部屋を借りる際に必要な書類は

個人で契約をするときは、多くの書類や印鑑が必要になります。

ただし、貸主によっては一般的な書類の一部の提出が必要ない場合や、逆に、別の書類の提出が要求される場合もあるので、前もって不動産会社に確認が必要です。

また、賃貸借契約を結ぶ際に、多くは保証人が必要となります。
賃貸借契約の契約期間の最中には、保証人に対していろいろな問題が生じることが考えられます。

たとえば、賃借人が行方不明になったことで未払賃料が発生し、賃貸人が保証人に対して未払賃料を請求する場合や、数年前に保証人になったことはあるが、更新後にもかかわらず、賃貸人から保証債務の請求を受けたなどの場合が挙げられます。

このような場合、期間に定めのある建物賃貸借契約での保証人は、原則として、更新後であっても賃貸借契約のおける債務に対して責任を負うと判例ではされています。

しかし、建物に関する保証人は、賃借人が多額の賃料を滞納していたにもかかわらず、賃貸人が賃貸借契約を更新させたなどの事情があった場合に、更新後の賃借人の債務を負うことはないとされることもあります。このようなときは、賃借人と連帯保証人の関係や賃借人の延滞がいつから始まったのか、賃貸借契約が更新されているのか、連帯保証人は賃貸人から賃借人の滞納家賃について督促を受けたかなどの状況を確認し、連帯保証人の責任の範囲を限定することが可能かどうかを確認する必要があります。

(1)入居者の印鑑
入居者の印鑑は、契約を結ぶ際に、契約書に捺印をするために必要なものであり、一般的には認印で足ります。
しかし、場合によっては実印や印鑑証明が必要になることもあります。
(2)連帯保証人の実印による印影と印鑑証明
「連帯保証人」は賃借人が負っている債務を、賃借人と同等に支払う義務を負っている者のことを言い、一般的に連帯保証に関する契約条項が賃貸契約書には記載されてあり、署名欄の場所には、賃借人と同じく署名・押印の欄が設けられています。
また、連帯保証人となる人は、一般的に賃借人の知り合いであることが多く、連帯保証人は賃借人との契約であると誤解されがちですが、連帯保証契約は賃貸借に関する契約なので、連帯保証人は賃貸人との間で結ばれた契約となります。
また、連帯保証人は、地方に住んでいることも多いため、契約書への調印の場にいない可能性もあります。従って、賃借人が賃料の滞納をした際に、連帯保証人に対して支払い請求をした際に連帯保証契約をしていないと言われトラブルになることもあります。トラブルを避けるためにも、賃借人との契約時には、連帯保証人にも同席してもらい、連帯保証人になることに合意したという証明のために直接署名をしてもらい、さらに印鑑証明書と実印を持って来るように要求する大家さんもいます。
だからといって、連帯保証人の実印を借主が借りてくるわけにもいきません。よって、借主は契約書を持って直接連帯保証人の元へ赴き、実印を押してもらい、印鑑証明書をもらうか、もしくは、契約書を郵送し、押捺してもらった後、返信用の封筒に契約書と印鑑証明書を同封してもらうことになります。そうすることで、連帯保証人の意思確認もできることになります。
さらに賃貸借契約を結んだ際には、連帯保証人の欄に署名・押印をしていたにもかかわらず、契約更新での更新合意書を作成したときには、連帯保証人が当事者から外れていることがあります。この場合、連帯保証人に責任を問えるのかということですが、期間の定めがある建物賃貸借では、賃借人に対する保証は、借地借家法によって契約の更新をすることが原則となっています。なので、契約書上で「更新後は連帯保証の責任を負わない」などの特別な事情がない限りは、更新用の書類に署名などがなくても、連帯保証人は賃借人の更新後の債務においても責任を負うと判例ではされています。
ただし、賃料の滞納を確認していながらも賃貸借契約を解除もせず長期間放置をしていた、または、契約から何十年も経過しているなど、連帯保証人に責任を負わせるのが酷な状況であれば、連帯保証人が責任を問われないこともあります。
更新において合意を求める場合には、賃借人だけではなく、連帯保証人の意思確認も必要になります。
(3)入居者の住民票
入居者の身元を確認するものであり、契約後は大家さんが保管します。いくら身元の証明が出来るといっても、運転免許証や保険証で代用が出来るものではありません。
また、住民票は、個人だけのではなく、世帯員全員が記載されているものが必要になります。新婚かつ未入籍の場合は2人それぞれの住民票が必要になることが多いです。
(4)契約者の源泉徴収票
借主に家賃の支払い能力があるのかを証明するためのものであり、場合によっては給与明細書や住民税の課税通知書でよいこともあります。
自営業者の場合では、確定申告書の控えでも足りますが、照合のため、原本を持参する必要があります。
(5)連帯保証人についての収入証明の出来るもの
連帯保証人が保証し得る債務の範囲は、賃借人が負うべきすべての債務に対して責任を負うことになります。よって、賃料にとどまらず、利息、違約金、損害賠償などに対しても責任を負うことになります(民法447条1項)。これについては、契約書の中でも定められています。
しかし、連帯保証人であっても履行が出来ないこともあり、その1つが建物の明渡しに対する請求です。建物の明渡しは、建物を使用・収益している賃借人のみが履行出来るものです。
そのため、契約者に何かあった際に連帯保証人(以下保証人とする)に保証能力があるかを証明する必要があるのです。
連帯保証人も人的な「担保」です。
最近の傾向としては、連帯保証人の負う可能性がある責任の範囲の拡大が広まってきています。これは今日の賃貸市場では、賃料が高額な高級マンションが増えてきたため、賃料を滞納し、それが積み重なってくると保証債務も大きくなります。連帯保証人も人である以上、いつ無資力になるかわからず、そうなれば滞納した賃料等の回収は困難になります。
さらに、賃借人が建物の火災などの重過失による損害を発生させることがあれば、保証にかかる金額も高額になるため、保証人への負担も大きくなります。よって、連帯保証契約では保証人がどこまで責任を負う可能性があるかを明確にすることが必要になります。
また、連帯保証人が死亡した場合、相続人が相続放棄の手続きをとるなどすれば、責任の追及が出来なくなります。
債務者が保証人を必要とする義務を負う場合に、保証人が無資力になったときは、代わりの保証人を立てる請求が可能であると規定しています(民法450条)。
賃貸人は、連帯保証契約の問題点を理解し、保証者の債務負担に対する意思確認を定期的に行うと共に、保証人の適性などを見極める必要があります。

契約書をチェックしよう

●契約書
<入居審査の重要性>

不動産に関する賃貸借契約では、不動産会社を通して入居希望者が申込みをし、入居審査を行った後に、入居希望者に問題がなければ、賃貸借契約書を作成するという流れになっています。賃貸人からすれば、出来るだけ多くの人に貸し出し、少しでも空室を埋めて、収益を上げていきたいと考えます。
だからといって、素性を知らない人間に誰かれ構わず貸してしまえば、賃借人が問題を起こし、トラブルになってしまうこともあります。

また、一度契約をし、引渡しが完了してしまうと、返還してもらうことも困難になる上、返還してもらえたとしてもそれまでに多くの時間や費用がかかってしまいます。よって、入居者選びは賃貸人にとってとても重要になります。具体的な基準としては、入居希望者が家賃を支払い続ける意思および能力があるかというところになります。

また、建物に対する賃貸借契約は、一般的に年単位の長期間になるため、経済的な面で先が見えないことが通常であり、将来的にどうなるかの予想がつかないため、入居希望者に関する情報を収集し、慎重に判断することが必要になります。もちろん契約を結ぶかどうかは賃貸者の自由のため(契約自由の原則)、入居の申込みがあったからといって必ずしも契約をしなければならないわけではないです。

<入居審査の方法>

入居審査は一般的に入居申込書に則って行われます。不動産会社によって入居申込書は書式が多少異なることもありますが、①申込者の氏名・住所、②家族構成、③勤務先に関する情報(会社名、勤務年数、収入等)は記載するようになっていると思われます。

さらに、記載内容が正しいかどうかの確認をするために、住民票や源泉徴収票など収入があることを証明する書類が必要なことも少なくはありません。これらの書類は、入居希望者に賃料を払う能力があるかを判断する基準の1つにもなり、もし、賃料の滞納があった際に裁判になったとしても、1つの判断材料として必要になります。

また、形式的な内容だけでは、人柄について知ることは困難なので、実際に入居者と対面した不動産会社の担当者などから情報を聞くことも1つの手段です。

賃貸借契約は契約書に書かれている内容に入居者・家主の双方が合意をすることによって成立します。
たいていの場合には、賃貸者と賃借者の間で賃貸借契約書が作成されますが、当事者が親族同士などのときは、作成されないこともあります。しかし、賃貸借契約書が作成していない場合や長期間における継続的な契約によって滅失または、紛失させてしまうと、契約の内容をめぐり、当事者間でトラブルに発展してしまうことも考えられます。

また、入居者が契約書に署名及び押印をした時点で、契約書に書かれた条件を受け入れたと判断されるため、入居者自身が契約書の内容をきちんと理解しておく必要があります。理解出来ない内容はしっかり不動産会社の人に確認することが大事です。

(1)家賃の支払方法
一般的に家賃は家主(大家さん、貸主)に対して持参または振込によって直接支払う方法か、または、不動産会社を通して支払う方法があります。
また、家賃を支払う際には、管理費(または共益費)を一緒に払うことになります。
(2)契約開始日
契約開始日とはいつからその部屋を借りるのかを表すもので、契約書には必ず契約開始日が記載されます(ただし、契約書を取り交わす日が契約開始日と同一日とは限りません)。
また、入居している・していないにかかわらず、契約開始日より家賃が発生することになります(契約開始日が月の途中であれば、日割家賃が発生します)。
よって、入居していないにもかかわらず、家賃を支払うことに納得出来ないのであれば、契約開始日を入居日に合わせることも出来ます。
しかし、大家さん側は家賃が支払われないにもかかわらず、部屋を押さえておかなければならないことに納得しない場合もあるので、契約開始日については不動産会社と相談する必要があります。
(3)契約期間
賃貸借契約には、契約期間というものが設けられており、多くは2年間の設定になっています(ただし、必ずしも2年間とは限らないので、契約書をよく読み、わからなかったときは不動産会社に確認が必要です)。
また、この契約期間が満了となると、契約を更新する(住み続ける)または、契約を終了する(部屋を出る)のどちらかを入居者は選ぶことが出来ます(ただし、定期借家契約の場合は更新不可)。
(4)契約の更新
契約を更新する際に、首都圏の賃貸住宅では家賃の他に更新料を支払うことが多いです。契約更新の際に更新料がかかるのであれば、たいていは契約書にその旨が記載されています。なので、契約時に確認をする必要があります。
ただし、契約書に記載がない場合は、更新料の支払い義務はありません。
(5)契約の解約
入居者が契約期間の途中で契約の終了(解約)を申し入れる際に、入居者は家主(大家さん、貸主)に対して、解約をしたい旨をあらかじめ伝える必要があります(解約予告)。予告期間(いつ解約をするかを伝える期間)は契約書に記載してあるので、契約時に確認をする必要があります。
万が一、予告期間が契約書に記載されていない場合は、必ず契約前に不動産会社に確認が必要です。
(6)賃料等の改定
首都圏では、2年間の契約期間が終わり、契約が更新される度に、家賃が改定されることが一般的に多く、その際に、管理費も改定されます。
(7)禁止事項
マンションや賃家には、いくつかの規則がある所も多く、部屋を借りる以上、入居者はその規則に従う義務があります。
一般的には「他人に迷惑をかける行為は禁止する。」などが挙げられますが、建物によっては、「ペット禁止」や「ピアノ禁止」などが定められているので、契約時に確認をする事も必要です。
万が一、このような規則を守らない場合は、契約期間内であったとしても退去させられることもあります。
(8)修繕費用の負担
自分の不注意により、部屋を汚してしまった、また、設備を破損させてしまったなどの事情があった場合、入居者は修繕費用を自身で負担し、入居時の状態に戻す義務があります。
ここでいう「入居時の状態」については、入・退去時の際に家主(大家さん、貸主など)あるいは、不動産会社と確認をしておいた方がよいです。
(9)契約の解除
一般的に契約期間内に契約を終了(契約の解除)することは出来ませんが、入居者が契約書で記載されている内容に対する義務に違反した場合は、家主(貸主)は契約違反を理由に契約を終了(契約解除)させることが可能です。
また、家主(貸主)が契約書で記載されている内容に対する義務に違反した場合では、入居者の方から契約違反を理由に契約を終了(契約の解除)させることが可能です。なので、何かしらの違反があったときは、仲介をした不動産会社にすぐに連絡することが大事です。
(10)敷金の返還及び保証金の償却
敷金は基本的に退去後に返還されるものですが、一般的に部屋を出る際には、部屋を借りたときの状態に戻さなければならないので、実際には全額返ってくることはあまりなく、敷金から補修費(あるいは修繕費)を差し引いた残額が戻ってくることになります。
ただし、補修費(あるいは修繕費)が敷金よりもかかってしまった場合は、補修費(あるいは修繕費)から敷金を差し引いた不足分を支払わなければならないのです。
敷金の扱いに関しては契約書を確認し、記載されていなかった場合は、不動産会社に確認をする方がよいです。
なお、敷金ではなく、保証金の場合は、償却金の有無とその金額を必ず確認することが必要です。

保証人にはどのような人を立てればよいのか

「連帯保証人」は賃借人が負っている債務を、賃借人と同等に支払う義務を負っている者のことを言います。多くの貸主は保証人を立てることを要求し、保証人がいないと部屋を借りること自体が困難になります。一般的に連帯保証に関する契約条項が賃貸契約書には記載されてあり、署名欄の場所には、賃借人と同じく署名・押印の欄が設けられています。

保証人は、借主がトラブルなどを起こさない良識のある善良な人物であることを保証し、さらに、賃貸借契約によって生じる借主の債務(例えば、家賃の滞納や、部屋の破損した部分の修繕費の未払いなど)があった際に借主に代わり、支払う義務を負うことになります。

また、連帯保証人となる人は、一般的に賃借人の知り合いであることが多く、連帯保証人は賃借人との契約であると誤解されがちですが、連帯保証契約は賃貸借に関する契約なので、連帯保証人は賃貸人との間で結ばれた契約となります。
さらに、原則として、保証人は借主の更新後の賃貸借契約に関する債務においても責任を負うことになっています。

賃借人が賃料の滞納をした際に、連帯保証人に対して支払い請求をした際に連帯保証契約をしていないと言われトラブルになることもあると考えられます。

また、賃貸借契約を結んだ際には、連帯保証人の欄に署名・押印をしていたにもかかわらず、契約更新での更新合意書を作成したときには、連帯保証人が当事者から外れていることがあります。この場合、連帯保証人に責任を問えるのかということですが、期間の定めがある建物賃貸借では、賃借人に対する保証は、借地借家法によって契約の更新をすることが原則となっています。よって、契約書上で「更新後は連帯保証の責任を負わない」などの特別な条項がない限りは、更新用の書類に署名などがなくても、連帯保証人は賃借人の更新後の債務においても責任を負うと判例ではされています。
ただし、賃料の滞納を確認していながらも賃貸借契約を解除もせず長期間放置をしていた、または、契約から何十年も経過しているなど、連帯保証人に責任を負わせるのが酷な状況であれば、連帯保証人が責任を問われないこともあります。

そのようなことがないように、賃借人との契約時には、連帯保証人も同席の上で直接署名をしてもらい、印鑑登録証明を添付してもらうべきです。このことで連帯保証人の意思確認が確実に出来ます。

建物賃貸借契約では、賃借人の債務において、保証人(連帯保証人)を付けられることがあります。もし賃借人に債務不履行があった場合、賃貸人は保証人(連帯保証人)に対して、責任を追及するためです。 ただし、保証契約と賃貸借契約は別の契約となります。

連帯保証人も人的な「担保」です。
最近の傾向としては、連帯保証人の負う可能性がある責任の範囲の拡大が広まってきています。これは今日の賃貸市場では、賃料が高額な高級マンションが増えてきたため、賃料を滞納し、それが積み重なってくると保証債務も大きくなります。連帯保証人も人である以上、いつ無資力になるかわからず、そうなれば滞納した賃料等の回収は困難になります。
さらに、賃借人が建物の火災などの重過失による損害を発生させることがあれば、保証にかかる金額も高額になるため、保証人への負担も大きくなります。よって、連帯保証契約では保証人がどこまで責任を負う可能性があるかを明確にすることが必要になります。

また、連帯保証人が死亡した場合、相続人が相続放棄の手続きをとるなどすれば、責任の追及が出来なくなります。
債務者が保証人を必要とする義務を負う場合に、保証人が無資力になったときは、代わりの保証人を立てる請求が可能であると規定しています(民法450条)。
賃貸人は、連帯保証契約の問題点を理解し、保証者の債務負担に対する意思確認を定期的に行うと共に、保証人の適性などを見極める必要があります。

誰を保証人とするかについては法律で決まった規定がありません。

借主は保証人に対して迷惑をかける可能性があるため、関係性の薄い相手に頼むことは気が引けてしまいます。

賃貸人は、連帯保証契約の問題点を理解し、保証者の債務負担に対する意思確認を定期的に行うと共に保証人の適正などを見極める必要があります。

このような条件を満たす人で探すと、保証人として認められるのは、両親や叔父などの近親者、学生時代の恩師や先輩、あるいは、両親が常日頃から仲の良かった友人などに絞られます。

また、保証人は自身で借主が契約した賃貸借契約書に署名及び捺印をする必要があります。保証人は必ずしも契約者の近くに住んでいるとは限らないため、契約の場にいられないこともあります。その場合、保証人に電話などで了承をもらい、署名の代筆や捺印を契約者など代理が行うことも行われます。

しかし、電話などだけでの了承では、知らないうちに保証人にされていた場合、また、電話で了承をもらったにも関わらず、保証人になったつもりはないと言われるなど、トラブルのもとにもなりかねないので、そのような事態を避けるためにも、契約者は直接保証人のところまで出向き、契約者自身はどのような部屋を借りるかなどを細かく説明した上で、保証人から了承得て、保証人自身に直筆の署名及び捺印をしてもらうべきです。

賃貸借契約の契約期間の最中には、保証人に対していろいろな問題が生じることが考えられます。

たとえば、賃借人が行方不明になったことで未払賃料が発生し、賃貸人が保証人に対して未払賃料を請求する場合や、数年前に保証人になったことはあるが、更新後にもかかわらず、賃貸人から保証債務の請求を受けたなどの場合が挙げられます。

このような場合、期間に定めのある建物賃貸借契約での保証人は、原則として、更新後であっても賃貸借契約のおける債務に対して責任を負うと判例ではされています。

しかし、建物に関する保証人は、賃借人が多額の賃料を滞納していたにもかかわらず、賃貸人が賃貸借契約を更新させたなどの事情があった場合に、更新後の賃借人の債務を負うことはないとされることもあります。このようなときは、賃借人と連帯保証人の関係や賃借人の延滞がいつから始まったのか、賃貸借契約が更新されているのか、連帯保証人は賃貸人から賃借人の滞納家賃について督促を受けたかなどの状況を確認し、連帯保証人の責任の範囲を限定することが可能かどうかを確認する必要があります。

「賃貸借の保証人」と「借金の保証人」では、まったく異なるということにも注意が必要です。
一般的に「借金の保証人」は莫大な負債を負い、取り立てを受けるなどのイメージが強く、保証人になることを頼まれればついつい臆してしまいます。

それに対して、「賃貸借の保証人」では、連帯保証人が保証し得る債務の範囲は、賃借人が負うべきすべての債務(例えば家賃の滞納や建築内部の破損の修繕費など)に対して責任を負うことになります。よって、賃貸借契約によって生じた借主による債務にとどまらず、利息、違約金、損害賠償などに対しても責任を負うことになります(民法447条1項)。ですが、賃貸借契約の保証人が払うであろう金額は家賃の数カ月分や数十万円程度の修繕費にとどまると考えられます。

もっとも、連帯保証人であっても履行が出来ないこともあり、その1つが建物の明渡しに対する請求があります。建物の明渡しは、建物を所有・使用している賃借人のみが履行出来るものなのです。

また、借主が賃貸借契約の際に、いくらかの敷金を大家さんに入れていたならば、保証人が支払うべき金額は、請求総額から敷金を差し引いた残額となり、請求総額が敷金よりも低かった場合、保証人が責任を負うことはないと言えます。
ただし、賃借人が多額の賃料を滞納または延滞していたにもかかわらず、契約が法定更新された場合に限っては、更新後の賃借人の債務に関しては、責任を負う必要はないとされています。

保証人を立てる以外にも、保証会社に頼むという手段もあり、近年、賃貸借契約において、家賃保証会社を連帯保証人とするケースが増えており、民間賃貸住宅では、約4割がこれを利用しているようです。ですが、その場合、保証会社に対して一定の保証料を支払う必要があります。
さらに、借主が家賃を滞納した場合、保証会社が弁済(借主に代わり、滞納分の返済)・代位(貸主となる)をするため、取り立てが厳しくなることや強制退去を迫られることもあるので、注意が必要です。

入居審査について

(1)入居審査の重要性

不動産に関する賃貸借契約では、不動産会社を通して入居希望者が申込みをし、入居審査を行った後に、入居希望者に問題がないのであれば、賃貸借契約書を作成という流れになっています。賃貸人からすれば、出来るだけ多くの人に貸し出し、少しでも空室を埋めて、収益を上げていきたいと考えます。だからといって、人柄も知らずに誰にでも貸してしまえば、賃借人が問題を起こし、トラブルになってしまうこともあります。また、一度契約をし、引渡しが完了してしまうと、返還してもらうことも困難になる上、返還してもらえたとしてもそれまでに多くの時間や費用がかかってしまいます。よって、入居者選びは賃貸人にとってとても重要になります。具体的な基準としては、入居希望者が家賃を支払い続ける意思および能力があるかというところになります。
また、建物に対する賃貸借契約は、一般的に年単位の長期間になるため、経済的な面で先が見えないことが通常であり、将来的にどうなるかの予想がつかないため、入居希望者に関する情報を収集し、慎重に判断することが必要になります。もちろん契約を結ぶかどうかは賃貸者の自由のため(契約自由の原則)、入居の申込みがあったからといって必ずしも契約をしなければならないわけではないです。

(2)入居審査の方法

入居審査は一般的に入居申込書に則って行われます。不動産会社によって入居申込書は書式が多少異なることもありますが、①申込者の氏名・住所、②家族構成、③勤務先に関する情報(会社名、勤務年数、収入等)は記載するようになっていると思われます。さらに、記載内容が正しいかの確認をするために住民票や源泉徴収票など収入があることを証明する書類が必要なことも少なくはありません。これらの書類は、入居希望者に賃料を払う能力があるかを判断する基準の1つにもなり、もし、賃料の滞納があった際に裁判になったとしても、1つの判断材料として必要になります。
また、形式的な内容だけでは、人柄について知ることは困難なので、実際に入居者と対面した不動産会社の担当者などから情報を聞くことも1つの手段です。

担保について

担保→(一般的に)連帯保証人、敷金

①連帯保証人とは
「連帯保証人」は賃借人が負っている債務を、賃借人と同等に支払う義務を負っている者のことを言い、一般的に連帯保証に関する契約条項が賃貸契約書には記載されてあり、署名欄の場所には、賃借人と同じく署名・押印の欄が設けられています。
また、連帯保証人となる人は、一般的に賃借人の知り合いであることが多く、連帯保証人は賃借人との契約であると誤解されがちですが、連帯保証契約は賃貸借に関する契約なので、連帯保証人は賃貸人との間で結ばれた契約となります。
賃借人が賃料の滞納をした際に、連帯保証人に対して支払い請求をした際に連帯保証契約をしていないと言われトラブルになることもあると考えられます。そのようなことがないように、賃借人との契約時には、連帯保証人にも同席の上で直接署名をしてもらい、印鑑登録証明を添付してもらうことも大事です。そうすれば、連帯保証人の意思確認も出来ます。
②保証の範囲
連帯保証人が保証し得る債務の範囲は、賃借人が負うべきすべての債務に対して責任を負うことになります。よって、賃料にとどまらず、利息、違約金、損害賠償などに対しても責任を負うことになります(民法447条1項)。これについては、契約書の中でも定められています。
しかし、連帯保証人であっても履行が出来ないこともあり、その1つが建物の明渡しに対する請求です。建物の明渡しは、建物を所有・使用している賃借人のみが履行出来るものです。
更新後の債務(補足)

賃貸借契約を結んだ際には、連帯保証人の欄に署名・押印をしていたにもかかわらず、契約更新での更新合意書を作成したときには、連帯保証人が当事者から外れていることがあります。この場合、連帯保証人に責任を問えるのかということですが、期間の定めがある建物賃貸借では、賃借人に対する保証は、借地借家法によって契約の更新をすることが原則となっています。なので、契約書上で「更新後は連帯保証の責任を負わない」などの特別な事情がない限りは、更新用の書類に署名などがなくても、連帯保証人は賃借人の更新後の債務においても責任を負うことになると判例では示されています。
ただし、賃料の滞納を確認していながらも賃貸借契約を解除もせず長期間放置をしていた、または、契約から何十年の経過など、連帯保証人に責任を負わせるといった酷な状況であれば、責任を問われないこともあります。

③連帯保証人に対する説明
最近の傾向としては、責任の拡大が広まってきています。これは今日の賃貸市場では、賃料が高額な高級マンションが増えてきたため、賃料を滞納し、それが積み重なってくると保証債務も大きくなります。さらに、賃借人が建物の火災などの重過失を起こすことがあれば、保証にかかる金額も高額になるため、保証人への負担も大きくなります。よって、連帯保証契約では保証人がどこまで責任を負う可能性があるかを明確にし、充分な理解が必要になります。
④連帯保証契約の問題点
連帯保証人がいるということは、保証の可能性が上がるので、そのような意味では連帯保証人も「担保」と考えることが出来ます。しかし、連帯保証人も人である以上、いつ無資力になるかわからず、そうなれば滞納した賃料等の回収は困難になります。
また、連帯保証人が死亡した場合、相続人が相続放棄の手続きをとるなどすれば、責任の追及が出来なくなります。
債務者が保証人を必要とする義務を負っている場合に、保証人が無資力になったときは、代わりの保証人を立てる請求が可能であると規定しています(民法450条)。
賃貸人は、連帯保証契約の問題点を理解し、保証者の債務負担に対する意思確認を定期的に行うと共に保証人の適正などを見極める必要があります。
⑤家賃保証会社の活用の注意点
近年、賃貸借契約において、家賃保証会社を連帯保証人とするケースが増えています。民間賃貸住宅では、約4割がこれを利用しているようです。
(3)敷金について
①敷金とは
不動産の賃貸借契約において、賃借人が賃料などの債務が生じた際に担保とするために、賃貸人に対して交付される金銭を指します。(同じような趣旨の金銭で、保証金と言われるものもありますが、保証金についての規定は民法の中では、定められていません。ちなみに、敷金については、民法619条2項などに規定が定められています。)
敷金は、家賃の滞納など、賃貸借契約における賃借人の債務不履行が生じた際のために、担保として賃貸人に預け入れることになっている金銭のことをいいます。賃貸借契約が終了した後に、賃貸人は、賃貸借に対する債務を敷金から差し引き、残りの残額を賃借人に返還することになっています。もしも、賃貸借契約中に敷金返還請求権を他の第三者が差し押さえたのであっても、賃貸借契約が数終了するまでは、預かっておくことも可能ですし、契約が終了したとしても賃借人の債務分を回収後の残額が差押えの対象になるに過ぎず、敷金に関しては、賃貸人が優先して返済してもらうことができます。
さらに、敷金は賃貸借契約時に前もって預かることができる担保なので、連帯保証と比べると、確実性のある回収方法であるといえます。

入居審査・契約締結

賃借人が契約解除後に任意によって物件から退居しないのであれば、強制執行の手続によって退居させようと思いますが、その場合、強制執行を行う前提として、賃貸借契約を解除し、裁判手続によって、賃借人を物件から退居させる請求ができる権利を持っていることを判決によって確定させる必要があるため、賃貸人側は大きな経済的負担を負うことになります。
裁判手続を行い、判決をもらうとなると、少なくても数カ月程度の期間はかかってしまい、また、経済的理由から賃借人が賃料の支払いができないことが問題であれば、支払いがないまま、物件の使用が継続されることも考えられ、賃貸人は問題となっている物件の家賃収入が手続中は途絶えてしまうことになります。

また、法的な手続を取るのであれば、印紙等の訴訟費用、弁護士費用、執行官の手数料などさまざまな費用の負担がかかります。
もちろん、これらの費用は、法律上、賃借人に請求することも可能ですが、賃料の滞納などの問題に発展しているのであれば、賃借人が無資力である可能性もあり、実際問題、賃借人に請求し、回収することは困難であるといえます。よって、問題が起きることを想定して、あらかじめ賃貸借契約を締結する時点で、経済的負担を回避する手段がないのかを考える必要があります。

住宅総合保険には加入しなければいけないのか

住宅総合保険とは、火災、落雷、洪水、盗難など普段起こり得る災害が住宅に生じた際に、損害を被った場合、その損害を補償してもらえる保険のことです。最近では、賃貸借契約を結ぶ際に、住宅総合保険料の支払いを求められることが多くなっています。

もちろん、住宅総合保険も火災保険同様で、契約上の合意の下で保険料を負担することになりますが、賃借人の不注意によって火事や漏水事故などを起こしてしまった場合、保険に加入していなければ、賃借人は賃貸人に対して莫大な損害賠償を負うことになりかねませんが、保険に加入していることによって損害賠償の負担が軽くなります。

損害賠償が莫大になる理由の1つとして、日本での制度が関わってきます。

日本では火災によって、他人に損害を与えた場合、放火などの故意、または、寝たばこなどの重大な過失によるものでない限りは、失火責任法によって、責任を負わないことになっています。これは、日本の建築には、木造の物が多く、周りに火が広がりやすい環境のため、どこかで火事が起きると、周囲に莫大な損害を生じさせてしまう結果になります。そのようになれば、火元となった人に損害のすべてを賠償させようとすれば、一生かかっても賠償出来ない負債を負ってしまうことになります。

しかし、賃貸人と賃借人のような契約関係で結ばれているもの同士の間では、上記のような理由が認められないのです。

つまり、賃借人が火事を起こすなどして、大家さんに対して損害を与えた場合には、損害に対する全額を賠償しなければいけないのです。

そこで、住宅総合火災保険に加入しておく必要があるのです。住宅総合火災保険に加入していれば、火災や漏水などの災害を起こしてしまったときに、約款によって定められた賠償額を補償してもらえるようになります。

他にも、個人賠償責任保険(第三者に怪我をさせたり、所有物を壊してしまうなどのときに担保する保険)や借家人賠償責任保険(大家さんに損害が及んだときに担保する保険)など、加入しておくと万一のときに損害賠償を最小限に抑えられる保険があります。

信販会社との賃貸借契約

賃貸借契約の契約先が信販会社であるのは、大家さんがマンションを買う際に、信販会社から代金の一部を借り、貸した部屋の家賃が直接信販会社に入り、返済されるようにするためです。なので、貸主が信販会社であると言うだけで、借主側的には、通常の契約と変わらないのです。
契約期間が○か月としていた場合、信販会社側はいつでも借主を出せると考えている可能性があります。

しかし、契約期間が1年未満で定められている場合、自動的に「期間の定めのない契約」(借地借家法29条)とみなされ、契約を解約するのに6か月の猶予期間が必要(借地借家法1項)なので、すぐに退室させられることはないです。

また、期間の定めがないので、更新の心配もなく、いつでも解約を申し入れることが出来ます(民法617条1項)。

さらに、信販会社側からの解約の申し入れをするためには、6か月間の猶予期間をおくだけにとどまらず、他に正当な理由がない限り、信販会社側から解約をすることは出来ないのです(借地借家法28条)。

ただし、大家さんが融資金を返済しきれず、倒産してしまうと、建物が競売にかけられ、別の会社が所有者となる可能性があります。その場合、借主が鍵を受取るなどの部屋の引渡しを受けていれば、借主としての権利を主張出来ます(借地借家法31条1項)。なので、鍵を受取るなどの部屋の引渡しが行われるまでは、契約金や前家賃を支払わないようにする必要があります。

一時使用目的の賃貸借契約

部屋の改築が終わるまでの期間や次の部屋が見つかるまでの間のみなど一時的な臨時契約のことを「一時使用目的の賃貸借」と言います。一時的な賃貸借には普通の借家契約のような居住権が発生せず、よって、通常の賃貸借契約に関わる法律の適用がないため、借主に対する保護は十分ではありません。よって、当初の予定通り短期間で契約は終了されます。

また、家主にとって「一時使用目的の賃貸借」は居住権が発生しないというメリットもあると同時に、短期間しか家賃が入ってこないというデメリットもあるので、短期間で部屋を契約出来ることは稀なので、本当に一時的に住む部屋が必要なのであれば、多少高めであっても契約してしまうほうがよいです。

なお、賃貸人の不在中、あるいは、取り壊し予定の建物の賃貸借の場合でも居住権を発生させないことも出来ます(借地借家法38条、39条)。
契約の仕方についてですが、不動産会社によっては一時使用目的専用の契約書の用紙を置いていないところもあります。なので、その場合は通常の契約書の用紙を使うことになりますが、注意する点がいくつかあります。

まず、第一に通常の契約書用紙の表題は「建物賃貸借契約書」あるいは「貸室賃貸借契約書」となっているので、必ず表題の前に「一時使用目的」という言葉を付け加えてもらうことが必要です。

また、契約書には「平成○年○月○日まで」という終期を書き込む欄が有りますが、「改築が終わり、住める状態になった」または「新しい部屋に入居出来る」など、一時的に借りた部屋を出られる予定日を書き入れます。

もし、出来るのであれば、大家さんの了承を得た上で、「この期間は借主の都合で期間を延長、または、短縮することができる。」というような文言をいれてもらうとよいです。

さらに、一時使用目的の契約であっても、期間が超過してしまうと更新されることも考えられます。

しかし、数か月程度の短い契約期間であるなら、更新料は不適切であると言えます。なので、契約書の内容に更新料の条項が記載されているのであれば、出来る限り削除してもらう方がよいです。

賃貸借の対象となる建物には、どのようなものがあるでしょうか

賃貸借の対象となる建物には、どのようなものがあるでしょうか

○アパート ○マンション ○一軒家 ○事務所(テナント) ○店舗(テナント)

賃貸人保護のための定期借家契約のデメリットは

賃貸人保護のための定期借家契約のデメリットは

定期借家契約は、借主が期間満了と共に退去しなければならないため、一般的に通常の賃料よりも多少安くなります。しかし相対的に見ると、定期的に一定額の賃料を得られ、期間満了とともに契約終了するので、貸主にとっては有利な契約といえます。

普通借家契約と定期借家契約の相違点
定期借家契約 普通借家契約
1 契約方法 (1)公正証書等の書面による契約に限る (2)さらに、「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書とは別に、あらかじめ書面を交付して説明しなければならない 【借地借家法38条1項】 書面でも口頭でも可
2 更新の有無 期間満了により終了し、更新はない 【借地借家法38条1項】 正当事由がない限り、更新される 【借地借家法26条1項】
3 建物の賃貸借期間の上限 無期限 ●2000年3月1日以前の契約は20年まで ●2000年3月1日以降の契約は無制限
4 期間を1年未満とする建物賃貸借契約の効力 1年未満の契約も有効 【借地借家法38条4項】 期間の定めのない賃貸借とみなされる 【借地借家法29条1項】
5 建物賃借料の増減に関する特約の効力 賃借料の増減は特約の定めに従う 【借地借家法38条7項】 特約にかかわらず、当事者は、賃借料の増減を請求できる 【借地借家法32条】
6 借主からの中途解約の可否 (1)床面積が200㎡未満の居住用建物で、やむを得ない事情により、生活の本拠として使用することが困難となった借主からは、特約がなくても、中途解約ができる (2)上記(1)以外の場合は中途解約に関する特約があればその定めに従う 【借地借家法38条4項】 中途解約に関する特約があれば、その定めに従う

①定期借家契約を結ぶための手続き (1)公正証書などの書面を作成 借地借家法38条1項  期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。 定期借家契約のでは、口頭でも成立する普通借家契約とは違い、必ず書面を造らなければなりません。その際書面には「この契約は定期借家契約であり、平成○年○月○日をもって終了する」「この契約は更新されない」などの旨の条項を入れる必要があります。

記載すべき事項 記載すべき理由
1 当事者の氏名・住所 誰と誰が締結した契約であるかを明らかにします
2 建物の所在・地番 賃借の目的となる建物を特定します
3 家賃の額 家賃額は最低限必要です
4 建物の引渡し時期 借家人がいつから使用できるのかを明らかにします
5 契約の存続期間 期間を定める場合には、必ず契約期間を記載します
6 使用目的 居住用であるか、事業用であるかなどを記載します
7 家賃以外に授受される金銭がある場合には、その金銭の額、授受の時期、目的 家賃以外に、敷金、権利金、礼金、更新料などを交付する場合には、額を明示します。また、権利金や礼金などは法律上性質が明らかではないので、契約書にその性質を記載して、内容を明らかにします
8 契約の解除に関する定めがある場合にはその内容 一定の場合には契約が解除されるという定めをした場合にはその内容(どのような場合に解除されるか)
9 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め v地震や洪水などの天災で建物が毀損した場合に、その修繕義務を家主と借家人のいずれが負担するのかをあらかじめ明らかにしておきます
10 転貸の承諾の有無 借家人が借家を転貸(又貸し)することについて承諾する場合には、その旨を記載します
11 更新の有無 定期の場合には必ず、更新がなく、期間満了により契約が終了する旨を定めます

1)契約書について 定期借家契約を締結する場合、必ず書面をつくらなくてはなりません。必ずしも公正証書にする必要はないのですが、不慣れな場合、少なくとも最初の契約では、公正証書を利用する方が無難です。一度でも公正証書を利用すれば、2回目以降はその書式を参考にして自分で書面を作成することもできます。 ■公正証書について  公正証書は、公証人役場で作成できます。  公正証書は場合によって「債務名義」になり得ることもありますが、建物の返還を請求する強制執行手続においては「債務名義」になることはありません。建物明渡請求のように、金銭ではない特定の物を対象とする請求は、公正証書が「債務名義」として扱われることはありません。つまり、賃借人を強制的に退去させたいということがあれば、賃貸人は必ず裁判手続をとらなければなりません。(民事執行法22条5号) 2)契約書以外に 定期借家契約の場合、契約書とは別に、定期借家契約であることを記載した書面を予め交付して直接説明することが必要です(借地借家法38条2項)。説明をすることで、後々「定期借家契約だと知らなかった」と借主から言われ、トラブルになることを避けられます。 また、「書面の交付」「定期借家である説明」のどちらかが書けた場合は、当該契約は普通借家契約とみなされるリスクもあるので、注意が必要です(借地借家法38条3項)。 3)その他 定期借家契約の対象は、住居用に限りません。営業用建物や倉庫などに関する建物であっても、定期借家契約を結ぶことができます。 ■住居用以外の借家契約 住居用の建物の場合、普通借家契約(自動的に更新)から定期借家契約へ変更することは出来ません。しかし、住居用以外の建物の場合、普通借家契約から定期借家契約へ変更することが可能です。 ■期間・更新 定期借家契約の期間は、1年以内でもよいとなっています(借地借家法38条1項)。夏の数ヶ月のみ貸すという契約も可能(但し、常識的に明渡期限が判断できる場合には一時使用契約)ですし、長期の制限もないので20年を超える定期借家契約を結ぶことも可能です(借地借家法29条2項)。但し、契約上20年を超える期間であっても、契約書上の記載は20年と定めます(民法604条1項)。 ②定期借家契約を終了させたい 1)貸主が期間満了を理由に、契約を終了させる場合 定期借家契約は、契約の期間満了と同時に契約終了となります。 しかし、定期借家契約の契約期間が1年以上である場合、契約終了の1年から6月前までの間に、「期間満了により契約は終了する」といった旨の通知を借主にしなければならず、この通知がされなかった場合、契約終了を主張できません(借地借家法38条4項)。 ■契約終了の通知方法 期間満了による契約終了の通知は必ずしも書面にする必要はなく、口頭による通知でも可能です。しかし、口頭による通知の場合、後日トラブルになることも考えられるので、内容証明郵便などの書面による通知が望ましいでしょう。 ■書面での通知の注意点 書面で通知をする場合、郵便を出した日ではなく、相手に書面が届いた日が通知日となります。内容証明郵便には配達証明をつけ、通知日を特定しておくべきです。 ■定期借家の通知期間の特約について 定期借家において、契約期間満了の通知に関して借主に不利な内容の特約は無効とされます。「この契約では更新がなく、期間が満了した時点で終了となる」という内容の通知が、通知期間(契約終了の1年から6月前)に遅れてしまった場合、通知到達日から契約終了まで6月以上に設定する特約は有効ですが、6月未満に設定する特約は無効です(借地借家法38条4項)。 つまり例えば、通知日から契約終了まで8月に設定することは可能ですが、通知日から契約終了まで2月に設定することは、借主に不利なため無効となります。 2)借主が期間満了前に終了を申し出る場合 期間が決められている契約においては、定期借家契約に限らず、通常その期間が満了するまでは終了することはありません。借主に転勤などで引越しの必要が出来て、契約期間の途中で契約終了をしたいと主張しても、貸主が同意する義務はなく、契約は継続し続けます。つまり、借主がその家を出て他の家に引っ越したとしても、貸主はその家の家賃を期間満了まで受け取ることが出来ます。 ■特約について 多くの契約には特約があり、その特約によって借主は保護されます。定期借家契約における解約の特約は中途解約条項というもので、例えば「借主が1か月の予告期間を持つ事によって契約を解約することが出来る」「1か月の予告期間分の家賃を支払った場合も契約を解約することが出来る」などです。 テナントを貸す場合、一度空き家になると次のテナントがなかなか入らない傾向が高いので、中途解約条項は入れないことが望ましいでしょう。 ■契約終了の特約 居住用の建物における定期借家契約では、建物の床面積が200平方メートル未満の場合、転勤や親族の介護、療養などのやむを得ない理由によりその建物における居住が困難となったときは特約が無かった場合でも、契約を中途解約できるため、借主は解約の申し入れができ、解約の申し入れから1か月後に契約を終了させることが出来ます(借地借家法38条5項)。 定期借家において、この規定に関して借主に不利な内容の特約は、無効とされます。借主の解約の申し入れから1か月よりも短い期間での契約終了が出来る旨の特約は可能ですが、1か月よりも長い期間で契約が終了する特約は家賃なども発生するため、借主にとって不利な特約であるといえるので、無効となります。 3)定期借家契約での賃料改定 賃料の改定に関する特約があった場合、普通の借家契約(自動的に更新)では、特約にとらわれず、貸主及び借主双方が自由に賃料の増減を請求出来ます(借地借家法32条1項)。ただし、増減の時期について「一定の期間は賃料増額しない」などの特約がある場合は、その特約に従う必要があります。 これに対し、定期借家契約では、貸主及び借主はその特約に従う必要があります(借地借家法38条7項)。 ≪内容証明について≫ 建物明渡請求事件でまずやるべきことは、適切な事実関係を相手方に対して通知することです。賃借人が賃料を延滞している場合、滞納賃料の支払がないなどの理由から、賃貸借契約を解除する旨を配達証明付内容証明郵便に記載し、相手方(賃借人)に送付します。 しかし、賃借人に対して、内容証明郵便を送付しても、留置期間満了(留置期間は原則7日間。受取人の申出があれば、最大10日間まで延長可能)に伴い、内容証明が返送されてしまうことがあります。これは、配達の際に受取人(賃借人)が不在であれば「郵便物配達のおしらせ」が交付されることになっていますが、差出人の欄に賃貸人や代理人の名前が記載されていることで、賃借人が自身にとって不都合な内容が書かれていると思い、内容証明郵便を留置期間内に受領を拒否しているためであると考えられます。 ■相手が”受領”しないとダメなの? 受取人(賃借人)が内容証明郵便を受領しない場合、たとえ名宛人不在で内容証明郵便が返送されても、留置期間の満了をもって賃貸人の意思表示の到達はあったものとされることもあります。 また、受取人(賃借人)が内容証明郵便を受領しなかったとしても、内容を了知させるために、留置期間満了に伴い返送された内容証明郵便の差出人保管分をコピーし、「いつ」「何を」送付し、「留置期間満了に伴い返送されたこと」、さらに「内容証明の写しを送付したこと」を記載した奥書を郵送することも1つの手段です。

このような建物の賃貸借に対しては、どのような法律の規定が適用されるのでしょうか

このような建物の賃貸借に対しては、どのような法律の規定が適用されるのでしょうか

○賃貸借(民法601条~621条) ○借地借家法(民法の特別法) これらの法律の関係は、特別法である借地借家法が優先して適用されることとなります。つまり、借地借家法こそが最も重要な法律となります。 民法601条(賃貸借)  賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。 民法602条(短期賃貸借)  処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借はそれぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。 3号 建物の賃貸借 3年 民法603条(短期賃貸借の更新)  前条に定める期間は、更新することができる。ただし、その期間満了前、土地については一年以内、建物については三箇月以内、動産については一箇月以内に、その更新をしなければならない。 民法604条(賃貸借の存続期間) 賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。 2  賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。 第二款 賃貸借の効力 民法605条(不動産賃貸借の対抗力) 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。 民法606条(賃貸物の修繕等) 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。 2  賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。 民法607条(賃借人の意思に反する保存行為) 賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。 民法608条(賃借人による費用の償還請求) 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。 2  賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。 民法609年(減収による賃料の減額請求) 収益を目的とする土地の賃借人は、不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときは、その収益の額に至るまで、賃料の減額を請求することができる。ただし、宅地の賃貸借については、この限りでない。 民法610条(減収による解除) 前条の場合において、同条の賃借人は、不可抗力によって引き続き二年以上賃料より少ない収益を得たときは、契約の解除をすることができる。 民法611条(賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等) 賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。 2  前項の場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。 民法612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限) 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。 2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。 民法613条(転貸の効果) 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。 2  前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。 民法614条(賃料の支払時期) 賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。 民法615条(賃借人の通知義務) 賃借物が修繕を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない。ただし、賃貸人が既にこれを知っているときは、この限りでない。 民法616条(使用貸借の規定の準用) 第五百九十四条第一項、第五百九十七条第一項及び第五百九十八条の規定は、賃貸借について準用する。 第三款 賃貸借の終了 民法617条(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ) 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。 一  土地の賃貸借 一年 二  建物の賃貸借 三箇月 三  動産及び貸席の賃貸借 一日 2  収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。 民法618条(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保) 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。 民法619条(賃貸借の更新の推定等) 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第六百十七条の規定により解約の申入れをすることができる。 2  従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、敷金については、この限りでない。 民法620条(賃貸借の解除の効力) 賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合において、当事者の一方に過失があったときは、その者に対する損害賠償の請求を妨げない。 民法621条(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限) 第六百条の規定は、賃貸借について準用する。 ■賃貸借の注意点 建物を貸す際に注意すべき規程として、借地借家法28条があります。これは更新拒絶における正当事由の規定であり、貸主が契約の更新を拒絶する際には、更新ができない正当な理由を借主に対して示す必要があります。 借地借家法28条  建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現状並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申し出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。 借地借家法26条1項  建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。 また、貸借人同士で期間を定めていた場合には、期間満了と同時に賃借物(部屋や建物など)を返還してもらうことが出来ます。(民法616条、597条1項) 民法616条(使用貸借の規定の準用) 第五百九十四条第一項、第五百九十七条第一項及び第五百九十八条の規定は、賃貸借について準用する。 民法597条1項  借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。 しかし、期間の定めは法律上20年が上限となっており(民法604条)、さらに契約における目的物が建物であり、1年未満の期間を設定した場合は期間の定めがないということになります(借地借家法29条1項)。 民法604条(賃貸借の存続期間) 賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。 2  賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。 借地借家法29条1項(建物賃貸借の期間)  期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。 契約の目的物が建物であった場合、期間の定めが設けられていたとしても、必ずしも期間満了と同時に契約終了となり、建物から退去してもらえるとは限りません。契約満了の6か月~1年前までに賃借人から更新しない旨の通知が来なければ、従来通りの条件で契約が更新されます(借地借家法26条1項)。また、普通の借家契約では、期間満了後も借主が住み続けたい旨を主張すれば、自動的に更新が可能となってしまいます。 借地借家法26条1項  建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

賃貸人の保護は、なされていないのでしょうか

賃貸人の保護は、なされていないのでしょうか

平成12年(2000年)3月1日より、「定期借家契約」が導入されました(借地借家法26条以下)。定期借家契約では、期間が満了した後の更新ができないとされています(借地借家法38条1項)。つまり、定期借家契約をした場合、各条文で定められている期間が経過したときに期間満了となり、同時に契約が終了します。定期借家契約であれば、期間が満了しさえすれば立退料を支払う必要もありません。この制度を利用すれば、高額な立退料を恐れる必要がなくなり、所有している物件を活用できます。 借地借家法第3章 借家 第一節 建物賃貸借契約の更新等 第26条(建物賃貸借契約の更新等) 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。 2  前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。 3  建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。 第27条(解約による建物賃貸借の終了) 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。 2  前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。 第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件) 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。 第29条(建物賃貸借の期間) 期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。 2  民法第六百四条 の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。 第30条(強行規定) この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。 第二節 建物賃貸借の効力 第31条(建物賃貸借の対抗力等) 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。 2  民法第五百六十六条第一項 及び第三項 の規定は、前項の規定により効力を有する賃貸借の目的である建物が売買の目的物である場合に準用する。 3  民法第五百三十三条 の規定は、前項の場合に準用する。 第32条(借賃増減請求権) 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。 2  建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。 3  建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。 第33条(造作買取請求権) 建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。 2  前項の規定は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了する場合における建物の転借人と賃貸人との間について準用する。 第34条(建物賃貸借終了の場合における転借人の保護) 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。 2  建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から六月を経過することによって終了する。 第35条(借地上の建物の賃借人の保護) 借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその一年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から一年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。 2  前項の規定により裁判所が期限の許与をしたときは、建物の賃貸借は、その期限が到来することによって終了する。 第36条(居住用建物の賃貸借の承継) 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。 2  前項本文の場合においては、建物の賃貸借関係に基づき生じた債権又は債務は、同項の規定により建物の賃借人の権利義務を承継した者に帰属する。 第37条(強行規定) 第三十一条、第三十四条及び第三十五条の規定に反する特約で建物の賃借人又は転借人に不利なものは、無効とする。 第三節 定期建物賃貸借等 第38条(定期建物賃貸借) 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。 2  前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。 3  建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。 4  第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。 5  第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。 6  前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。 7  第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。 第39条(取壊し予定の建物の賃貸借) 法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において、建物の賃貸借をするときは、第三十条の規定にかかわらず、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができる。 2  前項の特約は、同項の建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければならない。 第40条(一時使用目的の建物の賃貸借) この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。

2020-03-19 16:16 [Posted by]:不動産の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所