたり継続されているということを考えれば、何かしらの理由から契約書が紛失、または、滅失していることも考えの範疇であるといえます。

しかし、契約を結ぶにあたり、賃貸借契約書がないことによって、契約上の内容をめぐり賃貸人および賃借人間で問題が生じることもあります。当事者間で問題が生じたときは、当事者それぞれに契約の内容を聞き、その内容をもとに正確な契約の内容を明確にするほかないのです。仲介業者などの賃貸契約を結んだことを知る人物などがいないかを当事者に聞き、いるのであれば、その第三者に話を聞いて、解決につなげることも1つの手段としてよいと思われます。

(B)賃貸契約書の内容と現実の契約内容の不一致

賃貸借契約を結ぶにあたり、賃貸借契約書は存在するが、契約書に記載されている契約内容と当事者間が認容している契約内容に食い違いが生じることがあります。

たとえば、賃貸契約書の中では、賃貸建物の利用目的が居住であるにもかかわらず、実際には店舗や事務所として利用している、また、契約書ではペットの飼育が禁止されているが、実際にはペットを飼育している人がいるなどが挙げられます。

このように、賃貸借契約書と実際の状況が異なっている場合、契約書の内容がいつからそうなったのか、また、当事者がその事実を知ったのはいつなのか、さらにその事実を知った後にどのような対応をとったのかなどの詳細を調査し、賃貸借契約書の内容が実際に変更されたのかを検討する必要があります。

(C)保証人

保証人に関してはあらゆる問題が生じます。

たとえば、賃借人が行方不明になったことで未払賃料が発生し、賃貸人が保証人に対して未払賃料を行いたいということや、また、数年前に保証人になったことはあるが、更新後にもかかわらず、賃貸人から保証債務の請求を受けたなどが挙げられます。

このような場合、期間に定めのある建物賃貸借契約での保証人は、原則として、更新後であっても賃貸借契約のおける債務に対して責任を負うと判例ではなっています。

しかし、建物に関する保証人は、賃借人が多額の賃料を滞納していたにもかかわらず、賃貸人が賃貸借契約を更新させたなどの事情があったときは、更新後の賃借人の債務を負うことはないとされることもあります。なので、このようなときは、賃借人と連帯保証人の関係や賃借人の延滞がいつから始まったのか、賃貸借契約が更新されているのか、連帯保証人は賃貸人から賃借人の滞納家賃について督促を受けたかなどの状況を確認し、連帯保証人の責任の範囲を限定することが可能かを確認する必要があります。

賃貸借契約の終了(解除)

賃料の滞納が生じたからといって、すぐに建物の明渡を要求することは出来ず、まずは賃貸借の解除を行い、契約を終了させる必要があります。 また、原則として、賃貸借契約を解除するために

  1. ①賃料の不払いがあること
  2. ②催告をすること
  3. ③催告に対する相当期間内に滞納賃料の支払いがないこと
  4. ④賃貸借契約の解除に対する意思表示をすること
  5. ⑤賃貸者および賃借者双方間の信頼関係が破壊されていることex、賃料の不払いが3か月以上続いている。など

が必要となります。 賃料の督促をしたが、賃借者からの支払いに至らなかった場合、賃貸者は契約を解除するためにどのような方法をとることで、賃借人に対して建物からの退去を求めることが出来るのかを知る必要があります。

1、催告と解除

通常、賃料の滞納が発生しても、すぐに契約を終了させることはできません。なので、賃貸人はまず、賃借人に対して、「いつまでに滞納している賃料を支払わなければ、契約を終了し、直ちに退居してもらうことになる」という注意(これを「催告」といいます)をして、賃借人に退居を免れる機会を与える必要があります。それでも賃借人が滞納賃料を支払わなければ、契約を解除することができるようになります。 このように賃貸人が賃借人との契約を解除するためには、賃借人に対して、「催告」と「解除の意思表示」の2回の通知が必要になります。 ただし、「滞納している○万円を○日以内にお支払い下さい(=催告)。期間内にお支払いがなければ、期限の翌日に賃貸借契約を解除します(=解除の意思表示)」というように2つの通知を1回にまとめて行うことも可能です。 なお、賃借人が期間内に滞納賃料の支払いをした場合は、賃貸人の契約解除の意思表示は無効となり、効力を発生させることはないですが、賃借人が再度滞納賃料が発生した時に、あらためて解除の通知をする必要がないので、このような通知方法も多く用いられます。

2、解除に関する特約

賃料の滞納が発覚した後、契約を解除するためには、①催告、②解除の意思表示という手順を踏むことが必要になります。 ですが、実際に賃料の滞納などの状況になると、催告したくても賃借人と連絡が繋がらないなど、通知自体ができないこともあります。 なので、賃貸人の負担を軽減するという意味でも、前もって、賃貸借契約書の中で特約を定めておくということが行われています。

(1)無催告解除特約

無催告解除特約は、ある条件の場合、催告をせず、契約違反が発覚した時点で直ちに契約の解除をすることで、契約の終了とすることが出来る特約のことをいいます。このような特約が記載されている契約書は珍しくなく、契約書に「なんの通知および催告もせず、契約を解除することもあり得る」などの内容の条項があれば、それが「無催告解除特約」といわれるものです。また、一般的にはこのような「無催告解除特約」であっても有効であるとされています。 ただし、「無催告解除」は賃貸借契約においては、認められるものが限定されます。賃貸借契約の問題で契約の解除および終了には「信頼関係の破壊」になり得る事情が必要になり、さらに、「催告がなかったとしてもやむを得ない事情」が必須となります。 これは、最高裁の判例でも「賃貸借契約において、たとえ1か月であったとしても、賃借人が賃料を滞納したのであれば、契約の解除を催告なしで行うという旨の特約条項は、当事者間の信頼関係に大きな影響をもたらし、継続的に賃貸借関係を続けることは難しいと考えられるので、約定の期日に賃借人から賃料が支払われず、契約を解除するにあたり催告をしなかったとしても不合理とは認められないような事情が存する場合であれば、無催告による解除権の行使を定めた約定は認められるのが相当である」と述べられています。 ですが、契約書に「1か月であっても賃料の滞納が発生した際は、直ちに契約を解除する」のような条項が記載されていたとしても、必ずしも内容通りに実行が可能というわけではないということに注意をする必要があります。最高裁の判例でもあった通り、たとえ契約書に定められていたとしても、無催告で解除を行うためには、例えば、賃料滞納が相当期間継続している場合や度重なる賃借人への督促を無視している場合、賃借人に支払う意思がない場合など、無催告解除特約を認めるに相当する理由が必要ということになるのです。 このように考えると無催告解除特約を契約書に入れることに意味があるのかと思いがちですが、無催告解除特約は、必ずしも効力が認められるわけではないということと同時に、契約書に無催告解除特約の記載があれば、無催告解除をすることができる可能性もあるという余地を認めることもできるという意味では、有効な特約という考え方もできます。

(2)当然解除特約

「賃借人が○か月家賃を滞納した場合は、本契約を即告終了とする」などのような、そもそも契約解除の意思表示を不要とする特約があったときは有効になるのかということになりますが、このような特約は「当然解除特約」または「当然失権特約」と一般的に呼ばれています。 では、このような内容の特約が果たして有効と言えるのかということになりますが、全体的に統一された結論は出されていませんが、裁判所の和解条項などで定められているような特別なケースを除き、たいていの場合は、たとえ契約書に記載されていたとしても、このような特約は無効とされることが多いと考えられます。 判例上、無催告解除特約においても効力が制限されているので、賃借人をさらに不利益にするような「当然解除特約」の効力も考えさせられ、また、消費者契約法が施行されたことを考えれば、このような特約の効力は、賃借者の利益を害するものであるとされ、否定される可能性が高いと考えられます。

*特約による契約解除原因*
A、賃借人が破産申立等をした場合に契約が解除できるとする特約
このような特約が記載された契約書は少なくはありませんが、この特約は、仮に賃借人が破産もしくはその他の手続(民事再生など)を申立てたとすれば、賃貸人は今後、賃料の回収が確実ではないという不安が生じるため、実際は賃料の滞納が発生する前に契約を終了させるという趣旨のもと作られた特約であると考えられます。 ただし、すでに賃料の滞納が発生しているならば、破産申立ての有無に関わらず、賃料滞納を理由に契約を解除することができます。 また、このような特約は消費者契約法などとのかね合いから、無効とされることが考えられます。 ですが、新しく施行された破産法では、賃貸人は賃借人の破産を理由とした契約の解除ができないことになりました。破産法の規定から考えると、破産等の申立てを理由に契約を解除することは、賃借人にとって不利益なことであると考えられるので、契約条項に記載があったとしても、無効になる可能性が高いと思われます。
B、賃借人が暴力団関係者等である場合に契約が解除できるとする特約
「これは「暴力団排除条項(暴排条項)」というものです。このような暴排条項は、賃借人の属性に注目している点で一般的な契約解除の原因とは異なるので、この条項がどこまで有効と言えるのかは明確にはなっていません。なので、賃借人が暴力団関係者であると判明したからといって、即座に契約を解除するということはどのような目的で使用しているかによっても違ってきます。 しかし、暴力団関係者のように反社会的に分類される人と契約関係にあるとわかれば、周りの住人との関係にも大きく影響し、トラブルを招くことも考えられます。そのような問題を回避するということからでも、判明した時点で速やかに対処する必要があります。 また、契約書に暴排条項を記載することで、排除に対しての強い意思を明確に出来るので、反社会的立場にいる者の入居は許可しないという意味でもよいことであるといえます。
3、意思表示の具体的方法

催告や解除の意思表示は、法律上で、相手方に「到達」することが必要であるということが定められています(民法97条1項)。 しかし、法律上、その方法についてはなんの定めもありません。つまり、口頭であろうと、電話であろうと、文書によるものであろうと、相手方に「催告」あるいは「解除」に対する意思さえ「到達」すれば問題ないのです。 ですが、賃貸人や賃借人にとって、催告や解除に対する意思表示は重要な効力を持ち、到達の有無において問題にならないようにしなければなりません。よって、そのことをなにかしらの形で証拠として残しておく必要があります。 では、催告または解除の意思表示を具多雨的な方法を踏まえ、賃料が滞納された時点で賃借人の所在がわかっている、または、わかっていない場合をそれぞれわけて考えます。

(1)賃借人の所在がわかっている場合
1)郵便による方法

①配達証明付き内容証明郵便 最も有効な方法として、相手方に郵便の形式で送付する「配達証明付き内容証明郵便」という方法が挙げられます。これは、郵便事業者が、通知文書の内容(内容証明郵便)、相手方への到達の有無(配達証明)の証明をするので、催告または解除の意思表示がいつされたのかを資料の形で証拠化することが可能となります。

②内容証明郵便の作成 a、形式等 字数や行数に制限があります。 ○縦書きの場合:1行20字以内  1枚26行以内 ○横書きの場合:1行20字以内  1枚26行以内        :1行13字以内  1枚40行以内        :1行26字以内  1枚20行以内 また、2枚以上になるのであれば、契印が必要となります。 b、差出人 賃貸人でも、管理会社でもよいので、住所をつけるようにします。 (例 除く) ③内容賃料不払いの詳細、支払いを求めるにあたり、相当な期間を設定すること、期間内に支払いがなければ賃貸借契約を解除することを明確に文章にしておきます。

*催告期間の計算方法*
民法は、原則、初日不算入と定められています。よって、催告期間は賃借者に内容証明郵便が届いた日の翌日からの計算になります。

④内容証明郵便の差出方法 a、取扱郵便局 郵便局によっては内容証明郵便を取り扱っていない場合があるので、前もって問い合わせをする必要があります。 b、持参するもの Ⅰ 内容文書(受取人へ送付するもの) Ⅱ 謄本(Ⅰのコピー)2通   →郵便局での保管と差出人の保管用 Ⅲ 差出人ならびに受取人の住所・氏名が記載された封筒 また、訂正などのことを考え、差出人の印鑑もあればなおよい。

(2)郵便物が到達しない場合

内容証明郵便を相手方に配達した際、受取人が不在であると、配達員は郵便受けなどに投函はせず、不在配達通知書を置いて、一定期間は保管をするという対応をとっています。その後、期間内に相手方が受領しなかった場合、保管期間が経過した旨が書かれた付箋をつけて、発送者へ還付されることになります。 また、相手方が配達員に対して受け取りを拒否した場合にも同様の対応がされることになります。 このようなことになると、催告あるいは解除に対する意思表示が「到達」したとはいえません。 よって、このようになったといはどのような方法をとればよいかということになります。

1)受取人に直接持参する

これは、発送人が送付すべき文書を相手方の住居に直接持って行き、郵便受けなどに投函するという方法です。 そもそも「到達」とは発送者の意思表示が相手方の知る範囲に入ることで成立します。つまり、相手方が文書の内容を把握することまでは必要なく、相手方が内容証明郵便の存在を知る可能性がある領域に入りさえすれば、「到達」したということがいえます。 なので、相手が必ず見ると考えられる住居の郵便受けなどに投函をすれば、意思表示が到達したことになります。 ただし、表札はもちろんのこと、電気やガスのメーターが作動しているかなどを確認し、相手方が実際に居住をしていることを確認した上での話になります。 さらに、後日、裁判になったことも考え、投函したという証拠として、写真などを撮っておくことも有効になります。 よって、これが最も簡単かつ便利な方法になります。

2)執行官送達

これは、裁判所の執行官が、差出人の申立てによって、受取人に文書を送付する方法になります(執行官法付則9条1項)。具体的には、裁判所の執行官が、差出人による意思表示の文書を相手方に直接持参し、交付をするという手段になります。交付がうまくいけば、執行官から報告書面を受け取ることも可能になります(執行官法附則4条)。 本来であれば、直接自身で投函することが、簡便ではありますが、万が一、相手方が郵便物の受領を前もって拒否していた場合、文書の交付において問題が起こりかねません。そこで、執行官の送達業務が公務であることから、妨害をすれば公務執行妨害にあたるので、執行官送達が有効になってくるのです。

(3)所在不明の場合

相手方が当初から行方不明である、また、「転居先が不明」などの理由から文書が還付される場合、所在不明ということになります。 このようなときは、公示による意思表示(民王97条の2)という方法があります。 これは、公示送達を裁判所に対して申立て、裁判所が相当であると認められれば、裁判所に掲示することができるようになり、これによって、相手方への意思表示が送達されたことと同等の扱いになる制度です。このような場合、裁判所に掲示されてから2週間経つと、相手方に対して意思表示が到達されたものとみなされます(民事訴訟法113条)。なので、明渡請求訴訟を提起するときは、解除の意志表示に関する旨を訴状に明記し、公示送達の申立は訴訟手続の中で行えばよいので、意志表示の申立を別途公示によって行う必要はないです。

4、解除の効力発生

相手方に解除の意思表示が到達すれば、賃貸借契約が終了することになります。 また、猶予期間内に賃借人が滞納していた賃料の一部の支払いをしたとしても、催告した全額の支払いがない限りは、賃貸借契約の解除が有効になります。

2020-07-27 14:13 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所